源氏物語 第47帖 総角(42)
匂宮の縁談の噂
薫のお供の者で、早くもここの若い女房と親しくなった者がいた。その者が互いの話に、「あの匂宮はお忍び歩きを止められなさって、宮中にばかり籠っていらっしゃいます。左大臣殿の姫君(六の君)と結婚させなさるそうで、女方は長年の本意なので滞りなく、年内にもありそうです。匂宮はしぶしぶで、宮中でもただ好色なことにお心を入れて、帝や后のお戒めにも落ち着かれそうもありません。我が殿(薫)こそやはり妙に人に似ず、あまりにまじめでいらっしゃって、人には持て余されています。ここにこうしてお通いになることだけを、目を見張るほど並々でないことと人は申しています」などと語ったのを、女房が「そう言っていました」などと仲間内で話すのを大君が聞くにつけても、ますます胸がふさがって、もうおしまいなのだ、高貴な方との結婚が決まるまでの、いい加減な慰みにこうまで思っていらしたのを、さすがに中納言などの思うところを考えて、言葉の限りは深かったのだと思いなすと、何とも匂宮のつらさは思い知られず、ますます身の置き所もない気がして、萎れて臥せっている。弱った心地では、ますますこの世にとどまれそうにも思われず、気後れする女房たちではないが、どう思うだろうと思うとつらいので、聞かないふりをして寝ていると、中の君が、物思う時のしぐさと聞くうたた寝の様子でたいそう可憐に、腕を枕にして寝ていて、髪のたまっている様子などが、めったにないほど美しいのを見やりながら、親の戒めた言葉も繰り返し思い出されて悲しいので、父宮は罪深い所にはまさか沈んでいらっしゃるまい、どこであれいらっしゃる所に迎えてください、こうもひどく物思いをする私たちを見捨てて、夢にさえ現れてくださらないことよと思い続ける。
- 1このこのこの君君きみののの御御おん供供ともなるなるなる人人ひとののの、、、いつしかいつしかいつしかとととこゝこゝここなるなるなる若若わかききき人人ひとををを語語かたらひらひらいよりよりよりたるたるたるありありありけりけりけり。。。おのがじゝおのがじゝおのがじしののの物物もの語語がたりににに、、、「「「かのかのかの宮宮みやののの御御おん忍忍しのびびびありきありきありき制制せいせせせられられられ給給たまひひいててて、、、內內うちにににのみのみのみ籠籠こもりりりおはしますおはしますおわしますことことこと、、、左左ひだりののの大大おお臣臣い殿殿どのののの姫姫ひめ君君ぎみをををなむなむなんあはせあはせあわせ奉奉たてまつりりり給給たまふふうべかべかべかなるなるなるををを、、、女女おんな方方がたははは年年とし比比ごろののの御御おんほいほいほいなれなれなればばば、、、おぼしおぼしおぼし滯滯とどこおるるることことことなくなくなくててて、、、年年としののの內內うちにににありありありぬぬぬべかべかべかなりなりなり。。。宮宮みやはははしぶしぶしぶしぶしぶしぶにににおぼしおぼしおぼしててて、、、うちうちうちわたりわたりわたりにににもももたゞたゞただすきすきすきがましきがましきがましき事事ことににに御心御心みこころををを入入いれれれててて、、、みかどみかどみかどきさいきさいきさいののの御御おんいましめいましめいましめにににしづまりしづまりしずまり給給たまふふうべくべくべくもももあらあらあらざざざめりめりめり我我わががが殿殿とのこそこそこそ猶猶なおあやしうあやしうあやしゅう人人ひとににに似似に給給たまははわずずず、、、あまりあまりあまりまめまめまめにににおはしましおはしましおわしましててて、、、人人ひとにににはははもてもてもてなやまなやまなやまれれれ給給たまへへえ。。。こゝこゝここにににかくかくかく渡渡わたりりり給給たまふふうのみのみのみなむなむなん、、、めめめもももあやあやあやにににおぼろけおぼろけおぼろけならならならぬぬぬことことことゝゝと人人ひと申申もうすすす」」」などなどなどかたりかたりかたりけるけるけるををを「「「さささこそこそこそいひいひいいつれつれつれ」」」などなどなど人々人々ひとびとののの中中なかにてにてにて語語かたるるるををを聞聞きききき給給たまふふうにににももも、、、いとゞいとゞいとど胸胸むねふたがりふたがりふたがりててて、、、今今いまはははかぎりかぎりかぎりにににこそこそこそあああなれなれなれ、、、やんごとなきやんごとなきやんごとなき方方かたににに定定さだまりまりまり給給たまははわぬぬぬほどほどほどののの、、、なほざりなほざりなおざりののの御御おんすさびすさびすさびにににかくかくかくまでまでまでおぼしおぼしおぼしけむけむけんををを、、、さすがさすがさすがににに中中ちゅう納納な言言ごんなどなどなどののの思思おもははわむむん所所ところをををおぼしおぼしおぼしててて、、、言言ことののの葉葉はのののかぎりかぎりかぎり深深ふかきききなりなりなりけりけりけりととと思思おもひひいなしなしなし給給たまふふうににに、、、ともともともかくかくかくももも人人ひとののの御御おんつらさつらさつらさははは思思おもひひい知知しららられれれずずず、、、いとゞいとゞいとど身身みののの置置おき所所どころなきなきなき心地心地ここちしししててて、、、しをれしをれしおれふしふしふし給給たまへへえりりり。。。
- 2よわきよわきよわき御御おん心心こころちちちははは、、、いとゞいとゞいとど世世よににに立立たちちちとまるとまるとまるべうべうびょうもももおぼえおぼえおぼえずずず、、、恥恥はずかしげしげしげなるなるなる人々人々ひとびとにににはははあらあらあらねねねどどど、、、思思おもふふうらむらむらんところところところ苦苦くるしけれしけれしければばば聞聞きかかかぬぬぬやうやうようにてにてにてねねね給給たまへへえるるるををを、、、姫姫ひめ君君ぎみ、、、物物もの思思おもふふう時時ときのののわざわざわざととと聞聞ききききしししうたゝうたゝうたたねねねののの御御おんさまさまさまののの、、、いといといとらうたげらうたげろうたげにてにてにて、、、かひなかひなかいなををを枕枕まくらにてにてにてねねね給給たまへへえるるるににに、、、御御おんぐしぐしぐしのののたまりたまりたまりたるたるたる程程ほどなどなどなど、、、ありがたうありがたうありがとう美美うつくしげくしげくしげなるなるなるををを見見みやりやりやりつゝつゝつつ、、、親親おやののの諫諫いさめめめししし言言ことののの葉葉はももも、、、返返かえすすす返返がえすすす思思おもひひい出出いでででられられられ給給たまひひいててて悲悲かなしけれしけれしければばば、、、罪罪つみ深深ふかくくくなるなるなる底底そこにににはははよもよもよもしづみしづみしずみ給給たまははわじじじ、、、いづくいづくいずくにににもももいづくいづくいずくにににもももおはすおはすおわすらむらむらん方方かたにににむかへむかへむかえ給給たまひひいてててよよよ、、、かうかうこういみじくいみじくいみじく物物もの思思おもふふう身身みどもどもどもをををうちうちうちすてすてすて給給たまひひいててて、、、夢夢ゆめにににだにだにだに見見みえええ給給たまははわぬぬぬよよよととと思思おもひひい續續つづけけけ給給たまふふう。。。
現代語訳
この薫のお供の者で、早くもここの若い女房を口説いて親しくなった者がいた。その者が互いの話に、「あの匂宮のお忍び歩きは止められなさって、宮中にばかり籠っていらっしゃることで、左大臣殿の姫君を娶わせ申し上げなさるそうですが、女方は長年のご本意なので、滞りなさることもなく、年内にもありそうです。匂宮はしぶしぶにお思いになって、宮中でも、ただ好色なことにお心を入れて、帝や后のお戒めにも落ち着きなさりそうもありません。我が殿こそ、やはり妙に人に似ていらっしゃらず、あまりにまじめでいらっしゃって、人には持て余されていらっしゃいます。ここにこうしてお通いになることだけを、目を見張るほど並々でないことと人は申しています」などと語ったのを、「そう言っていました」などと女房たちの中で話すのを、大君がお聞きになるにつけても、ますます胸がふさがって、もうおしまいなのだ、高貴な方に結婚が決まりなさらないうちの、いい加減なお慰みに、こうまでお思いになっていたのを、さすがに中納言などの思うところをお考えになって、言葉の限りは深かったのだと思いなしなさると、何とも匂宮のおつらさは思い知られず、ますます身の置き所もない心地がして、萎れて臥せっていらっしゃる。
弱ったお心地では、ますますこの世に立ち留まれそうにも思われず、気後れするような女房たちではないけれど、どう思っているだろうと思うところがつらいので、聞かないふりをして寝ていらっしゃると、姫君(中の君)が、物思う時のしぐさと聞いたうたた寝のご様子でたいそう可憐に、腕を枕にして寝ていらっしゃるのに、御髪のたまっている様子などが、めったにないほど美しいのを見やりながら、親が戒めた言葉も、繰り返し思い出されなさって悲しいので、父宮は罪深くなる底には、まさか沈んではいらっしゃるまい、どこであれ、いらっしゃる所にお迎えください、こうもひどく物思いをする私たちを見捨てなさって、夢にさえ現れてくださらないことよと、思い続けなさる。
意訳
薫の供の者から、匂宮が宮中に留め置かれ、夕霧の六の君との結婚が年内にも決まりそうだという噂が伝わる。大君は、匂宮の愛は結婚前の慰みにすぎなかったと絶望し、病がさらに重くなる。うたた寝する中の君の美しい姿を見ながら、大君は亡き父に、自分をそばに迎えてほしいと願う。
語釈・文法注
文法
- 「めもあやに」(めもあやにおぼろけならぬことゝ人申す)
- 目もくらむほど、目を見張るほど。
- 「物思ふ時のわざと聞きしうたゝね」(物思ふ時のわざと聞きしうたゝねの御さまの)
- 物思いのある時にするというしぐさ。
- 「罪深くなる底」(罪深くなる底にはよもしづみ給はじ)
- 地獄のような罪深い所。父宮の成仏を願う。
解説
薫の供と宇治の若い女房との恋が、匂宮の縁談の噂を運ぶ。身分の低い者たちの気軽な恋のやりとりが、姫君たちに決定的な知らせをもたらす皮肉がある。
大君は、父のもとへ迎えてほしいと願う。死への願いは、もはや決意に近い。うたた寝する妹の美しさを見つめる姉の目には、別れの予感が込められている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、974–975頁(コマ198)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日