源氏物語 第47帖 総角(32)
京に迎える算段
匂宮は、薫がまだ客人として別の所に寝ているとも思わずに、「中納言が主人側としてのんびりしている様子がうらやましい」とおっしゃるので、中の君は妙だと思って聞く。無理をしていらしては、ほどなく帰るのが物足りなく苦しいのに、匂宮もひどく物思いをしているお心の内を知らないので、中の君の方では、またどんな人の笑いものになるのかと嘆いているので、本当に心を尽くす苦しそうなことだと見える。京にも、こっそり移らせる所もさすがにない。六条院では左大臣(夕霧)が一方に住んでいて、あれほどぜひにと思っている六の君のことを匂宮が考えもしないので、何となく恨めしく思っているようだ。好色なご様子だと容赦なく非難して、宮中にも訴えているようなので、ますます心外で、中の君を京に迎え据えるのもはばかることがたいそう多い。並の思い人の身分なら、宮仕えの形にしてかえって気安いだろう。中の君をそのような並の者とは思わない。もし世の中が移って、帝や后の考えどおりに匂宮が東宮にでもなったら、人より高い身分にしようなどと、今はたいそう華やかに心にかかっているままに、扱いようもなく苦しいのだった。中納言(薫)は、三条の宮を造り終えて、然るべき形で大君を移そうと思う。本当に臣下は気楽なものだ。匂宮がこうも心苦しいご様子ながら気苦労して忍んでいるので、互いに思い悩んでいるらしいのも心苦しくて、薫は、忍んで通っていることを中宮などにもお耳に入れて、しばらく騒がれるのは気の毒でも、中の君の方のためには咎めもないだろう、こうも夜を明かすこともできない苦しさよ、立派に扱ってお住まわせしたいなどと思って、強いて隠さず、衣替えなどもしっかりと誰が世話するだろうと思って、御帳の帷子や壁代など、三条の宮を造り終えて移るための準備にしておいたものを、まず然るべき用にとたいそうひそかに申し上げて贈る。さまざまな女房の装束も、乳母などにも言いつけて、わざわざ作らせた。
- 1宮宮みやはははまだまだまだ旅旅たびねねねなるなるなるらむらむらんととともももおぼさおぼさおぼさででで、、、「「「中中ちゅう納納な言言ごんのののあるじあるじあるじがたがたがたににに心心こころのどかのどかのどかなるなるなる氣色氣色けしきこそこそこそうらやましけれうらやましけれうらやましけれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、女女おんな君君ぎみあやしあやしあやしととと聞聞きききき給給たまふふう。。。わりなくわりなくわりなくててておはしましおはしましおわしましてててははは程程ほどなくなくなくかへりかへりかえり給給たまふふうががが飽飽あかかかずずず苦苦くるしきしきしきににに、、、宮宮みやももも物物ものをををいみじくいみじくいみじくおぼしおぼしおぼしたるたるたる御心御心みこころのののうちうちうちををを知知しりりり給給たまははわねねねばばば女女おんながたがたがたにににははは、、、又又またいかならいかならいかならむむん人人ひとわらへわらへわらえにににやややととと思思おもひひいなげきなげきなげき給給たまへへえばばば、、、げにげにげに心心こころづくしづくしずくしににに苦苦くるしげしげしげなるなるなるわざわざわざかなかなかなととと見見みゆゆゆ。。。京京きょうにににもももかくろへかくろへかくろえててて渡渡わたりりり給給たまふふうべきべきべき所所ところもももさすがさすがさすがににになしなしなし。。。六六ろく條條じょう院院いんにににははは、、、左左ひだりのののおほいおほいおおいとのとのとの片片かたつつつ方方かたににに住住すみみみ給給たまひひいててて、、、さばかりさばかりさばかりいかでいかでいかでかかかとととおぼしおぼしおぼしたるたるたる六六ろくののの君君きみののの御御おん事事ことをををおぼしおぼしおぼしよらよらよらぬぬぬににになまなまなまうらめしうらめしうらめしととと思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふうべかべかべかめりめりめり。。。すきずきしきすきずきしきすきずきしき御御おんさまさまさまとととゆるしゆるしゆるしなくなくなくそしりそしりそしり聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、うちうちうちわたりわたりわたりにににももも憂憂うれへへえ聞聞きこえええ給給たまふふうべかべかべかめれめれめればばば、、、いよいよいよいよいよいよおぼえおぼえおぼえなくなくなくててて、、、出出いだしししすゑすゑすえ給給たまははわむむんもももはゞかるはゞかるはばかることことこといといといとおほかりおほかりおおかり。。。なべてなべてなべてにににおぼすおぼすおぼす人人ひとのののきはきはきわゝゝは宮宮みや仕仕づかえのののすぢすぢすじにてにてにてなかなかなかなかなかなか心心こころやすげやすげやすげなりなりなり。。。さやうさやうさようのののなみなみなみなみなみなみにににはははおぼさおぼさおぼされれれずずず。。。若若もししし世世よののの中中なかうつりうつりうつりててて、、、帝帝みかどきさいきさいきさいのののおぼしおぼしおぼしおきおきおきつるつるつるまゝまゝままにににもももおはしまさおはしまさおわしまさばばば、、、人人ひとよりよりよりたかきたかきたかきさまさまさまにににこそこそこそなさなさなさめめめなどなどなど、、、只只ただ今今いまはははいといといと華華はなやかやかやかににに、、、御心御心みこころにににかゝりかゝりかかり給給たまへへえるるるまゝまゝままににに、、、もてもてもてなさなさなさむむん方方かたなくなくなく苦苦くるしかりしかりしかりけりけりけり。。。
- 2中中ちゅう納納な言言ごんははは、、、三三さん條條じょうののの宮宮みやつくりつくりつくりはてはてはてゝゝて、、、さるべきさるべきさるべきさまさまさまにてにてにて渡渡わたししし奉奉たてまつらららむむんとととおぼすおぼすおぼす。。。げにげにげにたゞたゞただ人人びとははは心心こころやすかりやすかりやすかりけりけりけり。。。かくかくかくいといといと心苦心苦こころぐるしきしきしき御御おん氣色氣色けしきながらながらながら安安やすからからからずずず忍忍しのびびび給給たまふふうからからからににに、、、かたみかたみかたみににに思思おもひひい惱惱なやみみみ給給たまふふうべかべかべかめるめるめるももも心苦心苦こころぐるしくしくしくててて、、、忍忍しのびびびてててかくかくかくかよひかよひかよい給給たまふふうよしよしよしををを中中ちゅう宮宮ぐうなどなどなどにににももも漏漏もらししし聞聞きこしししめさめさめさせせせててて、、、しばししばししばしのののさわがれさわがれさわがれはははいとほしくいとほしくいとおしくともともとも女女おんながたがたがたののの御御おんためためためははは咎咎とがもももあらあらあらじじじ、、、いといといとかくかくかく夜夜よをををだにだにだに明明あかししし給給たまははわぬぬぬ苦苦くるしげしげしげさささよよよ、、、いみじくいみじくいみじくもてもてもてなしなしなしてててあらあらあらせせせ奉奉たてまつらららばやばやばやなどなどなど思思おもひひいててて、、、あながちあながちあながちにににもももかくろへかくろへかくろえずずず、、、ころもころもころもがへがへがえなどなどなどはははかばかしくかばかしくかばかしく、、、誰誰たれかかかはははあづからあづからあずからむむんなどなどなどおぼしおぼしおぼしててて、、、御御おん帳帳ちょうのののかたびらかたびらかたびらかべかべかべしろしろしろなどなどなど、、、三三さん條條じょうののの宮宮みやつくりつくりつくりはてはてはてゝゝてわたりわたりわたり給給たまははわむむん心心こころまうけまうけもうけにににしししおかおかおかせせせ給給たまへへえるるるををを、、、まづまづまずさるべきさるべきさるべきやうやうようなむなむなんなどなどなどいといといと忍忍しのびびびててて聞聞きこえええ給給たまひひいててて奉奉たてまつれれれ給給たまふふう。。。さまざまさまざまさまざまなるなるなる女房女房にょうぼうのののさうぞくさうぞくそうぞく、、、御御おんめのとめのとめのとなどなどなどにににももものたまひのたまひのたまいつゝつゝつつ、、、わざとわざとわざともももせせせさせさせさせ給給たまひひいけりけりけり。。。
現代語訳
匂宮は、薫がまだ客人として旅寝をしているだろうともお思いにならず、「中納言が主人側として、のんびりしている様子こそうらやましい」とおっしゃるので、女君は妙だとお聞きになる。匂宮が無理をしていらっしゃっては、ほどなくお帰りになるのが物足りなく苦しいうえに、匂宮もひどく物思いをしていらっしゃるお心の内をご存じないので、女君の方では、またどのような人の笑いものになるのかと思い嘆いていらっしゃるので、本当に心を尽くす苦しそうなことだと見える。京にも、こっそりお移りになれるような所も、さすがにない。六条院には、左大臣が一方に住んでいらっしゃって、あれほど何とかしてとお思いになっている六の君のことを、匂宮がお考えにならないので、何となく恨めしくお思い申し上げていらっしゃるようだ。好色なご様子だと容赦なく非難申し上げなさって、宮中にも訴え申し上げなさるようなので、ますます心外で、中の君を京に迎え据えなさるのも、はばかることがたいそう多い。並の思い人の身分ならば、宮仕えの筋として、かえって気安そうである。中の君をそのような並の者とはお思いにならない。もし世の中が移って、帝や后がお考えおきになったとおりにおなりになるならば、人より高い身分にしようなどと、今はたいそう華やかに、お心にかかっていらっしゃるままに、扱いようもなく苦しいのだった。
中納言は、三条の宮を造り終えて、然るべき形で大君をお移し申し上げようとお思いになる。本当に臣下は気楽なものであった。匂宮がこのようにたいそう心苦しいご様子ながら、気苦労して忍んでいらっしゃるので、互いに思い悩んでいらっしゃるようなのも心苦しくて、薫は、忍んでこのように通っていらっしゃることを中宮などにもお耳に入れ申し上げて、しばらく騒がれるのは気の毒でも、女君の方のためには咎めもあるまい、こうも夜を明かすこともおできにならない苦しさよ、立派に扱ってお住まわせ申し上げたいものだなどと思って、強いて隠しもせず、衣替えなどもしっかりと、誰が世話をするだろうかなどとお思いになって、御帳の帷子や壁代など、三条の宮を造り終えてお移りになるための準備にしておかせなさっていたものを、まず然るべき用にと、たいそうひそかに申し上げてお贈りになる。さまざまな女房の装束も、乳母などにもおっしゃって、わざわざ作らせなさった。
意訳
匂宮は、宮中の目や、六の君との縁談を望む夕霧の非難のため、中の君を京に迎えることができない。いずれ高い身分に据えたいと思いながら、扱いに苦しむ。薫は、大君を新築の三条の宮に迎えたいと考え、また匂宮と中の君のために、ひそかに調度や装束を宇治に贈る。
語釈・文法注
文法
- 「旅ね」(宮はまだ旅ねなるらむともおぼさで)
- 旅寝。薫が大君と結ばれず、客人として別の所に寝ていること。
- 「六の君」(さばかりいかでかとおぼしたる六の君の御事を)
- 夕霧の娘。夕霧は匂宮を婿に望んでいる。
- 「かべしろ」(御帳のかたびらかべしろなど)
- 壁代。部屋の仕切りに垂らす布。
解説
匂宮の身分の高さが、中の君との結婚を難しくする。夕霧の六の君との縁談が、ここで初めて現実の障害として描かれる。
薫は大君を迎える準備をしていた調度を、匂宮と中の君のために回す。薫の後見ぶりは行き届いているが、自分の恋の準備が他人のために使われるという皮肉がある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、964–967頁(コマ193–194)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日