古典ライブラリー

源氏物語 第47帖 総角(34)

宇治川の舟遊び

登場人物:匂宮・薫・大君・中の君・衛門督

たそがれ時に、舟を岸に寄せて楽を奏しながら漢詩を作る。紅葉を薄く濃く挿頭にして「海仙楽」という曲を吹いて、皆満足した様子だが、匂宮は「近江の海」の心地で、遠方の人の恨みはどうかとばかり心は上の空である。時節にちなんだ題を出して口ずさんだり吟じたりし合っている。人々の騒ぎが少し静まったら中の君のもとへ行こうと薫も思い、然るべく申し上げているうちに、宮中から中宮の仰せで、宰相の中将の兄の衛門督が、仰々しい随身を引き連れて正装で参った。このようなお出かけは忍ぶつもりでも自然と広まって後の例にもなるものなのに、重々しい供も少なくて急にいらしたとお聞きになって驚き、殿上人を大勢連れて参ったので、きまりが悪くなった。匂宮も薫も苦しく思って、遊びの興も失せてしまった。人々は二人の心の内も知らず、酔い乱れて遊び明かした。今日はこのままでと匂宮は思うが、また中宮大夫やそのほかの殿上人なども大勢お遣わしになった。気ぜわしく残念で、帰る気にもなれない。宇治には手紙を送る。洒落たこともなく、たいそう真剣に思っていることを細々と書き続けたが、人目が多く騒がしいだろうと返事はない。大君は、人数にも入らない身では、すばらしいお方のあたりに交わるかいもないことだと、ますます思い切る。遠く隔たっている月日は心もとないのも道理で、それでもと慰めていたのに、すぐ近くで騒いでいらして、素知らぬ顔で通り過ぎるのが、つらくも残念にも思い乱れる。匂宮はまして気が晴れず、どうしようもないと思うことこの上ない。

  1. 1たそがれたそがれたそがれどきどきどきににに、、、御おん御おんおん船ふね船ふねふねさしさしさしよせよせよせてててあそびあそびあそびつゝつゝつつ文ふみ文ふみふみつくりつくりつくり給たま給たまたまふふう。。。紅もみ紅もみもみ葉ぢ葉ぢじをををうすくうすくうすくこくこくこくかざしかざしかざしててて海かい海かいかい仙せん仙せんせん樂らく樂らくらくととといふいふいうものものものををを吹ふ吹ふふきききててておのおのおのおのおのおの心こころ心こころこころゆきゆきゆきたるたるたる氣色けしき氣色けしきけしきなるなるなるににに、、、宮みや宮みやみやはははあふみあふみあうみののの海うみ海うみうみののの心地ここち心地ここちここちしししててて、、、をちをちおち方かた方かたかた人びと人びとびとのののうらみうらみうらみいかにいかにいかにとととのみのみのみ御心みこころ御心みこころみこころそらそらそらなりなりなり。。。時とき時ときときにににつけつけつけたるたるたる題だい題だいだい出いだ出いだいだしししてててうそぶきうそぶきうそぶきずしずしずしあへあへあえりりり。。。人ひと人ひとひとのののまよひまよひまよいすこしすこしすこししづめしづめしずめててておはせおはせおわせむむんととと中ちゆう中ちゆうちゅう納な納なな言ごん言ごんごんもももおぼしおぼしおぼしててて、、、さるべきさるべきさるべきやうやうようににに聞きこ聞きこきこえええ給たま給たまたまふふうほどほどほどににに、、、內うち內うちうちよりよりより中ちゆう中ちゆうちゅう宮ぐう宮ぐうぐうのののおほせおほせおおせごとごとごとにてにてにて、、、宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょうののの兄このかみ兄このかみこのかみののの衛ゑ衛ゑえ門もん門もんもんののの督かみ督かみかみことごとしきことごとしきことごとしき隨ずゐ隨ずゐずい身じん身じんじんひきひきひきつれつれつれてててうるはしきうるはしきうるわしきさまさまさましししててて參まゐ參まゐまいりりり給たま給たまたまへへえりりり。。。かうやうかうやうこうようののの御おん御おんおんありきありきありきはははしのびしのびしのび給たま給たまたまふふうとととすれすれすれどどどおのづからおのづからおのずからことことことひろごりひろごりひろごりててて、、、後のち後のちのちのののためしためしためしにににもももなるなるなるわざわざわざなるなるなるををを、、、おもおもしきおもおもしきおもおもしき人にん人にんにん數ず數ずずあまたあまたあまたもももなくなくなくててて俄にはか俄にはかにわかにににおはしましおはしましおわしましにににけるけるけるををを聞きこ聞きこきこしししめしめしめしおどろきおどろきおどろきててて、、、殿てん殿てんてん上じやう上じやうじょう人びと人びとびとあまたあまたあまた具ぐ具ぐぐしししててて參まゐ參まゐまいりりりたるたるたるにににはしたなくはしたなくはしたなくなりなりなりぬぬぬ宮みや宮みやみやももも中ちゆう中ちゆうちゅう納な納なな言ごん言ごんごんももも苦くる苦くるくるしししとととおぼしおぼしおぼしててて物もの物ものものののの興きよう興きようきょうもももなくなくなくなりなりなりぬぬぬ。。。御心みこころ御心みこころみこころのののうちうちうちをををばばばしらしらしらずずずゑひゑひえいみだれみだれみだれててて遊あそ遊あそあそびびびあかしあかしあかしつつつ。。。今日けふ今日けふきょうはははかくかくかくてててとととおぼすおぼすおぼすににに、、、又また又またまた宮みや宮みやみやののの大だい大だいだい夫ぶ夫ぶぶさらさらさらぬぬぬ殿てん殿てんてん上じやう上じやうじょう人びと人びとびとなどなどなどあまたあまたあまた奉たてまつ奉たてまつたてまつりりり給たま給たまたまへへえりりり。。。心こころ心こころこころあわたゞしくあわたゞしくあわただしくててて口くち口くちくちををおしくしくしくかへりかへりかえり給たま給たまたまははわむむんそらそらそらなしなしなし。。。かしこかしこかしこにににははは御おん御おんおん文ふみ文ふみふみをををぞぞぞ奉たてまつ奉たてまつたてまつれれれ給たま給たまたまふふう。。。をかしやかをかしやかおかしやかなるなるなることことこともももなくなくなく、、、いといといとまめまめまめだちだちだちててておぼしおぼしおぼしけるけるけることことことゞゞどもももをををこまごまこまごまこまごまととと書か書かかききき續つゞ續つゞつづけけけ給たま給たまたまへへえれれれどどど、、、人ひと人ひとひとめめめしげうしげうしぎょうさわがしからさわがしからさわがしからむむんにににとてとてとて御おん御おんおんかへりかへりかえりなしなしなし。。。數かず數かずかずならならならぬぬぬ有あり有ありあり樣さま樣さまさまにてにてにてはははめでたきめでたきめでたき御おん御おんおんあたりあたりあたりにににまじらはまじらはまじらわむむんかひかひかいなきなきなきわざわざわざかなかなかなととといとゞいとゞいとどおぼしおぼしおぼしきりきりきり給たま給たまたまふふう。。。よそよそよそにてにてにて隔へだ隔へだへだたるたるたる月つき月つきつき日ひ日ひひははは覺束おぼつか覺束おぼつかおぼつかなさなさなさもももことわりことわりことわりにににさりともさりともさりともなどなどなどなぐさめなぐさめなぐさめ給たま給たまたまふふうををを、、、近ちか近ちかちかききき程ほど程ほどほどにににのゝしりのゝしりののしりおはしおはしおわしててて、、、つれなくつれなくつれなくすぎすぎすぎ給たま給たまたまふふうなむなむなんつらくつらくつらくももも口くち口くちくち惜を惜をおしくしくしくももも思おも思おもおもひひい亂みだ亂みだみだれれれ給たま給たまたまふふう。。。宮みや宮みやみやはははましてましてましていぶせくいぶせくいぶせくわりなしわりなしわりなしとととおぼすおぼすおぼすことことことかぎりかぎりかぎりなしなしなし。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

たそがれ時に、御舟を岸に寄せて、楽を奏しながら漢詩をお作りになる。紅葉を薄く濃く挿頭にして、海仙楽というものを吹いて、それぞれ満足した様子であるのに、匂宮は近江の海の心地がして、遠方の人の恨みはどうかとばかり、お心は上の空である。時節にちなんだ題を出して、口ずさんだり吟じたりし合っている。人々の騒ぎを少し静めてからいらっしゃろうと中納言もお思いになって、然るべく申し上げなさっているうちに、宮中から中宮の仰せ言で、宰相の中将の兄の衛門督が、仰々しい随身を引き連れて、正装した様子で参上なさった。このようなお出かけは、忍びなさるとしても自然と話が広まって、後の例にもなることなのに、重々しい供の人数も多くなくて急にいらっしゃったのをお聞きになって驚いて、殿上人を大勢連れて参ったので、きまりが悪くなった。匂宮も中納言も苦しいとお思いになって、遊びの興もなくなってしまった。人々はお心の内を知らず、酔い乱れて遊び明かした。今日はこのままでとお思いになるのに、また中宮大夫や、そのほかの殿上人などを大勢お遣わしになった。気ぜわしく残念で、お帰りになる気にもなれない。宇治にはお手紙を差し上げなさる。洒落たこともなく、たいそう真剣に、お思いになっていることどもを細々と書き続けなさったが、人目が多く騒がしいだろうというので、お返事はない。大君は、人数にも入らない有様では、すばらしいお方のあたりに交わるかいもないことだと、ますます思い切りなさる。よそに隔たっている月日は、心もとないのも道理で、それでもなどと慰めていらっしゃったのに、すぐ近くで騒いでいらっしゃって、素知らぬ顔で通り過ぎなさるのが、つらくも残念にも思い乱れていらっしゃる。匂宮は、まして気が晴れず、どうしようもないとお思いになることこの上ない。

意訳

舟遊びの中、匂宮は中の君のことばかり思う。中の君を訪ねる機会を窺っていると、中宮の命で衛門督が大勢の殿上人を連れて迎えに来て、匂宮は身動きが取れなくなる。匂宮は手紙だけを送るが、返事はない。大君は、身分違いの縁はつらいだけだと思い切り、すぐ近くまで来て素通りする匂宮を恨めしく思う。

語釈・文法注

文法

「海仙樂」(海仙樂といふものを吹きて)
雅楽の曲名。
「あふみの海の心地して」(宮はあふみの海の心地して)
近江の海(琵琶湖)。「逢ふ身」を掛け、逢えない身を嘆く。
「をち方人」(をち方人のうらみいかにと)
遠方の人。対岸の山荘の中の君。

解説

匂宮は中の君のすぐそばまで来ながら、宮中からの迎えで会うことができない。身分の高さが恋の自由を奪う。匂宮が嘆いた「所せき身」がここで現実となる。

大君にとって、匂宮の素通りは決定的な打撃となる。身分違いの結婚は妹を不幸にすると、大君は思い詰めていく。

関連

出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、966–969頁(コマ194–195)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日