源氏物語 第47帖 総角(5)
夜の対面
老女房もまた、これほど心細い中で申し分のないご縁を、ぜひともそうさせてあげたいと思うが、どちらも気後れするほどの方々なので、思うままには申し上げられない。薫は今宵は泊まって、話などをのどかに申し上げたいと、ぐずぐずと日を暮らした。はっきりとではないが恨みがちな様子がだんだん無理なほどになっていくので、大君は煩わしく、うちとけて話すことがますます苦しいが、大方としてはめったにない情け深い人柄なので、すげなくもできず対面する。仏のいる中の戸を開けて、灯明をはっきり掲げさせ、簾に屏風を添えて座っている。外にも灯火を差し上げるが、「気分が悪くて無作法なので、あらわに」などと止めて、物に寄りかかって横になる。果物などをさりげなく用意して差し上げ、お供の人々にも由緒ある肴などを出させた。廊のような所に集まって、こちらは人気を遠ざけて、しんみりと話をする。大君はうちとける様子ではないが、親しみやすく愛嬌のある様子で話すさまが、並々ならず心にしみて、薫が焦れるのもはかない。これほどわずかな物の隔てを障りとして、もどかしく思って過ごす心の鈍さが、あまりに愚かしいと思い続けるが、平静を装って世間のことなどをしみじみと、また趣深く、さまざまに聞きどころ多く語る。内には女房たちに近くにいるよう言い置いたが、女房たちはそう遠ざけないでほしいと思っているようなので、それほど見張りもせず、退いて皆寝てしまい、仏の灯明を掲げる人もいない。大君は何となく気味悪くて、そっと人を呼ぶが起きない。「気分がひどく乱れて苦しいので、少し休んで明け方にまた」と言って、奥に入ろうとする様子である。
- 1おいおいおい人人びとはははたたた、、、かはかはかはかりかりかり心心こころぼそきぼそきぼそきにににあらまほしげあらまほしげあらまほしげなるなるなる御御おん有有あり樣樣さまををを、、、いといといとせちせちせちにににさもさもさもあらあらあらせせせ奉奉たてまつらららばやばやばやととと思思おもへへえどどど、、、いづかたいづかたいずかたももも恥恥はずかしげしげしげなるなるなる御御おん有有あり樣樣さまどもどもどもなれなれなればばば思思おもいのののまゝまゝままにににはははえええ聞聞きこえええずずず。。。今今こ宵宵よいはははとまりとまりとまり給給たまひひいててて物物もの語語がたりなどなどなどのどやかのどやかのどやかににに聞聞きこえええまほしうまほしうまほしゅうてててやすらひやすらひやすらい暮暮くらししし給給たまひひいつつつ。。。あざやかあざやかあざやかならならならずずず物物もの恨恨うらみみみがちがちがちなるなるなる御御おん氣色氣色けしきやうやうやうやうようようわりなくわりなくわりなくなりなりなりゆけゆけゆけばばば、、、わづらはしうわづらはしうわずらわしゅうてててうちうちうちとけとけとけててて聞聞きこえええ給給たまははわむむん事事ことももも、、、いよいよいよいよいよいよ苦苦くるしけれしけれしけれどどど、、、大大おお方方かたにてにてにてはははありがたうありがたうありがとうあはれあはれあわれなるなるなる人人ひとののの御心御心みこころなれなれなればばば、、、こよなうこよなうこよのうももももてもてもてなしなしなし難難がとうううててて對對たい面面めんしししたまふたまふたまう。。。佛佛ほとけのののおはするおはするおわする中中なかののの戶戶とをををあけあけあけててて、、、みみみあかしあかしあかしののの火火ひけざやかけざやかけざやかにににかゝげかゝげかかげさせさせさせてててすだれすだれすだれににに屏屏びょう風風ぶをををそへそへそえてててぞぞぞおはするおはするおわする。。。とととにににもももおほとなぶらおほとなぶらおおとなぶら參參まいらすれらすれらすれどどど、、、「「「惱惱なやましうしうしゅうてててむらいむらいむらいなるなるなるををを、、、あらはあらはあらわににに」」」などなどなど諫諫いさめめめてててかたはらかたはらかたわらふしふしふし給給たまへへえりりり。。。御御おんくだものくだものくだものなどなどなどわざとわざとわざとはははなくなくなくしししなしなしなしててて參參まいらせらせらせ給給たまへへえりりり。。。御御おん供供ともののの人々人々ひとびとにににももも、、、ゆゑゆゑしきゆゑゆゑしきゆえゆえしきさかなさかなさかななどなどなどしししててて出出いださささせせせ給給たまへへえりりり。。。
- 2らうらうろうめいめいめいたるたるたる方方かたににに集集あつまりりりててて、、、このこのこのおおおまへまへまえははは人人ひとげげげ遠遠とおくくくもてもてもてなしなしなしててて、、、しめじめしめじめしめじめととと物物もの語語がたり聞聞きこえええ給給たまふふう。。。うちうちうちとくとくとくべうべうびょうもももあらあらあらぬぬぬものものものからからから、、、懷懷なつかしげしげしげにににあいぎやうあいぎやうあいきょうづきづきずきててて物物もののたまへのたまへのたまえるるるさまさまさまののの、、、なのめなのめなのめならならならずずず心心こころににに入入いりりりててて思思おもひひいいらるゝいらるゝいらるるもももはかなしはかなしはかなし。。。かくかくかくほどほどほどもももなきなきなきものものものゝゝのへだてへだてへだてばかりばかりばかりをををさはりさはりさわり所所どころにてにてにて、、、覺束覺束おぼつかなくなくなく思思おもひひいつゝつゝつつ過過すぐすぐすぐす心心こころおぞさおぞさおぞさののの、、、あまりあまりあまりをこがましうをこがましうおこがましゅうもももあるあるあるかなかなかなととと思思おもひひい續續つづけけけらるれらるれらるれどどど、、、つれなくつれなくつれなくててて大大おお方方かたののの世世よののの中中なかのののことことことゞゞどももも、、、あはれあはれあわれにににもももをかしうをかしうおかしゅうもももさまざまさまざまさまざま聞聞きくくく所所ところ多多おおくくく語語かたらひらひらい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。內內うちにににははは人々人々ひとびと近近ちこうううなどなどなどのたまひのたまひのたまいおきおきおきつれつれつれどどど、、、さしもさしもさしももてもてもてはなれはなれはなれ給給たまははわざらざらざらなむなむなんととと思思おもふふうべかべかべかめれめれめればばば、、、いといといとしもしもしもまもりまもりまもり聞聞きこえええずずず、、、さしさしさししぞきしぞきしぞきつゝつゝつつ皆皆みなよりよりよりふしふしふしててて、、、佛佛ほとけののの御御おんともしともしともし火火びもももかゝぐるかゝぐるかかぐる人人ひともももなしなしなし。。。物物ものむつかしうむつかしうむつかしゅうててて忍忍しのびびびててて人人ひとめせめせめせどどど驚驚おどろかかかずずず、、、「「「心地心地ここちのののかきかきかき亂亂みだりりりなやましうなやましうなやましゅう侍侍はべるるるををを、、、ためらひためらひためらいててて曉曉あかつき方方がたにににももも又又また聞聞きこえええむむん」」」とてとてとて入入いりりり給給たまひひいなななむむんとととするするする氣色氣色けしきなりなりなり。。。
現代語訳
老女房もまた、これほど心細い中で、申し分のなさそうなご様子を、ぜひともそのようにさせて差し上げたいと思うけれど、どちらも気後れするほどのご様子の方々なので、思うままには申し上げられない。薫は今宵は泊まりなさって、話などをのどかに申し上げたいと、ぐずぐずと日を暮らしなさった。はっきりとではないが、恨みがちなご様子がだんだん無理なほどになっていくので、大君は煩わしくて、うちとけてお話し申し上げなさることも、ますます苦しいけれど、大方としてはめったになく情け深い方のお心なので、すげなくもお扱いしにくくて、対面なさる。仏のいらっしゃる中の戸を開けて、灯明の火をはっきりと掲げさせて、簾に屏風を添えていらっしゃる。外にも大殿油を差し上げるが、「気分が悪くて無作法なので、あらわに」などと止めて、物に寄りかかって横になっていらっしゃる。果物などを、さりげなく用意して差し上げなさった。お供の人々にも、由緒ある肴などを用意して出させなさった。
廊めいた方に集まって、こちらの御前は人気を遠ざけて、しんみりとお話を申し上げなさる。うちとけそうもないものの、親しみやすく愛嬌のある様子でお話しなさる様子が、並々ならず心にしみて、焦れるのもはかない。このように、ほどもない物の隔てだけを障りとして、もどかしく思いながら過ごす心の鈍さが、あまりに愚かしいことよと思い続けられるけれど、平静を装って、世間一般のことなどを、しみじみとも趣深くも、さまざまに聞きどころ多くお話し申し上げなさる。内には女房たちに近くにいるようになどとおっしゃっておいたけれど、女房たちはそう遠ざけないでいらっしゃってほしいと思っているようなので、それほどお見張り申し上げもせず、退いては皆寄りかかって寝てしまい、仏の灯明を掲げる人もいない。大君は何となく気味悪くて、そっと人を呼ぶが起きない。「気分がかき乱れて苦しゅうございますので、少し休んで、明け方にでもまた申し上げましょう」と言って、奥にお入りになろうとする様子である。
意訳
薫は泊まって大君と語りたいと願い、大君もすげなくはできず、仏間の灯明のもと屏風を隔てて対面する。薫は世間の話をしみじみと語るが、心は焦れている。女房たちは二人の仲を望んで退き寝てしまう。大君は気味悪くなり、奥へ入ろうとする。
語釈・文法注
文法
- 「むらいなる」(惱しうてむらいなるを)
- 無礼なる。無作法である。
- 「心おぞさ」(覺束なく思ひつゝ過ぐす心おぞさの)
- 心の鈍さ、ぼんやりさ。
- 「さししぞき」(さししぞきつゝ皆よりふして)
- 退いて。
解説
女房たちは、薫と大君が結ばれることを望んで、わざと見張りをせずに寝てしまう。大君は孤立無援の状況に置かれる。仕える者たちの思惑が、大君を追い詰めていく。
薫は大君の親しげな様子に心を焦がしながらも、表面は平静を装う。わずかな屏風の隔てがもどかしいと思う薫の心理が細やかに描かれている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、936–937頁(コマ179)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日