源氏物語 第50帖 東屋(7)
財産と出世
仲人は「領地も多くございます。まだ今のところは財産がないようですが、自然と人柄の重みがあるので、並の人の限りない富という勢いにはまさっていらっしゃいます。来年は四位になられるでしょう。今度の蔵人頭は疑いなく帝の御口ずからお決めになったそうです。万事整って見苦しくない朝臣が妻を定めていないのはよくない、然るべき人を選んで後見を設けよ、上達部には私がいるから、今日明日というほどに引き上げてやろうと仰せられるそうです。何事もただこの君が帝にも親しくお仕えなさるそうです。お心はまた、たいそう優れて重々しくいらっしゃるようです。惜しい婿君なのを、こう申し上げているうちにお思い立ちになるのがよいでしょう。あの殿には我も我もと婿に取りたがる所があるそうなので、ここで渋る様子があれば、ほかにお思いが移ってしまうでしょう。これはただ安心なことを申し上げるのです」と、たいそう多く調子よく言い続けるので、ひどく呆れるほど田舎びた守で、笑みを浮かべながら聞いている。「今の財産が心もとないなどということはおっしゃいますな。私の命のある限りは、頭上にも捧げましょう。心もとなく何を物足りないとお思いになりましょう。たとえ途中で死んでお仕えしきれなくても、残りの宝物や領地は、一つとしてまた取り争う者はいません。子どもは多くおりますが、これは格別に思い始めた子です。ただ真心からお顧みくだされば、大臣の位を求めたいとお願いになって、世にない宝物を尽くそうとなさっても、ないものはございますまい。今の帝がそのようにお恵みくださるそうなので、御後見は心もとないことはありますまい。これは少将殿のためにも、私の娘のためにも幸いとなることかもしれません」と、よさそうに言う時に、仲人はたいそううれしくなって、妹にもこうしたことがあるとも話さず、浮舟の方にも寄りつかず、守の言ったことをたいそうたいそう結構だと思って申し上げると、少将の君は少し田舎びていると聞くが、憎からず笑みを浮かべて聞いていらっしゃる。
- 1領領りょうじじじ給給たまふふう所所ところ々々どころもももいといといと多多おおくくく侍侍はべりりり。。。まだまだまだころころころののの御御おん德德とくなきなきなきやうやうようなれなれなれどどど、、、おのづからおのづからおのずから人人ひとののの御御おんけはひけはひけはいのののありありありけるけるけるやうやうよう、、、なほなほなおびとびとびとののの限限かぎりなきなきなき富富とみととといふいふいうめるめるめる勢勢いきおひひいにににははは優優まさりりり給給たまへへえりりり。。。來來らい年年ねん四四し位位いににになりなりなり給給たまひひいなななむむん、、、こたびこたびこたびのののとうとうとうははは疑疑うたがひひいなくなくなく帝帝みかどののの御御おん口口くちづからづからずからごてごてごて給給たまへへえるるるなりなりなり。。。よろづよろづよろずののの事事ことたらひたらひたらいてててめやすきめやすきめやすき朝朝あ臣臣そんのののめめめをををなむなむなん定定さだめめめざざざなるなるなるはははややや、、、さるべきさるべきさるべき人人ひとえりえりえりててて後後うしろ見見みををを設設もうけけけよよよ、、、上上かん達達だち部部めにににはははわれわれわれしししあれあれあればばば、、、けふけふきょうあすあすあすととといふいふいうばかりばかりばかりににになしなしなしあげあげあげてててむむんとととこそこそこそおほせおほせおおせらるらるらるなれなれなれ。。。何何なに事事こともももたゞたゞただこのこのこの君君きみぞぞぞ帝帝みかどにににももも親親したしくしくしく仕仕つこうううまつりまつりまつり給給たまふふうなるなるなる。。。御心御心みこころはははたたた、、、いみじういみじういみじゅうかうざくかうざくこうざくににに重重おも々々おもしくしくしくなむなむなんおはしますおはしますおわしますめるめるめる。。。あたらあたらあたら人人ひとののの御御おん婿婿むこををを、、、かうかうこう聞聞きこえええ給給たまふふう程程ほどににに思思おもほしほしおし立立たちちちなななむむんこそこそこそよからよからよからめめめ。。。かのかのかの殿殿とのにににははは、、、我我わももも我我わももも婿婿むことりとりとり奉奉たてまつらららむむんととと所所ところ々々どころ侍侍はべるるるなれなれなればばば、、、こゝこゝここにににしぶしぶしぶしぶしぶしぶなるなるなる御御おんけはひけはひけはいあらあらあらばばばほかほかほかざまざまざまにににもももおぼしおぼしおぼしなりなりなりなななむむん。。。これこれこれ唯唯ただうしろうしろうしろ安安やすきききことことことをををとりとりとり申申もうすすすなりなりなり」」」ととと、、、いといといと多多おおくくくよげよげよげにににいひいひいいつゞくるつゞくるつづくるににに、、、いといといとあさましくあさましくあさましく鄙鄙ひなびびびたるたるたるかみかみかみにてにてにて、、、打打うちちちゑみゑみえみつゝつゝつつ聞聞きききき居居いたりたりたり。。。
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現代語訳
仲人は「領有なさる所々もたいそう多くございます。まだ今のところは財産がないようですが、自然と人柄の重みがおありになるので、並の人の限りない富というような勢いにはまさっていらっしゃいます。来年は四位におなりになるでしょう。今度の蔵人頭は、疑いなく帝の御口ずからお決めになったのです。万事整って見苦しくない朝臣が、妻を定めていないのはよくない、然るべき人を選んで後見を設けよ、上達部には私がいるから、今日明日というほどに引き上げてやろうと仰せられるそうです。何事も、ただこの君こそ帝にも親しくお仕えなさるそうです。お心はまた、たいそう優れて重々しくいらっしゃるようです。惜しい人のお婿を、こう申し上げているうちにお思い立ちになるのがよいでしょう。あの殿には、我も我もと婿にお取り申し上げようとする所々があるそうなので、ここで渋る様子があれば、ほかの方にお思いが移ってしまうでしょう。これはただ安心なことを申し上げるのです」と、たいそう多く調子よく言い続けるので、ひどく呆れるほど田舎びた守で、笑みを浮かべながら聞いていた。
「今の財産が心もとないなどということはおっしゃいますな。私の命のございます限りは、頭上にも捧げ申し上げましょう。心もとなく、何を物足りないとお思いになりましょう。たとえ途中で死んでお仕えしきれなくても、残りの宝物や、領有しております所々は、一つとしてまた取り争う者はおりません。子どもは多くおりますが、これは格別に思い始めた子でございます。ただ真心からお顧みくださるならば、大臣の位を求めたいとお願いになって、世にない宝物を尽くそうとなさっても、ないものはございますまい。今の帝がそのようにお恵み申し上げなさるそうなので、御後見は心もとないことはありますまい。これは少将殿のためにも、私の娘のためにも幸いとなることかもしれません」と、よさそうに言う時に、仲人はたいそううれしくなって、妹にもこうしたことがあるとも話さず、浮舟の方にも寄りつかず、守の言ったことを、たいそうたいそう結構だと思って申し上げると、少将の君は少し田舎びているとはお聞きになるが、憎からず笑みを浮かべて聞いていらっしゃった。
意訳
仲人は、少将は財産こそないが人柄が優れ、帝の信任も厚く、来年は四位、蔵人頭は確実で、帝も早く妻を持てと勧めていると調子よく語る。常陸介は笑顔で聞き、命ある限り婿を支え、財産はすべてこの娘のもの、大臣の位を望むなら宝物も惜しまないと豪語する。仲人は浮舟方には知らせず少将に報告し、少将は常陸介の田舎臭さを感じつつも満足する。
語釈・文法注
文法
- 「こたびのとう」(こたびのとうは疑ひなく帝の御口づからごて給へるなり)
- 今度の蔵人頭。蔵人所の長官。出世の要職。
- 「かうざく」(いみじうかうざくに重々しくなむ)
- 警策。優れていること。
- 「いたゞきにも捧げ」(いたゞきにも捧げ奉りてむ)
- 頭上に捧げ持つ。この上なく大切にすること。
解説
仲人は少将の出世の見込みを大げさに語り、常陸介は財力を誇示する。二人の会話は、互いの欲望を満たす取引である。浮舟の縁談は、こうして金と出世の交換に置き換えられる。
語り手は常陸介を「いとあさましく鄙びたる」と評する。受領の成金ぶりへの批判的な視線が、宇治十帖の世界に新たな社会層を持ち込んでいる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、1070–1073頁(コマ246–247)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日