源氏物語 第47帖 総角(51)
大君の死
見る間に、物が枯れていくようにして消え果ててしまったのは、ひどいことである。引き止めるすべもなく、足ずりもしたいほどで、人が愚かしいと見ることも気にかけられず、薫はもう最期だと見申し上げて、中の君が後に残るまいと思い惑うさまももっともである。正気もないように見える中の君を、例の賢ぶる女房たちが、今はたいそう不吉なことと引き離し申し上げる。中納言の君は、それでもまさかこんなことはあるまい、夢かと思って、灯火を近く掲げて見ると、隠していた顔もただ眠っているようで、変わったところもなく美しく横たわっているのを、このままで虫の抜け殻のようにでも見続けることができたらと思い惑う。最期の作法をする時、髪をかき上げると、さっと匂ったのが、ただ生前のままの匂いで、親しみやすく香ばしいのもめったになく、何事によってこの人を少しでも並の人だったと思いを冷ませようか、本当に世の中を思い捨てる導きならば、恐ろしげでつらいことの悲しさも冷めてしまうような点だけでも見つけさせてくださいと仏に祈るが、ますます思いを落ち着けるすべもないので、言うかいもなく、せめてひたすら煙にしてしまおうと思って、あれこれと例の葬送の作法をするのは呆れるほどであった。薫は空を歩むように漂いながら、最期の有様までもはかなげで、煙も多くは立ちのぼらずに終わってしまったのも、あっけないと呆然として帰った。
- 1見見みるるるまゝまゝままににに物物ものののの枯枯かれれれ行行ゆくくくやうやうようにてにてにて消消きえええはてはてはて給給たまひひいぬるぬるぬるはははいみじきいみじきいみじきわざわざわざかなかなかな。。。引引ひきききとゞむとゞむとどむべきべきべき方方かたなくなくなく、、、あしあしあしずりずりずりもももしししつつつべくべくべく、、、人人ひとのののかたくなしかたくなしかたくなしととと見見みむむんことことこともももおぼえおぼえおぼえずずず、、、かぎりかぎりかぎりととと見見み奉奉たてまつりりり給給たまひひいててて、、、中中なかののの君君きみののの後後おくれれれじじじととと思思おもひひい惑惑まどひひい給給たまへへえるるるさまさまさまもももことわりことわりことわりなりなりなり。。。あるあるあるにににもももあらあらあらずずず見見みえええ給給たまふふうををを、、、例例れいのののさかしきさかしきさかしき女女おんなばらばらばら、、、今今いまはははいといといとゆゝしきゆゝしきゆゆしきことことことゝゝと引引ひきききさけさけさけ奉奉たてまつるるる。。。中中ちゅう納納な言言ごんののの君君きみははは、、、さりともさりともさりともいかゞいかゞいかがかゝるかゝるかかる事事ことあらあらあらじじじ、、、夢夢ゆめかかかとととおぼしおぼしおぼしててて、、、おほとなぶらおほとなぶらおおとなぶらををを近近ちこうううかゝげかゝげかかげててて見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうににに、、、隱隱かくししし給給たまふふう顏顏かおももも、、、唯唯ただ寢寢ね給給たまへへえるるるやうやうようにてにてにて變變かわりりり給給たまへへえるるる所所ところもももなくなくなくうつくしげうつくしげうつくしげにてにてにてうちうちうち臥臥ふししし給給たまへへえるるるををを、、、かくかくかくながらながらながらむかしむかしむかしからからからのののやうやうようにてにてにてももも見見みるるるわざわざわざならならならましかましかましかばばばととと、、、思思おもひひい惑惑まどははわるるる。。。今今いまはははのののことことことゞゞどもももするするする、、、御御おんぐしぐしぐしをををかきかきかきやるやるやるににに、、、さとさとさとうちうちうちにほひにほひにおいたるたるたる、、、たゞたゞただありありありしししながらながらながらのののにほひにほひにおいににに、、、なつかしうなつかしうなつかしゅうかうばしきかうばしきこうばしきもももありがたうありがたうありがとう、、、何何なに事事ことにてにてにてこのこのこの人人ひとををを少少すこしししもももなのめなのめなのめなりなりなりしししととと思思おもひひいさまささまささまさむむん、、、誠誠まことににに世世よののの中中なかををを思思おもひひい捨捨すてててはつるはつるはつるしるべしるべしるべならならならばばば、、、恐恐おそろしげしげしげにににうきうきうきことことことののの悲悲かなしさしさしさももも、、、さめさめさめぬぬぬべきべきべきふしふしふしをををだにだにだに見見みつけつけつけさせさせさせ給給たまへへえととと佛佛ほとけををを念念ねんじじじ給給たまへへえどどど、、、いとゞいとゞいとど思思おもひひいのどめのどめのどめむむん方方かたなくなくなくのみのみのみあれあれあればばば、、、いふかひいふかひいうかいなくなくなくててて、、、ひたぶるひたぶるひたぶるににに煙煙けぶりにににだにだにだになしなしなしはてはてはてゝゝてむむんとととおもほしおもほしおもおしててて、、、とかくとかくとかく例例れいののの作作さ法法ほうどもどもどもするするするぞぞぞあさましかりあさましかりあさましかりけるけるける。。。空空そらををを步步あゆむむむやうやうようにににたゞよひたゞよひただよいつゝつゝつつ、、、限限かぎりのののありさまありさまありさまさへさへさへはかなげはかなげはかなげにてにてにて、、、煙煙けぶりももも多多おおくくくむすぼゝれむすぼゝれむすぼおれ給給たまははわずずずなりなりなりぬるぬるぬるもももあへなしあへなしあえなしとととあきれあきれあきれてててかへりかへりかえり給給たまひひいぬぬぬ。。。
現代語訳
見る間に、物が枯れていくようにして消え果ててしまわれたのは、ひどいことであるよ。引き止めるすべもなく、足ずりもしてしまいそうで、人が愚かしいと見るだろうことも気にかけられず、薫はもう最期だと拝見なさって、中の君が後に残るまいと思い惑っていらっしゃる様子も、もっともである。正気もないようにお見えになる中の君を、例の賢ぶる女房たちが、今はたいそう不吉なことだと、引き離し申し上げる。中納言の君は、それでもどうしてこのようなことがあろうか、夢かとお思いになって、大殿油を近く掲げて拝見なさると、隠していらっしゃった顔も、ただ眠っていらっしゃるようで、変わったところもなく美しく横たわっていらっしゃるのを、このままで、虫の抜け殻のようにでも見続けることができたならばと、思い惑われる。最期の作法どもをする時、御髪をかき上げると、さっと匂ったのが、ただ生前のままの匂いで、親しみやすく香ばしいのもめったになく、何事によって、この人を少しでも並の人だったと思いを冷ませようか、本当に世の中を思い捨て果てる導きであるならば、恐ろしげでつらいことの悲しさも、冷めてしまうような点だけでも見つけさせてくださいと仏に祈りなさるが、ますます思いを落ち着けるすべもなくばかりあるので、言うかいもなくて、せめてひたすら煙にしてしまおうとお思いになって、あれこれと例の葬送の作法どもをするのは、呆れるほどであった。薫は空を歩むように漂いながら、最期の有様までもはかなげで、煙も多くは立ちのぼらずに終わってしまわれたのも、あっけないと呆然としてお帰りになった。
意訳
大君は、物が枯れていくように息絶える。中の君は姉の後を追おうと惑い、女房たちに引き離される。薫は灯火を掲げて大君の顔を見るが、眠っているように美しく、髪からは生前のままの香りが立つ。薫は、少しでも思いを冷ませる欠点を見せてほしいと仏に祈るが、かなわない。葬送の煙も細くはかなく、薫は呆然として帰る。
語釈・文法注
文法
- 「あしずり」(あしずりもしつべく)
- 足ずり。悲しみのあまり地団駄を踏むこと。
- 「むかしからのやうにても」(かくながらむかしからのやうにても見るわざならましかば)
- 虫の殻のように。亡骸のままでも見続けられたらという意。
- 「煙も多くむすぼゝれ給はず」(煙も多くむすぼゝれ給はずなりぬるも)
- 火葬の煙も多くは立ちのぼらず。痩せ細った大君の亡骸のはかなさ。
解説
大君の死は「物の枯れ行くやう」と表現される。病というより、生命が静かに尽きていく死である。食を絶ち、生きる意志を失った大君にふさわしい最期であった。
薫は、大君に欠点を見つけて思いを冷ましたいと願い続けたが、死顔さえ美しかった。思いを断ち切れないまま、薫は大君の面影を追い続けることになる。この思いが、のちの浮舟の物語へとつながっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、984–985頁(コマ203)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日