源氏物語 第50帖 東屋(17)
薫の来訪
北の方は「このような程度の暮らしに身を落とすのは残念なものでございましたと、身にしみて思い知られますので、この君はただお任せ申し上げて、私は関わりますまい」などと中の君に愚痴を言いかけるので、中の君は本当に見苦しくなくあってほしいとご覧になる。浮舟は容貌も心ざまも憎むことができないほど可憐である。恥ずかしがる様子も大げさでなく、様子がおっとりと子どもっぽいながら、才気がなくはなく、近くに仕える女房たちにもたいそううまく隠れていらっしゃる。物など言った様子も、昔の人(大君)のご様子に不思議なほど似通い申し上げている。あの人形を求めていらっしゃる人(薫)にお見せ申し上げたいと中の君がふと思い出しなさるちょうどその時、大将殿が参られると女房が申し上げるので、いつものように御几帳を整えて心づかいする。この客人の母君は「さあ拝見しよう。ほのかに拝見した人がたいそうすばらしい方と申すようだが、宮のご様子には並びなさるまい」と言うと、御前に仕える女房たちは「さあ、どちらとも申し定められません」と言い合っている。中の君は「向かい合っていらした時、宮はたいそう見劣りして、見にくくお見えになりました。別々に見ると、どちらともわかりませんが、容貌のよい人は人を消してしまうのが憎らしいこと」とおっしゃるので、女房たちは笑って、「けれども宮は大将殿には押されなさらないようです。どれほどの人が宮を消し申し上げられましょう」などと言ううちに、今車から降りられるそうだと聞くと、やかましいほど先払いの声を立てて、すぐにはお見えにならない。待たれているうちに、歩み入られる様子を見ると、本当にああすばらしい、華やかに美しいとも見えないながら、優美で上品で清らかである。わけもなく見苦しく恥ずかしくて、額髪なども自然に整えられて、こちらが気後れするほど心づかいが多く、この上ない様子をしていらっしゃる。内裏から参られたのだろう。御前駆の気配が大勢して、薫は「昨夜、后の宮がご病気だと承って参りましたが、宮たちがお控えでいらっしゃらなかったので、お気の毒に拝見して、宮のお代わりに今までお仕えしておりました。
- 1かゝるかゝるかかる程程ほどののの有有あり樣樣さまににに身身みをををやつすやつすやつすははは口口くち惜惜おしきしきしきものものものににになむなむなん侍侍はべりりりけるけるけるととと、、、身身みにににももも思思おもひひい知知しらららるゝるゝるるををを、、、このこのこの君君きみははは唯唯ただ任任まかせせせ聞聞きこえええさせさせさせててて知知しりりり侍侍はべらららじじじ」」」などなどなどかこちかこちかこち聞聞きこえええかくれかくれかくればばば、、、げにげにげに見見み苦苦ぐるしからしからしからでででもももあらあらあらなむなむなんととと見見み給給たまふふう。。。かたちかたちかたちももも心心こころざまざまざまももも、、、えええにくむにくむにくむまじうまじうまじゅうらうたげらうたげろうたげなりなりなり。。。物物ものはぢはぢはじもももおどろおどろしからおどろおどろしからおどろおどろしからずずず、、、さまさまさまようようよう子子こめいめいめいたるたるたるものものものからからから、、、かどかどかどなからなからなからずずず、、、近近ちかくくく侍侍さぶらふふう人々人々ひとびとにににももも、、、いといといとよくよくよく隱隱かくれれれててて居居い給給たまへへえりりり。。。物物ものなどなどなどいひいひいいたるたるたるももも、、、昔昔むかしののの人人ひとののの御御おんさまさまさまににに怪怪あやしきしきしきまでまでまで覺覺おぼえええ奉奉たてまつりりりてててぞぞぞあるあるあるややや。。。かのかのかの人人ひとがたがたがたもとめもとめもとめ給給たまふふう人人ひとににに見見みせせせ奉奉たてまつらららばやばやばやととと打打うちちち思思おもひひい出出いででで給給たまふふうをりをりおりしもしもしも、、、大大たい將將しょう殿殿どの參參まいりりり給給たまふふうととと人人ひと聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、例例れいののの御御おん几几き帳帳ちょう引引ひきききつくろひつくろひつくろいててて心心こころづかひづかひずかいすすす。。。このこのこのまらうどまらうどまろうどののの母母はは君君ぎみ「「「いでいでいで見見み奉奉たてまつらららむむん、、、ほのかほのかほのかににに見見み奉奉たてまつりりりけるけるける人人ひとののの、、、いみじきいみじきいみじきものものものににに聞聞きこゆゆゆめれめれめれどどど、、、宮宮みやののの御御おん有有あり樣樣さまにににはははえええならびならびならびたまはたまはたまわじじじ」」」ととといへいへいえばばば、、、御御お前前まえににに侍侍さぶらふふう人々人々ひとびといさいさいさやややえええこそこそこそ聞聞きこえええ定定さだめめめねねね」」」ととと聞聞きこえええあへあへあえりりり。。。「「「むかひむかひむかいててておはせおはせおわせしししさまさまさま、、、宮宮みやはははいといといとなさけなさけなさけなげなげなげににに、、、見見みにくゝにくゝみにくくこそこそこそ見見みえええ給給たまひひいしかしかしか。。。とりとりとり放放はなちちちてててははは、、、いづれいづれいずれもももともともともかくかくかくももも分分わかれれれずずず、、、かたちかたちかたちよきよきよき人人ひとははは人人ひとをををけつけつけつこそこそこそにくけれにくけれにくけれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、人々人々ひとびとわらひわらひわらいててて、、、「「「されどされどされどおおお前前まえにににはははおさおさおされれれ奉奉たてまつりりり給給たまははわざざざめりめりめりいかいかいかばかりばかりばかりならならならむむん人人ひとかかか、、、宮宮みやをををばばばけちけちけち奉奉たてまつらららむむん」」」などなどなどいふいふいう程程ほどににに、、、今今いまぞぞぞ車車くるまよりよりよりおりおりおり給給たまふふうなりなりなりととと聞聞きくくく程程ほどかしかましきかしかましきかしかましきまでまでまでおひおひおいのゝしりのゝしりののしりててて、、、とみとみとみにににももも見見みえええ給給たまははわずずず。。。
- 2またまたまたれれれたるたるたる程程ほどににに、、、步步あゆみみみ入入いりりり給給たまふふうさまさまさまををを見見みれれればばば、、、げにげにげにあなあなあなめでためでためでた、、、をかしげをかしげおかしげとととももも見見みえええずずずながらながらながらぞぞぞ、、、なまめかしうなまめかしうなまめかしゅうあてあてあてににに淸淸きよげげげなるなるなるややや。。。すゞろすゞろすずろににに見見みえええぐるしうぐるしうぐるしゅうはづかしくはづかしくはずかしくててて、、、額額ひたい髮髮がみなどなどなどももも引引ひきききつくろはつくろはつくろわれれれててて心心こころはづかしげはづかしげはずかしげににに用用よう意意い多多おおくくくきはきはきわもももなきなきなきさまさまさまぞぞぞししし給給たまへへえるるる。。。うちうちうちよりよりより參參まいりりり給給たまへへえるるるなるなるなるべしべしべし。。。御御お前前まえどもどもどものののけはひけはひけはいあまたあまたあまたしししててて、、、「「「よべよべよべ后后きさいののの宮宮みやののの惱惱なやみみみ給給たまふふうよしよしよしうけうけうけ給給たまはりはりわりててて、、、參參まいりりりたりたりたりしかしかしかばばば、、、宮宮みや達達たちののの侍侍さぶらひひい給給たまははわさりさりさりしかしかしかばばば、、、いとほしくいとほしくいとおしく見見み奉奉たてまつりりりててて、、、宮宮みやののの御御おんかはりかはりかわりににに今今いままでまでまで侍侍さぶらひひい侍侍はべりりりつるつるつる。。。
現代語訳
「このような程度の暮らしに身を落とすのは、残念なものでございましたと、身にも思い知られますので、この君はただお任せ申し上げて、私は関わりますまい」などと愚痴を申し上げかけるので、中の君は本当に見苦しくなくあってほしいとご覧になる。浮舟は容貌も心ざまも、憎むことなどできそうにないほど可憐である。恥ずかしがる様子も大げさでなく、様子がおっとりと子どもっぽいものの、才気がなくはなく、近くに仕える女房たちにも、たいそううまく隠れて座っていらっしゃる。物など言った様子も、昔の人のご様子に、不思議なほど似通い申し上げているよ。あの人形を求めていらっしゃる人にお見せ申し上げたいとふと思い出しなさるちょうどその時、大将殿が参られると女房が申し上げるので、いつものように御几帳を整えて心づかいする。この客人の母君は「さあ拝見しよう。ほのかに拝見した人が、たいそうすばらしい方と申すようだけれど、宮のご様子には並びなさるまい」と言うと、御前に仕える女房たちは「さあ、どちらとも申し定められません」と言い合っている。中の君は「向かい合っていらした時、宮はたいそう見劣りして、見にくくお見えになりました。別々に見ると、どちらともわかりませんが、容貌のよい人は人を消してしまうのが憎らしいこと」とおっしゃるので、女房たちは笑って、「けれども宮は大将殿には押されなさらないようです。どれほどの人が宮を消し申し上げられましょう」などと言ううちに、今車から降りられるそうだと聞くと、やかましいほど先払いの声を立てて、すぐにはお見えにならない。
待たれているうちに、歩み入られる様子を見ると、本当にああすばらしい、華やかに美しいとも見えないながら、優美で上品で清らかである。わけもなく見苦しく恥ずかしくて、額髪なども自然に整えられて、こちらが気後れするほどで、心づかいが多く、この上ない様子をしていらっしゃる。内裏から参られたのだろう。御前駆の気配が大勢して、「昨夜、后の宮がご病気だと承って参りましたところ、宮たちがお控えでいらっしゃらなかったので、お気の毒に拝見して、宮のお代わりに今までお仕えしておりました。
意訳
北の方は浮舟を中の君に託す。浮舟は可憐で、話す様子が大君に不思議なほど似ており、中の君は薫に会わせたいと思う。そこへ薫が訪れる。北の方は匂宮には及ぶまいと言い、中の君は、二人が並ぶと匂宮が見劣りしたと語る。薫が歩み入る姿は、華やかではないが優美で気高く、北の方は思わず額髪を整えるほどであった。薫は、中宮の病で匂宮の代わりに宮中に詰めていたと語る。
語釈・文法注
文法
- 「人がた」(かの人がたもとめ給ふ人に見せ奉らばや)
- 人形。身代わり。薫が大君の身代わりを求めていたことを言う。宿木の巻で薫が「人形」と言った言葉による。
- 「けつ」(かたちよき人は人をけつこそにくけれ)
- 消す。容貌の優れた人が他人の美しさを圧倒すること。
- 「おひのゝしりて」(かしかましきまでおひのゝしりて)
- 追ひののしりて。先払いの声を高く立てて。
解説
浮舟が大君に似ていることを、中の君は改めて確かめる。そこへ薫が訪れるという偶然が、浮舟と薫を結ぶ物語の運びを示す。
北の方は匂宮こそ最高と思っていたが、薫の姿を見てその優美さに圧倒される。母の目に映る二人の貴公子が、やがて浮舟をめぐって競うことになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1082–1083頁(コマ252)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日