源氏物語 第47帖 総角(28)
三日目の訪れ
宇治では、中納言殿(薫)が大げさに言いなしていたのに、夜が更けるまで匂宮がいらっしゃらずに手紙だけが来たので、やはりそうかと胸がつぶれていたところ、夜中近くになって荒々しい風の勢いとともに、たいそう優美で清らかに匂やかにいらしたのも、どうしておろそかに思われよう。当の中の君も少し打ち解けて、思い知ることがあるのだろう。たいそう美しく盛りと見えて、身づくろいした様子は、まして類がないだろうと思われる。あれほどよい女性を多く見ている匂宮の目にさえ、悪くはないと、容貌をはじめ多くの点で近くで見るとまさっていると思われるので、山里の老女房たちは、まして口元も醜く笑みを浮かべながら、「こんなにすばらしいご様子を、並の身分の人が見申し上げたら、どんなに残念だったでしょう。思いどおりのご宿縁です」と言いながら、大君のお心を妙にひねくれて振る舞っていらっしゃると口をとがらせて非難する。盛りを過ぎた女房たちが、鮮やかな花の色の似つかわしくない衣を縫い着て、不似合いに着飾った姿で、見苦しくない者もないのを見渡して、大君は、私もだんだん盛りを過ぎていく身だ、鏡を見ると痩せ細っていくのに、それぞれこの女房たちも自分が醜いとは思っていない、後ろ姿は知らぬ顔で額髪をかけながら、色づけた化粧をよくして振る舞っているようだ、我が身ではまだあれほどではない、目も鼻もまともだと思うのは心のせいだろうかと不安で、外を見やって臥せっている。気後れするほど立派な人に会うのはますますきまり悪く、もう一二年もすれば衰えがまさるだろう、はかない身の有様だと、細くか弱く哀れな手つきを差し出して、世の中を思い続ける。
- 1かしこかしこかしこにににははは、、、中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どのののの、、、ことごとしげことごとしげことごとしげにににいひいひいいなしなしなし給給たまへへえりりりつるつるつるををを、、、夜夜よ更更ふくるくるくるまでまでまでおはしまさおはしまさおわしまさででで御御おん文文ふみのののあるあるあるををを、、、されされさればばばよよよととと胸胸むねつぶれつぶれつぶれててておはするおはするおわするににに、、、夜夜よ中中なか近近ちこうううなりなりなりてててあらましきあらましきあらましき風風かぜのののきほひきほひきおいにににいといといともももなまめかしくなまめかしくなまめかしく淸淸きよらにらにらにててて匂匂におひひいおはしおはしおわしたるたるたるももも、、、いかゞいかゞいかがおろかおろかおろかにににおぼえおぼえおぼえ給給たまははわむむん。。。さうじみさうじみそうじみももも聊聊いささかかかうちうちうち靡靡なびきききててて思思おもひひい知知しりりり給給たまふふうことことことあるあるあるべしべしべし。。。いみじくいみじくいみじくをかしげをかしげおかしげにににさかりさかりさかりととと見見みえええててて、、、引引ひきききつくろひつくろひつくろい給給たまへへえるるるさまさまさまははは、、、ましてましてまして類類たぐひひいあらあらあらじじじはははやややとととおぼゆおぼゆおぼゆ。。。さばかりさばかりさばかりよきよきよき人人ひとをををおほくおほくおおく見見み給給たまふふう御御おん目目めにににだにだにだに、、、けしうけしうけしゅうはははあらあらあらずずずとととかたちかたちかたちよりよりよりはじめはじめはじめててて多多おおくくくちかちかちかまさりまさりまさりしししたりたりたりとととおぼさおぼさおぼさるれるれるればばば山山やま里里ざとのののおいおいおい人人びとどもどもどもははは、、、ましてましてまして口口くちつきつきつきにくげにくげにくげにににうちうちうちゑみゑみえみつゝつゝつつ、、、「「「かくかくかくあたらしきあたらしきあたらしき御御おん有有あり樣樣さまををを、、、なのめなのめなのめなるなるなるきはきはきわののの人人ひとののの見見み奉奉たてまつりりり給給たまははわましかましかましかばばばいかにいかにいかに口口くち惜惜おしからしからしからましましまし。。。思思おもふふうやうやうようなるなるなる御御おんすくせすくせすくせ」」」ととと聞聞きこえええつゝつゝつつ姫姫ひめ君君ぎみののの御心御心みこころををを、、、あやしくあやしくあやしくひがひがしくひがひがしくひがひがしくもてもてもてなしなしなし給給たまふふうををを、、、もどきもどきもどきくちくちくちひそみひそみひそみ聞聞きこゆゆゆ。。。盛盛さかりりり過過すぎぎぎたるたるたるさまさまさまどもどもどもにににあざやかあざやかあざやかなるなるなる花花はなのののいろいろいろいろいろいろ似似につかはしからつかはしからつかわしからぬぬぬをををさしさしさしぬひぬひぬいきききつゝつゝつつ、、、ありつかありつかありつかずずずとりとりとりつくろひつくろひつくろいたるたるたる姿姿すがたどもどもどもののの、、、罪罪つみゆるさゆるさゆるされれれたるたるたるもももなきなきなきををを見見み渡渡わたささされれれ給給たまひひいででで、、、姫姫ひめ君君ぎみ、、、我我わもももやうやうやうやうようよう盛盛さかりりり過過すぎぎぎぬるぬるぬる身身みぞぞぞかしかしかし、、、鏡鏡かがみををを見見みれれればばばやせやせやせやせやせやせににになりなりなりもてもてもてゆくゆくゆくををを、、、おのがじゝおのがじゝおのがじしはははこのこのこの人人ひとどもどもどもゝゝも、、、われわれわれあしあしあしとととやややははは思思おもへへえるるる、、、うしろでうしろでうしろではははしらしらしらずずず顏顏がおにににひたひひたひひたい髮髮がみをををひきひきひきかけかけかけつゝつゝつつ、、、色色いろどりどりどりたるたるたる顔顔かおづくりづくりずくりをををよくよくよくしししてててうちうちうちふるまふふるまふふるまうめりめりめり、、、我我わががが身身みにてにてにてははは、、、まだまだまだいといといとあれあれあれがががほどほどほどにににはははあらあらあらずずず、、、目目めももも鼻鼻はなもももなほしなほしなおしとととおぼゆるおぼゆるおぼゆるははは心心こころのののなしなしなしにににやややあらあらあらむむんとととうしろめたくうしろめたくうしろめたくててて、、、見見み出出いだしししててて臥臥ふししし給給たまへへえりりり。。。恥恥はずかしげかしげかしげならならならむむん人人ひとににに見見みえええむむんことことことはははいよいよいよいよいよいよかたはらいたくかたはらいたくかたわらいたく、、、今今いま一一ひと年年とせ二二ふた年年とせあらあらあらばばば衰衰おとろへへえまさりまさりまさりなななむむん、、、はかなげはかなげはかなげなるなるなる身身みののの有有あり樣樣さまをををととと、、、御御おん手手てつきつきつきのののほそやかほそやかほそやかにににかよわくかよわくかよわくあはれあはれあわれなるなるなるをををさしさしさしいでいでいでゝゝてももも世世よののの中中なかををを思思おもひひいつゞけつゞけつづけ給給たまふふう。。。
現代語訳
宇治では、中納言殿が大げさに言いなしていらっしゃったのに、夜が更けるまで匂宮がいらっしゃらずに、お手紙だけがあるので、やはりそうかと胸がつぶれていらっしゃったところ、夜中近くになって、荒々しい風の勢いとともに、たいそう優美で清らかに、匂やかにいらっしゃったのも、どうしておろそかに思われなさろう。当の中の君も少し打ち解けて、思い知りなさることがあるのだろう。たいそう美しく盛りと見えて、身づくろいなさった様子は、まして類がないだろうと思われる。あれほどよい女性を多くご覧になっている匂宮のお目にさえ、悪くはないと、容貌をはじめとして多くの点で近くで見るとまさっているとお思いになるので、山里の老女房たちは、まして口元も醜く笑みを浮かべながら、「このようにすばらしいご様子を、並の身分の人が拝見なさったならば、どんなに残念だったでしょう。思いどおりのご宿縁です」と申し上げながら、大君のお心を、妙にひねくれてお振る舞いになるのを、非難して口をとがらせて申し上げる。盛りを過ぎた女房たちが、鮮やかな花の色の似つかわしくない衣を縫い着ては、不似合いに取り繕っている姿で、見苦しさを許されるような者もいないのを見渡しなさって、大君は、私もだんだん盛りを過ぎていく身なのだ、鏡を見ると痩せ細っていくのに、それぞれこの女房たちも、自分が醜いとは思っているだろうか、後ろ姿は知らぬ顔で額髪をかけながら、色づけた化粧をよくして振る舞っているようだ、我が身では、まだそれほどではない、目も鼻もまともだと思われるのは、心のせいであろうかと不安で、外を見やって臥せっていらっしゃる。気後れするほど立派な人に会うことは、ますますきまり悪く、もう一年二年もすれば衰えがまさるだろう、はかなげな身の有様だと、細くか弱く哀れなお手つきを差し出しても、世の中を思い続けなさる。
意訳
三日目の夜更け、匂宮が香り高く訪れる。中の君も匂宮に打ち解け始め、匂宮はその美しさに満足する。老女房たちは喜び、大君を非難する。不似合いに着飾った老女房たちを見て、大君は自分も盛りを過ぎていく身だと思い、薫のような立派な人に会うことをますます恐れる。
語釈・文法注
文法
- 「くちひそみ」(もどきくちひそみ聞ゆ)
- 口をとがらせて非難する。
- 「罪ゆるされたるもなき」(罪ゆるされたるもなきを)
- 見苦しさを許される者もいない。どれも見苦しい。
- 「心のなし」(心のなしにやあらむ)
- 気のせい、思いなし。
解説
着飾った老女房たちの姿は、大君に自分の老いを意識させる。まだ若いはずの大君が、鏡を見て痩せ衰えを嘆く。この自己否定が、薫を拒む理由の一つとなっていく。
細くか弱い手を見つめる大君の姿は、のちの病と死を予感させる。大君はすでに、心身ともに衰え始めている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、960–961頁(コマ191)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日