源氏物語 第47帖 総角(31)
薫と大君の物越しの対面
女房たちは日頃つぶやいていた名残もなく笑み栄えて、御座所を整えたりする。京の然るべき所々に散っていた娘や姪のような者を二三人呼び寄せて参らせた。長年姫君たちを侮っていた浅はかな人々は、珍しい客人だと驚いている。大君も時には匂宮の訪れをうれしく思うが、賢ぶる薫が付き添っているのが気恥ずかしくも煩わしくも思われる。しかし薫の気立てがのどかで思慮深くいらっしゃるのを、なるほど匂宮はこうではなかったと見比べて、めったにない人だと思い知る。匂宮を土地なりにたいそう格別にかしずいてお入れし、薫は主人側として気安く扱いながらも、まだ客人の座で仮の所に出しておいたので、薫はひどくつらいと思っている。恨むのもさすがに気の毒で、大君は物越しに対面する。薫は「戯れにくいことですね。いつまでもこのままですか」とひどく恨む。大君はだんだん道理も分かってきたが、妹の身の上でもひどく思い沈んで、ますますこのような方面をつらいものと思い極めて、やはりひたすら、どうしてこう打ち解けて哀れと思う人のお心も、必ずつらいと思うことになるのだろう、自分も相手も見下げることなく心違いもなく終わりたいと思う心づかいを深くしている。薫が匂宮の様子などを尋ねると、大君はそれとなく、やはり思ったとおりだというふうに言うので、薫は気の毒で、匂宮の思っている様子や、自分がご様子を見て回っていることなどを話す。大君はいつもより素直に語って、「やはりこうした物思いが加わる頃は、少し気分が落ち着いてからお話ししましょう」と言う。人に憎らしく疎遠に離れるのではないものの、障子の固めもたいそう強い。無理に破るのはつらくひどいことだと思っているので、薫は、お考えがあるのだろう、軽々しく他の方に靡かれることはまさか世にあるまいと、心のどかな人なので、そうはいってもよく気を静める。「ただひどくもどかしく物を隔てているのが胸の晴れない心地がするので、以前のようにしてお話ししたい」と責めるが、大君は「いつもより自分の面影が恥ずかしい頃なので、疎ましいと御覧になるのも、さすがに心苦しいのはどうしてでしょう」とほのかに笑う気配などが、不思議に親しみやすく思われる。「こんなお心に油断させられて、ついにどうなる身なのでしょう」と嘆きがちに、いつもの遠山鳥のように隔てられたまま夜が明けた。
- 1女女おんなばらばらばら日日ひごろごろごろうちうちうちつぶやきつぶやきつぶやきつるつるつる名名な殘殘ごりなくなくなくゑみゑみえみさかえさかえさかえつゝつゝつつおおおましましましひきひきひきつくろひつくろひつくろいなどなどなどすすす。。。京京きょうにににさるべきさるべきさるべき所所ところ々々どころににに行行ゆきききちりちりちりたるたるたるむすめむすめむすめどもどもどもめひめひめいだつだつだつ人人ひと二二ふた三三み人人り尋尋たずねねねよせよせよせててて參參まいらせらせらせたりたりたり。。。年年としごろごろごろあなづりあなづりあなずり聞聞きこえええけるけるける心心こころあさきあさきあさき人々人々ひとびと、、、珍珍めずらからからかなるなるなるまらうどまらうどまろうどゝゝと思思おもひひい驚驚おどろきききたりたりたり。。。姫姫ひめ君君ぎみもももをりをりおり嬉嬉うれしくしくしく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふうににに、、、さかしらさかしらさかしら人人びとのののそひそひそい給給たまへへえるるるぞぞぞ恥恥はずかしくしくしくもももありありありぬぬぬべくべくべくなまなまなまわづらはしうわづらはしうわずらわしゅう思思おもへへえどどど、、、心心こころばへばへばえののののどかのどかのどかににに物物もの深深ぶかくくくものしものしものし給給たまふふうををを、、、げにげにげに人人ひとはははかうかうこうははは坐坐おわせせせざりざりざりけりけりけりととと見見みあはせあはせあわせ給給たまふふうにににありがたしありがたしありがたしととと思思おもひひいしらしらしらるるる宮宮みやををを所所ところにににつけつけつけてててはははいといといとことことことにににかしづきかしづきかしずき入入いりりり奉奉たてまつりりりててて、、、このこのこの君君きみはははあるじあるじあるじがたがたがたににに心心こころやすくやすくやすくもてもてもてなしなしなし給給たまふふうものものものからからから、、、まだまだまだまらうとまらうとまろうとゐゐいののの、、、かりそめかりそめかりそめなるなるなる方方かたににに出出いだしししはなちはなちはなち給給たまへへえれれればばばいといといとからしからしからしととと思思おもひひい給給たまへへえりりり。。。恨恨うらみみみ給給たまふふうもももさすがさすがさすがにににいとほしくいとほしくいとおしくててて物物ものごしごしごしににに對對たい面面めんししし給給たまふふう。。。「「「たはぶれたはぶれたわぶれにくゝにくゝにくくもももあるあるあるかなかなかな。。。かくかくかくてててのみのみのみややや」」」ととといみじくいみじくいみじく恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。やうやうやうやうようようことわりことわりことわりしりしりしり給給たまひひいにににたれたれたれどどど、、、人人ひとののの御御おんうへうへうえにてにてにてももも物物ものをををいみじくいみじくいみじく思思おもひひいしづみしづみしずみ給給たまひひいててて、、、いとゞいとゞいとどかゝるかゝるかかる方方かたををを憂憂うきききものものものににに思思おもひひいはてはてはてゝゝて、、、猶猶なおひたぶるひたぶるひたぶるににに、、、いかでいかでいかでかくかくかくうちうちうちとけとけとけしししあはれあはれあわれととと思思おもふふう人人ひとののの御心御心みこころももも必必かならずずずつらしつらしつらしととと思思おもひひいぬぬぬべきべきべきわざわざわざにににこそこそこそあああめれめれめれ、、、我我わももも人人ひとももも見見みおとさおとさおとさずずず心心こころ違違たがははわででで止止やみみみにににしがなしがなしがなととと思思おもふふう心心こころづかひづかひずかい深深ふかくくくししし給給たまへへえりりり。。。
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現代語訳
女房たちは、日頃つぶやいていた名残もなく笑み栄えながら、御座所を整えたりする。京の然るべき所々に散っていた娘たちや姪のような者を二三人呼び寄せて参上させた。長年姫君たちを侮り申し上げていた浅はかな人々は、珍しい客人だと驚いている。大君も時にはうれしくお思い申し上げなさるが、賢ぶる薫が付き添っていらっしゃるのが、気恥ずかしくもあるに違いなく、何となく煩わしく思うけれど、薫の気立てがのどかで思慮深くいらっしゃるのを、なるほど匂宮はこうではいらっしゃらなかったと見比べなさると、めったにない方だと思い知られる。匂宮を土地なりにたいそう格別にかしずいてお入れ申し上げて、この薫は主人側として気安くお扱いなさるものの、まだ客人の座の、仮の所に出し放っておかれたので、薫はひどくつらいとお思いになっている。恨みなさるのもさすがに気の毒で、大君は物越しに対面なさる。「戯れにくいことですね。いつまでもこのままですか」とひどく恨み申し上げなさる。大君はだんだん道理も分かってきなさったけれど、妹の身の上でもひどく思い沈みなさって、ますますこのような方面をつらいものと思い極めて、やはりひたすら、どうして、このように打ち解けて哀れと思う人のお心も、必ずつらいと思うことになるようだ、自分も相手も見下げることなく、心違いもなく終わりたいものだと思う心づかいを深くしていらっしゃる。
薫が匂宮のご様子なども尋ね申し上げなさると、大君はそれとなく、やはり思ったとおりだというふうにおっしゃるので、薫は気の毒で、匂宮がお思いになっている様子や、自分がご様子を見て回っていることなどをお話し申し上げなさる。大君はいつもより素直にお話しになって、「やはりこうした物思いが加わる頃は、少し気分も落ち着いてからお話し申し上げましょう」とおっしゃる。人に憎らしく、疎遠に離れているわけではないものの、障子の固めもたいそう強い。無理に破るのは、つらくひどいことだろうとお思いになっているので、薫は、お考えになることがあるのだろう、軽々しく他の方にお靡きになることは、まさか世にあるまいと、心のどかな人なので、そうはいってもよく気を静めなさる。「ただひどくもどかしく物を隔てているのが、胸の晴れない心地がしますので、以前のようにしてお話ししたい」と責めなさるが、大君は「いつもより自分の面影が恥ずかしい頃なので、疎ましいとご覧になるのも、さすがに心苦しいのはどうしてでしょう」と、ほのかにお笑いになった気配などが、不思議に親しみやすく思われる。「このようなお心に油断させられ申し上げて、ついにどうなる身なのでしょう」と嘆きがちで、いつもの遠山鳥のように隔てられたまま夜が明けた。
意訳
匂宮の訪れに女房たちは喜び、身内を呼び寄せて仕えさせる。大君は匂宮と比べて薫の思慮深さを知るが、薫を客人の座に置いたまま物越しに対面する。大君は妹の苦しみを見て、恋はいずれつらいものになると思い、薫とは心違いのないまま終わりたいと願う。大君は面影の衰えを恥じて隔てを解かず、薫は嘆きながら夜を明かす。
語釈・文法注
文法
- 「まらうとゐ」(まだまらうとゐの、かりそめなる方に)
- 客人の座。正式な婿ではなく客として扱われる。
- 「我も人も見おとさず心違はで止みにしがな」(我も人も見おとさず心違はで止みにしがな)
- 自分も相手も見下げることなく、心違いもなく終わりたい。大君の恋愛観の核心。
- 「遠山鳥」(例の遠山鳥にて明けぬ)
- 山鳥は雌雄が谷を隔てて寝るとされる。障子を隔てて夜を明かすこと。
解説
大君は、恋は必ずつらいものに変わると考え、薫と結ばれないまま美しい関係で終わりたいと願う。妹の苦しみを見たことで、この思いはさらに強まる。大君にとって、拒むことこそが薫への誠実さであった。
大君は面影の衰えを恥じながら、ほのかに笑う。拒絶の中にも親しみがある。その微妙な距離感が、薫をいっそう引きつける。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、964–965頁(コマ193)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日