源氏物語 第47帖 総角(37)
大君の思い詰め
大君は、自分も生き長らえたらこのようなことを見ることになるのだろう、中納言(薫)があれこれと言い寄って回るのも、私の心を試そうとしてのことだった、自分一人で遠ざけて思っても、言い逃れるにも限りがある、ある人(女房たち)が懲りずにこういう方面のことばかり何とかしてと思っているようなので、心ならずもついにそういう扱いをされてしまいそうだ、これこそは、父宮が繰り返し、そういう心で世を過ごせとおっしゃっておいたのは、こういうこともあろうかという戒めだったのだ、いかにも不幸な身の上で、然るべき人々にも先立たれたのだろうが、同じような者として人の笑いものになることを加える有様で、亡き父宮の御霊までお悩ませするのがつらい、せめて自分だけでもそんな物思いに沈まず、罪などがたいそう深くならないうちに何とか死んでしまいたいと思い沈むと、気分も本当に苦しいので、食べ物も少しも口にせず、ただ亡くなった後のことを明け暮れ思い続けると心細くて、中の君を見るのもたいそう心苦しく、私にまで先立たれたらどんなにひどく慰めようもないだろう、惜しいほど美しい中の君を明け暮れの楽しみとして、何とか人並みにして差し上げたいと世話をすることこそ、人知れぬ将来の頼みにも思っていたのに、この上ない身分の方でいらしても、これほど人の笑いものになる目を見た人が、世の中に立ち交じって世間並みに過ごしなさるのは、類まれにつらいだろうなどと思い続けると、言うかいもなく、この世ではいささかも思い慰めることなく過ぎていく身なのだと心細く思う。
- 1我我わももも世世よにににながらへながらへながらへばばばかうやうかうやうこうようなるなるなる事事こと見見みつつつべきべきべきにににこそこそこそはははあああめれめれめれ、、、中中ちゅう納納な言言ごんののの、、、とととざまざまざまかうかうこうざまざまざまにににいひいひいいありきありきありき給給たまふふうももも、、、人人ひとののの心心こころををを見見みむむんとととなりなりなりけりけりけり、、、心心こころひとつひとつひとつにににもてもてもてはなれはなれはなれててて思思おもふふうともともともこしらへこしらへこしらえやるやるやる限限かぎりこそこそこそあれあれあれ、、、或或ある人人ひとのののこりずまこりずまこりずまにににかゝるかゝるかかる筋筋すじのののことことことをををのみのみのみいかでいかでいかでととと思思おもひひいたたためれめれめればばば、、、心心こころよりよりより外外ほかににに遂遂ついにににもてもてもてなさなさなされれれぬぬぬべかべかべかめりめりめり、、、これこれこれこそこそこそははは返返かえすすす返返がえすすすもももさるさるさる心心こころちちちしししててて、、、世世よをををすぐせすぐせすぐせとととのたまひのたまひのたまいおきおきおきしししははは、、、かゝるかゝるかかる事事こともももやややあらあらあらむむんのののいさめいさめいさめなりなりなりけれけれけれ、、、さもさもさもこそこそこそははは憂憂うききき身身みどもどもどもにてにてにてさるべきさるべきさるべき人々人々ひとびとにににももも後後おくれれれ奉奉たてまつらららめめめ、、、やうやうようのののものものものととと人人ひとわらへわらへわらえなるなるなる事事ことををを添添そふるふるうる有有あり樣樣さまにてにてにて、、、なきなきなき御御おん影影かげをををさへさへさへ惱惱なやまししし奉奉たてまつらららむむんがががいみじさいみじさいみじさ、、、猶猶なお我我わだにだにだにさるさるさる物物もの思思おもひひいにににしづましづましずまずずず、、、罪罪つみなどなどなどいといといと深深ふかからからからぬぬぬさきさきさきにににいかでいかでいかでなくなくなくなりなりなりなななむむんとととおぼしおぼしおぼし沈沈しずむむむににに、、、心心こころちちちももも誠誠まことににに苦苦くるしけれしけれしければばば、、、物物ものももも露露つゆばかりばかりばかり參參まいらららずずず、、、たゞたゞただなからなからなからむむん後後のちのののあらましあらましあらましごとごとごとををを明明あけ暮暮くれ思思おもひひい續續つづけけけ給給たまふふうににに物物もの心心こころぼそくぼそくぼそくててて、、、このこのこの君君きみををを見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうもももいといといと心苦心苦こころぐるしうしうしゅう、、、我我わにににさへさへさへ後後おくれれれ給給たまひひいててていかにいかにいかにいみじういみじういみじゅう慰慰なぐさむるむるむる方方かたなからなからなからむむん、、、あたらしくあたらしくあたらしくをかしきをかしきおかしきさまさまさまををを、、、明明あけ暮暮くれのみのみのみものものものにてにてにて、、、いかでいかでいかで人々人々ひとびとしうしうしゅうももも見見みなしなしなし奉奉たてまつらららむむんととと思思おもひひいあつかふあつかふあつかうをををこそこそこそ、、、人人ひと知知しれれれぬぬぬ行行ゆくくく先先さきのののたのみたのみたのみにににももも思思おもひひいつれつれつれ、、、限限かぎりなきなきなき人人ひとにににものしものしものし給給たまふふうともともとも、、、かばかりかばかりかばかり人人ひとわらへわらへわらえなるなるなるめめめををを見見みてててむむん人人ひとののの、、、世世よののの中中なかににに立立たちちちまじりまじりまじり、、、例例れいののの人人ひとざまざまざまにてにてにて經經へ給給たまははわむむんははは、、、類類たぐひひい少少すくなくくく心心こころ憂憂うからからからむむんなどなどなどおぼしおぼしおぼし續續つづくるくるくるににに、、、いふかひいふかひいうかいもももなくなくなく、、、このこのこの世世よにににははは聊聊いささか思思おもひひい慰慰なぐさむむむ方方かたなくなくなくててて過過すぎぎぎぬぬぬべきべきべき身身みどもどもどもなななめりめりめりととと、、、心心こころぼそくぼそくぼそくおぼすおぼすおぼす。。。
現代語訳
大君は、自分も世に生き長らえたならば、このようなことを見ることになるのだろう、中納言があれこれと言い寄って回りなさるのも、私の心を試そうとしてのことだったのだ、自分一人の心で遠ざけて思っても、言い逃れるにも限りがある、ある人が懲りずに、このような方面のことばかり何とかしてと思っているようなので、心ならずも、ついにはそのような扱いをされてしまいそうだ、これこそは、父宮が繰り返し、そのような心で世を過ごせとおっしゃっておいたのは、こういうこともあろうかという戒めだったのだ、いかにもつらい身の上の私たちで、然るべき人々にも先立たれ申し上げたのだろうが、同じような者として人の笑いものになることを加える有様で、亡き御霊までお悩ませ申し上げるのがつらいことよ、せめて自分だけでもそのような物思いに沈まず、罪などがたいそう深くならないうちに、何とか死んでしまいたいとお思い沈みになると、気分も本当に苦しいので、食べ物も少しも召し上がらず、ただ亡くなった後のことを明け暮れ思い続けなさると、心細くて、この中の君を拝見なさるのもたいそう心苦しく、私にまで先立たれなさったら、どんなにひどく慰める方もないだろう、惜しいほど美しいご様子を、明け暮れの楽しみとして、何とか人並みにしてお世話申し上げたいと思って世話をすることこそ、人知れぬ将来の頼みにも思っていたのに、この上ない身分の方でいらっしゃっても、これほど人の笑いものになる目を見た人が、世の中に立ち交じって、世間並みの様子で過ごしなさるのは、類まれにつらいだろうなどと思い続けなさると、言うかいもなく、この世ではいささかも思い慰める方もなく過ぎていく身の上であるようだと、心細くお思いになる。
意訳
大君は、自分も生き長らえれば薫との関係を強いられるだろうと恐れ、独身を勧めた父の遺言はこのための戒めだったと思う。妹の不幸に加えて父の霊を悩ませることを恐れ、罪が深くならないうちに死にたいと願う。食事も取らなくなり、妹の行く末を案じながら、心細さに沈んでいく。
語釈・文法注
文法
- 「こりずまに」(或人のこりずまにかゝる筋のことをのみ)
- 懲りずに。
- 「やうのもの」(やうのものと人わらへなる事を添ふる有樣にて)
- 同じような者。没落した宮家の姫君として、ありがちな不幸に陥ること。
- 「いかでなくなりなむ」(罪などいと深からぬさきにいかでなくなりなむ)
- 何とかして死んでしまいたい。大君の死への願望。
解説
大君は、罪が深くならないうちに死にたいと願い、食事を絶つ。大君の病は、心の絶望から始まっている。父の遺言を守り、妹を守ろうとした大君は、そのどちらにも挫折して、死に向かっていく。
それでも大君は、残される妹のことを案じ続ける。自分の死を願いながら、妹への愛情は最後まで消えない。大君の悲劇の核心がここにある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、970–971頁(コマ196)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日