源氏物語 第47帖 総角(14)
薫を導く弁
中の君も、困ったお気の毒なご様子だと思って、いつものように一緒に寝た。大君は、不安でどうしたらよいかと思うが、わざわざ閉じこもって隠れるような物陰さえない住まいなので、柔らかく美しい衣を中の君の上に掛けてやり、まだ暑い頃なので少し転がり離れて横になった。弁は大君の言葉を薫に伝える。薫は、どうしてこうも世を思い離れていらっしゃるのだろう、聖めいた父宮のそばで無常を思い知ったのだろうかと思うと、ますます自分の心に通う気がして、賢ぶっていると憎くも思わない。「それなら物越しの対面なども、今はあるまじきこととお思いになったのだろう。今夜だけ、お休みになっているあたりに、そっと手引きしてくれ」と言うので、心得た者たちは早くから人を寝静まらせるなどして準備する。宵を少し過ぎた頃、風の音が荒々しく吹くので、粗末な蔀などがみしみしと鳴る音に紛れて、人の忍んで来る気配は大君も聞きつけまいと思って、そっと薫を導いた。姉妹が同じ所に寝ているのを不安に思うが、いつものことなので、別々にとも言えない。薫は大君の様子をはっきり見分けているだろうと思ったが、大君はまどろみもしなかったので、ふと聞きつけてそっと起き出した。すばやく這って隠れたが、何心もなく寝入っている中の君がひどく気の毒で、どうしたらよいかと胸がつぶれて一緒に隠れたいと思うが、引き返すこともできず、震えながら見ると、ほのかな灯火に袿姿の薫がたいそう慣れた顔で几帳の帷子を引き上げて入ったので、ひどく気の毒で、中の君はどう思うだろうと思いながら、粗末な壁際に屏風を立てたむさくるしい後ろに座っていた。予想していたことでさえつらいと思っていたのに、まして中の君はどんなに意外に思って疎むだろうとたいそう心苦しいにつけても、しっかりした後見もなく取り残された身の悲しさを思い続けると、今はと山寺に登っていった夕べの父宮の姿などが今のように思われて、ひどく恋しく悲しく思う。
- 1中中なかののの君君きみもももあいなくあいなくあいなくいとほしきいとほしきいとおしき御御おん氣色氣色けしきかなかなかなととと見見み奉奉たてまつりりり給給たまひひいててて、、、諸諸もろ共共ともににに例例れいのののやうやうようにににおほとのごもりおほとのごもりおおとのごもりぬぬぬ。。。うしろめたううしろめたううしろめとういかにいかにいかにもてもてもてなさなさなさむむんとととおぼえおぼえおぼえ給給たまへへえどどど、、、ことさらことさらことさらめきめきめきてててさしさしさしこもりこもりこもりかくろへかくろへかくろえ給給たまふふうべきべきべき物物ものののの隈隈くまだにだにだになきなきなき御御おん住住すまひひいなれなれなればばば、、、なよゝかなよゝかなよよかにににをかしきをかしきおかしき御御おんぞぞぞうへうへうえににに引引ひききき着着きせせせ奉奉たてまつりりり給給たまひひいててて、、、まだまだまだけはひけはひけはいあつきあつきあつき程程ほどなれなれなればばば少少すこしししまろびまろびまろびのきのきのきててて臥臥ふししし給給たまへへえりりり。。。辨辨べんはははのたまひのたまひのたまいつるつるつるさまさまさまををを、、、まらうどまらうどまろうどににに聞聞きこゆゆゆ。。。いかいかいかなれなれなればばばいといといとかうかうこうしもしもしも世世よををを思思おもひひい離離はなれれれ給給たまふふうらむらむらん、、、ひじりひじりひじりだちだちだち給給たまへへえりりりしししあたりあたりあたりにてにてにて常常つねなきなきなきものものものににに思思おもひひい知知しりりり給給たまへへえるるるにににやややとととおぼすおぼすおぼすににに、、、いとゞいとゞいとど我我わががが心心こころににに通通かよひひいててておぼゆれおぼゆれおぼゆればばば、、、さかしさかしさかしだちだちだちにくゝにくゝにくくもももおぼえおぼえおぼえずずず。。。「「「さらばさらばさらば物物ものごしごしごしなどなどなどにににももも今今いまはははあるあるあるまじきまじきまじき事事ことにににおぼしおぼしおぼしなるなるなるにににこそこそこそはははあああなれなれなれ。。。今今こ夜夜よいばかりばかりばかりおほとのごもるおほとのごもるおおとのごもるらむらむらんあたりあたりあたりににに、、、忍忍しのびびびてててたばかれたばかれたばかれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、心心こころしししててて人人ひととくとくとくしづめしづめしずめなどなどなど、、、心心こころ知知しれれれるるるどちどちどちははは思思おもひひいかまふかまふかまう。。。宵宵よい少少すこししし過過すぐるぐるぐるほどほどほどににに風風かぜののの音音おと荒荒あららからからかにににうちうちうち吹吹ふくくくににに、、、はかなきはかなきはかなきさまさまさまなるなるなる部部しとみなどなどなどはははひしひしひしひしひしひしとととまぎるゝまぎるゝまぎるる音音おとににに、、、人人ひとののの忍忍しのびびび給給たまへへえるるるふるまひふるまひふるまいははは、、、えええ聞聞ききききつけつけつけ給給たまははわじじじととと思思おもひひいててて、、、やをらやをらやおら導導みちびきききつるつるつる。。。
- 2同同おなじじじ所所ところにににおほとのごもれおほとのごもれおおとのごもれるるるををを、、、うしろめたしうしろめたしうしろめたしととと思思おもへへえどどど、、、常常つねのののことことことなれなれなればばば、、、ほかほかほかほかほかほかにににととともももいかゞいかゞいかが聞聞きこえええむむん。。。御御おんけはひけはひけはいをををもももたどたどしからたどたどしからたどたどしからずずず、、、見見み奉奉たてまつりりり給給たまへへえつらむつらむつらむととと思思おもひひいけるけるけるににに、、、うちうちうちもももまどろみまどろみまどろみ給給たまははわねねねばばば、、、ふとふとふと聞聞きききき給給たまひひいてててやをらやをらやおら起起おききき出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。いといといと疾疾とくくくはひはひはい隱隱かくれれれ給給たまひひいぬるぬるぬるににに、、、何何なに心心こころもももなくなくなく寢寢ね入入いりりり給給たまへへえるるるをををいといといといとほしくいとほしくいとおしく、、、いかにいかにいかにするするするわざわざわざぞぞぞととと胸胸むねつぶれつぶれつぶれててて諸諸もろ共共ともににに隱隱かくれれれなななばやばやばやととと思思おもへへえどどど、、、さささもももえええ立立たちちちかへらかへらかえられれれでででわなゝくわなゝくわななくわなゝくわなゝくわななく見見み給給たまへへえばばば、、、火火ひのののほのかほのかほのかなるなるなるにににうちきうちきうちき姿姿すがたにてにてにていといといとなれなれなれがほがほがおににに、、、几几き帳帳ちょうのののかたびらかたびらかたびらをををひきひきひきあげあげあげててて入入いりりりぬるぬるぬるををを、、、いみじういみじういみじゅういとほしくいとほしくいとおしく、、、いかにいかにいかにおぼえおぼえおぼえ給給たまははわむむんととと思思おもひひいながらながらながら、、、あやしきあやしきあやしき壁壁かべのののつらつらつらににに屏屏びょう風風ぶををを立立たてててたるたるたるうしろうしろうしろのののむつかしげむつかしげむつかしげなるなるなるににに居居い給給たまひひいぬぬぬ。。。あらましあらましあらましごとごとごとにてにてにてだにだにだにつらしつらしつらしととと思思おもひひい給給たまへへえるるるををを、、、まいてまいてまいていかにいかにいかにめづらかめづらかめずらかにににおぼしおぼしおぼし疎疎うとまままむむんととといといといと心苦心苦こころぐるしきしきしきにもにもにも、、、すべてすべてすべてはかばかしきはかばかしきはかばかしきうしろみうしろみうしろみなくなくなくててて落落おちちちとまるとまるとまる身身みととと物物もの悲悲がなしきしきしきををを思思おもひひい續續つづけけけ給給たまふふうににに、、、今今いまはははとてとてとて山山やまににに登登のぼりりり給給たまひひいししし夕夕ゆうべののの御御おんさまさまさまなどなどなど只只ただ今今いまののの心地心地ここちしししててていみじくいみじくいみじく戀戀こいしくしくしく悲悲かなしくしくしくおぼえおぼえおぼえ給給たまふふう。。。
現代語訳
中の君も、困ったお気の毒なご様子だとお見受けなさって、ご一緒にいつものようにお休みになった。大君は不安で、どう振る舞ったらよいかと思われなさるけれど、わざわざ閉じこもって隠れなさるような物陰さえないお住まいなので、柔らかく美しいお召し物を中の君の上に引き掛けて差し上げなさって、まだ暑さの残る頃なので、少し転がり離れて横になっていらっしゃる。弁は大君がおっしゃった様子を、客人に申し上げる。薫は、どうしてこうまで世を思い離れていらっしゃるのだろう、聖めいていらっしゃった父宮のあたりで、無常のものと思い知りなさったのだろうかとお思いになると、ますます自分の心に通う気がするので、賢ぶっていると憎くも思われない。「それならば、物越しの対面なども、今はあるまじきこととお思いになったのであろう。今夜だけ、お休みになっているあたりに、そっと手引きしてくれ」とおっしゃるので、心得て人を早く寝静まらせるなど、事情を知る者同士は準備する。宵を少し過ぎた頃に、風の音が荒々しく吹くので、粗末な蔀などがみしみしと鳴る音に紛れて、人が忍んでいらっしゃる気配は、とても聞きつけなさるまいと思って、そっと導いた。
姉妹が同じ所にお休みになっているのを不安に思うが、いつものことなので、別々にとも、どうして申し上げられよう。薫は大君のご様子もはっきりと見分け申し上げていらっしゃるだろうと思ったのに、大君は少しもまどろみなさらなかったので、ふと聞きつけなさって、そっと起き出しなさった。たいそうすばやく這って隠れなさったが、何心もなく寝入っていらっしゃる中の君をひどく気の毒に思い、どうしたらよいことかと胸がつぶれて、一緒に隠れたいと思うけれど、そうも引き返せず、震えながらご覧になると、ほのかな灯火に、袿姿でたいそう慣れた顔つきで、几帳の帷子を引き上げて入ったのを、ひどく気の毒に、中の君はどう思われるだろうと思いながら、粗末な壁際に屏風を立てた後ろのむさくるしい所に座っていらっしゃった。予想していたことでさえつらいと思っていらっしゃったのに、まして中の君はどんなに意外に思って疎みなさるだろうと、たいそう心苦しいにつけても、まったくしっかりした後見もなく取り残された身の物悲しさを思い続けなさると、今はと山寺にお登りになった夕べの父宮のご様子などが、ただ今のことのような心地がして、ひどく恋しく悲しく思われなさる。
意訳
姉妹はいつものように一緒に寝る。薫は弁の手引きで、風の音に紛れて寝所に忍び込む。眠れずにいた大君は気配に気づいて這い出し、屏風の後ろに隠れる。薫は寝入っている中の君のもとに入り、大君は妹を気の毒に思いながら、父の面影を恋しく思う。
語釈・文法注
文法
- 「部」(はかなきさまなる部などは)
- 蔀。格子の戸。
- 「うちき姿」(火のほのかなるにうちき姿にて)
- 袿姿。くつろいだ姿。
- 「あらましごと」(あらましごとにてだにつらしと思ひ給へるを)
- 予想していたこと、心づもり。
解説
大君は妹を残して逃れる。中の君を薫に縁づけようとしていた大君にとって、これは計画どおりでもある。しかし実際に妹を置き去りにする場面では、大君は罪悪感に震える。
屏風の後ろで、大君は父の面影を思い出す。父の死後、大君を守る者はなく、自分の身は自分で守るしかない。その孤独が、大君の行動の根底にある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、946–947頁(コマ184)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日