古典ライブラリー

平家物語 巻第六

小督の事

葵の前を失って沈む高倉天皇のもとへ、中宮は琴の名手小督を差し向けた。小督はかつて冷泉少将隆房の恋人で、二人の婿を取られることを嫌った清盛を恐れて宮中から姿を消す。天皇の命を受けた源仲国は、八月十五夜の嵯峨野で小督の弾く「想夫恋」の琴の音をたよりに隠れ家を探し当て、小督を宮中に連れ戻した。しかし清盛はついに小督を捕らえて尼にし、天皇は病みついて崩御した。

  1. 1主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうははは戀れん戀れんれん慕ぼ慕ぼぼののの御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだにににおぼしめしおぼしめしおぼしめし沉しづ沉しづしずままませせせ給たま給たまたまひひいたるたるたるををを、、、申まう申まうもうししし慰なぐさ慰なぐさなぐさめめめ參まゐ參まゐまいらせらせらせんんんとてとてとて、、、中ちゆう中ちゆうちゅう宮ぐう宮ぐうぐうののの御おん御おんおん方かた方かたかたよりよりより小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのととと申まう申まうもうすすす女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうををを參まゐ參まゐまいらせらせらせらるらるらる。。。そもそもそもこのこのこの女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうととと申まう申まうもうすすすははは、、、櫻さくら櫻さくらさくら町まち町まちまちののの中ちゆう中ちゆうちゅう納な納なな言ごん言ごんごん重しげ重しげしげ教のり教のりのり卿きやう卿きやうきょうののの御おん御おんおん女むすめ女むすめむすめ、、、禁きん禁きんきん中ちゆう中ちゆうちゅう一いち一いちいちののの美び美びび人じん人じんじん、、、雙なら雙ならならびびびなきなきなき琴こと琴ことことののの上じやう上じやうじょう手ず手ずずにてにてにてぞぞぞまし〳〵まし〳〵ましましけるけるける。。。冷れい冷れいれい泉ぜい泉ぜいぜいののの大だい大だいだい納な納なな言ごん言ごんごん隆たか隆たかたか房ふさ房ふさふさ卿きやう卿きやうきょう、、、未いま未いまいまだだだ少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうなりなりなりししし時とき時ときとき、、、見み見みみそめそめそめたりたりたりししし女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうなりなりなり。。。始はじ始はじはじめめめははは歌うた歌うたうたををを詠よ詠よよみみみ、、、文ふみ文ふみふみをををばばば盡つく盡つくつくささされれれけれけれけれどもどもども、、、玉たま玉たまたま章づさ章づさずさののの數かず數かずかずのみのみのみ積つも積つもつもりりりててて、、、靡なび靡なびなびくくく氣け氣けけ色しき色しきしきもももなかりなかりなかりしししががが、、、さすがさすがさすが情なさけ情なさけなさけににに弱よわ弱よわよわるるる心こゝろ心こゝろこころにににややや、、、遂つひ遂つひついにににははは靡なび靡なびなびききき給たま給たまたまひひいけりけりけり。。。されどもされどもされども今いま今いまいまははは君きみ君きみきみへへへ召め召めめささされれれ參まゐ參まゐまいらせらせらせててて、、、せんせんせん方かた方かたかたもももなくなくなく悲かな悲かなかなしくしくしくててて、、、あかあかあかぬぬぬ別わか別わかわかれれれののの涙なみだ涙なみだなみだにににややや、、、袖そで袖そでそでしほたれしほたれしおたれてててほしほしほしあへあへあえずずず。。。少せう少せうしょう將しやう將しやうしょういかにいかにいかにもももしてしてして小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのををを今いま今いまいま一いち一いちいち度ど度どど見み見みみ奉たてまつ奉たてまつたてまつるるる事こと事ことこともももやややととと、、、そのそのその事こと事ことこととととなくなくなく常つね常つねつねははは參さん參さんさん内だい内だいだいせせせられられられけりけりけり。。。小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとののののおはしおはしおわしけるけるける局つぼね局つぼねつぼねののの邊へん邊へんへん、、、彼あな彼あなあな方た方たた此こな此こなこな方た方たたへへへたゝずみたゝずみたたずみありきありきありき給たま給たまたまひひいけれけれけれどもどもども、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとの、、、われわれわれ君きみ君きみきみへへへ召め召めめささされれれ參まゐ參まゐまいらせらせらせぬるぬるぬる上うへ上うへうえははは、、、少せう少せうしょう將しやう將しやうしょういかにいかにいかに申まう申まうもうすすすともともとも、、、言こと言ことこと葉ば葉ばばをををもももかはすかはすかわすべからべからべからずずずとてとてとて、、、つてつてつてののの情なさけ情なさけなさけをををだにだにだにもももかけかけかけられられられずずず。。。少せう少せうしょう將しやう將しやうしょうもしもしもしやややととと、、、一いつ一いついっ首しゆ首しゆしゅののの歌うた歌うたうたをををようでようでようで、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとののののましましましましましましけるけるける局つぼね局つぼねつぼねののの簾みす簾みすみすののの中うち中うちうちへへへぞぞぞ投な投ななげげげ入い入いいれれれけるけるける。。。
  2. 2思おも思おもおもひひいかねかねかね心こゝろ心こゝろこころはははそらそらそらにににみちのくみちのくみちのくのののちがちがちがのののしほがましほがましおがま近ちか近ちかちかきききかひかひかいなしなしなし
  3. 3小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとの、、、やがてやがてやがて返へん返へんへん事じ事じじもももせまほしうせまほしうせまほしゅうははは思おも思おもおもははわれれれけれけれけれどもどもども、、、君きみ君きみきみののの御おん御おんおんためためため御おん御おんおんうしろめたしうしろめたしうしろめたしとととややや思おも思おもおもははわれれれけんけんけん、、、手て手ててにににだにだにだに取と取ととつつっててて見み見みみ給たま給たまたまははわずずず、、、やがてやがてやがて上うへ上うへうえ童わらは童わらはわらわににに取と取ととらららせせせててて、、、坪つぼ坪つぼつぼののの内うち内うちうちへへへぞぞぞ投な投ななげげげ出いだ出いだいださささるるる。。。少せう少せうしょう將しやう將しやうしょう情なさけ情なさけなさけなうなうのう、、、うらめしけれうらめしけれうらめしけれどもどもども、、、さすがさすがさすが人ひと人ひとひともももこそこそこそ見み見みみれれれととと、、、そらそらそらおそろしくおそろしくおそろしくててて、、、急いそ急いそいそぎぎぎ取と取ととつつっててて懷ふところ懷ふところふところににに引ひき引ひきひき入い入いいれれれててて出い出いいでででられられられけるけるけるががが、、、なほなほなお立たち立たちたち返かへ返かへかえりりり、、、
  4. 4たまづさたまづさたまずさををを今いま今いまいまははは手て手ててにににだにだにだに取と取ととらららじじじとととやややさささこそこそこそ心こゝろ心こゝろこころににに思おも思おもおもひひいすつすつすつともともとも
  5. 5今いま今いまいまはははこのこのこの世よ世よよにてにてにて逢あ逢ああひひい見み見みみんんん事こと事ことこともももかたけれかたけれかたければばば、、、生い生いいきききてててゐゐいててて、、、とにかくにとにかくにとにかくに人ひと人ひとひとををを戀こひ戀こひこいしししととと思おも思おもおもははわんんんよりよりより、、、たゞたゞただ死し死ししなななんんんとととのみのみのみぞぞぞ願ねが願ねがねがははわれれれけるけるける。。。
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  7. 7主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょう御おん御おんおんなげきなげきなげきなのめなのめなのめならならならずずず。。。晝ひる晝ひるひるははは夜よる夜よるよるののの御お御おお殿とゞ殿とゞとどにににのみのみのみ入い入いいらららせせせ給たま給たまたまひひいててて、、、御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだににに沉しづ沉しづしずままませせせおはしますおはしますおわします。。。夜よる夜よるよるははは南なん南なんなん殿でん殿でんでんににに出しゆつ出しゆつしゅつ御ぎよ御ぎよぎょなつなつなっててて、、、月つき月つきつきののの光ひかり光ひかりひかりををを御ご御ごご覽らん覽らんらんじじじてててぞぞぞ慰なぐさ慰なぐさなぐさままませせせまし〳〵まし〳〵ましましけるけるける。。。入にふ入にふにゅう道だう道だうどう相しやう相しやうしょう國こく國こくこくこのこのこの由よし由よしよしををを承うけたまは承うけたまはうけたまわつつっててて、、、さてさてさてははは君きみ君きみきみははは小こ小ここ督がう督がうごう故ゆゑ故ゆゑゆえにににおぼしめしおぼしめしおぼしめし沉しづ沉しづしずままませせせ給たま給たまたまひひいたんたんたんなりなりなり。。。さらんさらんさらんににに取と取ととつつってててはははとてとてとて、、、御ご御ごご介かい介かいかい錯しやく錯しやくしゃくののの女によう女にようにょう房ばう房ばうぼう達たち達たちたちをををももも參まゐ參まゐまいらせらせらせられられられずずず、、、參さん參さんさん内だい内だいだいししし給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひと々びと々びとびとももも猜そね猜そねそねまままれれれけれけれければばば、、、入にふ入にふにゅう道だう道だうどうののの權けん權けんけん威ゐ威ゐいににに憚はゞか憚はゞかはばかつつっててて、、、參まゐ參まゐまいりりり通かよ通かよかよふふう臣しん臣しんしん下か下かかもももなしなしなし。。。男なん男なんなん女によ女によにょうちうちうちひそめひそめひそめててて、、、禁きん禁きんきん中ちゆう中ちゆうちゅういま〳〵しういま〳〵しういまいましゅうぞぞぞ見み見みみえええししし。。。
  8. 8頃ころ頃ころころははは八はち八はちはち月ぐわつ月ぐわつがつ十とを十とをとお日か日かかあまりあまりあまりののの事こと事ことことなれなれなればばば、、、さしもさしもさしも隈くま隈くまくまなきなきなき空そら空そらそらなれなれなれどもどもども、、、主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうははは御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだにににくもらくもらくもらせせせ給たま給たまたまひひいててて、、、月つき月つきつきののの光ひかり光ひかりひかりもももおぼろおぼろおぼろにににぞぞぞ御ご御ごご覽らん覽らんらんぜぜぜられられられけるけるける。。。やゝやゝやや深しん深しんしん更かう更かうこうににに及およ及およおよんんんででで、、、「「「人ひと人ひとひとやややあるあるある、、、人ひと人ひとひとやややあるあるある。。。」」」ととと召め召めめささされれれけれけれけれどもどもども、、、御おん御おんおんいらへいらへいらえ申まう申まうもうすすす者もの者ものものもももなしなしなし。。。やゝやゝややあつあつあっててて彈だん彈だんだん正じやう正じやうじょうののの大だい大だいだい弼ひつ弼ひつひつ仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、そのそのその夜よ夜よよしもしもしも御おん御おんおん宿との宿とのとの直ゐ直ゐいににに參まゐ參まゐまいりりりててて、、、遙はる遙はるはるかかかににに遠とほ遠とほとおううう候さぶら候さぶらさぶらひひいけるけるけるががが、、、「「「仲なか仲なかなか國くに國くにくに。。。」」」ととと御おん御おんおん答いら答いらいらへへえ申まう申まうもうすすす。。。「「「汝なんぢ汝なんぢなんじ近ちか近ちかちこううう參まゐ參まゐまいれれれ、、、仰おほ仰おほおおせせせ下くだ下くだくださささるるるべきべきべき旨むね旨むねむねありありあり。。。」」」ととと仰おほ仰おほおおせせせけれけれければばば、、、何なに何なになに事ごと事ごとごとやらんやらんやらんととと思おも思おもおもひひい、、、御ご御ごご前ぜん前ぜんぜん近ちか近ちかちこうううぞぞぞ參さん參さんさんじじじたるたるたる。。。「「「汝なんぢ汝なんぢなんじもしもしもし小こ小ここ督がう督がうごうがががゆくゆくゆくへへへややや知し知ししりりりたるたるたる。。。」」」ととと仰おほ仰おほおおせせせけれけれければばば、、、「「「いかでいかでいかでかかか知し知ししりりり參まゐ參まゐまいらせらせらせ候さふらふ候さふらふそうろうべきべきべき。。。」」」ととと申まう申まうもうすすす。。。「「「實まこと實まことまことややや小こ小ここ督がう督がうごうははは嵯さ嵯ささ峨が峨ががののの邊へん邊へんへん、、、片かた片かたかた折をり折をりおり戶ど戶どどとととかやかやかやしししたるたるたる内うち内うちうちにににありありありととと、、、申まう申まうもうすすす者もの者ものもののののあるあるあるぞぞぞとよとよとよ。。。主ある主あるある人じ人じじががが名な名ななをををばばば知し知ししらららずずずともともとも尋たづ尋たづたずねねねててて參まゐ參まゐまいらせらせらせてててんんんややや。。。」」」ととと仰おほ仰おほおおせせせけれけれければばば、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、「「「主ある主あるある人じ人じじががが名な名ななををを知し知ししりりり候さふら候さふらそうらははわでででははは、、、いかでいかでいかでかかか尋たづ尋たづたずねねね逢あ逢ああひひい參まゐ參まゐまいらせらせらせ候さふらふ候さふらふそうろうべきべきべき。。。」」」ととと申まう申まうもうしししけれけれければばば、、、主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうげにげにげにもももとてとてとて、、、御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだせきせきせきあへあへあえさせさせさせましまさましまさましまさずずず。。。
  9. 9仲なか仲なかなか國くに國くにくにつく〴〵つく〴〵つくづくものものものををを案あん案あんあんずるずるずるににに、、、まことまことまことややや小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのははは琴こと琴ことこと彈ひ彈ひひききき給たま給たまたまひひいしししぞぞぞかしかしかし。。。このこのこの月つき月つきつきののの明あか明あかあかさささににに、、、君きみ君きみきみののの御おん御おんおん事こと事ことこと思おも思おもおもひひい出い出いいでででまゐらせまゐらせまいらせててて、、、琴こと琴ことこと彈ひ彈ひひききき給たま給たまたまははわぬぬぬ事こと事ことことはははよもよもよもあらあらあらじじじ。。。内だい内だいだい裏り裏りりにてにてにて琴こと琴ことこと彈ひ彈ひひききき給たま給たまたまひひいししし時とき時ときとき、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくに笛ふえ笛ふえふえののの役やく役やくやくににに召め召めめささされれれまゐらせまゐらせまいらせしかしかしかばばば、、、そのそのその琴こと琴ことことののの音ね音ねねははは、、、何いづ何いづいず處く處くくにてにてにてももも聞き聞ききききき知し知ししらららんずるんずるんずるものものものををを。。。嵯さ嵯ささ峨が峨ががののの在ざい在ざいざい家け家けけいくいくいくほどほどほどかかかあらあらあらんんん、、、うちうちうちまはつまはつまわっててて尋たづ尋たづたずねねねんんんににに、、、などなどなどかかか聞き聞ききききき出いだ出いだいださささででであるあるあるべきべきべきととと思おも思おもおもひひい、、、「「「さささ候さふら候さふらそうらははわばばば、、、主ある主あるある人じ人じじががが名な名ななははは知し知ししらららずずずともともとも、、、尋たづ尋たづたずねねね參まゐ參まゐまいらせらせらせ候さふらふ候さふらふそうろうべしべしべし。。。たとひたとひたとい尋たづ尋たづたずねねねあひあひあい參まゐ參まゐまいらせらせらせててて候さふらふ候さふらふそうろうともともとも、、、御ご御ごご書しよ書しよしょなどなどなど候さふら候さふらそうらははわずずずばばば、、、うはうはうわののの空そら空そらそらとととややや思おぼし思おぼしおぼし召め召めめささされれれ候さふら候さふらそうらははわんずんずんずらんらんらん。。。御ご御ごご書しよ書しよしょををを賜たま賜たまたまはつはつわっててて參まゐ參まゐまいりりり候さふら候さふらそうらははわんんん。。。」」」ととと申まう申まうもうしししけれけれければばば、、、主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうげにげにげにもももとてとてとて、、、やがてやがてやがて御ご御ごご書しよ書しよしょあそばいあそばいあそばいてててぞぞぞ下くだ下くだくだささされれれけるけるける。。。
  10. 10「「「寮れう寮れうりょうののの御おん御おんおん馬むま馬むまうまににに乘の乘ののりりりててて行ゆ行ゆゆけけけ。。。」」」ととと仰おほ仰おほおおせせせけれけれければばば、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくに寮れう寮れうりょうののの御おん御おんおん馬むま馬むまうま賜たま賜たまたまはつはつわっててて、、、明めい明めいめい月げつ月げつげつににに鞭むち鞭むちむちをををあげあげあげ、、、西にし西にしにしをををさしさしさしてててぞぞぞ歩あゆ歩あゆあゆままませせせけるけるける。。。「「「男を男をお鹿じか鹿じかじか鳴な鳴ななくくくこのこのこの山やま山やまやま里ざと里ざとざと。。。」」」ととと詠えい詠えいえいじじじけんけんけん、、、嵯さ嵯ささ峨が峨ががのののあたりあたりあたりののの秋あき秋あきあきののの頃ころ頃ころころ、、、さささこそこそこそはははあはれあはれあわれにににももも覺おぼ覺おぼおぼえええけめけめけめ。。。片かた片かたかた折をり折をりおり戶ど戶どどしししたるたるたる屋や屋ややををを見み見みみつけつけつけてててははは、、、このこのこの内うち内うちうちにににもももやややおはすおはすおわすらんらんらんととと、、、控ひか控ひかひかへへえ控ひか控ひかひかへへえ聞き聞きききききけれけれけれどもどもども、、、琴こと琴ことこと彈ひ彈ひひくくく所ところ所ところところはははなかりなかりなかりけりけりけり。。。御み御みみ堂だう堂だうどうなどなどなどへへへももも參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまへへえるるる事こと事ことこともももやややととと、、、釋しや釋しやしゃ迦か迦かか堂だう堂だうどうををを始はじ始はじはじめめめててて、、、堂だう堂だうどう々だう々だうどう見み見みみ廻まは廻まはまわれれれどもどもども、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのににに似に似ににたるたるたる女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうだにだにだにもももなかりなかりなかりけりけりけり。。。空むな空むなむなしうしうしゅう歸かへ歸かへかえりりり參まゐ參まゐまいりりりたらたらたらんんんははは、、、參まゐ參まゐまいらららざらざらざらんんんよりよりよりなか〳〵なか〳〵なかなか惡あ惡ああしかるしかるしかるべしべしべし。。。これこれこれよりよりより何いづ何いづいず地ち地ちちへへへももも迷まよ迷まよまよひひい行ゆ行ゆゆかかかばやばやばやととと思おも思おもおもへへえどもどもども、、、いづくいづくいずくかかか王わう王わうおう地ぢ地ぢじならならならぬぬぬ、、、身み身みみををを隱かく隱かくかくすすすべきべきべき宿やど宿やどやどもももなしなしなし。。。いかゞいかゞいかがせせせんんんととと案あん案あんあんじじじ煩わづら煩わづらわずらふふう。。。まことまことまことややや法ほふ法ほふほう輪りん輪りんりんははは程ほど程ほどほど近ちか近ちかちかけれけれければばば、、、月つき月つきつきののの光ひかり光ひかりひかりににに誘さそ誘さそさそははわれれれててて、、、參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまへへえるるる事こと事ことこともももやややととと、、、そなたそなたそなたへへへ向む向むむいいいてててぞぞぞあくがれあくがれあくがれけるけるける。。。龜かめ龜かめかめ山やま山やまやまのののあたりあたりあたり近ちか近ちかちかくくく、、、松まつ松まつまつののの一ひと一ひとひと羣むら羣むらむらあるあるある方かた方かたかたににに、、、かすかかすかかすかににに琴こと琴ことことぞぞぞ聞きこ聞きこきこえええけるけるける。。。峯みね峯みねみねののの嵐あらし嵐あらしあらしかかか松まつ松まつまつ風かぜ風かぜかぜかかか、、、尋たづ尋たづたずぬるぬるぬる人ひと人ひとひとののの琴こと琴ことことののの音ね音ねねかかか、、、おぼつかなくおぼつかなくおぼつかなくははは思おも思おもおもへへえどもどもども、、、駒こま駒こまこまををを早はや早はやはやめめめててて行ゆ行ゆゆくくくほどほどほどににに、、、片かた片かたかた折をり折をりおり戶ど戶どどしししたるたるたる内うち内うちうちににに、、、琴こと琴ことことをををぞぞぞ彈ひ彈ひひきききすまさすまさすまされれれたるたるたる。。。控ひか控ひかひかへへえてててこれこれこれををを聞き聞きききききけれけれければばば、、、少すこ少すこすこしししもももまがふまがふまがうべうべうびょうもももなくなくなく、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのののの爪つま爪つまつま音おと音おとおとなりなりなり。。。樂がく樂がくがくははは何なに何なになにぞぞぞととと聞き聞きききききけれけれければばば、、、夫をつと夫をつとおつとををを想おも想おもおもうううててて戀こ戀ここふふうとととよむよむよむ、、、想さう想さうそう夫ふ夫ふふ戀れん戀れんれんととといふいふいう樂がく樂がくがくなりなりなりけりけりけり。。。仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、さればこそさればこそさればこそ君きみ君きみきみののの御おん御おんおん事こと事ことこと思おも思おもおもひひい出い出いいででで參まゐ參まゐまいらせらせらせててて、、、樂がく樂がくがくこそこそこそ多おほ多おほおおけれけれけれ、、、このこのこの樂がく樂がくがくををを彈ひ彈ひひききき給たま給たまたまふふう事こと事ことことのののやさしさやさしさやさしさよよよととと思おも思おもおもひひい、、、腰こし腰こしこしよりよりよりやうでうやうでうようじょう拔ぬ拔ぬぬききき出いだ出いだいだししし、、、ちつちつちっととと鳴な鳴なならいらいらいててて、、、門かど門かどかどをををほと〳〵ほと〳〵ほとほとととと叩たゝ叩たゝたたけけけばばば、、、琴こと琴ことことをををばばばやがてやがてやがて彈ひ彈ひひききき止や止ややみみみ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。「「「これこれこれははは内だい内だいだい裏り裏りりよりよりより仲なか仲なかなか國くに國くにくにががが御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいににに參まゐ參まゐまいりりりててて候さふらふ候さふらふそうろう。。。あけあけあけさせさせさせ給たま給たまたまへへえ。。。」」」とてとてとて、、、叩たゝ叩たゝたたけけけども〳〵ども〳〵どもたたけども、、、咎とが咎とがとがむるむるむる者もの者ものものもももなかりなかりなかりけりけりけり。。。
  11. 11やゝやゝややあつあつあっててて内うち内うちうちよりよりより人ひと人ひとひとののの出い出いいづるづるずる音おと音おとおとしししけりけりけり。。。嬉うれ嬉うれうれしうしうしゅう思おも思おもおもつつっててて待ま待ままつつつ所ところ所ところところににに、、、錠ぢやう錠ぢやうじょうをををはづしはづしはずし、、、門かど門かどかどををを細ほそ細ほそほそ目め目めめにににあけあけあけ、、、いたいけいたいけいたいけしししたるたるたる小こ小ここ女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうののの、、、顏かほ顏かほかおばかりばかりばかりさしさしさし出いだ出いだいだいいいててて、、、「「「これこれこれははは、、、さやうさやうさようににに内だい内だいだい裏り裏りりよりよりより御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいなどなどなど賜たま賜たまたまはるはるわるべきべきべき所ところ所ところところでででももも候さふら候さふらそうらははわずずず。。。もしもしもし門かど門かどかど違たが違たがたがへへえでででぞぞぞ候さふらふ候さふらふそうろうらんらんらん。。。」」」ととといひいひいいけれけれければばば、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、返へん返へんへん事じ事じじせせせばばば門かど門かどかどたてたてたてられられられ、、、錠ぢやう錠ぢやうじょうささささささられられられなななんずんずんずとととややや思おも思おもおもひひいけんけんけん、、、是ぜ是ぜぜ非ひ非ひひなくなくなくおしおしおしあけあけあけてててぞぞぞ入い入いいりりりにににけるけるける。。。妻つま妻つまつま戶ど戶どどののの際きは際きはきわなるなるなる緣えん緣えんえんにににゐゐいててて、、、「「「何なに何なになにとてとてとてかやうかやうかようののの所ところ所ところところににに御おん御おんおんわたりわたりわたり候さふらふ候さふらふそうろうやらんやらんやらん。。。君きみ君きみきみははは御ご御ごご故ゆゑ故ゆゑゆえにににおぼしめしおぼしめしおぼしめし沉しづ沉しづしずままませせせ給たま給たまたまひひいててて、、、御おん御おんおん命いのち命いのちいのちももも既すで既すですでににに危あやふ危あやふあやうくくくこそこそこそ見み見みみえええさせさせさせまし〳〵まし〳〵ましまし候さふら候さふらそうらへへえ。。。かやうかやうかようににに申まう申まうもうさささばばば、、、うはうはうわののの空そら空そらそらとととややや思おぼし思おぼしおぼし召め召めめささされれれ候さふらふ候さふらふそうろうらんらんらん。。。御ご御ごご書しよ書しよしょををを賜たま賜たまたまはつはつわっててて參まゐ參まゐまいりりりててて候さふらふ候さふらふそうろう。。。」」」とてとてとて取と取ととりりり出いだ出いだいだいいいててて奉たてまつ奉たてまつたてまつるるる。。。ありありありつるつるつる女によう女にようにょう房ばう房ばうぼう取と取ととりりりついついついででで、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのにににぞぞぞ參まゐ參まゐまいらせらせらせけるけるける。。。これこれこれをををあけあけあけててて見み見みみ給たま給たまたまふふうににに、、、まことまことまことににに君きみ君きみきみののの御ご御ごご書しよ書しよしょにてにてにてぞぞぞありありありけるけるける。。。やがてやがてやがて御おん御おんおん返へん返へんへん事じ事じじ書か書かかいいいててて引ひき引ひきひき結むす結むすむすびびび、、、女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうののの裝しやう裝しやうしょう束ぞく束ぞくぞく一ひと一ひとひと襲かさね襲かさねかさね添そ添そそへへえてててぞぞぞ出いだ出いだいだささされれれたるたるたる。。。仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、「「「御おん御おんおん返へん返へんへん事じ事じじののの上うへ上うへうえははは、、、とかうとかうとこう申まう申まうもうすすすににに及およ及およおよびびび候さふら候さふらそうらははわねねねどもどもども、、、別べち別べちべちののの御おん御おんおん使つかひ使つかひつかいにてにてにてももも候さふら候さふらそうらははわばばばこそこそこそ、、、ぢきぢきじきののの御おん御おんおん返へん返へんへん事じ事じじ承うけたまは承うけたまはうけたまわらららでででははは、、、いかでいかでいかでかかか歸かへ歸かへかえりりりまゐりまゐりまいり候さふらふ候さふらふそうろうべきべきべき。。。」」」ととと申まう申まうもうしししけれけれければばば、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのげにげにげにもももとととややや思おも思おもおもははわれれれけんけんけん、、、みづからみづからみずから返へん返へんへん事じ事じじしししたまひたまひたまいけりけりけり。。。
  12. 12「「「そこそこそこにににももも聞き聞ききききき給たま給たまたまひひいつらんつらんつらんやうやうようににに、、、入にふ入にふにゅう道だう道だうどうあまりあまりあまりににに恐おそ恐おそおそろしきろしきろしき事こと事ことことをををのみのみのみ申まう申まうもうすすすととと聞き聞きききききしししががが淺あさ淺あさあさましさましさましさににに、、、あるあるある夜よ夜よよひそかひそかひそかににに忍しの忍しのしのびびびつゝつゝつつ、、、内だい内だいだい裏り裏りりをををばばばまぎれまぎれまぎれ出い出いいでででててて、、、今いま今いまいまははは斯か斯かかかるかるかる所ところ所ところところののの住すま住すますま居ひ居ひひなれなれなればばば、、、琴こと琴ことこと彈ひ彈ひひくくく事こと事ことこともももなかりなかりなかりしししががが、、、明あ明ああ日す日すすよりよりより大おほ大おほおお原はら原はらはらののの奧おく奧おくおくへへへ思おも思おもおもひひい立た立たたつつつ事こと事ことことののの候さふら候さふらそうらへへえばばば、、、主ある主あるある人じ人じじののの女によう女にようにょう房ばう房ばうぼう、、、今こ今ここ宵よひ宵よひよいばかりばかりばかりののの名な名なな殘ごり殘ごりごりををを惜を惜をおしみしみしみ、、、今いま今いまいまははは夜よ夜よよももも更ふ更ふふけけけぬぬぬ、、、立た立たたちちち聞き聞ききくくく人ひと人ひとひともももあらあらあらじじじなどなどなど勸すゝ勸すゝすすむるむるむる間あひだ間あひだあいだ、、、さぞさぞさぞななな昔むかし昔むかしむかしのののなごりなごりなごりももも、、、さすがさすがさすがゆかしくゆかしくゆかしくててて、、、手て手てて馴な馴ななれれれししし琴こと琴ことことををを彈ひ彈ひひくくく程ほど程ほどほどににに、、、やすうやすうやすうももも聞き聞ききききき出いだ出いだいだささされれれけりけりけりななな。。。」」」とてとてとて、、、御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだせきせきせきあへあへあえ給たま給たまたまははわねねねばばば、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくにもももそゞろそゞろそぞろににに袖そで袖そでそでをををぞぞぞしぼりしぼりしぼりけるけるける。。。
  13. 13やゝやゝややあつあつあっててて仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、涙なみだ涙なみだなみだをををおさへおさへおさえててて申まう申まうもうしししけるけるけるははは、、、「「「明あ明ああ日す日すすよりよりより大おほ大おほおお原はら原はらはらののの奧おく奧おくおくへへへ思おぼし思おぼしおぼし召め召めめししし立た立たたつつつ事こと事ことことととと候さふらふ候さふらふそうろうははは、、、定さだ定さださだめめめててて御おん御おんおん樣さま樣さまさまなどなどなどもももやややかへかへかへさせさせさせ給たま給たまたまひひい候さふら候さふらそうらははわんずんずんずらんらんらん。。。然しか然しかしかるるるべうべうびょうももも候さふら候さふらそうらははわずずず。。。さてさてさて君きみ君きみきみをををばばば何なに何なになにとととかかかししし參まゐ參まゐまいらせらせらせ給たま給たまたまふふうべきべきべき。。。ゆめ〳〵ゆめ〳〵ゆめゆめかなひかなひかない候さふらふ候さふらふそうろうまじまじまじ。。。相あひ相あひあい構かま構かまかまへへえてててこのこのこの女によう女にようにょう房ばう房ばうぼう出いだ出いだいだししし參まゐ參まゐまいらすらすらすななな。。。」」」とてとてとて、、、供とも供ともともににに召め召めめししし具ぐ具ぐぐしししたるたるたる馬め馬めめ部ぶ部ぶぶ黃き黃きき仕じ仕じじ丁ちやう丁ちやうちょうなどなどなど止とゞ止とゞとどめめめ置お置おおききき、、、そのそのその屋や屋ややををを守しゆ守しゆしゅ護ご護ごごせせせさせさせさせ、、、わがわがわが身み身みみははは寮れう寮れうりょうののの御おん御おんおん馬むま馬むまうまにににうちうちうち乘の乘ののつつっててて、、、内だい内だいだい裏り裏りりへへへ歸かへ歸かへかえりりり參まゐ參まゐまいつつったれたれたればばば、、、夜よ夜よよはははほの〴〵ほの〴〵ほのぼのとととぞぞぞあけあけあけにににけるけるける。。。
  14. 14仲なか仲なかなか國くに國くにくにやがてやがてやがて寮れう寮れうりょうののの御おん御おんおん馬むま馬むまうま繋つな繋つなつながががせせせ、、、女によう女にようにょう房ばう房ばうぼうののの裝しやう裝しやうしょう束ぞく束ぞくぞくをををばばばはねはねはね馬むま馬むまうまののの障しやう障しやうしょう子じ子じじにににうちうちうちかけかけかけててて、、、今いま今いまいまははは定さだ定さださだめめめててて御ぎよ御ぎよぎょ寢しん寢しんしんもももなりなりなりつらんつらんつらん、、、誰たれ誰たれたれしてしてしてかかか申まう申まうもうすすすべきべきべきととと思おも思おもおもひひい、、、南なん南なんなん殿でん殿でんでんをををさしさしさしててて參まゐ參まゐまいるるる程ほど程ほどほどににに、、、主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうははは未いま未いまいまだだだ昨ゆふ昨ゆふゆう夜べ夜べべののの御ご御ごご座ざ座ざざにににぞぞぞまし〳〵まし〳〵ましましけるけるける。。。「「「南みなみ南みなみみなみににに翔かけ翔かけかけりりり北きた北きたきたににに嚮むか嚮むかむかふふう、、、寒かん寒かんかん溫うん溫うんうんををを秋あき秋あきあきののの鴈かり鴈かりかりににに附つ附つつけけけ難がた難がたがたししし、、、東ひがし東ひがしひがしににに出い出いいででで西にし西にしにしににに流なが流ながながるるる、、、たゞたゞただ瞻せん瞻せんせん望ばう望ばうぼうををを曉あかつき曉あかつきあかつきののの月つき月つきつきににに寄よ寄よよすすす。。。」」」ととと御おん御おんおん心こゝろ心こゝろこころ細ぼそ細ぼそぼそげげげにににうちうちうちながめながめながめさせさせさせ給たま給たまたまふふう所ところ所ところところににに、、、仲なか仲なかなか國くに國くにくにつとつとつと參まゐ參まゐまいりりりつゝつゝつつ、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのののの御おん御おんおん返へん返へんへん事じ事じじをををこそこそこそ參まゐ參まゐまいらせらせらせけれけれけれ。。。主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょう、、、なのめなのめなのめならならならずずず御ぎよ御ぎよぎょ感かん感かんかんあつあつあっててて、、、「「「さらばさらばさらば汝なんぢ汝なんぢなんじ、、、やがてやがてやがて夕ゆふ夕ゆふゆうさりさりさり具ぐ具ぐぐしししててて參まゐ參まゐまいれれれ。。。」」」とととぞぞぞ仰おほ仰おほおおせせせけるけるける。。。
  15. 15仲なか仲なかなか國くに國くにくに、、、入にふ入にふにゅう道だう道だうどう相しやう相しやうしょう國こく國こくこくのののかへりかへりかえり聞き聞ききききき給たま給たまたまははわんんん所ところ所ところところははは恐おそ恐おそおそろしけれろしけれろしけれどもどもども、、、是これ是これこれ又また又またまた敕ちよく敕ちよくちょく定ぢやう定ぢやうじょうなれなれなればばば、、、人ひと人ひとひとににに車くるま車くるまくるま借か借かかつつっててて嵯さ嵯ささ峨が峨ががへへへ行ゆ行ゆゆききき向むか向むかむかふふう。。。小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとの參まゐ參まゐまいるるるまじきまじきまじき由よし由よしよしのたまへのたまへのたまえどもどもども、、、やう〳〵やう〳〵ようようにににこしらへこしらへこしらえ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりててて、、、車くるま車くるまくるまににに乘の乘ののせせせ奉たてまつ奉たてまつたてまつりりりててて、、、内だい内だいだい裏り裏りりへへへ參まゐ參まゐまいりりりたりたりたりけれけれければばば、、、かすかかすかかすかなるなるなる所ところ所ところところににに忍しの忍しのしのばばばせせせててて、、、夜よ夜よよな〳〵な〳〵なよな召め召めめささされれれ參まゐ參まゐまいらせらせらせけるけるける程ほど程ほどほどににに、、、姫ひめ姫ひめひめ宮みや宮みやみや御ご御ごご一いつ一いついっ所しよ所しよしょ出い出いいででで來き來ききさせさせさせ給たま給たまたまひひいけりけりけり。。。坊ばう坊ばうぼう門もん門もんもんののの女によう女にようにょう院ゐん院ゐんいんとととはははこのこのこの宮みや宮みやみやののの御おん御おんおん事こと事ことことなりなりなり。。。入にふ入にふにゅう道だう道だうどう相しやう相しやうしょう國こく國こくこく、、、「「「小こ小ここ督がう督がうごうががが失う失ううせせせたりたりたりととといふいふいうははは、、、跡あと跡あとあと形かた形かたかたもももなきなきなきそらそらそらごとごとごとなりなりなり。。。いかにいかにいかにもももしてしてして失うしな失うしなうしなははわんんん。。。」」」とととのたまひのたまひのたまいけるけるけるががが、、、何なに何なになにとととしてしてしてかかかはははたばかりたばかりたばかり出いだ出いだいだささされれれたりたりたりけんけんけん、、、小こ小ここ督がう督がうごうののの殿との殿とのとのををを捕とら捕とらとらへへえつゝつゝつつ、、、尼あま尼あまあまににになしなしなしてててぞぞぞおつぱなたるおつぱなたるおっぱなたる。。。年とし年としとし二に二にに十じふ十じふじゅう三さん三さんさん。。。出しゆつ出しゆつしゅっ家け家けけはははもともともとよりよりより望のぞ望のぞのぞみみみなりなりなりけれけれけれどもどもども、、、心こゝろ心こゝろこころならならならずずず尼あま尼あまあまににになさなさなされれれ、、、濃こ濃ここききき墨すみ墨すみすみ染ぞめ染ぞめぞめにににやつれやつれやつれはてはてはて、、、嵯さ嵯ささ峨が峨がが野の野ののののの奧おく奧おくおくにににぞぞぞ住す住すすまままれれれけるけるける。。。むげむげむげにににうたてきうたてきうたてき事こと事ことことどもどもどもなりなりなり。。。主しゆ主しゆしゅ上しやう上しやうしょうはははかやうかやうかようののの事こと事ことことどもどもどもににに御ご御ごご惱なう惱なうのうつかつかつかせせせ給たま給たまたまひひいててて、、、遂つひ遂つひついにににかくれかくれかくれさせさせさせ給たま給たまたまひひいけるけるけるとととかやかやかや。。。法ほふ法ほふほう皇わう皇わうおううちうちうちつゞきつゞきつづき、、、御おん御おんおんなげきなげきなげきのみのみのみぞぞぞしげかりしげかりしげかりけるけるける。。。
  16. 16去い去いいんんんぬるぬるぬる永えい永えいえい萬まん萬まんまんにににははは、、、第だい第だいだい一いち一いちいちののの御み御みみ子こ子ここ二に二にに條でう條でうじょうののの院ゐん院ゐんいん崩ほう崩ほうほう御ぎよ御ぎよぎょなりなりなりぬぬぬ。。。安あん安あんあん元げん元げんげん二に二にに年ねん年ねんねんののの七しち七しちしち月ぐわつ月ぐわつがつにににははは、、、御おん御おんおん孫まご孫まごまご六ろく六ろくろく條でう條でうじょうののの院ゐん院ゐんいんかくれかくれかくれさせさせさせ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。天てん天てんてんににに住す住すすまままばばば比ひ比ひひ翼よく翼よくよくののの鳥とり鳥とりとり、、、地ち地ちちにににあらあらあらばばば連れん連れんれん理り理りりののの枝えだ枝えだえだとととならならならんんんととと、、、天あま天あまあまののの河がは河がはがはののの星ほし星ほしほしををを指さ指ささしししててて、、、さしもさしもさしも御おん御おんおんちぎりちぎりちぎり淺あさ淺あさあさからからからざりざりざりししし建けん建けんけん春しゆん春しゆんしゅん門もん門もんもん院ゐん院ゐんいん、、、秋あき秋あきあきののの霧きり霧きりきりににに犯をか犯をかおかささされれれててて、、、朝あした朝あしたあしたののの露つゆ露つゆつゆととと消き消ききえええさせさせさせ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。年とし年としとし月つき月つきつきははは隔へだ隔へだへだたれたれたれどもどもども、、、昨日きのふ昨日きのふきのう今日けふ今日けふきょうののの御おん御おんおん別わか別わかわかれれれのののやうやうようににに思おぼし思おぼしおぼし召め召めめしししててて、、、御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだももも未いま未いまいまだだだ盡つ盡つつきききせせせざるざるざるににに、、、治ぢ治ぢじ承しよう承しようしょう四し四しし年ねん年ねんねんののの五ご五ごご月ぐわつ月ぐわつがつにににははは第だい第だいだい二に二ににののの皇わう皇わうおう子じ子じじ高たか高たかたか倉くら倉くらくら宮のみや宮のみやのみや討う討ううたたたれれれさせさせさせ給たま給たまたまひひいぬぬぬ。。。現げん現げんげん世ぜ世ぜぜ、、、後ご後ごご生しやう生しやうしょう、、、賴たの賴たのたのみみみ思おぼし思おぼしおぼし召め召めめささされれれつるつるつる新しん新しんしん院ゐん院ゐんいんさへさへさへ先さき先さきさき立だ立だだたたたせせせ給たま給たまたまひひいぬれぬれぬればばば、、、とにかくにとにかくにとにかくにかこつかこつかこつ方かた方かたかたなきなきなき御おん御おんおん涙なみだ涙なみだなみだのみのみのみぞぞぞしげかりしげかりしげかりけるけるける。。。
  17. 17「「「悲かな悲かなかなしみしみしみののの至いた至いたいたつつっててて悲かな悲かなかなしきしきしきははは、、、老お老おおいいいててて後のち後のちのち、、、子こ子ここににに後おく後おくおくれれれたるたるたるよりよりよりももも悲かな悲かなかなしきしきしきはははなしなしなし。。。恨うら恨うらうらみみみののの至いた至いたいたつつっててて恨うら恨うらうらめしきめしきめしきははは、、、若わか若わかわこうううしてしてして親おや親おやおやにににさきさきさき立だ立だだつつつよりよりよりももも恨うら恨うらうらめしきめしきめしきはははなしなしなし。。。」」」ととと、、、かのかのかの朝あさ朝あさあさ綱つな綱つなつなののの相しやう相しやうしょう公こう公こうこうののの、、、子し子しし息そく息そくそく澄すみ澄すみすみ明あきら明あきらあきらにににおくれおくれおくれててて、、、書か書かかきききたりたりたりけるけるける筆ふで筆ふでふでのののあとあとあと、、、今いま今いまいまこそこそこそ思おぼし思おぼしおぼし召め召めめししし知し知ししららられれれけれけれけれ。。。かのかのかの一いち一いちいち乘じよう乘じようじょう妙めう妙めうみょう典てん典てんてんののの御ご御ごご讀どく讀どくどく誦じゆ誦じゆじゅももも怠おこた怠おこたおこたらららせせせ給たま給たまたまははわずずず、、、三さん三さんさん密みつ密みつみつ行ぎやう行ぎやうぎょう法ぼふ法ぼふぼうののの御ご御ごご薰くん薰くんくん修じゆ修じゆじゅももも功こう功こうこうつもらつもらつもらせせせおはしますおはしますおわします。。。天てん天てんてん下か下かか諒りやう諒りやうりょう闇あん闇あんあんににになりなりなりしかしかしかばばば、、、大おほ大おほおお宮みや宮みやみや人びと人びとびともももおしなべておしなべておしなべて花はな花はなはなののの袂たもと袂たもとたもとややややつれやつれやつれけんけんけん。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

天皇が恋しさの涙に沈んでおられたのを、お慰め申し上げようとして、中宮の御方から小督の殿という女房を差し上げられた。そもそもこの女房は、桜町中納言重教卿(成範)の娘で、宮中一の美人であり、並ぶ者のない琴の名手であった。冷泉大納言隆房卿がまだ少将であったころ、見そめた女房である。はじめは歌を詠み、手紙を書き尽くされたが、恋文の数ばかりが積もって、なびく様子もなかった。しかしさすがに情けにほだされる心からか、ついにはなびかれた。けれども今は天皇に召されてしまったので、隆房はどうしようもなく悲しくて、名残惜しい別れの涙で、袖は濡れて乾くひまもない。少将はなんとかして小督の殿をもう一度見たいものだと、用事もないのにいつも参内された。小督の殿のおられる局のあたりを、あちらこちらとたたずみ歩かれたが、小督の殿は、わたしは天皇に召された身だから、少将がどのように言っても言葉を交わしてはならないと、人づての返事さえされない。少将はもしやと、一首の歌を詠んで、小督の殿のおられる局の簾の中へ投げ入れた。

思いに堪えかねて、心は上の空になっている。陸奥の千賀の塩竈のように、あなたの近くにいてもかいのないことだ。

小督の殿は、すぐに返事もしたいとは思われたが、天皇に対して後ろめたいと思われたのだろうか、手に取って見ることもなさらず、すぐに上童に渡して、中庭へ投げ出させた。少将はつれなく恨めしく思ったが、人に見られては困ると空恐ろしくなって、急いで拾って懐に入れて出て行かれたが、なお立ち返って、

手紙を、今はもう手にさえ取るまいというのか。たとえ心の中でわたしを思い捨てたとしても。

今はこの世で逢うこともむずかしいので、生きながらえて、あれこれと恋しく思い続けるよりは、ただ死にたいとばかり願われた。

入道相国はこのことを伝え聞かれて、「中宮というのもわが娘、冷泉少将もまた婿である。小督の殿に二人の婿を取られては、世の中はうまくいくまい。なんとかして小督の殿を召し出して殺してしまおう」とおっしゃった。小督の殿はこれを聞かれて、わが身はどうなってもかまわないが、天皇にとってお気の毒だと思われたので、ある夜内裏を抜け出して、行方も知れず姿を消された。

天皇のお嘆きはひととおりではない。昼は夜の御殿にばかりこもられて、涙に沈んでおられる。夜は南殿にお出ましになって、月の光をご覧になってお慰めになっていた。入道相国はこれを聞いて、「さては君は小督のために沈んでおられるのだな。それならば」といって、お世話をする女房たちも差し上げず、参内する人々もねたまれたので、入道の権威をはばかって、通って来る臣下もいない。男も女も声をひそめて、宮中は不吉なさまに見えた。

ころは八月十日過ぎのことなので、あれほど曇りのない空であるのに、天皇は涙にくもられて、月の光もおぼろにご覧になった。夜がやや更けて、「誰かいないか、誰かいないか」とお呼びになったが、お答えする者もいない。しばらくして、弾正大弼仲国が、ちょうどその夜宿直に参って、遠く離れて控えていたが、「仲国」とお答え申した。「近う参れ。申しつけることがある」とおっしゃったので、何事だろうと思って御前近くに参った。「そなた、もしや小督の行方を知っているか」とおっしゃったので、「どうして存じておりましょう」と申し上げる。「そういえば、小督は嵯峨のあたりの、片折戸とかいう門をした家にいると申す者があるぞ。主人の名は知らなくても、探して連れて来てくれまいか」とおっしゃったので、仲国が「主人の名も知らずに、どうして探し会えましょう」と申したので、天皇はもっともだといって、涙をこらえることがおできにならない。

仲国がつくづく考えるに、そうだ、小督の殿は琴を弾かれたのだった。この月の明るさに、天皇のことを思い出されて、琴を弾かれないことはよもやあるまい。内裏で琴を弾かれたとき、自分は笛の役に召されたのだから、その琴の音はどこであっても聞き分けられるはずだ。嵯峨の民家はいくらもあるまい。回って探せば、どうして聞き出せないことがあろうと思い、「それならば、主人の名は知らなくても、お探し申しましょう。たとえ探し会えましても、お手紙などがなければ、いいかげんなことと思われるでしょう。お手紙をいただいて参りましょう」と申したので、天皇はもっともだといって、すぐにお手紙を書いて下された。

「寮の御馬に乗って行け」とおっしゃったので、仲国は馬寮の御馬をいただいて、明月に鞭をあげ、西をさして進ませた。「牡鹿の鳴くこの山里」と詠まれた嵯峨のあたりの秋のころは、さぞあわれに思われたことであろう。片折戸の家を見つけるたびに、この中におられるのではないかと、馬を止め止め耳を澄ませたが、琴を弾いている所はなかった。御堂などへお参りになっていることもあろうかと、釈迦堂をはじめとして堂々を見て回ったが、小督の殿に似た女房さえいない。むなしく帰って参るのは、参らないよりかえって悪いだろう。ここからどこへなりともさまよって行きたいと思うが、どこが王の土地でない所があろう、身を隠せる宿もない。どうしようと思い悩む。そうだ、法輪寺は近いから、月の光に誘われてお参りになっていることもあろうかと、そちらへ向かってさまよって行った。亀山のあたり近く、松の一むらある方に、かすかに琴の音が聞こえた。峰の嵐か、松風か、探している人の琴の音か、はっきりとはわからないが、馬を急がせて行くと、片折戸の家の中で、琴を澄んだ音で弾いておられる。馬を止めてこれを聞くと、少しもまちがいなく小督の殿の爪音である。曲は何かと聞くと、夫を想って恋うと読む「想夫恋」という曲であった。仲国は、やはり天皇のことを思い出されて、曲は多いのに、この曲を弾かれるとは心にくいことよと思い、腰から横笛を抜き出して少し吹き鳴らし、門をとんとんと叩くと、琴はすぐに弾きやめられた。「これは内裏から仲国が御使いに参ったのです。開けてください」といって、叩いても叩いても、とがめる者もいない。

しばらくして中から人の出て来る音がした。うれしく思って待っていると、錠をはずし、門を細めに開けて、かわいらしい小女房が顔だけ出して、「ここはそのように内裏から御使いなどいただくような所ではございません。門違いでございましょう」と言ったので、仲国は、返事をすれば門を閉められ錠を下ろされてしまうだろうと思ったのか、かまわず押し開けて入ってしまった。妻戸のきわの縁に座って、「どうしてこのような所にお住まいなのですか。天皇はあなたのために沈んでおられて、お命もすでに危うく見えます。このように申しても、いいかげんなことと思われるでしょう。お手紙をいただいて参りました」といって取り出して差し上げる。さきほどの女房が取り次いで小督の殿に差し上げた。これを開けてご覧になると、まことに天皇のお手紙であった。すぐにお返事を書いて結び、女房の装束一揃いを添えて出された。仲国は「お返事をいただいた上は、とやかく申すには及びませんが、ほかの使いならともかく、じかのお返事をうかがわないでは、どうして帰れましょう」と申したので、小督の殿ももっともだと思われたのか、自ら返事をなさった。

「あなたもお聞きのように、入道があまりに恐ろしいことばかり言うと聞いたのが情けなくて、ある夜こっそりと内裏を抜け出して、今はこのような所の住まいなので、琴を弾くこともありませんでしたが、明日から大原の奥へ入ろうと思い立っておりますので、この家の主人の女房が、今宵かぎりの名残を惜しんで、もう夜も更けた、立ち聞きする人もいないだろうなどと勧めますので、そうね、昔の名残もさすがに懐かしくて、弾きなれた琴を弾いておりましたところ、たやすく聞きつけられてしまいましたね」といって、涙をこらえきれずにおられるので、仲国もそぞろに袖をしぼった。

しばらくして仲国は涙を抑えて申すには、「明日から大原の奥へと思い立たれるのは、きっとお姿なども変えられる(出家なさる)おつもりでしょう。とんでもないことです。それでは天皇をどうなさるおつもりですか。決してなりません。よくよくこの女房を外へお出し申すな」といって、供に連れて来た馬部や吉上などを残して、その家を守らせ、自分は寮の御馬に乗って内裏へ帰って参ると、夜はほのぼのと明けていた。

仲国はすぐに寮の御馬をつながせ、女房の装束をはね馬の障子に掛けて、今はきっとお休みになっておられるだろう、誰に取り次いでもらおうかと思いながら、南殿をさして参ると、天皇はまだ昨夜の御座におられた。「南に翔り北に向かう、寒温を秋の雁に託すことはできない。東に出で西に流れる、ただ思いを暁の月に寄せる」と心細げに口ずさんでおられたところに、仲国がつと参って、小督の殿のお返事を差し上げた。天皇はひととおりでなくお喜びになって、「それならそなた、すぐに今夜連れて参れ」とおっしゃった。

仲国は、入道相国が聞きつけられたらと思うと恐ろしかったが、これもまた勅命なので、人に車を借りて嵯峨へ向かった。小督の殿は参るまいとおっしゃったが、いろいろとなだめすかして車にお乗せし、内裏へ参ったところ、目立たない所に忍ばせて、夜な夜なお召しになっているうちに、姫宮がお一人お生まれになった。坊門の女院とはこの宮のことである。入道相国は「小督が姿を消したというのは、跡形もないうそだ。なんとしても殺してしまおう」とおっしゃったが、どのようにしてか、だまして連れ出されたのであろう、小督の殿を捕らえて尼にして追い放った。年は二十三。出家はもとより望んでいたことであったが、心ならずも尼にされ、濃い墨染めの衣にやつれ果てて、嵯峨野の奥に住まわれた。まったくひどいことである。天皇はこのようなことでご病気になられて、ついに崩御されたとかいうことである。法皇は続けざまの不幸に、お嘆きばかりが深かった。

去る永万には第一の御子二条院が崩御された。安元二年の七月には御孫の六条院がお隠れになった。天にあっては比翼の鳥、地にあっては連理の枝となろうと、天の川の星をさしてお約束になった、あれほど契りの深かった建春門院も、秋の霧に冒されて、朝の露のように消えてしまわれた。年月は隔たったが、昨日今日のお別れのように思われて、涙もまだ尽きないうちに、治承四年の五月には第二の皇子高倉宮が討たれなさった。現世も後生も頼みに思っておられた新院(高倉院)までが先立たれたので、どうにも嘆きを訴えようもない涙ばかりが多かった。

「悲しみの極みで悲しいのは、老いた後に子に先立たれるより悲しいことはない。恨みの極みで恨めしいのは、若くして親に先立つより恨めしいことはない」と、あの朝綱の宰相が子息澄明に先立たれて書いた筆の跡を、今こそ思い知られたのである。法華経の御読誦も怠られず、真言の三密の行法も功徳を積まれた。天下は諒闇(天皇の服喪)となったので、宮中の人々もみな、華やかな袖をやつれた喪服に変えたことであろう。

意訳

『平家物語』屈指の名場面として知られる章段である。清盛の怒りを恐れて姿を消した小督を、源仲国が八月十五夜の嵯峨野で、琴の「想夫恋」の音をたよりに探し当てる。月夜の嵯峨野を馬で行く仲国の姿と、琴の音との取り合わせは、能「小督」にも受け継がれた。

連れ戻された小督は天皇の娘を生むが、清盛に捕らえられて尼にされる。高倉天皇はこうした悲しみの中で世を去り、物語は相次いで子や孫、后を失った後白河法皇の嘆きを語って結んでいる。

語釈・文法注

文法

「ようで」
詠んで。「よみて」の音便。
「みちのくのちがのしほがま」
陸奥国の歌枕「千賀の塩竈」。「ちか(近)」を導く。
「御故に」
あなたのせいで。
「やうでう」
横笛。
「男鹿鳴くこの山里」
嵯峨の山里の秋を詠んだ古歌の一節を引く。
「南に翔り北に嚮ふ」
『和漢朗詠集』に収める大江朝綱の詩句。離れた人を思う心を詠む。
「おつぱなたる」
追い放った。「おひはなつ」の促音便。

和歌

思ひかね心はそらにみちのくのちがのしほがま近きかひなし

詠者
藤原隆房
状況
天皇に召された小督に、隆房が局の簾の中へ投げ入れた歌。

修辞

掛詞・序詞
「みちのくのちがのしほがま」は「ちか(近)」を導く。「そら」に「空」と「上の空」を掛ける。

たまづさを今は手にだに取らじとやさこそ心に思ひすつとも

詠者
藤原隆房
状況
小督が歌を手に取らずに投げ出させたのを恨んで詠んだ歌。

修辞

倒置
下の句の「たとえ心に思い捨てるとしても」を後に置き、せめて手紙だけでも取ってほしいと訴える。

解説

小督は藤原成範(底本は「重教」と刷る)の娘で、高倉天皇との間に範子内親王(坊門院)をもうけた。のちに嵯峨に隠棲したことは史実と考えられている。仲国が小督を探し当てる場面は能「小督」の題材となり、嵯峨野には小督の塚と伝えるものが残る。

後白河法皇は、二条天皇(永万元年〈1165〉)、六条天皇(安元二年〈1176〉)、建春門院(同年)、以仁王(治承四年〈1180〉)、高倉上皇(治承五年〈1181〉)と、近親を相次いで失った。

関連

出典

底本
『校註日本文学大系』第14巻(平家物語) 国民図書、大正14年(1925)、517–524頁(コマ287–291)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日