源氏物語 第47帖 総角(4)
薫の胸の内と弁
薫は「宮のしみじみとしたお一言を聞き置き申し上げたので、露のようなこの世に関わる限りは、お便りを申し上げる心があるので、どちらにもお会いしましょう。同じことのはずですが、そこまでお考えくださるのはたいそううれしいことですが、心の引かれる方こそ、これほど思い捨てている世になお留まりそうなものだったので、改めてそうは思い直せそうにありません。世間並みのなよやかな色恋の方面でもありません。ただこのように物を隔てて言葉を残したような様子ではなく、向かい合ってあれこれと定めない世の話を隔てなく申し上げ、慎んでいらっしゃるお心の隅々まで残さずお打ち明けくださることこそ望みです。兄弟などでそのように親しい者もなくて、たいそう寂しいのです。世の中の思うことの哀れも趣深さも憂いも、時々の有様を心に込めてばかり過ごす身なので、さすがに頼りなく思われるので、疎からずお頼み申し上げるのです。后の宮(明石の中宮)には、慣れ慣れしくそんな取り留めない思いのままのくどくどしいことを申し上げられもしない。三条の宮(母)は親と思い申し上げるべきでもないお若さですが、限りがあって気安く親しくもできません。その他の女性はすべてたいそう疎遠で気が引けて恐ろしく思われて、自分から寄る辺なく心細いのです。いい加減な戯れでも懸想めいたことはたいそう気恥ずかしく不似合いで、きまりの悪い無骨さで、まして心に深く思う方のことは口に出すことも難しく、恨めしくも晴れなくも思い申し上げている様子さえお見せできないのは、我ながらこの上なく愚かなことです。匂宮のことも、まさか悪いようには申し上げまいと任せてご覧になりませんか」などと言っている。
- 1「「「あはれあはれあわれなるなるなる御御おん一一ひと言言ことををを聞聞きききき置置おききき奉奉たてまつりりりにににしかしかしかばばば、、、露露つゆののの世世よにににかゝづらはかゝづらはかかずらわむむんかぎりかぎりかぎりははは、、、聞聞きこえええ通通かよははわむむんののの心心こころあれあれあればばば、、、いづかたいづかたいずかたにににももも見見みえええ奉奉たてまつらららむむん。。。同同おなじじじ事事ことなるなるなるべきべきべきををを、、、さささまでまでまではははたたた、、、おぼしおぼしおぼしよるよるよるなるなるなる、、、いといといと嬉嬉うれしきしきしき事事ことなれなれなれどどど、、、心心こころののの引引ひくくくかたかたかたなむなむなんかばかりかばかりかばかり思思おもひひい捨捨すつるつるつるよよよににに猶猶なおとまりとまりとまりぬぬぬべきべきべきものものものなりなりなりけれけれければばば、、、改改あらためめめてててさささはははえええ思思おもひひい直直なおすすすまじくまじくまじくなむなむなん。。。世世よののの常常つねににになよびかなよびかなよびかなるなるなるすぢすぢすじにににもももあらあらあらずずずややや。。。只只ただかようかようかようににに物物もの隔隔へだててて事事ことのののこいこいこいたるたるたるさまさまさまならならならずずずさしさしさしむかひむかひむかいてててとととにににかくかくかくににに定定さだめめめなきなきなき世世よののの物物もの語語がたりををを隔隔へだてなくなくなく聞聞きこえええててて、、、つゝみつゝみつつみ給給たまふふう御心御心みこころののの隈隈くま殘殘のこらららずずずもてもてもてなしなしなし給給たまははわむむんなむなむなんはらからはらからはらからなどなどなどのののさやうさやうさようにににむつまじきむつまじきむつまじき程程ほどなるなるなるもももなくなくなくててて、、、いといといとさうざうしくさうざうしくそうぞうしくなむなむなん。。。世世よののの中中なかののの思思おもふふう事事ことのののあはれあはれあわれにににもももをかしうをかしうおかしゅうもももうれはしううれはしううれわしゅうももも、、、時時ときにににつけつけつけたるたるたる有有あり樣樣さまををを心心こころにににこめこめこめてててのみのみのみ過過すぐるぐるぐる身身みなれなれなればばば、、、さすがさすがさすがにににたづきたづきたずきなくなくなくおぼゆるおぼゆるおぼゆるににに疎疎うとかるかるかるまじうまじうまじゅう賴賴たのみみみ聞聞きこゆるゆるゆる。。。
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現代語訳
薫は「宮のしみじみとしたお一言を聞き置き申し上げましたので、露のようなこの世に関わっている限りは、お便りを申し上げる心がありますので、どちらにもお会いしましょう。同じことのはずですが、そこまでお考え寄りくださるのは、たいそううれしいことですが、心の引かれる方こそ、これほど思い捨てている世に、なお留まってしまいそうなものだったので、改めてそうは思い直せそうにありません。世間並みのなよやかな色恋の方面でもないのですよ。ただこのように物を隔てて、言葉を残したような様子ではなく、向かい合って、あれこれと定めない世の話を隔てなく申し上げて、慎んでいらっしゃるお心の隅々まで残さずお打ち明けくださることこそ望みです。兄弟などで、そのように親しい者もいなくて、たいそう寂しいのです。世の中の思うことの、哀れにも趣深くも憂わしくも、時々の有様を心に込めてばかり過ごす身なので、さすがに頼りなく思われるので、疎からずお頼み申し上げるのです。
后の宮には、また慣れ慣れしく、そのように取り留めない思いのままのくどくどしいことを申し上げられもしません。三条の宮は、親とお思い申し上げるべきでもないお若さですが、限りがあるので、気安く親しく申し上げることもできませんよ。その他の女性はすべて、たいそう疎遠で気が引けて恐ろしく思われて、自分の心から寄る辺なく心細いのです。いい加減な戯れでも、懸想めいたことはたいそう気恥ずかしく不似合いで、きまりの悪い無骨さで、まして心に深く思っている方のことは、口に出すことも難しくて、恨めしくも晴れない思いをしている様子さえお見せ申し上げないのは、我ながらこの上なく愚かなことです。匂宮のことも、まさか悪いようには申し上げまいと、任せてご覧になりませんか」などと言っていらっしゃった。
意訳
薫は、八の宮の遺言を守ってどちらの姫君の世話もするが、心を寄せるのは大君で、思い直すことはできないと言う。色恋ではなく、隔てなく心を通わせる相手がほしいと語り、明石の中宮にも母にも心を打ち明けられない孤独を訴える。
語釈・文法注
文法
- 「事のこいたる」(物隔て事のこいたるさまならず)
- 言葉を残したような、言い尽くさないような。「残し」のイ音便。
- 「きさいの宮」(きさいの宮はたなれなれしう)
- 明石の中宮。薫は表向き源氏の子なので、中宮とは姉弟の関係にあたる。
- 「三條の宮」(三條の宮は親と思ひ聞ゆべきにもあらぬ)
- 母の女三の宮。若々しく頼りないので、親として相談できない。
解説
薫は自分の孤独を語る。兄弟もなく、母は頼りなく、姉にあたる中宮には気安く話せない。薫が大君に求めているのは、恋人というより、心を許して語り合える伴侶である。
薫は「心にしめたる方」を口に出せないと言うが、この言葉自体が大君への告白になっている。不器用な薫の恋の表し方が、ここによく表れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、934–937頁(コマ178–179)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日