源氏物語 第50帖 東屋(9)
常陸介の得意顔
明日か明後日かと思うので気ぜわしく忙しいうえに、北の方はこちらにも落ち着いていられず、そわそわと歩き回っていると、守が外から入ってきて、長々と滞ることもなく言い続ける。「私を分け隔てして、わが娘への求婚者を奪おうとなさったのは、身の程知らずで考えの浅いことだ。立派な御娘を、気に入る公達などいるまい。卑しく風変わりな私などの娘をこそ、卑しくても尋ねておっしゃるようだ。賢く企てられたが、全く不本意だとして、ほかへお心を移しなさりそうなので、同じことならと思って、それならお心のままにとお許し申し上げた」などと、妙に無遠慮で、人がどう思うかも知らない人で、言い散らしている。北の方は呆れて物も言えず、しばらく思うと、世の中のつらさを次々に思い連ね、涙も落ちそうなほど思い続けられて、そっと立った。浮舟の部屋に来て見ると、たいそう可憐で美しく座っていらっしゃるので、それでも人には劣りなさるまいと思って心を慰める。乳母と二人で、「情けないものは人の心だった。私は同じように世話しても、この君の縁者と思う人のためには命も譲るほどに思っているのに、親がないと聞いて侮って、まだ幼く一人前にならない人を差し置いて、こんなことを言ってよいものか。このように情けなく、近くで見聞きすまいと思うが、守がこれほど面目あることと思って引き受けて騒いでいるようなので、呆れるほど似合いの世の人の有様を、すべてこうしたことに口出しすまいと思う。何とかしてここではない所に、しばらくいたいものだ」と嘆きながら言う。乳母もたいそう腹立たしく、わが君をこのように見下すことと思うので、「何の、これもご幸運で、縁が違ったとも思わず、こんなに心の卑しい君だったのだから、惜しいご様子も見知ることはなかったでしょう。わが君は、心ばせがあり物の道理をわきまえている人にこそお見せ申し上げたいものです。
- 1あすあすあすあさてあさてあさてととと思思おもへへえばばば心心こころあわたゞしくあわたゞしくあわただしくいそがしきいそがしきいそがしきににに、、、こなたこなたこなたにににももも心心こころのどかのどかのどかににに居居いられられられたらたらたらずずず、、、そゝめきそゝめきそそめきありくありくありくににに、、、かみかみかみとととよりよりより入入いりりり來來きててて、、、ながながとながながとながながと滯滯とどこおるるる所所ところもももなくなくなく言言いひひい續續つづけけけててて「「「我我わををを思思おもひひい隔隔へだてててゝゝて、、、あこあこあこののの御御おん懸懸け想想そうびとびとびとををを奪奪うばははわむむんとととししし給給たまひひいけるけるけるががが、、、おほけなくおほけなくおおけなく心心こころをさなきをさなきおさなきことことこと、、、めでたからめでたからめでたからむむん御御おんむすめむすめむすめをををばばば、、、ようぜようぜようぜさせさせさせ給給たまふふう君君きん達達だちあらあらあらじじじ、、、賤賤いやしくしくしくことことことやうやうようならならならむむんなにがしなにがしなにがし等等らかかか女女めごごごをををこそこそこそ賤賤いやしうしうしゅうももも尋尋たずねねねのたまふのたまふのたまうめれめれめれ。。。かしこくかしこくかしこく思思おもひひい企企くわだてててられられられけれけれけれどどど、、、もはらもはらもはらほいほいほいなしなしなしとてとてとて、、、ほかほかほかざまざまざまへへへ思思おもひひいなりなりなり給給たまひひいぬぬぬべかべかべかなれなれなればばば、、、同同おなじくじくじくいといといと思思おもひひいてててなむなむなん、、、さらばさらばさらば御心御心みこころととと許許ゆるししし申申もうしししつるつるつる」」」などなどなど怪怪あやしくしくしくあうなくあうなくおうなく人人ひとののの思思おもははわむむん所所ところももも知知しらららぬぬぬ人人ひとにてにてにて、、、言言いひひいちらしちらしちらし居居いだりだりだり。。。北北きたののの方方かたあきれあきれあきれててて物物ものもももいはいはいわれれれででで、、、とばかりとばかりとばかり思思おもふふうににに、、、世世よののの中中なかののの心心こころうううさささをををかきかきかきつらねつらねつらね、、、淚淚なみだももも墮墮おちちちぬぬぬばかりばかりばかり思思おもひひい續續つづけけけられられられててて、、、やをらやをらやおら立立たちちちぬぬぬ。。。
- 2こなたこなたこなたににに渡渡わたりりりててて見見みるるるににに、、、いといといとらうたげらうたげろうたげにににをかしげをかしげおかしげにてにてにて居居い給給たまへへえるるるににに、、、さりともさりともさりとも人人ひとにににははは劣劣おとりりり給給たまははわじじじとととははは思思おもひひい慰慰なぐさむむむ。。。めのとめのとめのとゝゝと二二ふた人人り、、、「「「心心こころうううきききものものものははは人人ひとののの心心こころなりなりなりけりけりけり。。。おのれおのれおのれははは同同おなじじじごとごとごと思思おもひひいあつかふあつかふあつかうともともとも、、、このこのこの君君きみのののゆかりゆかりゆかりととと思思おもははわむむん人人ひとのののためためためにににははは命命いのちをををももも讓讓ゆずりりりつつつべくべくべくこそこそこそ思思おもへへえ、、、親親おやなしなしなしととと聞聞ききききあなづりあなづりあなずりててて、、、まだまだまだ幼幼おさなくくくなりなりなりあはあはあわぬぬぬ人人ひとをををさしさしさし越越こえええててて、、、かくかくかくはははいひいひいいなるなるなるべしべしべしややや。。。かくかくかく心憂心憂うくくく近近ちかきききあたりあたりあたりににに見見みじじじ聞聞きかかかじじじととと思思おもひひいぬれぬれぬれどどど、、、かみかみかみのののかくかくかくおもだゝしきおもだゝしきおもだたしきことことことににに思思おもひひいてててうけうけうけとりとりとり騷騷さわぐぐぐめれめれめればばば、、、あさましくあさましくあさましくあひあひあひあひあいあいにににたるたるたる、、、世世よののの人人ひとののの有有あり樣樣さまををを、、、すべてすべてすべてかゝるかゝるかかることことことににに口口くち入入いれれれじじじととと思思おもふふう。。。いかでいかでいかでこゝこゝここならならならぬぬぬ所所ところににに、、、しばししばししばしありありありにににしがなしがなしがな」」」ととと打打うちちち歎歎なげきききつゝつゝつついふいふいう。。。めのとめのとめのともももいといといと腹腹はらだゝしくだゝしくだたしく、、、わがわがわが君君きみをををかくかくかくおとしむるおとしむるおとしむることことことゝゝと思思おもふふうににに、、、「「「何何なにかかかこれこれこれももも御御おんさいはひさいはひさいわいにてにてにて、、、たがふたがふたがうことことことゝゝとももも知知しらららずずず、、、かくかくかく心心こころ口口くちをしくをしくおしくいましいましいましけるけるける君君きみなれなれなればばば、、、あたらあたらあたら御御おんさまさまさまをををももも見見み知知しらららざらざらざらましましまし。。。わがわがわが君君きみをををばばば心心こころばせばせばせありありあり、、、物物もの思思おもひひい知知しりりりたらたらたらむむん人人ひとにににこそこそこそ見見みせせせ奉奉たてまつらららまほしまほしまほしけれけれけれ。。。
現代語訳
明日か明後日かと思うので、心あわただしく忙しいうえに、北の方はこちらにも落ち着いていられず、そわそわと歩き回っていると、守が外から入ってきて、長々と滞るところもなく言い続けて、「私を分け隔てして、わが娘への求婚者を奪おうとなさったのは、身の程知らずで考えの浅いことだ。立派な御娘を、気に入りなさる公達はいるまい。卑しく風変わりな私などの娘をこそ、卑しくても尋ねておっしゃるようだ。賢く企てられたが、全く不本意だということで、ほかの方へお心をお移しになりそうなので、同じことならと思って、それならお心のままにとお許し申し上げた」などと、妙に無遠慮で、人がどう思うかも知らない人で、言い散らしている。北の方は呆れて物も言えず、しばらく思うと、世の中のつらさを次々に思い連ね、涙も落ちそうなほど思い続けられて、そっと立った。
こちらに来て見ると、浮舟はたいそう可憐で美しく座っていらっしゃるので、それでも人には劣りなさるまいとは思って心を慰める。乳母と二人で、「情けないものは人の心だった。私は同じように世話しても、この君の縁者と思うような人のためには、命も譲るほどに思っているのに、親がないと聞いて侮って、まだ幼く一人前にならない人を差し置いて、こんなふうに言いなしてよいものか。このように情けなく、近くで見聞きすまいと思うけれど、守がこれほど面目あることと思って引き受けて騒いでいるようなので、呆れるほど似合いの世の人の有様を、すべてこうしたことに口出しすまいと思う。何とかしてここではない所に、しばらくいたいものだ」と嘆きながら言う。乳母もたいそう腹立たしく、わが君をこのように見下すことと思うので、「何の、これもご幸運で、縁が違ったとも知らず、こんなに心の卑しくいらした君なのですから、惜しいご様子も見知ることはなかったでしょう。わが君は、心ばせがあり、物の道理をわきまえているような人にこそお見せ申し上げたいものです。
意訳
婚儀を前に、常陸介は北の方に、少将が自分の実の娘を望んだので承知したと得意げにまくし立てる。北の方は呆れて言葉もなく、浮舟の部屋に行き、その美しさに慰められつつ、乳母と少将の心変わりを嘆く。北の方はしばらくどこか別の所に移りたいと言い、乳母も腹を立てて、こんな卑しい心の男でなく、物の分かる人にこそ浮舟を見せたいと言う。
語釈・文法注
文法
- 「あこ」(あこの御懸想びとを奪はむとし給ひけるが)
- わが子。常陸介が自分の娘を指す。
- 「ようぜさせ給ふ」(めでたからむ御むすめをば、ようぜさせ給ふ君達あらじ)
- 用ぜさせ給ふ。気に入る、相手にする。
- 「あうなく」(怪しくあうなく人の思はむ所も知らぬ人にて)
- 無遠慮に、軽率に。
解説
常陸介は、妻が浮舟のために進めた縁談を、自分の娘に奪ったことを得意げに語る。その無神経な言葉が、北の方の心を深く傷つける。
北の方と乳母の嘆きは、浮舟の身の上の不安定さを改めて浮き彫りにする。父のない浮舟は、こうして人に侮られる存在であった。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1072–1075頁(コマ247–248)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
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