源氏物語 第47帖 総角(23)
後朝の文
匂宮は早速、後朝の手紙を送る。山里ではどなたも現実の心地がせず思い乱れている。中の君は、姉君がいろいろたくらんでいたのに、顔色にも出さなかったのだと疎ましくつらく思って、姉君と目も合わせない。大君は、自分が何も知らなかったことも、はっきりと弁明できず、中の君がそう思うのはもっともだと心苦しく思う。女房たちも、どういうことでございましたかなどと姉妹の様子を窺うが、大君がぼんやりした様子で、頼りの人(大君)がいらっしゃるので、妙なことだと思い合っている。手紙を開いてお見せしても、中の君は全く起き上がらないので、使者は「ずいぶん長くなりました」と困っている。匂宮の歌は、世の常の通いと思うだろうか、露深い道の笹原を分けて来たのだが、というものである。書き慣れた墨つきなどがことさらに優美なのも、大方の手紙として見ていた時は趣深く思われたが、今は不安で物思わしく、大君は自分が賢ぶって返事を書くのもひどく気が引けるので、あるべき作法を真剣に説いて、無理に中の君に書かせる。紫苑色の細長一襲に三重襲の袴を添えて使者に与える。使者が窮屈そうにしているので、包ませて供の者に送らせた。大げさな使者でもなく、いつも差し向ける殿上童である。匂宮はことさらに人に気配を漏らすまいと思っていたので、昨夜の賢ぶった老女房の仕業だったのだと不快にお聞きになった。
- 1宮宮みやはははいつしかいつしかいつしかととと御御おん文文ふみ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。山山やま里里ざとにににははは誰誰たれもももたれたれたれもももうつゝうつゝうつつののの心地心地ここちししし給給たまははわずずず思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまへへえりりり。。。樣樣さま々々ざまにににおぼしおぼしおぼしかまへかまへかまえけるけるけるををを、、、色色いろにににももも出出いだししし給給たまははわざりざりざりけるけるけるよよよとととうとましううとましううとましゅうつらくつらくつらく姉姉あね君君ぎみをををばばば思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、目目めももも見見みあはせあはせあわせ奉奉たてまつりりり給給たまははわずずず。。。知知しらららざりざりざりしししさまさまさまをををももも、、、さはさはさはさはさわさわとととはははえええあきらめあきらめあきらめ給給たまははわででで、、、ことわりことわりことわりににに心苦心苦こころぐるしくしくしく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。人々人々ひとびともももいかにいかにいかに侍侍はべりりりしししことことことにににかかかなどなどなど、、、御御おん氣色氣色けしき見見み奉奉たてまつれれれどどど、、、おぼしおぼしおぼしほれほれほれたるたるたるやうやうようにてにてにてたのもしたのもしたのもし人人びとのののおはすれおはすれおわすればばば、、、あやしきあやしきあやしきわざわざわざかなかなかなととと思思おもひひいあへあへあえりりり。。。御御おん文文ふみもももひきひきひきときときときててて見見みせせせ奉奉たてまつりりり給給たまへへえどどど、、、更更さらににに起起おきききあがりあがりあがり給給たまははわねねねばばば、、、「「「いといといと久久ひさしくしくしくなりなりなりぬぬぬ」」」ととと御御おんつかひつかひつかいわびわびわびけりけりけり。。。「「「世世よのののつねつねつねににに思思おもひひいやすやすやすらむらむらん露露つゆふかきふかきふかき道道みちのののさゝさゝささ原原はらわきわきわきてててきききつるつるつるももも」」」。。。書書かきききなれなれなれ給給たまへへえるるる墨墨すみつきつきつきなどなどなどのののことさらことさらことさらにににえんえんえんなるなるなるももも、、、大大おおかたかたかたにににつけつけつけててて見見み給給たまひひいしししははは、、、をかしうをかしうおかしゅうおぼえおぼえおぼえしししををを、、、後後うしろめたうめたうめとう物物もの思思おもはしうはしうわしゅうててて我我わさかしさかしさかし人人びとにてにてにて聞聞きこえええむむんもももいといといとつゝましけれつゝましけれつつましければばば、、、まめやかまめやかまめやかにににあるあるあるべきべきべきやうやうようをををいみじくいみじくいみじくせめてせめてせめて書書かかかかせせせ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。しをんしをんしおん色色いろののの細細ほそ長長ながひとひとひとかさねかさねかさねににに、、、みへみへみえがさねがさねがさねののの袴袴はかま具具ぐしししてててたまふたまふたまう。。。御御おん使使つかい苦苦くるしげしげしげににに思思おもひひいたれたれたればばば、、、つゝまつゝまつつませせせててて供供ともなるなるなる人人ひとににになむなむなん送送おくらららせせせ給給たまふふう。。。ことごとしきことごとしきことごとしき御御おん使使つかいにににもももあらあらあらずずず、、、例例れい奉奉たてまつれれれ給給たまふふううへうへうえわらはわらはわらわなりなりなり。。。殊殊こと更更さらににに人人ひとににに氣色氣色けしきもらさもらさもらさじじじとととおぼしおぼしおぼしけれけれければばば、、、よべよべよべのののさかしさかしさかしがりがりがりしししおいおいおい人人びとのののしわざしわざしわざなりなりなりけりけりけりとととものしくものしくものしくなむなむなん聞聞きこしししめしめしめしけるけるける。。。
現代語訳
匂宮は早速、お手紙を差し上げなさる。山里では、どなたも現実の心地がなさらず、思い乱れていらっしゃる。中の君は、姉君がさまざまにたくらんでいらっしゃったのに、顔色にもお出しにならなかったのだと、疎ましくつらく姉君をお思い申し上げなさって、目もお合わせ申し上げなさらない。大君は、自分が何も知らなかった事情も、はっきりと明らかになさることができず、中の君がそう思うのはもっともだと心苦しくお思い申し上げなさる。女房たちも、どういうことでございましたかなどと、ご様子を拝見するが、頼りの大君がぼんやりしたご様子でいらっしゃるので、妙なことだと思い合っている。お手紙も開いてお見せ申し上げなさるが、中の君は全く起き上がりなさらないので、「たいそう長くなってしまいました」とお使いは困っていた。「世の常の通いと思っているのだろうか、露深い道の笹原を分けて来たのだが」。書き慣れていらっしゃる墨つきなどがことさらに優美なのも、大方の手紙としてご覧になっていた時は趣深く思われたが、今は不安で物思わしくて、大君は自分が賢ぶった者としてお返事を申し上げるのもたいそう気が引けるので、あるべき作法を真剣に、たいそう強いて中の君にお書かせ申し上げなさる。紫苑色の細長一襲に、三重襲の袴を添えて、お使いにお与えになる。お使いが窮屈そうに思っているので、包ませて供の者に送らせなさる。大げさなお使いでもなく、いつも差し向けなさる殿上童である。匂宮は、ことさらに人に様子を漏らすまいとお思いになっていたので、昨夜の賢ぶった老女房の仕業だったのだと、不快にお聞きになった。
意訳
匂宮から後朝の手紙が届く。中の君は、姉が自分を陥れたと思い込んで姉と目を合わせない。大君は弁明できず心苦しく思う。大君は中の君に強いて返事を書かせ、使者に禄を与える。匂宮は、禄を与えたのは老女房の差し出口だろうと不快に思う。
語釈・文法注
文法
- 「世のつねに思ひやすらむ」(世のつねに思ひやすらむ露ふかき道のさゝ原わきてきつるも)
- 世の常の通いと思っているだろうか。宇治への遠い道を分けて来た自分の真心を訴える匂宮の歌。
- 「しをん色の細長」(しをん色の細長ひとかさねに)
- 紫苑色(薄紫)の細長。使者への禄。
- 「うへわらは」(例奉れ給ふうへわらはなり)
- 殿上童。宮中に仕える少年。
解説
中の君は、姉が自分を陥れたと誤解する。大君は匂宮の来訪を知らなかったが、薫と弁に計画を持ちかけていたのは事実で、弁明できない。姉妹の間に深い溝が生まれる。
使者に禄を与えたことで、匂宮は宇治の人々が事を公にしたと受け取る。人目を憚る匂宮と、作法どおりに振る舞おうとする宇治の側との食い違いが、早くも表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、954–957頁(コマ188–189)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日