源氏物語 第47帖 総角(26)
中宮の諫め
匂宮はその夜、宮中に参って退出できそうもないので、人知れず心も上の空で嘆いていると、母の中宮が「やはりこうして独り身でいらして、世間に好色だという評判がだんだん聞こえるのは、やはりたいそうよくないことです。何事も物好きに我を通すお心を使いなさいますな。帝もご心配そうにおっしゃっています」と、里住みがちなのをお諫めになるので、ひどく苦しく思って、宿直所に出て手紙を書いて宇治へ送った。その名残でひどく物思いにふけっているところへ、中納言の君(薫)が参る。宇治の味方と思うので、いつもよりうれしくて、「どうしたらよかろう、こんなに暗くなってしまったので、心も乱れて」と嘆かわしそうにしている。薫は、よくご様子を確かめようと思って、「何日も経ってこうして参内なさったのに、今夜伺候なさらずに急いで退出なさったら、ますますよくないことと中宮もお思いになるでしょう。台盤所の方で伺ったところでは、人知れず厄介な宮仕えのしるしに、つまらないお咎めでもあるのではないかと顔色が変わりました」と申し上げると、匂宮は「ひどく聞き苦しくお思いになりおっしゃることよ。多くは人が言いなすことだろう。世に咎められるほどの心を、何に使うというのか。すべて窮屈な身の上こそかえって不自由なことだ」と言って、本当に厭わしくさえ思っている。薫は気の毒に拝見して、「どちらにしても同じお騒がれでいらっしゃるでしょう。今夜の罪には私が代わって、身を滅ぼしもいたしましょう。木幡の山に馬ではいかがでしょう。かえって噂の妨げにもならないでしょう」と申し上げると、ただ暮れに暮れて更けてしまった夜なので、匂宮は困り果てて馬で出ていった。「お供にはかえってお仕えしますまい。後の取り繕いを」と言って、薫は宮中に残った。
- 1宮宮みやはははそのそのその夜夜よ內內うちににに參參まいりりり給給たもうううててて、、、えええまかでまかでまかで給給たまふふうまじげまじげまじげなるなるなるををを、、、人人ひと知知しれれれずずず御心御心みこころもももそらそらそらにてにてにておぼしおぼしおぼし歎歎なげきききたるたるたるににに、、、中中ちゅう宮宮ぐう「「「猶猶なおかくかくかくひとりひとりひとりおはしましおはしましおわしましててて世世よののの中中なかにににすいすいすい給給たまへへえるるる御御おん名名なのののやうやうやうやうようよう聞聞きこゆるゆるゆる、、、猶猶なおいといといと惡惡あしきしきしき事事ことなりなりなり。。。何何なに事事ことももも物物もの好好このましくましくましく立立たてててたるたるたる心心こころなななつかひつかひつかい給給たまひひいそそそ。。。上上うえもももうしろめたげうしろめたげうしろめたげにににおぼしおぼしおぼしののの給給たまふふう」」」ととと里里さとずみずみずみがちがちがちにににおはしますおはしますおわしますををを諫諫いさめめめ聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、いといといと苦苦くるしししとととおぼしおぼしおぼしててて、、、御御おん殿殿との居居い所所どころににに出出いででで給給たまひひいててて御御おん文文ふみかきかきかきててて奉奉たてまつれれれ給給たまへへえるるる。。。名名な殘殘ごりもももいたくいたくいたくうちうちうちながめながめながめててておはしますおはしますおわしますににに中中ちゅう納納な言言ごんののの君君きみ參參まいりりり給給たまえええりりり。。。そなたそなたそなたののの心心こころよせよせよせとととおぼせおぼせおぼせばばば例例れいよりよりよりももも嬉嬉うれしうしうしゅうててて、、、「「「いかゞいかゞいかがすすすべきべきべき、、、いといといとかくかくかく暗暗くらくくくなりなりなりぬぬぬめるめるめるををを心心こころももも亂亂みだれれれてててなむなむなん」」」ととと歎歎なげかしげしげしげにににおぼしおぼしおぼしたりたりたり。。。
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現代語訳
匂宮はその夜、宮中に参上なさって、退出なさることができそうもないので、人知れずお心も上の空で嘆いていらっしゃると、中宮が「やはりこうして独り身でいらっしゃって、世間で好色だというお噂がだんだん聞こえるのは、やはりたいそうよくないことです。何事も物好きに我を通すお心をお使いなさいますな。帝もご心配そうにお思いになりおっしゃっています」と、里住みがちでいらっしゃるのをお諫め申し上げなさるので、ひどく苦しいとお思いになって、宿直所にお出になって、お手紙を書いて宇治へお送りになった。その名残でひどく物思いにふけっていらっしゃるところに、中納言の君が参上なさった。宇治の方の味方とお思いになるので、いつもよりうれしくて、「どうしたらよかろう、こんなに暗くなってしまったので、心も乱れて」と、嘆かわしそうにお思いになっている。
薫は、よくご様子を拝見しようとお思いになって、「何日も経って、こうして参内なさったのに、今夜伺候なさらずに急いで退出なさったら、ますますよくないことと、中宮もお思い申し上げなさるでしょう。台盤所の方でお聞きしましたところ、人知れず厄介な宮仕えをしたしるしに、つまらないお咎めでもございましょうかと、顔色が変わりました」と申し上げなさると、「ひどく聞き苦しくお思いになりおっしゃることよ。多くは人が言いなすことであろう。世に咎められるほどの心を、何に使うというのか。すべて窮屈な身の上こそ、かえって不自由なことであった」と言って、本当に厭わしくさえお思いになっている。薫はお気の毒に拝見なさって、「どちらにしても同じお騒がれでいらっしゃるでしょう。今夜の罪には私が代わり申し上げて、身を滅ぼしもいたしましょう。木幡の山に馬ではいかがでございましょう。かえって噂の妨げにもならないでしょう」と申し上げなさると、ただ暮れに暮れて更けてしまった夜なので、匂宮は困り果てて、御馬でお出になった。「お供にはかえってお仕えいたしますまい。後の取り繕いを」と言って、薫は宮中に伺候なさる。
意訳
三日目の夜、匂宮は宮中に留められ、中宮から好色の噂を諫められる。宇治へ行けず嘆く匂宮のもとに薫が来る。薫は、どうせ噂されるなら罪は自分が代わって負うと言い、馬で木幡山を越えて行くよう勧める。匂宮は馬で宇治へ向かい、薫は宮中に残って後を取り繕う。
語釈・文法注
文法
- 「里ずみがちに」(里ずみがちにおはしますを)
- 宮中に参らず、自邸に住みがちなこと。
- 「かんだう」(あいなきかんだうや侍らむ)
- 勘当。お咎め。
- 「こはだの山」(こはだの山に馬はいかゞ侍るべき)
- 木幡山。京から宇治への途中にある山。「山科の木幡の山を馬はあれど徒歩より我が来し汝を思ひかねて」(拾遺集)を踏まえる。
解説
三日目の夜に通わなければ、結婚は成立しない。中宮の諫めで宮中に留められた匂宮を、薫が助けて宇治に送り出す。薫は自分の恋が報われないまま、他人の恋の後見役を務めている。
匂宮の身分の高さは、自由な恋の妨げとなる。「所せき身の程」を嘆く匂宮の言葉は、のちに中の君が味わう苦しみの予兆でもある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、958–959頁(コマ190)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日