源氏物語 第50帖 東屋(14)
見劣りする少将
万事が気高く格別に見えるので、北の方は、自分がたいそうなことを尽くしていると思っても、平凡な人のあたりは残念なものだったと思うようになったので、わが娘(浮舟)もこのような方々に並べたら見劣りはしないだろう、財力の勢いを頼んで、父親(常陸介)が后にもしようと思っている娘たちは、同じわが子ながら、様子がこの上なく違うのを思うにつけても、やはりこれからも高い望みを持つべきだったのだと、一晩中将来のことを思い続けた。宮は日が高くなってお起きになって、后の宮(明石の中宮)がいつものようにご気分が悪いので参内しようと、ご装束などを着ておいでになる。北の方が見たく思ってのぞくと、きちんと装っていらっしゃるお姿はまた比べるものもなく、気高く愛嬌があり美しくて、若君を見捨てかねて遊んでいらっしゃる。お粥や強飯などを召し上がってから、こちらからお出かけになる。今朝から参って侍所に控えていた人々が、今になって参って何か申し上げる中に、小ぎれいに装っているが、何ということもない人で、つまらない顔をした者が、直衣を着て太刀を佩いているのがいて、御前では何とも見えないのを、女房たちが「あれがあの常陸守の婿の少将だ。初めはこの御方(浮舟)にと決めていたのを、守の実の娘を得てこそ大切にされるだろうなどと言って、やせこけた女の子を得たそうだ」「さあ、この御あたりの人は全く言わない。守の君の方から、よく聞く伝手があるのだ」と仲間うちで言うのを、北の方が聞いているとも知らないで言う。人がこう言うにつけても胸がつぶれて、少将を見苦しくない程度と思っていた心も残念で、本当に格別のこともない者だったと思って、いっそう侮らわしく思うようになった。若君が這い出して御簾の端からのぞいていらっしゃるのを宮はご覧になって、引き返して寄っておいでになった。「ご気分がよく見えたら、すぐに退出しよう。まだお苦しそうなら、今夜は宿直だ。
- 1萬萬よろずのののことことことけだかくけだかくけだかく心心こころことことことににに見見みゆれゆれゆればばば、、、我我わがががいみじきいみじきいみじき事事ことををを盡盡つくすすすととと見見み思思おもへへえどどどなほなほしきなほなほしきなおなおしき人人ひとのののあたりあたりあたりははは、、、口口くち惜惜おしかりしかりしかりけりけりけりととと思思おもひひいなりなりなりぬれぬれぬればばば、、、我我わががが娘娘むすめもももかやうかやうかようにてにてにてさしさしさし並並ならべべべたらたらたらむむんにににかたはかたはかたわならならならじじじかしかしかし、、、ゆだけきゆだけきゆだけき勢勢いきおひひいをををたのみたのみたのみててて、、、父父ちちぬしぬしぬしののの、、、后后きさきにににもももなしなしなしてててむむんととと思思おもひひいたるたるたる人々人々ひとびとははは、、、おなじおなじおなじ我我わががが子子こながらながらながら、、、けはひけはひけはいこよなきこよなきこよなきをををおもふおもふおもうももも、、、猶猶なお今今いまよりよりよりのちのちのちももも心心こころはははたがふたがふたがうべかりべかりべかりけりけりけりととと、、、夜夜よ一一ひと夜夜よあらましあらましあらましごとごとごとににに思思おもひひいつゞけゝりつゞけゝりつづけけり宮宮みや日日ひたけたけたけててて起起おききき給給たまひひいててて、、、きさいきさいきさいののの宮宮みや例例れいのののなやましくなやましくなやましくししし給給たまへへえばばば、、、まゐるまゐるまいるべしべしべしとてとてとて御御おんさうぞくさうぞくそうぞくなどなどなどししし給給たまひひいててておはすおはすおわす。。。ゆかしうゆかしうゆかしゅう覺覺おぼえええてててのぞけのぞけのぞけばばば、、、うるはしくうるはしくうるわしく引引ひきききつくろひつくろひつくろい給給たまへへえるるる、、、はたはたはた似似にるるるものものものなくなくなく、、、けだかくけだかくけだかくあいあいあいぎやうぎやうぎょうつきつきつき淸淸きよらにらにらにててて、、、若若わか君君きみをををえええ見見み捨捨すててて給給たまははわででで、、、もてもてもてあそびあそびあそびおはすおはすおわす。。。御御おんかゆかゆかゆこはこはこわいひいひいいなどなどなど參參まいりりりてててぞぞぞ、、、こなたこなたこなたよりよりより出出いででで給給たまふふう。。。けさけさけさよりよりよりまゐりまゐりまいりててて。。。さぶらひさぶらひさぶらいののの方方かたにににやすらひやすらひやすらいけるけるける人々人々ひとびと今今いまぞぞぞ參參まいりりりててて物物ものなどなどなど聞聞きこゆるゆるゆる中中なかににに、、、淸淸きよげげげだちだちだちててて、、、なでなでなでふふふことことことなきなきなき人人ひとのののすさまじきすさまじきすさまじき顏顏かおしししたるたるたる、、、なほしなほしなおし着着きててて太太た刀刀ち佩佩はきききたるたるたるありありありおおお前前まえにてにてにて何何なにとととももも見見みえええぬぬぬををを、、、
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現代語訳
万事が気高く格別に見えるので、自分がたいそうなことを尽くしていると見て思っても、平凡な人のあたりは残念なものだったと思うようになったので、わが娘も、このような所に並べたとしても見劣りはしないだろう、財力の勢いを頼んで、父親が后にもしようと思っている娘たちは、同じわが子ながら、様子がこの上なく違うのを思うにつけても、やはりこれから後も、高い望みを持つべきだったのだと、一晩中将来のことを思い続けた。宮は日が高くなってお起きになって、后の宮がいつものようにご気分が悪くていらっしゃるので、参内しようと、ご装束などをお召しになっておいでになる。見たく思われてのぞくと、きちんと装っていらっしゃるお姿は、また比べるものもなく、気高く愛嬌があり美しくて、若君を見捨てかねて、遊んでいらっしゃる。お粥や強飯などを召し上がってから、こちらからお出かけになる。今朝から参って侍所に控えていた人々が、今になって参って何か申し上げる中に、小ぎれいに装って、何ということもない人で、つまらない顔をした者が、直衣を着て太刀を佩いているのがいて、御前では何とも見えないのを、
「あれがあの常陸守の婿の少将だよ。初めはこの御方にと決めていたのを、守の娘を得てこそ大切にされるだろうなどと言って、やせこけた女の子を得たということだ」「さあ、この御あたりの人は全く言わない。守の君の方から、よく聞く伝手があるのだ」と仲間うちで言う、北の方が聞いているとも知らないで。人がこう言うにつけても胸がつぶれて、少将を見苦しくない程度と思っていた心も残念で、本当に格別のこともないに違いない者だったと思って、いっそう侮らわしく思うようになった。若君が這い出して御簾の端からのぞいていらっしゃるのを宮はちらりとご覧になって、引き返して寄っておいでになった。「ご気分がよく見えたら、すぐに退出しよう。まだお苦しそうになさっていたら、今夜は宿直だ。
意訳
北の方は、二条院の気高さに比べて常陸介の家は平凡だと思い、浮舟もこうした方々と並べて見劣りしないはずだ、もっと高い望みを持つべきだったと一晩中思い続ける。翌日、参内する匂宮の装束姿の美しさに北の方は見とれる。匂宮の御前に控える左近少将は見栄えがせず、女房たちは、少将が浮舟を捨てて常陸介のやせた娘を得たと噂する。北の方は少将を侮る気持ちになる。
語釈・文法注
文法
- 「ゆだけき」(ゆだけき勢ひをたのみて)
- 豊かな、ゆったりとした。財力が豊かなこと。
- 「あらましごと」(夜一夜あらましごとに思ひつゞけゝり)
- こうあってほしいという将来の予想。
- 「かじけたる」(かじけたるめのわらはをえたるなゝり)
- やせ衰えた、みすぼらしい。
解説
二条院で見た少将は、匂宮の前ではまったく見栄えがしなかった。北の方の価値観は、この一夜で大きく変わる。浮舟にはもっと高い縁をという思いが、母の心に芽生える。
女房たちの噂話は、少将の打算的な結婚が世間にも知られていることを示す。北の方の屈辱は、少将への侮りに変わっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1078–1081頁(コマ250–251)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日