源氏物語 第47帖 総角(12)
中の君を勧める大君
日が暮れていくのに、客人の薫は帰らない。大君はひどく困ったことだと思う。弁が参って薫の伝言を伝え、薫が恨むのはもっともだとくどくどと申し上げるので、大君は返事もせずため息をつき、自分はどう振る舞えばよい身なのか、父宮が生きていらしたら、ともかくも然るべき人に世話されて、宿世というものに任せて身を思うままにできない世の中なので、皆よくあることとして人の笑いものになる咎も隠れるものだ、ここにいる女房たちは皆年を重ねて自分では賢いつもりで、得意げにふさわしそうなことを申し上げ知らせるが、これはしっかりしたことだろうか、人並みでない心の者たちで、ただ一方的に言っているのだと思うので、引き動かさんばかりに言い合うのも、ひどく情けなく疎ましくて、心を動かされない。同じ心で何事も語り合う中の君は、こういう方面にはもう少し疎く、おっとりしていて何とも聞き入れないので、大君は「妙な身の上だこと」とただ奥の方を向いている。女房たちが「いつもの色のお召し物にお着替えください」などと勧めながら、皆そのつもりでいるらしい様子を呆れて思い、本当に何の妨げがあろう、ほどもなく狭いこの住まいでは隠れようもなく、山梨の花のように逃れる方もないのだった。客人の薫は、このようにあらわに誰にも口出しさせず、そっといつからともなく始まった仲のように扱ってこそと思い始めたことなので、お心を許さないならいつまでもこのまま過ごそうと思いもし言いもするのに、この老女房は自分たちで相談してあからさまにささやいたりする。とはいえ思慮が浅いからか、老いてひがんでいるからか、気の毒に見える。
- 1暮暮くれれれ行行ゆくくくににに、、、まらうどまらうどまろうどはははかへりかへりかえり給給たまははわずずず。。。姫姫ひめ君君ぎみいといといとむつかしむつかしむつかしとととおぼすおぼすおぼす。。。辨辨べん參參まいりりりててて、、、御御おん消消しょう息息そこどもどもども聞聞きこえええ傳傳つたへへえててて、、、恨恨うらみみみ給給たまふふうををを、、、ことわりことわりことわりなるなるなるよしよしよしををを、、、つぶつぶつぶつぶつぶつぶととと聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、いらへいらへいらえもももししし給給たまははわずずずうちうちうち歎歎なげきききててていかにいかにいかにもてもてもてなすなすなすべきべきべき身身みにににかかかははは、、、ひとひとひと所所ところおはせおはせおわせましかましかましかばばば、、、ともともともかくかくかくもももさるべきさるべきさるべき人人ひとにににあつかはあつかはあつかわれれれ奉奉たてまつりりりててて、、、宿宿すく世世せととといふいふいうなるなるなる方方かたにににつけつけつけててて身身みををを心心こころととともももせせせぬぬぬよよよなれなれなればばば、、、皆皆みな例例れいのののことことことにてにてにてこそこそこそははは人人ひとわらへわらへわらえににになるなるなるとがとがとがをををももも隱隱かくすすすなれなれなれ、、、あるあるあるかぎりかぎりかぎりののの人人ひとははは年年としつもりつもりつもりさかしげさかしげさかしげにににおのがじしおのがじしおのがじしははは思思おもひひいつゝつゝつつ、、、心心こころをををやりやりやりててて似似につかはしげつかはしげつかわしげなるなるなる事事ことををを聞聞きこえええしらすれしらすれしらすれどどど、、、こここははははかばかしきはかばかしきはかばかしきことことことかかかははは、、、人人ひとめかしからめかしからめかしからぬぬぬ心心こころどもどもどもにてにてにて、、、唯唯ただ一一ひと方方かたにににいふいふいうにににこそこそこそはははととと見見み給給たまへへえばばば、、、引引ひききき動動うごかしししつつつばかりばかりばかりきこえきこえきこえあへあへあえるるるももも、、、いといといと心心こころ憂憂うくくくうとましううとましううとましゅうてててだうぜだうぜどうぜられられられ給給たまははわずずず。。。同同おなじじじ心心こころににに何何なに事事ことももも語語かたらひらひらい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。中中なかののの君君きみはははかゝるかゝるかかるすぢすぢすじにににははは今今いま少少すこししし心心こころもももえええずずず、、、おほどかおほどかおおどかにてにてにて何何なにとととももも聞聞ききききいれいれいれ給給たまははわねねねばばば「「「あやしうあやしうあやしゅうもももありありありけるけるける身身みかなかなかな」」」ととと唯唯ただ奥奥おくざまざまざまににに向向むきききててておはすおはすおわす。。。
- 2「「「例例れいののの色色いろののの御御おんぞぞぞどもどもども、、、奉奉たてまつりりりかへかへかえよよよ」」」などなどなどそゝのかしそゝのかしそそのかし聞聞きこえええつゝつゝつつ皆皆みなさるさるさる心心こころすすすべかべかべかめるめるめる氣色氣色けしきををを、、、あさましくあさましくあさましく、、、げにげにげに何何なにのののさはりさはりさわり所所どころかかかはははあらあらあらむむん、、、ほどほどほどもももなくなくなくてててかゝるかゝるかかる御御おん住住すまひひいのののかひかひかいなきなきなき、、、山山やまなしなしなしののの花花はなぞぞぞのがれのがれのがれむむん方方かたなかりなかりなかりけるけるける。。。まらうどまらうどまろうどははは、、、かくかくかくけしようにけしようにけしように、、、これこれこれかれかれかれにににももも口口くち入入いれれれさせさせさせずずず、、、忍忍しのびびびやかやかやかにににいついついつありありありそめそめそめけむけむけんことことことゝゝともももなくなくなく、、、もてもてもてなしなしなしてててこそこそこそととと思思おもひひいそめそめそめけるけるける事事ことなれなれなればばば、、、御心御心みこころゆるしゆるしゆるし給給たまははわずずずばばば、、、いつもいつもいつもいつもいつもいつもかくかくかくてててすぐさすぐさすぐさむむんとととおぼしおぼしおぼしのたまふのたまふのたまうををを、、、このこのこのおいおいおい人人びとのののおのがじゝおのがじゝおのがじし語語かたらひらひらいてててけしようにけしようにけしようにさゝめきさゝめきささめきなどなどなどすすす。。。さささはははいへいへいえどどど深深ふかからからからぬぬぬけけけにににややや、、、老老おいいいひがめひがめひがめるるるにににややや、、、いとほしくいとほしくいとおしくぞぞぞ見見みゆるゆるゆる。。。
現代語訳
日が暮れていくのに、客人の薫はお帰りにならない。姫君はひどく困ったことだとお思いになる。弁が参って、薫のご伝言を申し伝えて、恨みなさるのを、もっともだという旨を、くどくどと申し上げるので、大君は返事もなさらずため息をついて、どのように振る舞うべき身なのか、父宮お一人でもいらっしゃったならば、ともかくも然るべき人に世話されて、宿世というものにつけて身を思うままにもできない世の中なので、皆よくあることとして、人の笑いものになる咎も隠れるものだ、ここにいる女房たちは皆、年が積もって賢そうに、それぞれ自分では思いながら、得意になって、ふさわしそうなことを申し上げ知らせるけれど、これはしっかりしたことだろうか、人並みでない者たちの心で、ただ一方的に言っているのだとご覧になると、引き動かさんばかりに申し上げ合うのも、たいそう情けなく疎ましくて、心を動かされなさらない。同じ心で何事もお話し合いなさる中の君は、このような方面にはもう少し疎く、おっとりしていて何とも聞き入れなさらないので、大君は「妙な身の上だこと」と、ただ奥の方を向いていらっしゃる。
女房たちが「いつもの色のお召し物に、お着替えくださいませ」などとお勧め申し上げながら、皆そのつもりでいるらしい様子を、大君は呆れて、本当に何の妨げがあろう、ほどもなく狭いこのようなお住まいでは隠れるかいもなく、山梨の花のように逃れる方もないのだった。客人の薫は、このようにあらわに、誰にも口出しさせず、そっといつから始まったとも分からないように振る舞ってこそと思い始めたことなので、お心を許しなさらないならば、いつまでもこのまま過ごそうとお思いになり、おっしゃるのに、この老女房は自分たちで相談して、あからさまにささやいたりする。とはいえ、思慮が深くないせいか、老いてひがんでいるからか、気の毒に見える。
意訳
薫は帰らず、弁が薫の恨みを伝える。大君は、父が生きていればと嘆き、女房たちの勧めを疎ましく思う。中の君はおっとりして事情を察しない。女房たちは着替えを勧めるなど薫を迎える準備をし、狭い住まいの大君には逃げ場がない。薫は人知れず自然に結ばれることを望むが、女房たちはあからさまに騒ぐ。
語釈・文法注
文法
- 「だうぜられ給はず」(いと心憂くうとましうてだうぜられ給はず)
- 動ぜられ給はず。心を動かされない。
- 「山なしの花」(山なしの花ぞのがれむ方なかりける)
- 「世の中を憂しといひてもいづこにか身をば隠さむ山なしの花」(古今六帖)による。「山梨」に「山無し」を掛け、隠れる山もないと言う。
- 「けしように」(かくけしように)
- 顕証に。あらわに、目立つように。
解説
女房たちは薫と大君を結ばせようと、着替えを勧め、あからさまにささやく。大君は、父がいればこんなことにはならなかったと嘆く。後見のない姫君の頼りなさが、ここに痛切に描かれる。
薫は、人知れず自然に結ばれることを望んでいる。女房たちの騒ぎは、かえって薫の望む静かな結びつきを妨げている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、942–945頁(コマ182–183)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日