源氏物語 第47帖 総角(40)
途絶えと薫の見舞い
御前にいた女房たちは、この匂宮を特に気後れして物陰に隠れた。女一の宮は、ほかに言いようもあろうに嫌な妙なことと思うので、何もおっしゃらない。もっともなことで、「うらなくものを」と言った伊勢物語の姫君も、戯れていて憎らしく思われる。紫の上が特にこのお二人を育てていらしたので、大勢のご兄弟の中でも隔てなく思い合っている。女一の宮は世にないほど大切に育てられ、仕える女房たちも少しでも欠点のある者はきまり悪そうである。高貴な人の娘なども多い。匂宮は移り気なお心で、珍しい女房たちとはかなく語らったりしながらも、宇治のことを忘れる折はないものの、訪れないまま日数が経った。待っている宇治では途絶えが長い気がして、やはりこうなのだと心細く物思いにふけっていると、中納言(薫)がいらした。大君が具合が悪いと聞いての見舞いであった。それほど心惑うほどの病でもないが、大君は病にかこつけて対面しない。薫が「驚いて遠い道を参ったのに、やはりあの病んでいらっしゃるおそばに」としきりに心配するので、女房たちは大君がくつろいでいる方の簾の前に入れる。大君はたいそうきまり悪いと苦しがるが、無愛想にはせず、頭をもたげてお返事などをする。薫は匂宮が心ならずも通り過ぎた事情などを話して、「のどかにお思いください。焦って恨みなさいますな」などと教えるので、大君は「中の君は何とも申し上げていないようです。亡き父宮のお戒めは、こういうことのためだったのだと分かるのがつらいのです」と言って泣く様子である。薫はたいそう心苦しく、自分まで恥ずかしい気がして、「世の中はどうであれ、一つの様子で過ごすことは難しいものですが、何事もご存じないお心では、ひたすら恨めしくお思いになることもあるでしょうが、強いてお心を落ち着けてください。決して不安なことはあるまいと思います」などと、他人の身の上まで世話するのも、一方では妙に思われる。
- 1おおお前前まえなりなりなりつるつるつる人々人々ひとびとははは、、、このこのこの宮宮みやをををばばば殊殊ことにににはぢはぢはじ聞聞きこえええててて物物もののののうしろうしろうしろにににかくれかくれかくれたりたりたり。。。ことことことしもしもしもこそこそこそあれあれあれ、、、うたてうたてうたて怪怪あやしししとととおぼせおぼせおぼせばばば、、、物物ものももものたまはのたまはのたまわずずず。。。ことわりことわりことわりにてにてにてうらうらうらなくなくなくものものものをををととといひいひいいたるたるたる姫姫ひめ君君ぎみももも、、、ざれざれざれてててにくゝにくゝにくくおぼさおぼさおぼさるるる。。。紫紫むらさきのののうへうへうえのののとりわきとりわきとりわきてててこのこのこの二二ふた所所ところをををばばばならはしならはしならわし聞聞きこえええ給給たまひひいしかしかしかばばば、、、あまたあまたあまたののの御御おん中中なかににに隔隔へだてなくなくなく思思おもひひいかはしかはしかわし聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。世世よににになくなくなくかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、さぶらふさぶらふさぶらう人々人々ひとびともももかたほかたほかたほににに少少すこしししあかあかあかぬぬぬ所所ところあるあるあるははははしたなげはしたなげはしたなげなりなりなり。。。やんごとなきやんごとなきやんごとなき人人ひとののの御御おんむすめむすめむすめなどなどなどもももいといといと多多おおかりかりかり御心御心みこころのののうつろひうつろひうつろいやすきやすきやすきははは、、、珍珍めずしきしきしき人々人々ひとびとにににはかなくはかなくはかなく語語かたらひらひらいつきつきつきなどなどなどししし給給たまひひいつゝつゝつつ、、、かのかのかのわたりわたりわたりをををおぼしおぼしおぼし忘忘わするゝるゝるる折折おりなきなきなきものものものからからから、、、音音おとづれづれずれ給給たまははわででで日日ひごろごろごろ經經へぬぬぬ待待まちちち聞聞きこえええ給給たまふふう所所ところははは、、、絕絕たえ間間ま遠遠とおききき心心こころちちちしししててて、、、猶猶なおかうかうこうなななめりめりめりととと心心こころぼそうぼそうぼそうながめながめながめ給給たまふふうににに、、、中中ちゅう納納な言言ごんおはしおはしおわしたりたりたり。。。なやましげなやましげなやましげにににししし給給たまふふうととと聞聞ききききててて、、、御御おんとぶらひとぶらひとぶらいなりなりなりけりけりけり。。。いといといと心心こころちちち惑惑まどふふうばかりばかりばかりののの御御おん惱惱なやみみみにににもももあらあらあらねねねどどど、、、ことことことつけつけつけててて對對たい面面めんししし給給たまははわずずず。。。「「「驚驚おどろきききながらながらながら遙遙はるけきけきけき程程ほどををを參參まいりりり來來きつるつるつるををを、、、猶猶なおかのかのかのなやみなやみなやみ給給たまふふうらむらむらん御御おんあたりあたりあたり近近ちかくくく」」」とととせちせちせちににに覺束覺束おぼつかながりながりながり聞聞きこえええ給給たまへへえばばばうちうちうち解解とけけけてててすまひすまひすまい給給たまへへえるるる方方かたのののみみみすすすののの前前まえににに入入いれれれ奉奉たてまつるるる。。。
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現代語訳
御前にいた女房たちは、この匂宮を特に気後れ申し上げて、物陰に隠れていた。女一の宮は、ほかに言いようもあろうに、嫌な妙なこととお思いになるので、何もおっしゃらない。もっともなことで、「うらなくものを」と言った姫君も、戯れていて憎らしくお思いになる。紫の上が特にこのお二人をお育て申し上げなさったので、大勢のご兄弟の中で隔てなく思い合い申し上げていらっしゃる。女一の宮を世にないほど大切にお育て申し上げなさって、仕える女房たちも、不完全で少しでも物足りない所のある者はきまり悪そうである。高貴な人のご息女なども、たいそう多い。匂宮は移り気なお心で、珍しい女房たちとはかなく語らいつきなどなさりながら、あの宇治のあたりをお忘れになる折はないものの、お訪れにならずに日数が経った。お待ち申し上げていらっしゃる所では、途絶えが長い心地がして、やはりこういうことなのだと心細く物思いにふけっていらっしゃると、中納言がいらっしゃった。大君が具合が悪そうにしていらっしゃると聞いての、お見舞いであった。たいそう心惑うほどのご病気でもないが、大君は病にかこつけて対面なさらない。「驚きながら遠い道のりを参ったのに、やはりあの病んでいらっしゃるおそば近くに」と、しきりに心配申し上げなさるので、大君がくつろいでいらっしゃる方の簾の前にお入れ申し上げる。
大君はたいそうきまり悪いことと苦しがりなさるが、無愛想にはせず、頭をもたげてお返事などを申し上げなさる。薫は、匂宮がお心ならずも通り過ぎてしまわれた事情などをお話し申し上げなさって、「のどかにお思いください。焦って恨み申し上げなさいますな」などとお教え申し上げなさると、「中の君は何とも申し上げていないようです。亡き人のお戒めは、このようなことのためだったのだと分かるばかりなのが、つらいことでした」と言って泣いていらっしゃる様子である。薫はたいそう心苦しく、自分まで恥ずかしい心地がして、「世の中は、どうあっても一つの様子で過ごすことは難しいものでございますが、何事もご存じないお心々では、ひたすら恨めしくなどお思いになることもあるでしょうが、強いてお心を落ち着けてください。決して不安なことはあるまいと思います」などと、他人の身の上まで世話をやくのも、一方では妙に思われる。
意訳
女一の宮は匂宮の戯れを不快に思う。匂宮は宇治を忘れないながらも訪れず、日数が経つ。大君が病と聞いた薫が見舞いに来て、簾の前で匂宮の事情を語り慰める。大君は、父の戒めはこのためだったと泣く。薫は、心を落ち着けてほしいと励ます。
語釈・文法注
文法
- 「うらなくものをといひたる姫君」(うらなくものをといひたる姫君も)
- 伊勢物語四十九段で、兄の歌に「初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな」と返した妹。
- 「かたほ」(かたほに少しあかぬ所あるははしたなげなり)
- 不完全なこと。
- 「けにくゝはあらて」(けにくゝはあらて)
- 無愛想ではなく。
解説
女一の宮のもとには、高貴な家の娘たちが女房として仕えている。匂宮はその中の女房とも戯れる。華やかな宮中の生活と、匂宮を待ち続ける宇治の寂しさが対比される。
大君は病を口実に薫を避けるが、病そのものも進んでいる。薫は匂宮の弁護をしながら、自分が他人の世話ばかりしていることを妙に思う。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、972–975頁(コマ197–198)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日