源氏物語 第50帖 東屋(11)
中の君への依頼
見苦しくなくさっぱりと、あちこちあるべき限り整えてあった所を、守はお節介に屏風などを持ってきて、うっとうしいほど立て集め、厨子や二階棚などを妙なほどに加えて、得意になって準備するので、北の方は見苦しく見るが、口出しすまいと言ったので、ただ見聞きしている。浮舟は北側の部屋にいらっしゃる。守は「あなたのお心はよくわかった。ただ同じ子なのだから、いくら何でもこれほど見放しはなさるまいと思っていた。いや、世に母のない子はいないものか」と言って、娘を昼から乳母と二人で撫でつくろって飾り立てたので、憎らしくもない。年は十五六ほどで、たいそう小柄でふっくらした人で、髪が美しげで、小袿の丈ほどで裾がたいそうふさふさしている。守はこれをたいそう立派だと思って撫でつくろう。「どうして人が別の娘にと思い構えていた人をわざわざと思うが、人柄が惜しく優れていらっしゃる君なので、我も我もと婿に取りたがる人が多いそうなので、取られてしまうのも残念で」と、あの仲人に謀られて言うのもたいそう愚かである。少将もこの程の、盛大で思うようになったことと、何の罪もないように思って、その夜も変えずに通い始めた。母君や浮舟の乳母はたいそう呆れたことと思う。ひねくれているようなので、あれこれ世話するのも気に入らないので、北の方は宮の北の方(中の君)のもとにお手紙を差し上げる。「格別の用もなくては馴れ馴れしいかと恐縮して、思うままにも申し上げられませんでしたが、慎まなければならないことがございまして、しばらく所を変えさせようと存じますので、たいそう忍んでお仕えできそうな隠れ場所がございましたら、たいそううれしく存じます。人数でもない身一つの陰には隠れきれず、哀れなことばかり多い世ですので、頼もしい方にはまずと」と、泣きながら書いた手紙を、中の君は哀れとはご覧になったが、故宮がそれほどお認めにならずに終わった人を、自分ひとりが残って知り合いのように扱うのもたいそう気が引ける、また見苦しい様子で世に落ちぶれるのを知らぬ顔で聞くのも心苦しいだろう、格別のこともなくて互いに散り散りになるのも、亡き人のために見苦しいことだと、お思い悩みになる。
- 1めやすきめやすきめやすきさまさまさまにににさばらかさばらかさばらかににに、、、あたりあたりあたりあたりあたりあたりあるあるあるべきべきべきかぎりかぎりかぎりしししたるたるたる所所ところををを、、、さかしらさかしらさかしらににに屏屏びょう風風ぶどもどもども持持もててて來來きててて、、、いぶせきいぶせきいぶせきまでまでまでたてたてたて集集あつめめめててて厨厨ず子子し、、、二二に階階かいなとなとなと、、、あやしきあやしきあやしきまでまでまでしししくはへくはへくわえててて、、、心心こころをををやりやりやりててていそげいそげいそげばばば、、、北北きたののの方方かた見見み苦苦ぐるしくしくしく見見みれれれどどど、、、口口くち入入いれれれじじじととといひいひいいてててしかしかしかばばば、、、たゞたゞただににに見見み聞聞きくくく。。。御御おんかたかたかたははは北北きたおもておもておもてににに居居い給給たまへへえりりり。。。かみかみかみ、、、「「「人人ひとののの御心御心みこころははは見見み知知しりりりはてはてはてぬぬぬ。。。唯唯ただ同同おなじじじ子子こなれなれなればばば、、、さりともさりともさりともいといといとかくかくかくははは思思おもひひい放放はなちちち給給たまははわじじじとととこそこそこそ思思おもひひいつれつれつれ。。。さればさればされば世世よににに母母ははなきなきなき子子こはははなくなくなくやはやはやはあるあるある」」」とてとてとて娘娘むすめををを晝晝ひるよりよりよりめのとめのとめのとゝゝと二二ふた人人りなでなでなでつくろひつくろひつくろい立立たてててたれたれたればばば、、、にくげにくげにくげにににもももあらあらあらずずず。。。年年とし十十じゅう五五ご六六ろくのののほどほどほどにてにてにて、、、いといといとちひさやかちひさやかちいさやかにににふくらかふくらかふくらかなるなるなる人人ひとののの髮髮かみ美美うつくしげくしげくしげにてにてにて小小こうちきうちきうちきのののほどほどほどなるなるなるすそすそすそいといといとふさやかふさやかふさやかなりなりなり。。。これこれこれをををいといといとめでたしめでたしめでたしととと思思おもひひいてててなでなでなでつくろふつくろふつくろう。。。何何なにかかか人人ひとのののことことことざまざまざまににに思思おもひひいかまへかまへかまえられられられけるけるける人人ひとをををしもしもしもととと思思おもへへえどどど、、、人人ひとがらがらがらのののあたらしくあたらしくあたらしく、、、かうさくかうさくこうさくにににものしものしものし給給たまふふう君君きみなれなれなればばば、、、われわれわれもももわれわれわれもももととと婿婿むこににに取取とらららまほしくまほしくまほしくするするする人人ひとののの多多おおかかかなるなるなるににに、、、取取とららられれれなむなむなんももも口口くち惜惜おしくしくしくてててなむなむなんととと、、、かのかのかのなかなかなかひとひとひとににに謀謀はかららられれれててていふいふいうもももいといといとをこをこおこなりなりなり。。。
- 2男男おとこ君君きみもももこのこのこの程程ほどののの、、、いかめしくいかめしくいかめしく思思おもふふうやうやうようなるなるなることことことゝゝと萬萬よろずののの罪罪つみあるあるあるまじうまじうまじゅう思思おもひひいててて、、、そのそのその夜夜よもももかへかへかへずずずきききそめそめそめぬぬぬ。。。母母はは君君ぎみ御御おん方方かたのののめのとめのとめのと、、、いといといとあさましくあさましくあさましく思思おもふふう。。。ひがひがしきひがひがしきひがひがしきやうやうようなれなれなればばば、、、とかくとかくとかく見見みあつかふあつかふあつかうももも心心こころづきなけれづきなけれずきなければばば宮宮みやののの北北きたののの方方かたののの御御おんもともともとににに御御おん文文ふみ奉奉たてまつるるる。。。「「「そのそのその事事ことととと侍侍はべらららでででははは、、、なれなれしくなれなれしくなれなれしくやややとととかしこまりかしこまりかしこまりててて、、、えええ思思おもひひい給給たまふるふるうるまゝまゝままにににももも聞聞きこえええさせさせさせぬぬぬををを、、、愼愼つつしむむむべきべきべきことことこと侍侍はべりりりててて、、、しばししばししばし所所ところがへがへがえさせさせさせむむんととと思思おもひひい給給たまふるふるうるににに、、、いといといと忍忍しのびびびててて侍侍さぶらひひい給給たまひひいぬぬぬべきべきべき、、、かくれかくれかくれのののかたかたかた候候さぶらははわゞゞば、、、いといといともももいといといとももも嬉嬉うれしくしくしくなむなむなん、、、數數かずならならならぬぬぬ身身みひとつひとつひとつののの影影かげににに隱隱かくれれれもももあへあへあえずずず、、、哀哀あわれなるなるなることことことのみのみのみ多多おおくくく侍侍はべるるる世世よなれなれなればばば、、、たのもしきたのもしきたのもしき方方かたにににはははまづまづまずなむなむなん」」」ととと、、、うちうちうち泣泣なきききつゝつゝつつ書書かきききたるたるたる文文ふみををを哀哀あわれとととははは見見み給給たまひひいけれけれけれどどど、、、故故こ宮宮みやのののさばかりさばかりさばかり許許ゆるししし給給たまははわででで止止やみみみにににししし人人ひとををを、、、我我わひとりひとりひとり殘殘のこりりりててて、、、知知しりりり語語かたらはらはらわむむんもももいといといとつゝましくつゝましくつつましく、、、又又また見見み苦苦ぐるしきしきしきさまさまさまにてにてにて、、、世世よにににあぶれあぶれあぶれむむんももも知知しらららずずず顏顏がおにてにてにて聞聞きかかかむむんこそこそこそ、、、心苦心苦こころぐるしかるしかるしかるべけれべけれべけれ、、、ことことことなるなるなるとととなくなくなくててて、、、かたみかたみかたみにににちりぼはちりぼはちりぼわむむんももも、、、なきなきなき人人ひとののの御御おんためためためににに見見み苦苦ぐるしかるしかるしかるべきべきべきわざわざわざををを、、、覺覺おぼししし煩煩わずらふふう。。。
現代語訳
見苦しくなくさっぱりと、あちこちあるべき限り整えてあった所を、守はお節介に屏風などを持ってきて、うっとうしいほど立て集め、厨子や二階棚などを妙なほどに加えて、得意になって準備するので、北の方は見苦しく見るけれど、口出しすまいと言ってしまったので、ただ見聞きしている。浮舟は北側の部屋にいらっしゃった。守は「あなたのお心はすっかりわかった。ただ同じ子なのだから、いくら何でもこれほど見放しはなさるまいと思っていた。いや、世に母のない子はいないものか」と言って、娘を昼から乳母と二人で撫でつくろって飾り立てたので、憎らしくもない。年は十五六ほどで、たいそう小柄でふっくらした人で、髪が美しげで、小袿の丈ほどの裾がたいそうふさふさしている。これをたいそう立派だと思って撫でつくろう。「どうして人が別の娘にと思い構えていた人をわざわざと思うけれど、人柄が惜しく、優れていらっしゃる君なので、我も我もと婿に取りたがる人が多いそうなので、取られてしまうのも残念で」と、あの仲人に謀られて言うのも、たいそう愚かである。
男君も、この程の、盛大で思いどおりになったことと、何の罪もないように思って、その夜も変えずに通い始めた。母君や浮舟の乳母は、たいそう呆れたことと思う。ひねくれているようなので、あれこれ世話するのも気に入らないので、北の方は宮の北の方のもとにお手紙を差し上げる。「格別の用もございませんでは、馴れ馴れしいかと恐縮して、思うままにも申し上げられませんでしたが、慎まなければならないことがございまして、しばらく所を変えさせようと存じますので、たいそう忍んでお仕えできそうな隠れ場所がございましたら、たいそうたいそううれしく存じます。人数でもない身一つの陰には隠れきれず、哀れなことばかり多い世でございますので、頼もしい方にはまずと」と、泣きながら書いた手紙を、中の君は哀れとはご覧になったが、故宮がそれほどお認めにならずに終わった人を、自分ひとりが残って知り合いのように扱うのもたいそう気が引ける、また見苦しい様子で世に落ちぶれるのを知らぬ顔で聞くのも心苦しいに違いない、格別のこともなくて、互いに散り散りになるのも、亡き人の御ために見苦しいことだと、お思い悩みになる。
意訳
常陸介は西の対に屏風や厨子をごたごたと持ち込み、実の娘を飾り立てる。娘は十五、六歳の小柄でふっくらした娘だった。少将は約束の日のまま常陸介の娘のもとに通い始める。北の方は浮舟の居場所に困り、中の君にしばらく浮舟をかくまってほしいと手紙で頼む。中の君は、八の宮が認めなかった浮舟を引き取ることにためらいつつも、見捨てるのも心苦しいと思い悩む。
語釈・文法注
文法
- 「さかしらに」(さかしらに屏風ども持て來て)
- お節介に、出しゃばって。
- 「をこ」(かのなかひとに謀られていふもいとをこなり)
- 愚かなこと。
- 「ちりぼはむ」(かたみにちりぼはむも)
- 散り散りになること。
解説
常陸介の悪趣味な飾りつけは、北の方の整えた上品な部屋を台無しにする。語り手は常陸介を「いとをこなり」と評し、その愚かさを強調する。
北の方は、浮舟の身を中の君に託そうとする。この依頼が、浮舟を二条院へ、そして匂宮との出会いへと導くことになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1074–1077頁(コマ248–249)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日