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方丈記 第4章

元暦の大地震と世の住みにくさ

元暦二年、山が崩れ海が傾くほどの大地震が都を襲い、余震は三か月も続く。人々は一時は世のはかなさを口にしたが、年月がたつと誰も言わなくなる。作者は五つの災厄を語り終えて、身分や住む場所によって心を悩ますこの世の住みにくさを説く。

元暦の大地震で崩れた築地塀や傾いた家屋を見つめ、互いに支え合う京の人々
元暦二年(1185)の大地震では、京の堂舎や家々が崩れ、人々は逃げ場を失った。長明は長く続く余震と人々の嘆きを記し、やがて災厄の記憶さえ薄れてゆく姿から、人と住まいのはかなさを見つめる。
  1. 1またまたまた元げん元げんげん曆りやく曆りやくりゃく二に二にに年ねん年ねんねんのののころころころ、、、おほおほおおふるふるふることことこと侍はべ侍はべはべりりりききき。。。そのそのそのさまさまさまよよよのののつねつねつねならならならずずず。。。山やま山やまやまくづれくづれくずれててて川かは川かはかはををを埋うづ埋うづうずみみみ、、、海うみ海うみうみかたぶきかたぶきかたぶきててて陸くが陸くがくがをををひたせひたせひたせりりり。。。土つち土つちつちさけさけさけててて水みづ水みづみずわきわきわきあがりあがりあがり、、、いはほいはほいわおわれわれわれててて谷たに谷たにたににににまろびまろびまろび入い入いいりりり、、、なぎさなぎさなぎさこぐこぐこぐふねふねふねははは浪なみ浪なみなみにににたゞよひたゞよひただよい、、、道みち道みちみちゆくゆくゆく駒こま駒こまこまははは足あし足あしあしのののたちたちたちどどどをををまどはせまどはせまどわせりりり。。。
  2. 2いはむやいはむやいわんや都みやこ都みやこみやこのののほとりほとりほとりにににははは、、、在ざい在ざいざい々ざい々ざいざい所しよ所しよしょ々しよ々しよしょ堂だう堂だうどう舍しや舍しやしゃ廟べう廟べうびょう塔たふ塔たふとう、、、一ひと一ひとひとつつつとととしてしてして全まつた全まつたまったからからからずずず。。。或あるい或あるいあるいはははくづれくづれくずれ、、、或あるい或あるいあるいはははたふれたふれたおれたるたるたる間あひだ間あひだあいだ、、、塵ぢん塵ぢんじん灰くわい灰くわいかい立た立たたちちちあがりあがりあがりててて盛さかり盛さかりさかりなるなるなる煙けぶり煙けぶりけぶりのののごとしごとしごとし。。。地ち地ちちのののふるひふるひふるい家いへ家いへいえのののやぶるゝやぶるゝやぶるる音おと音おとおと、、、いかづちいかづちいかずちにににことことことならならならずずず。。。
  3. 3家いへ家いへいえののの中うち中うちうちににに居を居をおれれればばば忽たちまち忽たちまちたちまちにににうちうちうちひしげひしげひしげなななむむんとととすすす。。。はしりはしりはしり出い出いいづれづれずればばばまたまたまた地ち地ちちわれわれわれさくさくさく。。。羽はね羽はねはねなけれなけれなければばば空そら空そらそらへへへもももあがるあがるあがるべからべからべからずずず。。。龍りよう龍りようりょうならならならねねねばばば雲くも雲くもくもにににのぼらのぼらのぼらむむんことことこと難かた難かたかたししし。。。おそれおそれおそれののの中なか中なかなかにににおそるおそるおそるべかりべかりべかりけるけるけるははは、、、たゞたゞただ地な地なな震ゐ震ゐいなりなりなりけるけるけるとととぞぞぞ覺おぼ覺おぼおぼえええ侍はべ侍はべはべりりりししし。。。
  4. 4そのそのその中なか中なかなかににに、、、あるあるあるものゝふものゝふもののふのののひとりひとりひとり子ご子ごごののの、、、六む六むむつつつ七なな七ななななつつつばかりばかりばかりににに侍はべ侍はべはべりりりしししががが、、、ついついついぢぢじのののおほひおほひおおいののの下した下したしたににに小こ小ここ家いへ家いへいえをををつくりつくりつくり、、、はかなげはかなげはかなげなるなるなるあとあとあとなしなしなしをををしてしてして遊あそ遊あそあそびびび侍はべ侍はべはべりりりしししががが俄にはか俄にはかにはかにににくづれくづれくずれうめうめうめられられられててて、、、あとあとあとかたかたかたなくなくなくひらひらひらにににうちうちうちひさがひさがひさがれれれててて、、、二ふた二ふたふたつつつののの目め目めめなどなどなど一いつ一いついつ寸すん寸すんすんばかりばかりばかりうちうちうち出いだ出いだいだささされれれたるたるたるををを、、、父ちゝ父ちゝちち母はゝ母はゝははかゝへかゝへかかえててて、、、聲こゑ聲こゑこえもももをしまをしまおしまずずずかなしみかなしみかなしみあひあひあいててて侍はべ侍はべはべりりりしししこそこそこそあはれあはれあわれにににかなしくかなしくかなしく見み見みみはべりはべりはべりしかしかしか。。。子こ子ここのののかなしみかなしみかなしみにににはははたけきたけきたけきものものものももも耻はぢ耻はぢはじををを忘わす忘わすわすれれれけりけりけりととと覺おぼ覺おぼおぼえええててて、、、いとほしくいとほしくいとおしくことわりことわりことわりかかかなななとととぞぞぞ見み見みみはべりはべりはべりししし。。。
  5. 5かくかくかくおびたゞしくおびたゞしくおびただしくふるふるふることことことはははしばししばししばしにににててて止や止ややみみみにににしかしかしかどもどもども、、、そのそのそのなごりなごりなごりしばしばしばしばしばしば絕た絕たたえええずずず。。。よよよのののつねつねつねにににおどろくおどろくおどろくほどほどほどののの地な地なな震ゐ震ゐい、、、二に二にに三さむ三さむさん十じふ十じふじゅう度ど度どどふらふらふらぬぬぬ日ひ日ひひはははなしなしなし。。。十とを十とをとお日か日かか廿はつ廿はつはつ日か日かか過す過すすぎぎぎにににしかしかしかばばば、、、やうやうやうやうようようまどほまどほまどおににになりなりなりててて、、、或あるい或あるいあるいははは四し四しし五ご五ごご度ど度どど、、、二に二にに三さむ三さむさん度ど度どど、、、もしはもしはもしは一ひと一ひとひと日ひ日ひひまぜまぜまぜ、、、二に二にに三さむ三さむさん日にち日にちにちににに一ひと一ひとひと度たび度たびたびなどなどなど、、、大おほ大おほおおかたかたかたそのそのそのなごりなごりなごり、、、三み三みみ月つき月つきつきばかりばかりばかりややや侍はべ侍はべはべりりりけむけむけん。。。
  6. 6四し四しし大だい大だいだいののの中なか中なかなかににに、、、水すい水すいすい火くわ火くわか風ふう風ふうふうはははつねつねつねににに害がい害がいがいをををなせなせなせどどど、、、大だい大だいだい地ぢ地ぢじににに至いた至いたいたりりりてててははは殊こと殊ことことなるなるなる變へん變へんへんをををなさなさなさずずず。。。むかしむかしむかし齊さい齊さいさい衡かう衡かうこうのののころころころかかかとととよよよ。。。おほおほおおなゐなゐないふりふりふりててて、、、東とう東とうとう大だい大だいだい寺じ寺じじののの佛ほとけ佛ほとけほとけのののみぐしみぐしみぐし落お落おおちちちなどなどなどしてしてして、、、いみじきいみじきいみじきことことことゞもゞもども侍はべ侍はべはべりりりけれけれけれどどど、、、猶なほ猶なほなおこのこのこのたびたびたびにににはははしかしかしかずずずとととぞぞぞ。。。
  7. 7すなはちすなはちすなわち人ひと人ひとひと皆みな皆みなみなあぢきなきあぢきなきあじきなきことことことををを述の述ののべべべててて、、、いさゝかいさゝかいささか心こころ心こころこころのののにごりにごりにごりもももうすらぐうすらぐうすらぐととと見み見みみえええしししほどほどほどににに、、、月つき月つきつき日ひ日ひひかさなりかさなりかさなり年とし年としとし越こ越ここえええしかしかしかばばば、、、後のち後のちのちははは言こと言ことことののの葉は葉ははにににかけかけかけててて、、、いひいひいい出い出いいづるづるずる人ひと人ひとひとだにだにだになしなしなし。。。
  8. 8すべてすべてすべて世よ世よよのののありありありにくきにくきにくきことことこと、、、わがわがわが身み身みみとととすみかすみかすみかとととののの、、、はかなくはかなくはかなくあだあだあだなるなるなるさまさまさまかくかくかくのののごとしごとしごとし。。。いはむやいはむやいわんや所ところ所ところところににによりよりより、、、身み身みみのののほどほどほどにににしたがひしたがひしたがいててて、、、心こころ心こころこころをををなやますなやますなやますことことこと、、、あげあげあげてててかぞふかぞふかぞうべからべからべからずずず。。。
  9. 9もしもしもしおのづからおのづからおのずから身み身みみかずかずかずならならならずずずしてしてして、、、權けん權けんけんのののかたはらかたはらかたわらににに居を居をおるるるものものものははは深ふか深ふかふかくくく悅よろこ悅よろこよろこぶぶぶことことことあれあれあれどもどもども、、、大おほい大おほいおおいにににたのしぶたのしぶたのしぶにににあたはあたはあたわずずず。。。なげきなげきなげきあるあるある時とき時ときときももも聲こゑ聲こゑこえをををあげあげあげててて泣な泣ななくくくことことことなしなしなし。。。進しん進しんしん退たい退たいたいやすからやすからやすからずずず、、、たちたちたちゐゐいにににつけつけつけててて恐おそ恐おそおそれれれをのゝくをのゝくおののくさまさまさま、、、たとへたとへたとえばばば雀すゞめ雀すゞめすずめののの鷹たか鷹たかたかののの巢す巢すすににに近ちか近ちかちかづけづけずけるるるがががごとしごとしごとし。。。
  10. 10もしもしもし貧まづ貧まづまずしくしくしくしてしてして富と富ととめめめるるる家いへ家いへいえののの隣となり隣となりとなりにににをるをるおるものものものははは、、、朝あさ朝あさあさ夕ゆふ夕ゆふゆうすぼきすぼきすぼき姿すがた姿すがたすがたををを耻は耻ははぢぢじてててへつらひへつらひへつらいつゝつゝつつ出い出いいででで入い入いいるるる妻め妻めめ子こ子ここ、、、僮どう僮どうどう僕ぼく僕ぼくぼくのののうらやめうらやめうらやめるるるさまさまさまををを見み見みみるるるにににももも、、、富と富ととめめめるるる家いへ家いへいえのののひとひとひとのののないがしろないがしろないがしろなるなるなるけしきけしきけしきををを聞き聞ききくくくにににももも、、、心こころ心こころこころ念ねん念ねんねん々ねん々ねんねんにににうごきうごきうごきててて時とき時ときときとしてとしてとしてやすからやすからやすからずずず。。。
  11. 11もしもしもしせばきせばきせばき地ち地ちちににに居を居をおれれればばば、、、近ちか近ちかちかくくく炎えん炎えんえん上しやう上しやうしょうするするする時とき時ときとき、、、そのそのその害がい害がいがいをををのがるゝのがるゝのがるることことことなしなしなし。。。もしもしもし邊へん邊へんへん地ぢ地ぢじにににあれあれあればばば、、、往わう往わうおう反へん反へんへんわづらひわづらひわずらい多おほ多おほおおくくく、、、盜たう盜たうとう賊ぞく賊ぞくぞくののの難なん難なんなんはなれはなれはなれがたしがたしがたし。。。いきほひいきほひいきおいあるあるあるものものものははは貪とん貪とんとん欲よく欲よくよくふかくふかくふかく、、、ひとりひとりひとり身み身みみなるなるなるものものものははは人ひと人ひとひとにににかろしめかろしめかろしめらるらるらる。。。
  12. 12寶たから寶たからたからあれあれあればばばおそれおそれおそれ多おほ多おほおおくくく、、、貧まづ貧まづまずしけれしけれしければばばなげきなげきなげき切せつ切せつせつなりなりなり、、、人ひと人ひとひとををを賴たの賴たのたのめめめばばば身み身みみ他た他たたのののやつこやつこやつことととなりなりなり、、、人ひと人ひとひとをををはごくめはごくめはごくめばばば心こころ心こころこころ恩おん恩おんおん愛あい愛あいあいにににつかはつかはつかわるるる。。。世よ世よよにににしたがへしたがへしたがえばばば身み身みみくるしくるしくるし。。。またまたまたしたがはしたがはしたがわねねねばばば狂くる狂くるくるへへえるるるににに似に似ににたりたりたり。。。いづれいづれいずれののの所ところ所ところところをををしめしめしめ、、、いかなるいかなるいかなるわざわざわざをををしてしてしてかかか、、、しばししばししばしもももこのこのこの身み身みみをををやどしやどしやどし玉たま玉たまたまももも心こころ心こころこころをををなぐさむなぐさむなぐさむべきべきべき。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

また、元暦二年のころ、大地震があったことがございました。そのありさまは普通ではなかった。山は崩れて川を埋め、海は傾いて陸地を浸した。大地は裂けて水が湧き出し、大岩は割れて谷に転がり落ち、渚を漕ぐ舟は波に漂い、道を行く馬は足の踏み場に迷った。

まして都のあたりでは、あちらこちらの堂舎や廟塔が、一つとして無事なものはない。あるものは崩れ、あるものは倒れたので、土ぼこりや灰が立ちのぼって、盛んに燃える煙のようである。大地の揺れる音や家の壊れる音は、雷と変わらない。

家の中にいると、たちまち押しつぶされそうになる。走り出ると、また地面が割れ裂ける。羽がないので空へ飛び上がることもできない。竜ではないので雲に上ることも難しい。恐ろしいものの中で何よりも恐ろしいのは、ただ地震であったのだと思われました。

そのなかで、ある武士の一人っ子で、六つか七つほどでございましたのが、築地の屋根の下に小さな家を作って、たわいもない遊びをしておりましたが、急に築地が崩れて埋められ、跡形もなくぺしゃんこに押しつぶされて、二つの目などが一寸ほども飛び出しているのを、父母が抱きかかえて、声も惜しまず悲しみ合っておりましたのは、哀れで悲しく見ました。子を失った悲しみには、勇猛な者も恥を忘れるのだと思われて、気の毒で、もっともなことだと見ました。

このように激しく揺れることはしばらくでやんだけれども、その余震はしばらくのあいだ絶えなかった。普通なら驚くほどの地震が、二、三十回揺れない日はない。十日、二十日が過ぎたので、だんだん間遠になって、あるいは一日に四、五回、二、三回、あるいは一日おき、二、三日に一回などと、だいたいその余震は、三か月ほど続いたでしょうか。

四大種の中で、水・火・風はいつも災害を起こすけれど、大地については格別な異変を起こさないものだ。昔、斉衡のころだったか。大地震が起こって、東大寺の大仏の御首が落ちたりして、大変なことがございましたけれど、それでもやはり今度の地震には及ばないということだ。

そのときは、人はみなこの世のつまらなさを口にして、少し心の濁りも薄らぐかと見えたが、月日が重なり年が越えると、のちには言葉に出して言う人さえいない。

総じて世の中の生きにくいことと、わが身と住まいとが、はかなくもろいさまは、このようである。まして住む場所により、身分の程度に応じて、心を悩ますことは、いちいち数え上げることもできない。

もしたまたま自分が人数にも入らない身分で、権勢のある家のそばに住んでいる者は、深く喜ぶことがあっても、大いに楽しむことはできない。嘆きのあるときも、声をあげて泣くことはない。立ち居振る舞いも落ち着かず、起きても座っても恐れおののくさまは、たとえば雀が鷹の巣に近づいているようなものである。

もし貧しくて富んだ家の隣に住んでいる者は、朝夕みすぼらしい姿を恥じて、へつらいながら出入りする。妻子や召使いが(隣の家を)うらやむ様子を見るにつけても、富んだ家の人が(自分たちを)軽んじる様子を聞くにつけても、心はたえず揺れ動いて、少しの間も落ち着かない。

もし狭い土地に住んでいると、近くで火事が起こったとき、その災難から逃れることができない。もし辺鄙な土地に住んでいると、行き来の苦労が多く、盗賊の災難から逃れにくい。勢いのある者は欲が深く、身寄りのない者は人に軽んじられる。

財産があれば心配が多く、貧しければ嘆きが切実である。人を頼みにすれば身は他人の所有物となり、人を養えば心は愛情に使われる。世の中に従えば身が苦しい。従わなければ狂人のように見える。どんな場所に住み、どんなことをしたら、少しの間でもこの身を落ち着け、わずかな間でも心を安らかにすることができるのだろうか。

意訳

元暦の大地震の描写は、五つの災厄の中でも最も迫力がある。山が崩れ、海が傾き、地が裂け、岩が谷に転がる――自然そのものがひっくり返るような光景が、対句を重ねて畳みかけるように描かれる。「羽なければ空へもあがるべからず。龍ならねば雲にのぼらむこと難し」と、逃げ場のない恐怖を語り、「おそれの中におそるべかりけるは、たゞ地震なりけり」と言い切る。

武士の一人っ子が崩れた築地の下敷きになり、両親が人目もはばからず泣く場面は、災害の記録の中に置かれた小さな、しかし忘れがたい情景である。勇猛な武士でさえ子の死には恥を忘れて泣く、という観察に、作者の人間を見るまなざしがうかがえる。

そして作者は、地震の直後には誰もが世の無常を語ったのに、年月がたつと誰も口にしなくなったと書く。災害の記憶が風化していくことへのこの指摘は、八百年以上たった今も古びていない。後半では、災害のない時でも、権勢家の隣に住めば萎縮し、金持ちの隣に住めば恥じ、狭い所では火事を、辺地では盗賊を恐れるという、この世の住みにくさを列挙し、「いづれの所をしめ…心をなぐさむべき」という問いで、出家と庵の話へと移っていく。

語釈・文法注

おほなゐ
大地震。「なゐ」は地震のこと。
あとなしごと
とりとめのないこと。たわいもない遊び。
四大種
仏教で、万物を形づくるとされる地・水・火・風の四つの元素。
權門
官位が高く権勢のある家。
玉ゆら
しばらくの間。ほんのわずかな時間。玉が触れ合ってかすかに鳴る間の意からという。

文法

「おそるべかりけるは、たゞ地震なりけるとぞ覺え侍りし」
「べかり」は当然・適当の助動詞「べし」の連用形。「なりける」の「ける」は、それまで気づかなかったことに気づいた詠嘆。係助詞「ぞ」の結びで「侍りし」と連体形になる。
「見はべりしか」
前の係助詞「こそ」の結びで、過去の助動詞「き」が已然形「しか」になる。
「三月ばかりや侍りけむ」
係助詞「や」の結びで、過去推量の助動詞「けむ」が連体形になる。三か月ほど続いたでしょうか。
「しばしもこの身をやどし玉ゆらも心をなぐさむべき」
前の「いかなるわざをしてか」の係助詞「か」の結びで、「べし」が連体形「べき」になる。底本は文末に句点を置かない。

解説

元暦二年(1185)七月九日の大地震は、壇ノ浦の戦いで平家が滅びた約四か月後に起こった。京都を中心に大きな被害が出て、法勝寺の九重塔なども損壊した。当時の人々は、これを平家の怨霊のしわざと考えたともいわれる(『平家物語』巻十二「大地震」)。

「むかし齊衡のころ」の地震は、斉衡二年(855)に東大寺の大仏の頭部が落ちた地震を指す。作者は過去の大災害と比べて、今回の地震の大きさを強調している。

「すべて世のありにくきこと」以下は、五つの災厄を語り終えたあとの総括にあたる。災害という非常時だけでなく、ふだんの暮らしの中にも、人は身分や住む場所に縛られて心を悩ませ続けている。「世にしたがへば身くるし。またしたがはねば狂へるに似たり」という対句は、社会の中で生きることの窮屈さを鋭くとらえている。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(方丈記) 板倉屋書房、明治36年(1903)、546–548頁(コマ285–286)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日