源氏物語 第50帖 東屋(13)
匂宮をのぞき見る北の方
北の方は、自分も故北の方(八の宮の北の方)とは縁の離れるはずの人であろうか、女房としてお仕えしたというだけで、人数に入れていただけず残念で、このように人に侮られるのだと思うと、こうして参って親しくするのもつまらない。ここ(浮舟の局)には御物忌と言ってあったので人も通わず、二三日ほど母君もいた。今度は落ち着いて、この中の君のご様子を見る。匂宮がお越しになる。見たくて物の隙間から見ると、たいそう美しく桜を折ったような様子でいらっしゃって、自分が頼みにする人と思って、つらく恨めしいけれど、その心には背くまいと思う常陸守より、姿形も人の品格もこの上なく見える五位や四位の者たちが、並んでひざまずいてお仕えして、あの事この事と、あちこちの事柄を申し上げ、供の者なども申し上げる。また若々しい五位たちや、顔も知らない供人も多い。北の方の継子で式部丞で蔵人である者が、内裏のお使いとして参った。宮のお側にも近くは参れず、この上ないお方のご様子を、ああ、これは何という人だろう、このような方のお側にいらっしゃるすばらしさよ、よそに思っていた時は、立派な人々と申しても、つらい目をお見せになったらと気が重く推し量り申し上げていたのは呆れたことだ、このご様子やお顔立ちを見ると、七夕ほどの逢瀬でも、このように拝見して通われるのは、たいそうすばらしいことだと思うと、宮は若君を抱いて可愛がっていらっしゃる。中の君が短い几帳を隔てて座っているのを押しやって、何かお話し申し上げなさる。お二人のお顔立ちはたいそう美しく似合っている。故宮の寂しくいらしたご様子を思い比べると、宮たちと申しても、たいそう格別なものだったと思われる。宮が几帳の中にお入りになったので、若君は乳母などがあやし申し上げる。人々が参り集まるが、宮は気分が悪いと言って一日お休みになって過ごし、お食膳はこちらに差し上げる。
- 1我我わももも故故こ北北きたののの方方かたにににははは離離はなれれれ奉奉たてまつるるるべきべきべき人人ひとかはかはかは、、、仕仕つこうううまつるまつるまつるととといひいひいいしししばかりばかりばかりににに、、、かずかずかずまへまへまえられられられ奉奉たてまつらららずずず口口くち惜惜おしくしくしくててて、、、かくかくかく人人ひとにににはははあなづらるゝあなづらるゝあなずらるるととと思思おもふふうにににははは、、、かくかくかくまひまひまいててて睦睦むつびびび聞聞きこゆるゆるゆるもももあぢきなしあぢきなしあじきなし。。。こゝこゝここにににははは御御おん物物もの忌忌いみととといひいひいいてててけれけれければばば人人ひともももかよはかよはかよわずずず、、、二二ふつ三三か日日みかばかりばかりばかり母母はは君君ぎみももも居居いたりたりたり。。。こたみこたみこたみははは心心こころのどかのどかのどかににに、、、このこのこの御御おんありさまありさまありさまををを見見みるるる。。。宮宮みやわたりわたりわたり給給たまふふう。。。ゆかしくゆかしくゆかしくててて物物もののののはざまはざまはざまよりよりより見見みれれればばば、、、いといといと淸淸きよらにらにらに櫻櫻さくらををを折折おりりりたるたるたるさまさまさまししし給給たまひひいててて我我わがががたのもしたのもしたのもし人人ひとににに思思おもひひいててて、、、つらうつらうつろううらめしけれうらめしけれうらめしけれどどど、、、心心こころにににははは違違たがははわじじじととと思思おもふふう。。。常常ひた陸陸ち守守のかみよりよりよりさまさまさまかたちかたちかたちももも人人ひとのののほどほどほどもももこよなくこよなくこよなく見見みゆるゆるゆる、、、五五ご位位い四四し位位いどもどもども、、、あひあひあいひざまづきひざまづきひざまずき侍侍さぶらひひいててて、、、このこのこの事事ことかのかのかの事事ことととと、、、あたりあたりあたりあたりあたりあたりののの事事ことどもどもども啓啓けいししし、、、供供ともなどなどなどまうすまうすもうす。。。又又また若若わかやかやかやかなるなるなる五五ご位位いどもどもども、、、顏顏かおももも知知しらららぬぬぬ供供ともももも多多おおかりかりかり。。。わがわがわが繼繼まま子子こののの式式しき部部ぶのののぞうぞうぞうにてにてにて藏藏くら人人うどなるなるなる、、、內內うちののの御御おん使使つかいにてにてにて參參まいれれれりりり。。。
- 2御御おんあたりあたりあたりにににもももえええ近近ちかくくく參參まいらららずずず、、、こよなきこよなきこよなき人人ひとののの御御おんけはひけはひけはいををを、、、あはれあはれあわれこはこはこわ何何なに人人びとぞぞぞ、、、かゝるかゝるかかる御御おんあたりあたりあたりにににおはするおはするおわするめでたさめでたさめでたさよよよ、、、よそよそよそににに思思おもふふう時時ときははは、、、めでたきめでたきめでたき人々人々ひとびとととと聞聞きこゆゆゆともともとも、、、つらきつらきつらき目目め見見みせせせ給給たまははわゞゞばととと物物ものうくうくうく推推おししし量量はかりりり聞聞きこえええさせさせさせつつつらむらむらんあさましさあさましさあさましさよよよ、、、このこのこの御御おん有有あり樣樣さまかたちかたちかたちををを見見みれれればばば、、、七七たな夕夕ばたばかりばかりばかりにてにてにてももも、、、かやうかやうかようににに見見み奉奉たてまつりりりかよはかよはかよわむむんははは、、、いといといといみじかるいみじかるいみじかるべきべきべきわざわざわざかなかなかなととと思思おもふふうににに、、、若若わか君君きみ抱抱いだきききてててうつくしみうつくしみうつくしみおはすおはすおわす。。。女女おんな君君きみ短短みじかききき几几き帳帳ちょうををを隔隔へだてててゝゝて座座ざするするするををを推推おしししやりやりやりててて物物ものなどなどなど聞聞きこえええ給給たまふふう。。。御御おんかたちかたちかたちどもどもどもいといといと淸淸きよらにらにらに似似に合合あひひいたりたりたり。。。故故こ宮宮みやのののさびしくさびしくさびしくおはせおはせおわせししし御御おん有有あり樣樣さまををを思思おもひひいくらぶるくらぶるくらぶるににに宮宮みや達達たちととと聞聞きこゆれゆれゆれどどど、、、いといといとこよなきこよなきこよなきわざわざわざにににこそこそこそありありありけれけれけれととと覺覺おぼゆゆゆ几几き帳帳ちょうののの內內うちににに入入いりりり給給たまひひいぬれぬれぬればばば若若わか君君きみはははめのとめのとめのとなどなどなどもてもてもてあそびあそびあそび聞聞きこゆゆゆ。。。人々人々ひとびと參參まいりりりあつまれあつまれあつまれどどど、、、なやましなやましなやましとてとてとて大大おお殿殿との籠籠ごもりりりくらしくらしくらしつつつ、、、御御み臺臺だいこなたこなたこなたにににまゐるまゐるまいる。。。
現代語訳
自分も故北の方とは縁の離れ申し上げるはずの人だろうか、お仕えしたというだけで、人数に入れていただけず残念で、このように人には侮られるのだと思うと、こうして参って親しくし申し上げるのもつまらない。ここには御物忌と言ってあったので人も通わず、二三日ほど母君もいた。今度は落ち着いて、この御方のご様子を見る。宮がお越しになる。見たくて物の隙間から見ると、たいそう美しく、桜を折ったような様子でいらっしゃって、自分が頼みにする人と思って、つらく恨めしいけれど、その心には背くまいと思う常陸守より、姿形も人の品格もこの上なく見える五位や四位の者たちが、並んでひざまずいてお仕えして、この事あの事と、あちこちの事柄を申し上げ、供の者なども申し上げる。また若々しい五位たちや、顔も知らない供人も多い。わが継子で式部丞で蔵人である者が、内裏のお使いとして参った。
お側にも近くは参れず、この上ないお方のご様子を、ああ、これは何という人だろう、このような方のお側にいらっしゃるすばらしさよ、よそに思っていた時は、立派な人々と申しても、つらい目をお見せになったらと、気が重く推し量り申し上げていたのは呆れたことだ、このご様子やお顔立ちを見ると、七夕ほどの逢瀬でも、このように拝見して通われるのは、たいそうすばらしいことに違いないと思うと、宮は若君を抱いて可愛がっていらっしゃる。女君が短い几帳を隔てて座っているのを押しやって、何かお話し申し上げなさる。お二人のお顔立ちはたいそう美しく似合っている。故宮の寂しくいらしたご様子を思い比べると、宮たちと申しても、たいそう格別なものだったと思われる。宮が几帳の中にお入りになったので、若君は乳母などがあやし申し上げる。人々が参り集まるけれど、宮は気分が悪いと言って一日お休みになって過ごし、お食膳はこちらに差し上げる。
意訳
北の方は、八の宮の北の方の姪でありながら女房として仕えたために人数に入れられなかったことを悔しく思う。二条院の浮舟の局に二、三日滞在するうち、北の方は匂宮の姿をのぞき見る。桜のように美しい匂宮に、常陸介より立派な四位五位の者たちが仕え、北の方の継子の蔵人さえ近づけない。若君を抱き、中の君と寄り添う匂宮の姿に、北の方は、このような方となら七夕ほどの逢瀬でもすばらしいと思う。
語釈・文法注
文法
- 「かずまへられ」(かずまへられ奉らず口惜しくて)
- 人数に入れられる。一人前に扱われる。
- 「啓し」(あたりあたりの事ども啓し)
- 申し上げる。
- 「御臺」(御臺こなたにまゐる)
- 御膳。食事。
解説
北の方は、匂宮の圧倒的な美しさと威勢を目の当たりにする。かつて身分の高い男性の愛の不確かさを語った彼女が、ここではその魅力に心を動かされている。
「七夕ばかりにても」という北の方の思いは、浮舟にもこのような高貴な方との縁をという願いへと変わっていく。母の心の揺れが、浮舟の運命を左右する。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1078–1079頁(コマ250)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日