源氏物語 第45帖 橋姫(16)
老女房の登場
大君は気が引けて答えにくく、起こした老女房が出てきたので任せる。老女房は比べようもなく出しゃばって、「まあ恐れ多いこと。見苦しいお席の様子でございます。御簾の内にこそお入れすべきなのに、若い人々は物の程をわきまえないようで」などとしっかりした口調で言う声が年寄りじみているのも、姫君たちは見苦しく思う。「たいそう不思議なほど世の中にお住まいの人の数にも入らないご様子で、当然お訪ねくださるはずの人々でさえ、お見舞いし人並みに扱ってくださるのも、見えも聞こえもしなくなっていくようですのに、めったにないお志のほどは、数にも入らない私の心にも驚くほどありがたく存じておりますのを、若いお心にも分かっていながら、申し上げにくいのでございましょう」とたいそう遠慮なく物慣れているのも何となく憎らしいものの、気配はたいそう人並みで趣ある声なので、薫は「たいそう頼りない気持ちがしていたので、うれしいご様子です。何事も本当に分かってくださっていた頼もしさはこの上ない」と言って寄りかかって座っているのを、几帳の陰から見ると、曙がだんだん物の色が分かるようになる中で、本当に目立たぬ姿にしていると見える狩衣姿がたいそう濡れて湿っているのに、ひどく、この世の外の匂いかと不思議なほど香りが満ちている。
- 1つゝましくつゝましくつつましくいらへいらへいらえにくゝにくゝにくくててておこしおこしおこしつるつるつるおいおいおい人人びとののの出出いででできききたるたるたるにににぞぞぞ讓讓ゆずりりり給給たまふふう。。。たとしへたとしへたとしえなくなくなくさしさしさし過過すぐしししててて「「「あなあなあなかたじけなかたじけなかたじけなややや。。。かたはらいたきかたはらいたきかたわらいたきおましおましおましのののさまさまさまにににももも侍侍はべるるるかなかなかな。。。御御み簾簾すののの內內うちにににぞぞぞ若若わかききき人々人々ひとびとはははものものものゝゝのほどほどほど知知しらららぬぬぬやうやうようにににこそこそこそ」」」などなどなどしたゝかしたゝかしたたかにににいふいふいう聲聲こえのののさださださだすぎすぎすぎたるたるたるもももかたはらいたくかたはらいたくかたわらいたく君君きん達達だちはははおぼすおぼすおぼす。。。「「「いといといとももも怪怪あやしくしくしく世世よののの中中なかににに住住すまひまひまい給給たまふふう人人ひとののの數數かずにににもももあらあらあらぬぬぬ御御おん有有あり樣樣さまにてにてにてさもさもさもありありありぬぬぬべきべきべき人々人々ひとびとだにだにだに、、、とぶらひとぶらひとぶらいかずまへかずまへかずまえ聞聞きこえええ給給たまふふうももも見見みえええ聞聞きこえええずずずのみのみのみなりなりなりまさりまさりまさり侍侍はべるるるめるめるめるににに、、、ありがたきありがたきありがたき御御おん志志こころざしのののほどほどほどははは數數かずにににももも侍侍はべらららぬぬぬ心心こころにににもももあさましきあさましきあさましきまでまでまで思思おもひひい給給たまへへえ聞聞きこえええさせさせさせ侍侍はべるるるををを、、、若若わかききき御御おん心地心地ここちにににもももおぼしおぼしおぼし知知しりりりながらながらながら聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいにくきにくきにくきにににややや侍侍はべらららむむん」」」ととといといといとつゝみつゝみつつみなくなくなく物物もの馴馴なれれれたるたるたるもももなまなまなまにくきにくきにくきものものものからからからけはひけはひけはいいたういたういとう人人ひとめきめきめきてててよしよしよしあるあるある聲聲こえなれなれなればばば「「「いといといとたづきたづきたずきももも知知しらららぬぬぬ心地心地ここちしししつるつるつるにににうれしきうれしきうれしき御御おんけはひけはひけはいにににこそこそこそ。。。何何なに事事ごともももげにげにげに思思おもひひい知知しりりり給給たまひひいけるけるけるたのみたのみたのみこよなかりこよなかりこよなかりけりけりけり」」」とてとてとて寄寄よりりり居居い給給たまへへえるるるををを几几き帳帳ちょうのののそばそばそばよりよりより見見みれれればばば、、、曙曙あけぼののののやうやうやうやうようようものものものゝゝの色色いろわかるゝわかるゝわかるるにににげにげにげにやつしやつしやつし給給たまへへえるるるととと見見みゆるゆるゆる狩狩かり衣衣ぎぬ姿姿すがたのののいといといとぬれぬれぬれしめりしめりしめりたるたるたるほどほどほどうたてうたてうたてこのこのこの世世よののの外外ほかのののにほひにほひにおいにににやややととと怪怪あやしきしきしきまでまでまでかをりかをりかおりみちみちみちたりたりたり。。。
現代語訳
大君は気が引けて答えにくくて、起こした老女房が出てきたので、お任せになる。老女房は比べようもなく出しゃばって、「まあ恐れ多いこと。見苦しいお席の様子でございますね。御簾の内にこそお入れすべきなのに、若い人々は物の程をわきまえないようで」などと、しっかりした口調で言う声が年寄りじみているのも、姫君たちは見苦しくお思いになる。「たいそう不思議なほど、世の中にお住まいの人の数にも入らないご様子で、当然そうあるはずの人々でさえ、お見舞いし人並みに扱ってくださることも、見えも聞こえもしなくなっていくばかりのようでございますのに、めったにないお志のほどは、数にも入りません私の心にも、驚くほどありがたく存じ申し上げておりますのを、姫君たちも若いお心にもお分かりになりながら、申し上げにくくいらっしゃるのでございましょうか」と、たいそう遠慮なく物慣れているのも、何となく憎らしいものの、気配はたいそう人並みで、趣のある声なので、薫は「たいそう頼りない気持ちがしていたところに、うれしいご様子です。何事も本当に分かってくださっていた頼もしさは、この上ない」と言って、寄りかかって座っていらっしゃるのを、几帳の陰から見ると、曙がだんだん物の色が見分けられるようになる中で、本当に目立たぬ姿にしていらっしゃると見える狩衣姿が、たいそう濡れて湿っている様子で、ひどく、この世の外の匂いかと不思議なほど、香りが満ちていた。
意訳
年配の女房が出てきて応対し、出しゃばりながらも物慣れた様子で薫の厚意に感謝する。薫は頼もしく思い、寄りかかって座る。曙の光の中、露に濡れた狩衣姿の薫からは、この世のものとは思えない香りが満ちている。
語釈・文法注
文法
- 「さし過して」(たとしへなくさし過して)
- 出しゃばって。
- 「さだすぎたる」(いふ聲のさだすぎたるも)
- 年を取った、年寄りじみた。
- 「やつし給へる」(げにやつし給へると見ゆる狩衣姿)
- 目立たない身なりにしていらっしゃる。
解説
老女房の弁が登場する。出しゃばりで物慣れた老女房は、この後、薫の出生の秘密を明かす重要な人物となる。
曙の光の中、露に濡れた狩衣姿で香りを放つ薫の姿は、宇治十帖の薫を象徴する印象的な場面である。「この世の外のにほひ」という表現は、薫の人間離れした存在を強調している。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、896–897頁(コマ159)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日