源氏物語 第47帖 総角(38)
匂宮の禁足と六の君の縁談
匂宮はすぐに引き返して、いつものように忍んでと出かけようとしたが、「宮中では、こういうお忍びごとのために山里へのお出かけも急に思い立ったのだそうです。軽々しいご様子だと、世間の人も陰で非難申し上げているそうです」と衛門督が漏らし申し上げたので、中宮もお聞きになって嘆き、帝もますます許さないご様子で、大方自由気ままな里住みがよくないのだと厳しいことが起こって、匂宮を宮中にずっと伺候させることになった。左大臣(夕霧)の六の君を匂宮は承知しないでいたが、押して参らせることに皆で決められた。中納言殿(薫)はそれを聞いて、つまらなく物思いをして歩く。自分があまりに変わり者なのだ、然るべき宿縁があったのだろうか、八の宮が姫君たちを気がかりに思っていらした様子もしみじみと忘れがたく、この姫君たちのご様子や気配も格別なことはなくて、世に衰えていかれるのが惜しく思われるあまりに、人並みに扱ってあげたいと不思議なほど世話をやいていたところ、匂宮もあいにくに取り持ちを責めなさったので、自分の思う方(大君)は別の方(中の君)に譲られるような有様もつまらなくて、こうしてしまったのを思えば悔しいことだ、どちらも自分のものとしてお世話したところで咎める人もいないのに、取り返しはつかないが、愚かしく一人で思い乱れる。匂宮はまして、心にかからない時はなく、中の君を恋しく気がかりに思っている。
- 1宮宮みやははは立立たちちちかへりかへりかえり、、、例例れいのののやうやうようににに忍忍しのびびびてててととと出出いででで立立たちちち給給たまひひいけるけるけるををを、、、「「「內內うちにににかゝるかゝるかかる御御おん忍忍しのびびびごとごとごとににによりよりより山山やま里里ざとののの御御おんありきありきありきもももゆくりかゆくりかゆくりかにににおぼしおぼしおぼし立立たつつつなりなりなりけりけりけり。。。かるがるしきかるがるしきかるがるしき御御おん有有あり樣樣さまととと、、、世世よ人人ひともももしたしたしたににに譏譏そしりりり申申もうすすすなりなりなり」」」ととと衛衛え門門もん督督のかみののの漏漏もらししし申申もうししし給給たまひひいけれけれければばば、、、中中ちゅう宮宮ぐうももも聞聞きこしししめしめしめし歎歎なげききき、、、うへうへうえもももいとゞいとゞいとどゆるさゆるさゆるさぬぬぬ御御おん氣色氣色けしきにてにてにて、、、大大おお方方かた心心こころににに任任まかせせせ給給たまへへえるるる御御おん里里さと住住ずみみみのののあしきあしきあしきなりなりなりけりけりけりととときびしききびしききびしき事事ことどもどもども出出いででで來來きててて、、、內內うちにににつとつとつと侍侍さぶらはらはらわせせせ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。左左ひだりののの大大おお臣臣い殿殿どのののの六六ろくののの君君きみをををうけひかうけひかうけひかずずずおぼしおぼしおぼしたるたるたることことことなれなれなれどどど、、、おしおしおしたちたちたちててて參參まいらせらせらせ給給たまふふうべくべくべく皆皆みな定定さだめめめらるらるらる中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どの聞聞きききき給給たまひひいてててあいなくあいなくあいなく物物ものををを思思おもひひいありきありきありき給給たまふふう。。。我我わがががあまりあまりあまりことことことやうやうようなるなるなるぞぞぞややや、、、さるべきさるべきさるべき契契ちぎりやややありありありけむけむけん、、、みみみこここのののうしろめたしうしろめたしうしろめたしとととおぼしおぼしおぼしたりたりたりしししさまさまさまもももあはれあはれあわれににに忘忘わすれれれがたくがたくがたく、、、このこのこの君君きん達達だちののの御御おん有有あり樣樣さまけはひけはひけはいもももことことことなるなるなる事事ことなくなくなくててて、、、世世よににに衰衰おとろへへえ給給たまははわむむんことことことののの惜惜おしくしくしくもももおぼゆるおぼゆるおぼゆるあまりあまりあまりににに、、、人々人々ひとびとしうしうしゅうもてもてもてなさなさなさばやばやばやとととあやしきあやしきあやしきまでまでまでもてもてもてあつかはあつかはあつかわるゝるゝるるににに、、、宮宮みやもももあやにくあやにくあやにくにににとりとりとりもちもちもちてててせめせめせめ給給たまひひいしかしかしかばばば、、、我我わががが思思おもふふうかたかたかたはははことことことなるなるなるにににゆづらゆづらゆずらるゝるゝるる有有あり樣樣さまもももあいなくあいなくあいなくててて、、、かくかくかくもてもてもてなしなしなしてててしししををを思思おもへへえばばばくやしくくやしくくやしくもももありありありけるけるけるかなかなかな、、、いづれいづれいずれももも我我わががが物物ものにてにてにて見見み奉奉たてまつらららむむんににに咎咎とがむむむべきべきべき人人ひともももなしなしなしかしかしかし、、、取取とりりり返返かえすすすものものものならならならねねねどどどをこがましうをこがましうおこがましゅう心心こころひとつひとつひとつににに思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまふふう。。。宮宮みやはははましてましてまして御心御心みこころにににかゝらかゝらかからぬぬぬをりをりおりなくなくなく戀戀こいしうしうしゅううしろめたしうしろめたしうしろめたしとととおぼすおぼすおぼす。。。
現代語訳
匂宮はすぐに引き返して、いつものように忍んでと出かけようとなさったが、「宮中では、このようなお忍びごとのために、山里へのお出かけも急にお思い立ちになったのだそうです。軽々しいご様子だと、世間の人も陰で非難申し上げているそうです」と衛門督が漏らし申し上げなさったので、中宮もお聞きになって嘆き、帝もますますお許しにならないご様子で、大方お心のままになさっている里住みがよくないのだと、厳しいことどもが起こって、宮中にずっと伺候させ申し上げなさる。左大臣殿の六の君を、匂宮は承知しないでお思いになっていることだが、押して参らせなさるよう、皆で決められた。中納言殿はお聞きになって、つまらなく物思いをして歩きなさる。自分があまりに変わり者なのだろうか、然るべき宿縁があったのだろうか、八の宮が気がかりにお思いになっていた様子もしみじみと忘れがたく、この姫君たちのご様子や気配も格別に劣ったところはなくて、世に衰えていかれることが惜しく思われるあまりに、人並みに扱って差し上げたいと、不思議なほど世話をやいていたところ、匂宮もあいにくに取り持ちを責めなさったので、自分の思う方は別の方に譲られるような有様もつまらなくて、このようにしてしまったのを思えば、悔しいことであったよ、どちらも自分のものとしてお世話申し上げたところで、咎めるはずの人もいないのに、取り返しのつくものではないけれど、愚かしく、心一つに思い乱れなさる。匂宮はまして、お心にかからない時はなく、恋しく気がかりにお思いになる。
意訳
衛門督の報告で、匂宮の宇治通いが宮中に知られ、中宮と帝は匂宮を宮中に留め置く。夕霧の六の君との縁談も強引に決められる。薫は、匂宮を手引きしたことを悔やみ、どちらの姫君も自分が世話すればよかったと思い乱れる。匂宮は中の君を恋しく思い続ける。
語釈・文法注
文法
- 「ゆくりかに」(山里の御ありきもゆくりかにおぼし立つなりけり)
- 急に、突然に。
- 「おしたちて」(おしたちて參らせ給ふべく皆定めらる)
- 押して、強引に。
- 「とりもちて」(宮もあやにくにとりもちてせめ給ひしかば)
- 取り持ちを頼んで。
解説
匂宮の宇治通いが宮中に知られ、六の君との縁談が強引に決められる。中の君の立場は、いよいよ危うくなる。
薫は、どちらの姫君も自分が世話すればよかったと悔やむ。大君への一途な思いを貫こうとしたことが、かえって姉妹を不幸に追い込んだ。薫の後悔は深いが、取り返しはつかない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、970–973頁(コマ196–197)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日