古今和歌集 巻第一 春歌上 4番
雪のうちに
雪が残る中に春がやって来た。冬の間凍っていた鶯の涙も、今ごろは解けているだろうか。

現代語訳
〔詞書〕二条の后が春の初めに詠まれた御歌。
雪が残る中に春がやって来た。冬の間凍っていた鶯の涙も、今ごろは解けているだろうか。
意訳
まだ雪の消えない中で春を迎え、谷にこもっていた鶯が、凍った涙を解かして鳴き始めるだろうと想像する。宮中に入って身の自由が利かない作者自身が、春を待つ気持ちを鶯に重ねたとも読まれる。
語釈・文法注
- 二條后
- 藤原高子。清和天皇の女御。
- こほれる涙
- 鶯が冬の寒さに泣いて凍らせた涙という擬人化。
- いまやとくらむ
- 「らむ」は現在推量。「今ごろは解けているだろうか」。
和歌
- 作者
- 二条后(藤原高子)(にじょうのきさき) 842–910
藤原長良の娘で、清和天皇の女御となり陽成天皇を産んだ。のち皇太后。若い頃の在原業平との恋が『伊勢物語』に描かれる。 - 出典
- 『古今和歌集』巻第一・春歌上・4番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 詞書「二條后の春のはじめの御歌」(二条の后が春の初めに詠まれた御歌)。
修辞
- 擬人法
- 鶯に涙があるとして、冬の寒さと春の訪れを表す。
解説
鶯の「凍れる涙」という奇抜な見立てが印象的な一首。若き日に在原業平と恋仲であったと伝えられる高子の歌として、『伊勢物語』の世界と重ねて味わわれることもある。
関連
出典
- 底本
- 有朋堂文庫『古今和歌集・後撰和歌集』 塚本哲三校訂、有朋堂書店、大正15年(1926)、1頁(コマ14)。正保四年版『八代集』を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日