源氏物語 第47帖 総角(10)
大君の決意
客人の薫は弁の御許を呼び出して細かく話しておき、大君へのお手紙もきまじめに申し置いて帰った。大君は、総角の歌を戯れに言いなしたのも、自分から「尋ばかり」の隔てで対面したのだと中の君も思っているだろうと、ひどく恥ずかしいので、気分が悪いと言って一日中臥せって過ごした。女房たちは「一周忌の日ももう残りわずかです。しっかりと、ちょっとしたことでさえほかにお仕えする人もいないのに、折の悪いご病気ですね」と言う。中の君が名香の糸を組み終えて、「心葉などは、とても思いつけません」と強いて言うので、暗くなった紛れに起きて、一緒に結んだりする。中納言殿からお手紙があるが、「今朝からひどく気分が悪くて」と人づてに返事をする。女房たちは「なんと見苦しく子どもっぽくていらっしゃる」とつぶやく。喪服などの期間が終わって脱ぎ捨てるにつけても、「片時も父宮に遅れ申し上げるまいと思っていたのに、はかなく過ぎた月日のほどを思うと、ひどく思いのほかの身のつらさ」と泣き沈む姉妹のさまはたいそう気の毒である。何か月も黒い喪服に慣れていた姿が薄鈍色になってたいそう優美で、中の君は本当に今が盛りで、愛らしい美しさがまさっている。大君は中の君の髪などを洗い整えさせて見ると、世の物思いも忘れるほどすばらしいので、ひそかに思うとおりにかなって、薫に会わせても、まさか見劣りして期待外れと思われることはあるまいと頼もしくうれしくて、今はほかに世話を譲る人もなく、親心で大切に世話している。
- 1まらうどまらうどまろうどははは辨辨べんのののおもとおもとおもとよびよびよび出出いででで給給たまひひいてててこまかこまかこまかににに語語かたらひらひらい置置おききき、、、御御おんせうそこせうそこしょうそこすくずくしうすくずくしうすくずくしゅう聞聞きこえええおきおきおきててて出出いででで給給たまひひいぬぬぬ。。。あげまきあげまきあげまきをををたはぶれたはぶれたわぶれにににとりとりとりなしなしなしゝゝしももも心心こころもてもてもてひろひろひろばかりばかりばかりのののへだてへだてへだてももも、、、對對たい面面めんしししつるつるつるとととやややこのこのこの君君きみもももおぼすおぼすおぼすらむらむらんととと、、、いみじういみじういみじゅう耻耻はずかしけれしけれしければばば、、、心地心地ここちあしあしあしとてとてとて惱惱なやみみみ暮暮くらししし給給たまひひいつつつ。。。人々人々ひとびと「「「日日ひははは殘殘のこりなくなくなくなりなりなり侍侍はべりりりぬぬぬ。。。はかばかしうはかばかしうはかばかしゅうはかなきはかなきはかなき事事ことをををだにだにだに又又また仕仕つこうううまつるまつるまつる人人ひともももなきなきなきににに、、、折折おり惡惡あしきしきしき御御おん惱惱なやみみみかなかなかな」」」ととと聞聞きこゆゆゆ。。。中中なかののの君君きみくみくみくみなどなどなどしししはてはてはて給給たまひひいててて、、、「「「心心こころばばばなどなどなどははは、、、えええこそこそこそ思思おもひひいよりよりより侍侍はべらららねねね」」」とととせめてせめてせめて聞聞きこえええ給給たまへへえばばば、、、暗暗くろうううなりなりなりぬるぬるぬるまぎれまぎれまぎれににに、、、起起おききき給給たまひひいててて諸諸もろ共共ともにににむすびむすびむすびなどなどなどししし給給たまふふう。。。中中ちゅう納納な言言ごん殿殿どのよりよりより御御おん文文ふみあれあれあれどどど「「「今今け朝朝さよりよりよりいといといと惱惱なやましうしうしゅうなむなむなん」」」とてとてとて人人ひとづてづてずてにににぞぞぞ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。「「「さささももも見見み苦苦ぐるしうしうしゅう、、、わかわかしうわかわかしうわかわかしゅうおはすおはすおわす」」」ととと人々人々ひとびとつぶやきつぶやきつぶやき聞聞きこゆゆゆ。。。
- 2御御おんぶくぶくぶくなどなどなどはてはてはてゝゝて、、、脫脫ぬぎぎぎ捨捨すてててたまへたまへたまえるるるにににつけつけつけてててももも「「「片片かた時時ときももも後後おくれれれ奉奉たてまつらららむむんものものものととと思思おもははわざりざりざりしししををを、、、はかなくはかなくはかなく過過すぎぎぎにににけるけるける月月つき日日ひのののほどほどほどをををおぼすおぼすおぼすににに、、、いみじういみじういみじゅう思思おもいののの外外ほかなるなるなる身身みのののうさうさうさ」」」ととと泣泣なきききしづみしづみしずみ給給たまへへえるるる御御おんさまさまさまどもどもどもいといといと心心こころ苦苦ぐるしげしげしげなりなりなり。。。月月つき頃頃ごろくらうくらうくろうならはしならはしならわし給給たまへへえるるる御御おん姿姿すがた、、、うすうすうすにびにびにびにてにてにていといといとなまめかしうなまめかしうなまめかしゅうててて中中なかののの君君きみはははげにげにげにいといといと盛盛さかりにてにてにて、、、美美うつくしげくしげくしげなるなるなるにほひにほひにおいまさりまさりまさり給給たまへへえりりり。。。御御おんぐしぐしぐしなどなどなどすましすましすましつくろはつくろはつくろわせせせててて見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうににに世世よののの物物もの思思おもい忘忘わするゝるゝるる心心こころちちちしししてててめでたけれめでたけれめでたければばば、、、人人ひと知知しれれれずずず思思おもふふうさまさまさまにににかなひかなひかないててて、、、人人ひとににに見見みえええ給給たまははわむむんにににさりともさりともさりともちかちかちかおとりおとりおとりしししてててははは思思おもははわずずずやややあらあらあらむむんとととたのもしうたのもしうたのもしゅう嬉嬉うれしうしうしゅうててて、、、今今いまははは又又また見見みゆづるゆづるゆずる人人ひともももなくなくなく、、、親親おや心心ごころにににかしづきかしづきかしずきたてたてたてゝゝて見見み聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
客人の薫は、弁の御許を呼び出しなさって細かくお話しおき、大君へのお手紙もきまじめに申し置いてお帰りになった。大君は、総角の歌を戯れに言いなしたのも、自分の心から「尋ばかり」の隔てで対面したのだと、この中の君もお思いになっているだろうかと、ひどく恥ずかしいので、気分が悪いと言って一日中臥せってお過ごしになった。女房たちは「一周忌の日は残りなくなってしまいました。しっかりと、ちょっとしたことでさえ、ほかにお仕え申し上げる人もいないのに、折の悪いご病気ですね」と申し上げる。中の君が名香の糸の組み紐などを作り終えなさって、「心葉などは、とても思いつけません」と強いて申し上げなさるので、暗くなった紛れに、大君は起きなさって、ご一緒に結んだりなさる。中納言殿からお手紙があるけれど、「今朝からひどく気分が悪くて」と人づてにお返事申し上げなさる。「なんとも見苦しく、子どもっぽくていらっしゃる」と女房たちはつぶやき申し上げる。
喪服などの期間が終わって、脱ぎ捨てなさるにつけても、「片時も父宮に遅れ申し上げまいと思っていたのに、はかなく過ぎてしまった月日のほどをお思いになると、ひどく思いのほかの身のつらさ」と泣き沈んでいらっしゃるお二人のご様子は、たいそう気の毒である。何か月も黒い喪服に慣れていらっしゃったお姿が、薄鈍色になって、たいそう優美で、中の君は本当にたいそう盛りで、愛らしい美しさがまさっていらっしゃる。大君は中の君の御髪などを洗い整えさせてご覧になると、世の物思いも忘れる心地がしてすばらしいので、ひそかに思うとおりにかなって、薫にお会わせになっても、まさか近くで見劣りして期待外れと思われることはあるまいと頼もしくうれしくて、今はほかに世話を譲る人もなく、親心で大切にかしずいてお世話申し上げなさる。
意訳
薫は弁に後を託して帰る。大君は中の君にどう思われたかと恥じ、病と称して臥せるが、夕方には起きて一周忌の名香の糸を結ぶ。喪が明けて薄鈍色に着替えた中の君の美しさに、大君は、薫に会わせても見劣りしないと喜び、親のように世話をする。
語釈・文法注
文法
- 「ひろばかりのへだて」(心もてひろばかりのへだても)
- 催馬楽「総角」の「尋ばかりや、離りて寝たれども」を踏まえる。一尋ほど離れて寝たこと。
- 「心ば」(心ばなどは、えこそ思ひより侍らね)
- 心葉。贈り物などに添える飾りの造花。名香の糸の結び飾り。
- 「うすにび」(うすにびにていとなまめかしうて)
- 薄鈍色。喪明けに着る薄い灰色。
解説
喪明けの場面で、大君は中の君の美しさを確かめ、薫に縁づける決意を固める。「親心にかしづきたてゝ」という表現に、亡き父に代わって妹を守ろうとする大君の姿がある。
大君は薫の手紙にも人づてで返事をし、女房たちに子どもっぽいとつぶやかれる。大君の頑なさは、周囲からは理解されない。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、940–943頁(コマ181–182)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日