源氏物語 第50帖 東屋(27)
浮舟と中の君の対面
中の君は白いお召し物を一襲ほどでいらっしゃって、ほっそりとして美しい。浮舟は本当に気分も悪くなっていたが、乳母は「たいそう決まりが悪いことです。何かあったような顔とお思いになるでしょうから、ただおっとりとしてお目にかかりなさいませ。右近の君などには事の有様を初めからお話ししましょう」と、無理に促し立てて、こちらの障子のもとで「右近の君に申し上げたいことがございます」と言うと、右近が立って出てきたので、「たいそう妙でございましたことの名残で、お身体もぐったりなさって、本当に苦しそうにお見えになるのを、お気の毒に拝見しております。御前でお慰めくださいませと思いまして。過ちもないお身を、たいそう気が引けるようにお思い悩みのようなのも、さすがに無理もありません。少しでも男女の仲を知っている人ならともかく、どうして平気でいられましょうと、もっともでお気の毒に拝見しております」と言って、浮舟を引き起こして中の君のもとに参らせ申し上げる。浮舟は我を忘れるほどで、人がどう思うかも恥ずかしいが、たいそう柔らかくおっとりしすぎていらっしゃる君で、押し出されて座っていらっしゃった。額髪などがひどく涙に濡れているのを隠して、灯火の方に背を向けていらっしゃる様子は、上(中の君)を比類なく拝見している女房の目にも見劣りするとも見えず、上品で美しい。この方に宮がお心をおつけになったら、心外なことがきっと起こるだろう、それほどでない人でさえ、珍しい人には趣深くお振る舞いになるお心なのだからと、二人ほど(右近と少将)が御前で、浮舟が恥じらいきれないので見ていた。中の君はお話をたいそう親しげになさって、「いつもと違う気の置ける所などとお思いなさいますな。故姫君がいらっしゃらなくなった後、忘れる時もなくつらく、わが身も恨めしく、比べようもない心地で過ごしておりますが、たいそうよく似ていらっしゃるご様子を見ると、慰められる心地がしてしみじみとうれしいのです。思う人もない身ですので、昔の姉君のお気持ちのようにお思いくだされば、たいそううれしいのです」などとお話しになるが、浮舟はたいそう気が引けて、また田舎びた心で、お答え申し上げようもなくて、「長年たいそう遠い方とばかり思い申し上げていましたので、こうして拝見しますと、何事も慰められる心地がいたしまして」とだけ、たいそう子どもっぽい声で言う。
- 1白白しろききき御御おんぞぞぞひとひとひとかさねかさねかさねばかりばかりばかりにてにてにておはするおはするおわする、、、細細ほそやかやかやかにてにてにてをかしげをかしげおかしげなりなりなり。。。このこのこの君君きみははは誠誠まことににに心地心地ここちももも惡惡あしくしくしくなりなりなりにににたれたれたれどどど、、、めのとめのとめのと「「「いといといとかたはらいたしかたはらいたしかたわらいたし。。。ことことことしもしもしもありありあり顏顏がおにににおぼすおぼすおぼすらむらむらんををを、、、唯唯ただおほどかおほどかおおどかにてにてにて見見みえええ奉奉たてまつりりり給給たまへへえ。。。右右う近近こんののの君君きみなどなどなどにににははは事事ことのののありさまありさまありさま初初はじめよりよりより語語かたりりり侍侍はべらららむむん」」」ととと、、、責責せめめめてててそゞのかしそゞのかしそぞのかしたてゝたてゝたてて、、、こなたこなたこなたののの御御おんさうじさうじそうじのののもともともとにてにてにて、、、「「「右右う近近こんののの君君きみににに物物もの聞聞きこえええさせさせさせむむん」」」ととといへいへいえばばば、、、立立たちちちててて出出いでででたれたれたればばば、、、「「「いといといと怪怪あやしくしくしく侍侍はべりりりつるつるつることことことのののなごりなごりなごりににに、、、身身みもももあへなうあへなうあえのうなりなりなり給給たまひひいててて、、、まめやかまめやかまめやかににに苦苦くるしげしげしげににに見見みえええさせさせさせ給給たまふふうををを、、、いとほしくいとほしくいとおしく見見み侍侍はべるるる。。。おおお前前まえにてにてにて慰慰なぐさめめめ聞聞きこえええさせさせさせ給給たまへへえとてとてとてなむなむなん、、、あやまちあやまちあやまちもももおはせおはせおわせぬぬぬ御御おん身身みををを、、、いといといとつゝましげつゝましげつつましげににに思思おもほしほしおし侘侘わびびびにににたたためるめるめるももも、、、さすがさすがさすがにににこそこそこそ。。。いさゝかいさゝかいささかにてにてにてももも世世よををを知知しりりり給給たまへへえるるる人人ひとこそこそこそあれあれあれ、、、いかでいかでいかでかかかはははとととことわりことわりことわりにににいとほしくいとほしくいとおしく見見み奉奉たてまつるるる」」」とてとてとて、、、引引ひききき起起おこしししててて參參まいらららせせせ奉奉たてまつるるる我我わにににもももあらあらあらずずず人人ひとののの思思おもふふうらむらむらんことことことももも耻耻はずかしけれしけれしけれどどど、、、いといといとやはらかやはらかやわらかにににおほどきおほどきおおどきすぎすぎすぎ給給たまへへえるるる君君きみにてにてにて、、、押押おししし出出いでででられられられててて居居い給給たまへへえりりり。。。ひたいひたいひたい髮髮がみなどなどなどののの、、、いたういたういとうぬれぬれぬれたるたるたるをををもてもてもてかくしかくしかくしててて、、、火火ひののの方方かたににに背背そむききき給給たまへへえるるるさまさまさま、、、うへうへうえをををたぐひたぐひたぐいなくなくなく見見み奉奉たてまつるるるににに、、、けけけおとるおとるおとるとととももも見見みえええずずず、、、あてあてあてにににをかしをかしおかし。。。
- 2これこれこれにににおぼしおぼしおぼしつきつきつきなななばばば、、、めざましげめざましげめざましげなるなるなることことことはははありありありなななむむんかしかしかし。。。いといといとかゝらかゝらかからぬぬぬをををだにだにだに珍珍めずらしきしきしき人人ひとをををかしうかしうかしゅうしししたまふたまふたまう御心御心みこころをををととと、、、二二ふた人人りばかりばかりばかりぞぞぞおおお前前まえにてにてにて、、、えええはぢはぢはじあへあへあえ給給たまははわねねねばばば見見み居居いたりたりたりけるけるける。。。物物もの語語がたりいといといとなつかしくなつかしくなつかしくししし給給たまひひいててて、、、「「「例例れいならならならずずずつゝましきつゝましきつつましき所所ところなどなどなど、、、ななな思思おもひひいなしなしなし給給たまひひいそそそ。。。故故こ姫姫ひめ君君ぎみのののおはせおはせおわせずずずなりなりなり給給たまひひいししし後後のち、、、忘忘わすらららるゝるゝるるよよよなくなくなくいみじくいみじくいみじく、、、身身みもももうらめしくうらめしくうらめしく、、、たぐひたぐひたぐいなきなきなき心地心地ここちしししてててすぐすすぐすすぐすににに、、、いといといとよくよくよく思思おもひひいよそへよそへよそえられられられ給給たまふふう御御おんさまさまさまををを見見みれれればばば、、、慰慰なぐさむむむ心地心地ここちしししててて哀哀あわれににになむなむなん。。。思思おもふふう人人ひともももなきなきなき身身みににに昔昔むかしののの御御おん志志こころざしのののやうやうようににに思思おもほさほさおさばばば、、、いといといと嬉嬉うれしくしくしくなむなむなん」」」などなどなど語語かたらひらひらい給給たまへへえどどど、、、いといといと物物ものつゝましくつゝましくつつましくてててまたまたまたひなびひなびひなびたるたるたる心心こころににに、、、いらへいらへいらえ聞聞きこえええむむんととともももなくなくなくててて、、、「「「年年とし頃頃ごろいといといと遙遙はるかにににのみのみのみ思思おもひひい聞聞きこえええさせさせさせしししににに、、、かうかうこう見見み奉奉たてまつりりり侍侍はべるるるははは何何なに事事ことももも慰慰なぐさむむむ心地心地ここちししし侍侍はべりりりてててなむなむなん」」」とととばかりばかりばかり、、、いといといと若若わかびびびたるたるたる聲聲こえにてにてにていふいふいう。。。
現代語訳
白いお召し物を一襲ほどでいらっしゃって、ほっそりとして美しい。この君は本当に気分も悪くなっていたが、乳母は「たいそう決まりが悪いことです。何かあったような顔とお思いになるでしょうから、ただおっとりとしてお目にかかりなさいませ。右近の君などには、事の有様を初めからお話ししましょう」と、無理に促し立てて、こちらの障子のもとで、「右近の君に申し上げたいことがございます」と言うと、右近が立って出てきたので、「たいそう妙でございましたことの名残で、お身体もぐったりなさって、本当に苦しそうにお見えになるのを、お気の毒に拝見しております。御前でお慰め申し上げてくださいませと思いまして。過ちもないお身を、たいそう気が引けるようにお思い悩みのようなのも、さすがに無理もありません。少しでも男女の仲を知っていらっしゃる人ならともかく、どうして平気でいられましょうと、もっともでお気の毒に拝見しております」と言って、引き起こして参らせ申し上げる。我を忘れるほどで、人がどう思うかも恥ずかしいけれど、たいそう柔らかくおっとりしすぎていらっしゃる君で、押し出されて座っていらっしゃった。額髪などが、ひどく濡れているのを隠して、灯火の方に背を向けていらっしゃる様子は、上を比類なく拝見している目にも、見劣りするとも見えず、上品で美しい。
この方に宮がお心をおつけになったら、心外なことがきっと起こるだろう。それほどでない人でさえ、珍しい人には趣深くお振る舞いになるお心なのだからと、二人ほどが御前で、浮舟が恥じらいきれないので見ていたのだった。中の君はお話をたいそう親しげになさって、「いつもと違う気の置ける所などと、お思いなさいますな。故姫君がいらっしゃらなくなった後、忘れる時もなくつらく、わが身も恨めしく、比べようもない心地で過ごしておりますが、たいそうよく思いなぞらえられるご様子を見ると、慰められる心地がしてしみじみとうれしいのです。思う人もない身ですので、昔の姉君のお気持ちのようにお思いくださるなら、たいそううれしいのです」などとお話しになるが、浮舟はたいそう気が引けて、また田舎びた心で、お答え申し上げようもなくて、「長年たいそう遠い方とばかり思い申し上げていましたので、こうして拝見しますと、何事も慰められる心地がいたしまして」とだけ、たいそう子どもっぽい声で言う。
意訳
乳母は、何事もなかったようにおっとりと振る舞うよう浮舟を促し、右近に事情を話して浮舟を中の君のもとに連れて行く。浮舟は涙に濡れた額髪を隠し、灯火に背を向けて座るが、その美しさは中の君にも劣らないと女房たちは見る。中の君は、浮舟が大君によく似ているので慰められると語り、姉のように思ってほしいと言う。浮舟は、遠い方と思っていた中の君に会えて慰められると、幼い声で答える。
語釈・文法注
文法
- 「あへなう」(身もあへなうなり給ひて)
- あっけなく、ぐったりと。
- 「おほどきすぎ」(いとやはらかにおほどきすぎ給へる君にて)
- おっとりしすぎる。
- 「めざましげなること」(めざましげなることはありなむかし)
- 心外なこと、目に余ること。
解説
中の君は浮舟に大君の面影を見て、姉のように親しもうとする。宇治の姉妹の絆が、異母妹の浮舟にも広がろうとしている。
浮舟は「いと若びたる聲」で答える。幼く、おっとりとした浮舟の性格は、周囲の人々に流されていく彼女の運命を暗示する。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1092–1093頁(コマ257)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日