源氏物語 第45帖 橋姫(4)
水鳥の歌
宮は念誦の合間合間に、この姫君たちの相手をして遊び、だんだん成長するので、琴を習わせ、碁や偏継ぎなどのちょっとした遊びにつけても、それぞれの気立てを見ると、大君は洗練されて思慮深く重々しく見える。中の君はおっとりとかわいらしい様子で、恥ずかしがる様子がたいそう愛らしく、それぞれに魅力がある。春のうららかな日差しの中、池の水鳥たちが羽を交わしながら思い思いにさえずる声などを、いつもはつまらないことと見ていたが、つがいが離れないのをうらやましく眺めて、姫君たちに琴を教える。たいそう愛らしく小さな体で、それぞれに弾き鳴らす。楽の音がしみじみと趣深く聞こえるので、宮は涙を浮かべて、つがいを捨てて去ってしまった水鳥の雛(仮の子)が、このはかない世にどうして取り残されたのだろう、心を痛めることだと目を押しぬぐう。その姿はたいそう清らかな宮である。長年の勤行で痩せ細ってはいるが、かえって上品で優美で、姫君たちを大切に世話する心づかいから、直衣のなよなよとくたびれたのを着て、くつろいだ様子がたいそうこちらが恥ずかしくなるほどである。
- 1御御おんねんずねんずねんずのののひまひまひまひまひまひまにににはははこのこのこの君君きん達達だちをををもてもてもてあそびあそびあそび、、、やうやうやうやうようようおよすげおよすげおよすげ給給たまへへえばばば琴琴ことならはしならはしならわし、、、碁碁ごうちうちうちへんへんへんつぎつぎつぎなどなどなどはかなきはかなきはかなき遊遊あそびびびわざわざわざにににつけつけつけてててももも、、、心心こころばへばへばえどもどもどもををを見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふうににに、、、姫姫ひめ君君ぎみはははらうらうしくらうらうしくろうろうしく深深ふかくくくおもりかおもりかおもりかににに見見みえええ給給たまふふう。。。若若わか君君ぎみはははおほどかおほどかおおどかにににらうたげらうたげろうたげなるなるなるさまさまさましししててて物物ものづゝみづゝみずつみしししたるたるたるけはひけはひけはいいといといとうつくしううつくしううつくしゅうさまざまさまざまさまざまににに坐坐おわすすす。。。春春はるのののうらゝかうらゝかうららかなるなるなる日日ひ影影かげににに池池いけののの水水みず鳥鳥とりどもどもどもののの羽羽は根根ねうちうちうちかはしかはしかわしつゝつゝつつおのおのおのがががじゝじゝじしさへづるさへづるさえずる聲聲こえなどなどなどををを常常つねははははかなきはかなきはかなき事事ことととと見見み給給たまひひいしかしかしかどもどもどもつがひつがひつがい離離はなれれれぬぬぬををを羨羨うらやましくしくしくながめながめながめ給給たまひひいててて君君きん達達だちににに御御おん琴琴ことどもどもども敎敎おしへへへ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。いといといとをかしげをかしげおかしげににに小小ちいさききき御御おん程程ほどにににとりどりとりどりとりどりかきかきかき鳴鳴ならしらしらし給給たまふふう。。。物物ものののの音音ねどもどもども哀哀あわれにににをかしくをかしくおかしく聞聞きこゆれゆれゆればばば淚淚なみだをををうけうけうけ給給たまひひいててて、、、「「「うちうちうちすてすてすてゝゝてつがひつがひつがいさりさりさりにににししし水水みず鳥鳥とりのののかりかりかりのののこここののの世世よにににたちたちたち後後おくれれれけむけむけん。。。心心こころづくしづくしずくしなりなりなりややや」」」ととと目目めおしおしおしのごひのごひのごい給給たまふふうかたちかたちかたちいといといと淸淸きよげげげにににおはしますおはしますおわします宮宮みやなりなりなり。。。年年とし比比ごろののの御御おん行行おこなひひいににに瘠瘠やせせせほそりほそりほそり給給たまひひいにににたれたれたれどどどさてさてさてしもしもしもあてあてあてににになまめきなまめきなまめきててて、、、君君きん達達だちををを册册かしずききき給給たまふふう御心御心みこころばへばへばへににに直直のう衣衣しのののなえばめなえばめなえばめるるるををを着着き給給たまひひいてててしどけなきしどけなきしどけなき御御おんさまさまさまいといといと恥恥はずかしげしげしげなりなりなり。。。
現代語訳
宮は御念誦の合間合間には、この姫君たちの相手をして遊び、だんだん成長なさるので、琴を習わせ、碁や偏継ぎなどのちょっとした遊びにつけても、それぞれの気立てを拝見なさると、姫君(大君)は洗練されて思慮深く、重々しくお見えになる。若君(中の君)はおっとりとかわいらしい様子で、恥ずかしがっている様子がたいそう愛らしく、それぞれに魅力的でいらっしゃる。春のうららかな日差しの中、池の水鳥たちが羽を交わしながら、思い思いにさえずる声などを、いつもはつまらないことと見ていらっしゃったが、つがいが離れないのをうらやましく眺めなさって、姫君たちにお琴などをお教え申し上げなさる。たいそう愛らしく、小さなお体で、それぞれに弾き鳴らしなさる。楽の音がしみじみと趣深く聞こえるので、宮は涙を浮かべなさって、「つがいを捨てて去ってしまった水鳥の雛(仮の子)が、どうしてこのはかない世に取り残されたのだろう。心を痛めることだ」と目を押しぬぐいなさるお姿は、たいそう清らかでいらっしゃる宮である。長年の勤行で痩せ細っていらっしゃるけれど、かえって上品で優美で、姫君たちを大切にお世話なさるお心づかいから、直衣のなよなよとくたびれたのをお召しになって、くつろいだご様子が、たいそうこちらが恥ずかしくなるほどである。
意訳
八の宮は勤行の合間に姫君たちと遊び、琴を教える。大君は思慮深く、中の君はおっとりと愛らしい。春の日、つがいの水鳥を見てうらやましく思い、姫君たちの琴の音に涙して、母を失った娘たちを憐れむ歌を詠む。
語釈・文法注
文法
- 「へんつぎ」(碁うちへんつぎなど)
- 偏継ぎ。漢字の旁に偏を付けて字を完成させる遊び。
- 「かりのこ」(水鳥のかりのこの世にたち後れけむ)
- 「雁の子」と「仮のこの世」をかける。母鳥を失った雛に娘たちをたとえる。
- 「册き」(君達を册き給ふ御心ばへに)
- 大切に世話する。「かしづく」と読む。
解説
つがいの水鳥をうらやむ八の宮の姿には、妻を失った悲しみが表れている。水鳥の雛に娘たちを重ねる歌は、母のない子への深い憐れみを詠んでいる。
八の宮が娘たちに琴を教える場面は、後に薫が宇治で姫君たちの琴の音を聞く場面の伏線となる。父から伝えられた琴の技が、姉妹と薫を結ぶきっかけとなる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、884–887頁(コマ153–154)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日