源氏物語 第47帖 総角(19)
女郎花の戯れと宇治行き
匂宮が長年こう言っていたが、薫は中の君の人柄をどうだろうと気がかりに思っていたので、容貌なども匂宮が見劣りすることはあるまいと推し量られる気立てが、近くで見て劣りはしないかと危ぶんできたが、何事も残念なところはなさそうだと思うので、大君が気の毒にも内々にたくらんだ計画に背くのも情けないようだが、そうかといって大君への思いは改められそうにないので、まず中の君を匂宮に譲って、どちらの恨みも負うまいなどと内心考えている。そうとも知らずに匂宮が心狭いと言いなすのも面白いが、薫は「例の軽々しいお心で、相手に物思いをさせるのが気の毒です」と親代わりの立場で言う。匂宮が「まあ見ていてくれ。これほど心に留まることはまだなかった」などと真剣に言うので、薫は「あの姫君たちにはそのように靡きそうな様子は見えません。お仕えしにくい宮仕えですよ」と言って、行くべき手立てなどを細かく教える。二十六日は彼岸の終わりで日がよかったので、人知れず準備してたいそうお忍びで匂宮を連れて行く。后の宮(明石の中宮)などが聞きつけたら、このような外出はひどく止められるので厄介だが、匂宮が切に望んでいることなので、さりげなく扱うのも大変である。舟渡りなども大げさなので、仰々しい宿なども借りず、宇治のすぐ近くの荘園の人の家にこっそり匂宮を下ろして、薫は山荘に行った。見咎める人もいないが、宿直人がわずかに出歩くにも様子を知らせまいとしてか、いつもの中納言殿がいらしたと言って世話をし合っている。姫君たちは何となく煩わしく聞くが、大君は、心は中の君の方に移るようにほのめかしておいたからと思う。中の君は、薫の思いは姉の方に向いているらしいから、まさかと思いながらも、情けなかったあの夜の後は以前のように姉君を慕うこともなく、心隔てを置いている。あれこれと手紙ばかり取り次いで、どうなることかと女房たちも心配している。
- 1年年とし頃頃ごろかくかくかくのたまへのたまへのたまえどどど、、、人人ひとののの御御おん有有あり樣樣さまをををいかならいかならいかならむむんとととうしろめたくうしろめたくうしろめたく思思おもひひいしししににに、、、かたちかたちかたちなどなどなどももも見見みおとしおとしおとし給給たまふふうまじくまじくまじく推推おししし量量はからららるゝるゝるる心心こころばせばせばせののの、、、ちかちかちかおとりおとりおとりするするするやうやうようもももやややなどなどなどぞぞぞあやうくあやうくあようく思思おもひひい渡渡わたりりりしししををを、、、何何なに事事ことももも口口くち惜惜おしくしくしくははは物物ものししし給給たまふふうまじかまじかまじかめりめりめりととと思思おもへへえばばば、、、かのかのかのいとほしくいとほしくいとおしくうちうちうちうちうちうちににに思思おもひひいたばかりたばかりたばかり給給たまふふう有有あり樣樣さまももも違違たがふふうやうやうようならならならむむんもももなさけなさけなさけなきなきなきやうやうようなるなるなるををを、、、さりとてさりとてさりとてさささはははたたたえええ思思おもひひい改改あらたむむむまじくまじくまじくおぼゆれおぼゆれおぼゆればばば、、、まづまづまずゆづりゆづりゆずり聞聞きこえええててて、、、いづいづいず方方かたののの恨恨うらみをををもももおはおはおわじじじなどなどなどしたしたしたににに思思おもひひい構構かまふるふるうる心心こころをををももも知知しりりり給給たまははわででで、、、心心こころせばくせばくせばくとりとりとりなしなしなし給給たまふふうもももをかしけれをかしけれおかしけれどどど「「「例例れいのののかろらかかろらかかろらかなるなるなる御御おん心心こころざまざまざまににに、、、物物もの思思おもははわせせせむむんこそこそこそ心苦心苦こころぐるしかるしかるしかるべけれべけれべけれ」」」などなどなどおやおやおやかたかたかたににになりなりなりててて聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「よしよしよし見見み給給たまへへえ。。。かばかりかばかりかばかり心心こころにににとまるとまるとまることことことなむなむなんまだまだまだなかりなかりなかりつるつるつる」」」などなどなどいといといとまめやかまめやかまめやかにににののの給給たまへへえばばば、、、「「「かのかのかの心心こころどもどもどもにににはははさささもももやややとととうちうちうち靡靡なびきききぬぬぬべきべきべき氣色氣色けしきははは見見みえええずずずなむなむなん侍侍はべるるる。。。仕仕つこうううまつりまつりまつりにくきにくきにくき宮宮みや仕仕づかえにににこそこそこそ侍侍はべれれれややや」」」とてとてとて、、、おはしますおはしますおわしますべきべきべきやうやうようなどなどなどこまかこまかこまかににに聞聞きこえええしらせしらせしらせ給給たまふふう。。。
- 2廿廿にじゅう六六ろく日日にち彼彼ひ岸岸がんのののはてはてはてにてにてにてよきよきよき日日ひなりなりなりけれけれければばば、、、人人ひと知知しれれれずずず心心こころづかひづかひずかいしししててていみじくいみじくいみじく忍忍しのびびびてててゐゐいててて奉奉たてまつるるる。。。きさいきさいきさいののの宮宮みやなどなどなど聞聞きこしししめしめしめし出出いでででゝゝてはははかゝるかゝるかかる御御おんありきありきありきいみじくいみじくいみじくせいしせいしせいし聞聞きこえええ給給たまへへえばばばいといといと煩煩わずらしきしきしきををを、、、せちせちせちにににおぼしおぼしおぼしたるたるたる事事ことなれなれなればばば、、、さりげなくさりげなくさりげなくととともてもてもてあつかふあつかふあつかうもももわりなくわりなくわりなくなむなむなん。。。ふなふなふなわたりわたりわたりなどなどなどももも所所ところせけれせけれせければばば、、、ことごとしきことごとしきことごとしき御御おんやどりやどりやどりなどなどなどももも借借かりりり給給たまははわずずず。。。そのそのそのわたりわたりわたりいといといと近近ちかきききみさうみさうみそうののの人人ひとののの家家いえにににいといといと忍忍しのびびびててて宮宮みやをををばばばおろしおろしおろし奉奉たてまつりりり給給たもうううててておはしおはしおわしぬぬぬ。。。見見み咎咎とがめめめ奉奉たてまつるるるべきべきべき人人ひともももなけれなけれなけれどどど、、、殿殿との居居い人人びとははは僅僅わずかににに出出いでででありくありくありくにににももも、、、氣色氣色けしきしらしらしらせせせじじじとととなるなるなるべしべしべし、、、例例れいののの中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どのおはしますおはしますおわしますとてとてとてけいめいけいめいけいめいしししあへあへあえりりり。。。君君きんだちだちだちなまなまなま煩煩わずらはしくはしくわしく聞聞きききき給給たまへへえどどど、、、うつろふうつろふうつろう方方かたことことことににににほはしにほはしにおわし置置おきききてててしかしかしかばばばととと姫姫ひめ君君ぎみはははおぼすおぼすおぼす。。。中中なかののの君君きみははは思思おもふふう方方かたことことことなななめりめりめりしかしかしかばばばさりともさりともさりともととと思思おもひひいながらながらながら、、、心心こころ憂憂うかりかりかりししし後後のちはははありありありしししやうやうようににに姉姉あね君君ぎみをををももも思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまははわずずず、、、心心こころおかおかおかれれれててて物物ものししし給給たまふふう。。。何何なにやややかやかやかやととと御御おんせうそこせうそこしょうそこのみのみのみ聞聞きこえええ通通かよひひいててていかなるいかなるいかなるべきべきべき事事ことにににかかかととと人々人々ひとびとももも心苦心苦こころぐるしがるしがるしがる。。。
現代語訳
匂宮が長年このようにおっしゃっていたけれど、薫は中の君のご様子をどうだろうかと気がかりに思っていたので、容貌なども匂宮が見下しなさることはあるまいと推し量られる気立てが、近くで見て劣ることもありはしないかなどと危ぶみ続けてきたのを、何事も残念なところはおありにならないようだと思うので、あの大君が気の毒にも内々にたくらみなさった計画に背くようなことになるのも情けないようであるが、そうかといって大君への思いは改められそうにないと思われるので、まず中の君を匂宮にお譲り申し上げて、どちらの恨みも負うまいなどと内心考えている心もご存じなくて、匂宮が心狭いと言いなしなさるのも面白いけれど、「例の軽々しいお心のありようで、相手に物思いをさせるのが心苦しいことでしょう」などと親代わりの立場になって申し上げなさる。「まあ見ていてくれ。これほど心に留まることはまだなかったのだ」などと、たいそう真剣におっしゃるので、「あの姫君たちのお心には、そのようにと靡きそうな様子は見えないのでございます。お仕えしにくい宮仕えでございますよ」と言って、いらっしゃるべき手立てなどを細かくお教え申し上げなさる。
二十六日は彼岸の終わりで、よい日だったので、人知れず準備して、たいそうお忍びで匂宮をお連れ申し上げる。后の宮などがお聞きつけになっては、このようなお出歩きをひどくお止め申し上げなさるので、たいそう厄介だが、匂宮が切にお思いになっていることなので、さりげなくと取り計らうのも大変である。舟渡りなども大げさなので、仰々しいお宿なども借りなさらない。そのあたりのすぐ近くの荘園の人の家に、たいそうこっそりと匂宮をお下ろし申し上げなさって、薫は山荘にいらっしゃった。見咎め申し上げるはずの人もいないけれど、宿直人がわずかに出歩くのにも、様子を知らせまいということなのだろう、いつもの中納言殿がいらっしゃったと言って、世話をし合っている。姫君たちは何となく煩わしくお聞きになるが、心が移る方は別にとほのめかしておいたのだからと、大君はお思いになる。中の君は、薫の思う方は別のようだったから、まさかと思いながらも、情けなかったあの夜の後は、以前のように姉君をお慕い申し上げなさらず、心隔てを置いていらっしゃる。あれこれとお手紙ばかりを取り次いで、どうなることなのかと女房たちも心配している。
意訳
薫は中の君が匂宮にふさわしいと判断し、まず中の君を匂宮に譲れば誰の恨みも負わないと考える。彼岸の終わりの二十六日、薫は匂宮をお忍びで宇治に連れて行き、近くの家に匂宮を待たせて山荘に入る。大君は薫の心が中の君に移ったと思い、中の君は姉に心隔てを置いている。
語釈・文法注
文法
- 「おやかたになりて」(などおやかたになりて聞え給ふ)
- 親代わりの立場になって。中の君の後見人として。
- 「みさうの人」(そのわたりいと近きみさうの人の家に)
- 御荘の人。荘園の管理人。
- 「けいめいしあへり」(例の中納言殿おはしますとてけいめいしあへり)
- 経営し合う。世話をして立ち働く。
解説
薫は、中の君を匂宮に譲ることで、大君の計画にも背かず自分の思いも貫けると考える。しかしこれは、中の君の意思をまったく無視した計画である。
匂宮を荘園の家に隠して、薫だけが山荘に入る。宿直人は例の中納言殿の訪れとしか思わない。周到な準備が、取り返しのつかない夜へとつながっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、950–953頁(コマ186–187)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日