源氏物語 第50帖 東屋(31)
少将の萩の歌
北の方は、たいそう情けなく、この人(少将)のためにこのような騒ぎも起こるのだと、またとなく大切に思う浮舟のことがこのようなので、つらく情けなくて、ろくに少将の世話もしない。あの宮の御前でたいそう人並みでなく見えたので、すっかり見下してしまったので、自分の婿として大切にしようかなどと思っていたことはなくなった。ここではどう見えるだろう、まだくつろいだ様子を見ていないのでと思って、少将がのんびりしていらっしゃる昼頃、こちらに渡ってきて物陰からのぞく。白い綾のやわらかなものに、今様色の打ち目なども美しいものを着て、端の方で前栽を見ようとして座っているのは、どこが劣っているか、たいそう小ぎれいなようだと見える。娘はまだ未熟で、何の心もない様子で添い臥している。宮の上(中の君)と宮が並んでいらしたご様子が思い出されると、見劣りのする二人だと見える。前にいる女房たちに何か言い戯れてくつろいでいるのは、たいそう見た時のように見栄えがせず、みっともなくも見えないので、あの宮の御前にいたのは別の少将だったのかと思うちょうどその時に言うことよ、「兵部卿の宮の萩がやはり格別に趣深いなあ。どうしてあのような種があったのだろう。同じ枝ぶりなどが、たいそう艶やかなことよ。先日参ったが、宮がお出かけになる時だったので、折らずじまいになった。『ことだに惜しき』と、宮が口ずさみなさっていたのを、若い人たちに見せたかった」と言って、自分も歌を詠んでいた。北の方は、さあ、心ばせのほどを思うと人とも思えない、人前に出ると見劣りすることはこの上なかったのに、何を言っているのかとつぶやくけれど、全く無風流な様子では、さすがにないので、どう言うだろうと試しに、「しめゆひし小萩がうへもまよはぬにいかなる露にうつる下葉ぞ」と詠みかけると、少将は気の毒に思って、「宮城野の小萩がもとと知らませばつゆも心をわかずぞあらまし。何とかして自分でお詫びし申し開きしたい」と言った。北の方は、故宮のことを聞いたのだろうと思うと、ますます何とかして浮舟を人並みにとばかり思い悩まれる。
- 1いといといと心憂心憂うくくくこのこのこの人人ひとににによりよりより、、、かゝるかゝるかかるまぎれまぎれまぎれどもどもどもゝゝもあるあるあるぞぞぞかしかしかしととと、、、またまたまたなくなくなく思思おもふふう方方かたのののことことことのののかゝれかゝれかかればばば、、、つらくつらくつらく心心こころうううくくくててて、、、をさをさをさをさおさおさ見見みいれいれいれずずず。。。かのかのかの宮宮みやのののおおお前前まえにてにてにて、、、いといといと人人ひとげげげなくなくなく見見みえええしししににに、、、多多おおくくく思思おもひひいおとしおとしおとしてててけれけれければばば、、、私私わたくし物物ものににに思思おもひひいかしづかかしづかかしずかましましましをををなどなどなど、、、思思おもひひいしししことことことははは止止やみみみにににたりたりたり。。。こゝこゝここにてにてにてはははいかゞいかゞいかが見見みゆるゆるゆるととと、、、まだまだまだ打打うちちち解解とけけけたるたるたるさまさまさま見見みぬぬぬにににととと思思おもひひいててて、、、のどかのどかのどかににに居居い給給たまへへえるるる晝晝ひるつかたつかたつかた、、、こなたこなたこなたににに渡渡わたりりりてててものものものよりよりよりのぞくのぞくのぞく。。。白白しろききき綾綾あやのののなつかしげなつかしげなつかしげなるなるなるににに、、、今今いまやうやうよう色色いろのののうちうちうちめめめなどなどなどももも淸淸きよらなるらなるらなるををを着着きててて、、、はしはしはしののの方方かたにににせんざいせんざいせんざい見見みるるるとてとてとてゐゐいたるたるたるははは、、、いづくいづくいずくかかかはははおとるおとるおとるいといといと淸淸きよげげげなななめるはめるはめるわととと見見みゆゆゆ。。。むすめむすめむすめまだまだまだかたなりかたなりかたなりににに、、、何何なに心心こころもももなきなきなきさまさまさまにてにてにて添添そひひい臥臥ふしししたりたりたり。。。宮宮みやのののうへうへうえののの並並ならびびびててておはせおはせおわせししし御御おんさまさまさまどもどもどもののの思思おもひひい出出いづれづれずればばば、、、口口くち惜惜おしししのののさまさまさまどもどもどもやややととと見見みゆゆゆ。。。前前まえなるなるなるごごごだちだちだちににに物物ものなどなどなど言言いひひい戲戲たわぶれぶれぶれててて打打うちちち解解とけけけたるたるたるははは、、、いといといと見見みしししやうやうようににににほひにほひにおいなくなくなく、、、人人ひとわろげわろげわろげにににももも見見みえええぬぬぬををを、、、かのかのかの宮宮みやなりなりなりしししははは、、、ことことこと少少しょう將將しょうなりなりなりけりけりけりととと思思おもふふう折折おりしもしもしもいふいふいうことことことよよよ、、、
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現代語訳
たいそう情けなく、この人のためにこのような騒ぎもあるのだと、またとなく大切に思う方のことがこのようなので、つらく情けなくて、ろくに世話もしない。あの宮の御前で、たいそう人並みでなく見えたので、すっかり見下してしまったので、自分の婿として大切にしようかなどと思ったことはなくなった。ここではどう見えるだろう、まだくつろいだ様子を見ていないのでと思って、のんびりしていらっしゃる昼頃、こちらに渡ってきて物陰からのぞく。白い綾のやわらかなものに、今様色の打ち目なども美しいものを着て、端の方で前栽を見ようとして座っているのは、どこが劣っているか、たいそう小ぎれいなようだと見える。娘はまだ未熟で、何の心もない様子で添い臥している。宮の上と宮が並んでいらしたご様子が思い出されると、見劣りのする二人だと見える。前にいる女房たちに何か言い戯れてくつろいでいるのは、たいそう見た時のように見栄えがせず、みっともなくも見えないので、あの宮の御前にいたのは別の少将だったのかと思うちょうどその時に、言うことよ、
「兵部卿の宮の萩が、やはり格別に趣深いなあ。どうしてあのような種があったのだろう。同じ枝ぶりなどが、たいそう艶やかなことよ。先日参ったが、宮がお出かけになる時だったので、折らずじまいになった。『ことだに惜しき』と、宮が口ずさみなさっていたのを、若い人たちに見せたかった」と言って、自分も歌を詠んでいた。さあ、心ばせのほどを思うと人とも思えない、人前に出ると見劣りすることはこの上なかったのに、何を言っているのかとつぶやくけれど、全く無風流な様子では、さすがにないので、どう言うだろうと思って、試しに、気の毒そうに「標を結った小萩の上葉も迷わないのに、どんな露に色を移す下葉なのでしょう」と詠みかけると、気の毒に思われて、「宮城野の小萩のもとと知っていたら、露ほども心を分けはしなかったでしょうに。何とかして自分でお詫びし申し開きしたい」と言った。故宮の御事を聞いたのだろうと思うと、ますます何とかして人並みにとばかり思い悩まれる。
意訳
北の方は、すべては少将のせいだと思い、少将の世話もしない。昼頃、北の方は少将の様子をのぞき見る。白い綾の衣を着て前栽を眺める少将は、匂宮の前で見たほど見劣りはしないが、匂宮と中の君に比べれば娘と並ぶ姿は見劣りがする。少将は匂宮邸の萩をほめ、歌を詠んでいる。北の方は試しに、浮舟を捨てた少将の心変わりを責める歌を贈り、少将は浮舟が八の宮の娘と知っていたら心を移さなかったと返す。北の方は、ますます浮舟を人並み以上にと思う。
語釈・文法注
文法
- 「今やう色」(今やう色のうちめなども淸らなるを着て)
- 今様色。紅梅色の濃いもの。流行の色。
- 「いでぎえ」(いでぎえは、いとこよなかりけるに)
- 出で消え。人前に出ると見劣りすること。
- 「宮城野の小萩」(宮城野の小萩がもとゝ知らませば)
- 宮城野の萩は歌枕。ここでは宮(八の宮)の血筋の意をかける。
解説
少将は匂宮邸の萩をほめ、「ことだに惜しき」と宮の口ずさんだ古歌を引く。受領の婿となりながら、宮家の風流に憧れる少将の姿は滑稽で哀れでもある。
少将は浮舟が八の宮の娘と知って後悔の歌を返す。身分を知った途端に態度を変える少将の打算が、改めて浮き彫りになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1096–1097頁(コマ259)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日