源氏物語 第47帖 総角(27)
宮中の薫
薫が中宮の御方に参ると、中宮は「匂宮は出ていったようです。呆れるほど困ったご様子ですね。人はどう見申し上げるでしょう。帝がお聞きになって、私がお諫め申し上げないのが言うかいもないとお思いになりおっしゃるのが困ります」とおっしゃる。大勢の皇子たちが成人していらっしゃるが、中宮はますます若く美しい様子がまさっている。女一の宮もこのようでいらっしゃるのだろう。どんな折に、せめてこれほどでも近くでお声だけでもお聞きできるだろうかと薫はしみじみ思う。好色な人が思ってはならない心を使うのも、こういう間柄で、さすがに疎遠でなく出入りして、心にかなわない時のことなのだろう、自分の心のように偏屈な心の者が、また世にあるだろうか、それでもやはり一度動き始めた相手は思い絶えることができないものだと思っている。仕えている限りの女房の容貌や気立ては、どれも劣ったものはなく見苦しくなく、それぞれに美しい中にも、上品で目にとまる者もいるが、薫は決して心を乱すまいという心で、たいそうきまじめに振る舞う。わざと目につくように振る舞う女房もいる。大方は気後れするほど落ち着いた中宮のあたりなので、表面は気持ちばかり慎んでいるが、人それぞれの世の中なので、色めいて進んだ下心が漏れて見える者もいるのを、さまざまに面白くも哀れでもあることよと、立っても座ってもただ無常の有様を思い巡らしている。
- 1中中ちゅう宮宮ぐうののの御御おん方方かたににに參參まいりりり給給たまへへえれれればばば、、、「「「宮宮みやははは出出いででで給給たまひひいぬぬぬなりなりなり。。。あさましくあさましくあさましくいとほしきいとほしきいとおしき御御おんさまさまさまかなかなかな。。。いかにいかにいかに人人ひと見見み奉奉たてまつるるるらむらむらん。。。上上うえきこしきこしきこしめしめしめしてててはははいさめいさめいさめ聞聞きこえええぬぬぬがががいふかひいふかひいうかいなきなきなきとととおぼしおぼしおぼしのたまふのたまふのたまうこそこそこそわりなけれわりなけれわりなけれ」」」とととのたまはすのたまはすのたまわす。。。あまたあまたあまた宮宮みや達達たちのののおとなびおとなびおとなびとゝのひとゝのひととのい給給たまへへえどどど、、、大大おお宮宮みやはははいよいよいよいよいよいよ若若わかくくくをかしきをかしきおかしきけはひけはひけはいなむなむなんまさりまさりまさり給給たまひひいけるけるける。。。女女おんな一一いち宮宮のみやもももかくかくかくぞぞぞおはしますおはしますおわしますべかべかべかめるめるめる。。。いかならいかならいかならむむん折折おりにににかかかかばかりかばかりかばかりにてにてにてももも物物もの近近ちかくくく御御おん聲聲こえをををだにだにだに聞聞きこえええ奉奉たてまつらららむむんとととあはれあはれあわれにににおぼゆおぼゆおぼゆ。。。すいすいすいたるたるたる人人ひとののの思思おもふふうまじきまじきまじき心心こころつかふつかふつかうらむらむらんももも、、、かうやうかうやうこうようなるなるなる御御おんなからひなからひなからいののの、、、さすがさすがさすがにににけけけ遠遠どおからからからずずずいりいりいりたちたちたちててて心心こころにににかなはかなはかなわぬぬぬ折折おりののの事事ことならならならむむんかしかしかし、、、我我わががが心心こころのののやうやうようににに、、、ひがひがしきひがひがしきひがひがしき心心こころのののたぐひたぐひたぐいやややははは又又また世世よにににあああべかべかべかめるめるめる、、、それそれそれだにだにだに猶猶なお動動うごきききそめそめそめぬるぬるぬるあたりあたりあたりはははえええこそこそこそ思思おもひひいたへたへたえねねねととと思思おもひひい居居い給給たまへへえりりり。。。さぶらふさぶらふさぶらうかぎりかぎりかぎりののの女房女房にょうぼうのののかたちかたちかたち、、、心心こころざまざまざまいづれいづれいずれとととなくなくなくわろびわろびわろびたるたるたるなくなくなくめやすくめやすくめやすくとりどりとりどりとりどりにににをかしきをかしきおかしき中中なかにににももも、、、あてあてあてにににすぐれすぐれすぐれててて目目めにににとまるとまるとまるあれあれあれどどど、、、更更さらににに更更さらににに亂亂みだれれれそめそめそめじじじののの心心こころにてにてにていといといときすくきすくきすくにににもてもてもてなしなしなし給給たまへへえりりり。。。殊殊こと更更さらににに見見みえええしらがふしらがふしらがう人人ひともももありありあり。。。大大おお方方かた恥恥はずかしげしげしげにににもてもてもてしづめしづめしずめ給給たまへへえるるるあたりあたりあたりなれなれなればばば、、、うはべうはべうわべこそこそこそ心心こころばかりばかりばかりもてもてもてしづめしづめしずめたれたれたれ、、、心心こころ々々ごころなるなるなる世世よののの中中なかなりなりなりけれけれければばば、、、色色いろめかしげめかしげめかしげにににすゝみすゝみすすみたるたるたるしたしたしたののの心心こころもりもりもりててて見見みゆるゆるゆるもももあるあるあるををを、、、さまざまさまざまさまざまにににをかしくをかしくおかしくもももあはれあはれあわれにににもももあるあるあるかなかなかなととと、、、立立たちちちてててももも居居いてててももも唯唯ただ常常つねなきなきなき有有あり樣樣さまををを思思おもひひいありきありきありき給給たまふふう。。。
現代語訳
薫が中宮の御方に参上なさると、「匂宮は出ていってしまったようです。呆れるほど困ったご様子ですね。人はどのように拝見しているでしょう。帝がお聞きになっては、私がお諫め申し上げないのが言うかいもないとお思いになりおっしゃるのが困ります」とおっしゃる。大勢の皇子たちが成人していらっしゃるけれど、中宮はますます若く美しいご様子がまさっていらっしゃった。女一の宮もこのようでいらっしゃるのだろう。どのような折に、せめてこれほどでも近くで、お声だけでもお聞き申し上げられるだろうかと、薫はしみじみと思われる。好色な人が思ってはならない心を使うというのも、このような間柄で、さすがに疎遠ではなく出入りして、心にかなわない時のことなのだろう、自分の心のように偏屈な心の者が、また世にあるだろうか、それでさえやはり一度心の動き始めた相手は、思い絶えることができないものだと思っていらっしゃる。仕えている限りの女房の容貌や気立ては、どれも劣ったものはなく見苦しくなく、それぞれに美しい中にも、上品で優れて目にとまる者もいるが、薫は決して決して心を乱し始めまいという心で、たいそうきまじめに振る舞っていらっしゃる。わざと目につくように振る舞う女房もいる。大方は気後れするほど落ち着いていらっしゃる中宮のあたりなので、表面こそ気持ちばかり慎んでいるが、人それぞれの心の世の中であったので、色めいて進んだ下心が漏れて見える者もいるのを、さまざまに面白くも哀れでもあることよと、立っても座ってもただ無常の有様を思い巡らしていらっしゃる。
意訳
薫は中宮のもとに参り、匂宮の行状を嘆く中宮の言葉を聞く。中宮の若々しい美しさを見て、薫は女一の宮を思い、せめて声だけでも聞きたいと願う。仕える女房たちの中には薫に色めいた様子を見せる者もいるが、薫は心を乱さず、無常の世を思う。
語釈・文法注
文法
- 「女一宮」(女一宮もかくぞおはしますべかめる)
- 女一の宮。今上帝と明石の中宮の娘。匂宮の姉。薫は密かに憧れている。
- 「きすく」(いときすくにもてなし給へり)
- きまじめ、堅苦しい。
- 「見えしらがふ」(殊更に見えしらがふ人もあり)
- わざと目につくように振る舞う。
解説
薫は大君に心を寄せながら、女一の宮にも憧れを抱いている。薫の心は一途なようでいて、実は手の届かない高貴な女性に向かう傾向がある。
女房たちの色めいた下心を、薫は冷静に眺めて無常を思う。恋に身を投じる匂宮と、恋を外から眺める薫の対照が際立つ。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、958–961頁(コマ190–191)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日