源氏物語 第47帖 総角(41)
大君の病と修法
夜になると大君はいっそう苦しそうにしているので、疎遠な薫の気配が近いのも中の君が困っているので、女房たちは「やはりいつものあちらへ」と言うが、薫は「まして、こうして病んでいらっしゃる時の心配から、思いのままに参ったのに、遠ざけてしまわれてはひどくつらい。こういう折のお世話も誰がしっかりお仕えしましょう」などと弁の御許に話して、御修法などを始めることを言いつける。大君はたいそう見苦しく、とりわけ厭わしい身なのにと聞くが、思いやりなく言うのも嫌なので、さすがに生き長らえよと思ってくれる心づかいもしみじみうれしい。翌朝、薫が「少しはよくなったでしょうか。せめて昨日くらいにでもお話しさせてください」と言うと、大君は「日が経つからでしょうか、今日はひどく苦しいのです。それならこちらへ」と言い出した。薫はたいそう哀れに、どうなってしまわれるのだろう、以前より親しげなご様子なのも胸がつぶれる思いがするので、近くに寄ってあれこれと話す。大君は「苦しくてお話しできません。少し落ち着きましたら」と言って、たいそうかすかで哀れな気配なのを、薫はこの上なく心苦しくて嘆いている。さすがにこうしてずっと所在なくいることもできないので、ひどく気がかりだが帰る。「このようなお住まいはやはりつらい。場所を変えて療養なさることにかこつけて、然るべき所にお移ししよう」などと言い置いて、阿闍梨にも祈祷を心を込めてするよう言い聞かせて出ていった。
- 1よるよるよるよるよるよるはははましてましてましていといといと苦苦くるしげしげしげにににししし給給たまひひいけれけれければばば、、、疎疎うとききき人人ひとののの御御おんけはひけはひけはいののの近近ちかきききももも中中なかののの君君きみののの苦苦くるしげしげしげにににおぼしおぼしおぼしたれたれたればばば、、、「「「猶猶なお例例れいのののあなたあなたあなたににに」」」ととと人々人々ひとびと聞聞きこゆれゆれゆれどどど、、、「「「ましてましてましてかくかくかく煩煩わずらひひい給給たまふふうほどほどほどののの覺束覺束おぼつかなさなさなさををを、、、思思おもひひいのののまゝまゝままににに參參まいりりりきききててていだしいだしいだし放放はなちちち給給たまへへえれれればばば、、、いといといとわりなくわりなくわりなくなむなむなん。。。かゝるかゝるかかる折折おりののの御御おんあつかひあつかひあつかいももも誰誰たれかかかはかばかしくはかばかしくはかばかしく仕仕つこうううまつるまつるまつる」」」などなどなど辨辨べんのののおもとおもとおもとににに語語かたらひらひらい給給たまひひいててて、、、みみみずずずほふほふほうどもどもども始始はじむむむべきべきべきことことことなどなどなどのたまふのたまふのたまう。。。いといといと見見み苦苦ぐるしうしうしゅう殊殊こと更更さらにににもももいとはしきいとはしきいとわしき身身みをををととと聞聞きききき給給たまへへえどどど、、、思思おもひひいぐまぐまぐまなくなくなくのたまはのたまはのたまわむむんもももうたてうたてうたてあれあれあればばば、、、さすがさすがさすがにににながらへながらへながらへよよよととと思思おもひひい給給たまへへえるるる心心こころばへばへばえもももあはれあはれあわれなりなりなり。。。又又またのののあしたあしたあしたににに、、、「「「少少すこしししもももよろしくよろしくよろしくおぼさおぼさおぼさるるるややや。。。昨日昨日きのうばかりばかりばかりにてにてにてだにだにだに聞聞きこえええさせさせさせむむん」」」とととあれあれあればばば、、、「「「日日ひ比比ごろふれふれふればばばにににややや、、、今日今日きょうはははいといといと苦苦くるしうしうしゅうなむなむなん。。。さらばさらばさらばこなたこなたこなたににに」」」ととと言言いひひい出出いだししし給給たまへへえりりり。。。いといといとあはれあはれあわれにににいかにいかにいかに物物ものししし給給たまふふうべきべきべきにににかかかあらあらあらむむん、、、ありありありしししよりよりよりはははなつかしきなつかしきなつかしき御御おん氣色氣色けしきなるなるなるももも胸胸むねつぶれつぶれつぶれててておぼゆれおぼゆれおぼゆればばば、、、近近ちこうううまかでまかでまかでよろづよろづよろずののの事事ことををを聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「苦苦くるしうしうしゅうてててえええ聞聞きこえええずずず、、、少少すこしししためらはためらはためらわむむん程程ほどににに」」」とてとてとて、、、いといといとかすかかすかかすかにににあはれあはれあわれなるなるなるけはひけはひけはいををを、、、限限かぎりなうなうのう心苦心苦こころぐるしうしうしゅうててて歎歎なげききき居居い給給たまへへえりりり。。。さすがさすがさすがにににつれづれつれづれつれずれとととかくかくかくててておはしおはしおわしがたけれがたけれがたければばばいといといとうしろめたけれうしろめたけれうしろめたけれどどどかへりかへりかえり給給たまふふう。。。「「「かゝるかゝるかかる御御おん住住すまひまひまいははは猶猶なお苦苦くるしかりしかりしかりけりけりけり。。。處處ところ去去さりりり給給たまふふうにににことことことよせよせよせてててさるべきさるべきさるべき處處ところにににうつろはしうつろはしうつろわし奉奉たてまつらららむむん」」」などなどなど聞聞きこえええおきおきおきててて、、、阿阿あ闍闍ざ梨梨りにににももも、、、御御おんいのりいのりいのり心心こころににに入入いるるるべくべくべくのたまひのたまひのたまい知知しらせらせらせててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ
現代語訳
夜々は、まして大君がたいそう苦しそうにしていらっしゃったので、疎遠な人の気配が近いのも、中の君が困ったことにお思いになっているので、「やはりいつものあちらへ」と女房たちが申し上げるが、薫は「まして、このように病んでいらっしゃる時の心配から、思いのままに参って来たのに、遠ざけて出してしまわれては、ひどくつらいことです。このような折のお世話も、誰がしっかりお仕えするでしょう」などと、弁の御許にお話しになって、御修法などを始めるべきことなどをおっしゃる。大君は、たいそう見苦しく、とりわけ厭わしい身なのにとお聞きになるが、思いやりなくおっしゃるのも嫌なので、さすがに生き長らえよと思ってくださるお心づかいもしみじみとうれしい。翌朝、薫が「少しはよくお思いになりますか。せめて昨日くらいにでも、お話しさせてください」と言うと、大君は「日が経つからでしょうか、今日はひどく苦しゅうございます。それならこちらへ」と言い出しなさった。薫は、たいそう哀れに、どうなってしまわれるのだろうか、以前よりは親しげなご様子なのも、胸がつぶれる思いがするので、近くに寄って、あれこれのことを申し上げなさる。「苦しくてお話しできません。少し落ち着きましたら」と言って、たいそうかすかで哀れな気配なのを、この上なく心苦しくて嘆いていらっしゃる。さすがに、所在なくこうしてずっといらっしゃることもできないので、ひどく気がかりだけれどお帰りになる。「このようなお住まいは、やはりつらいことでした。場所を変えて療養なさることにかこつけて、然るべき所にお移し申し上げよう」などと申し置いて、阿闍梨にも、ご祈祷を心を込めてするよう言い聞かせて、お出になった。
意訳
大君の病は夜ごとに重くなる。薫は大君のそばを離れず、御修法を始めさせる。大君は生きる気力をなくしているが、薫の気づかいをうれしく思う。翌朝、大君は以前より親しげに薫を近くに呼ぶが、苦しくて話もできない。薫は大君を京に移す算段を言い置き、阿闍梨に祈祷を頼んで帰る。
語釈・文法注
文法
- 「みずほふ」(みずほふども始むべきことなどのたまふ)
- 御修法。病気平癒のための密教の祈祷。
- 「思ひぐまなく」(思ひぐまなくのたまはむもうたてあれば)
- 思いやりなく。
- 「處去り給ふにことよせて」(處去り給ふにことよせてさるべき處にうつろはし奉らむ)
- 病気療養のための転地にかこつけて。
解説
大君は、以前より親しげに薫を近くに呼ぶ。病が大君の心の壁を少しずつ崩していく。しかしそれは、大君が死に近づいていることの表れでもある。
薫は大君を京に迎える算段を考える。療養を口実にすれば、大君を手元に置くことができる。しかしその願いがかなう時間は、もう残されていない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、974–975頁(コマ198)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日