源氏物語 第45帖 橋姫(3)
荒れゆく宮と勤行
仕えていた女房たちも頼りない気がして耐えきれず、次々に従って退出して散り散りになり、中の君の乳母も、あの騒ぎの中でしっかりした人を選ぶことができなかったので、身分相応の浅はかな心で、幼い中の君を見捨ててしまったので、ただ宮が育てる。さすがに広く趣のある邸で、池や築山の様子だけは昔と変わらず、ひどく荒れまさっていくのを、宮は所在なく眺めている。家司などもしっかりした人がいなかったので、手入れする人もないまま、草が青々と茂り、軒の忍草が我が物顔に一面青々としている。折々の花や紅葉の色も香りも、同じ心で北の方と愛でたからこそ慰められることも多かったのに、ますます寂しく頼る所もないままに、持仏の飾りだけを特別に整えさせて、明け暮れ勤行する。こうした娘たちという絆に関わっているのさえ思いのほかに残念で、自分の心ながら思うようにならない宿縁と思われるのに、まして何で世間並みに今さら再婚などと、年月とともに世の中から心を離していき、心だけはすっかり聖になりきって、北の方が亡くなってからは、世間の人のような色めいた心などは冗談にも思い出さなかった。「どうしてそれほどまでに。死別の悲しみは、またとないもののように思われるが、時が経てばそうばかりでもない。やはり世間並みのお心づかいをなさって、見苦しく頼りない宮の内も自然と整うこともあるでしょうに」と人々は非難して、何やかやともっともらしく縁談を持ちかけることも、ついでのたびに多かったが、宮は聞き入れなかった。
- 1侍侍さぶらひひいししし人人ひともももたづきたづきたずきなきなきなき心地心地ここちするするするににに得得え忍忍しのびびびあへあへあえずずず、、、つぎつぎつぎつぎつぎつぎにににしたがひしたがひしたがいてててまかでまかでまかでちりちりちりつゝつゝつつ若若わか君君ぎみののの御御おん乳乳め母母のともももさるさるさるさわぎさわぎさわぎにににはかばかしきはかばかしきはかばかしき人人ひとをををしもしもしもえりえりえりあへあへあえ給給たまははわざりざりざりけれけれければばば、、、程程ほどにににつけつけつけたるたるたる心心こころあさゝあさゝあささにてにてにて幼幼おさなきききほどほどほどををを見見み捨捨すててて奉奉たてまつりりりにににけれけれければばば唯唯ただ宮宮みやぞぞぞはぐゝみはぐゝみはぐくみ給給たまふふう。。。さすがさすがさすがににに廣廣ひろくくくおもしろきおもしろきおもしろき宮宮みやののの、、、池池いけ山山やまなどなどなどののの氣色氣色けしきばかりばかりばかり昔昔むかしににに變變かわらららでででいといといといたういたういとうあれあれあれまさるまさるまさるをををつれづれつれづれつれずれとととながめながめながめ給給たまふふう。。。けいしけいしけいしなどなどなどもももむねむねしきむねむねしきむねむねしき人人ひともももなかりなかりなかりけれけれければばばとりとりとりつくろふつくろふつくろう人人ひともももなきなきなきまゝまゝままににに、、、草草くさ靑靑あおやかやかやかにににしげりしげりしげり軒軒のきのののしのぶしのぶしのぶぞぞぞ所所ところえええがほがほがおににに靑靑あおみみみ渡渡わたれれれるるる。。。折折おり々々おりにににつけつけつけたるたるたる花花はな紅紅もみ葉葉じののの色色いろをををももも香香かをををももも同同おなじじじ心心こころにににみみみはやしはやしはやし給給たまひひいしししにににこそこそこそ慰慰なぐさむむむことことことももも多多おおかりかりかりけれけれけれ、、、いとゞしくいとゞしくいとどしくさびしくさびしくさびしくよりよりよりつかつかつかむむん方方かたなきなきなきまゝまゝままににに、、、持持じ佛佛ぶつののの御御おん飾飾かざりばかりばかりばかりをををわざとわざとわざとせせせさせさせさせ給給たまひひいててて明明あけ暮暮くれ行行おこなひひい給給たまふふう。。。
- 2かゝるかゝるかかるほだしほだしほだしどもどもどもにににかゝづらふかゝづらふかかずらうだにだにだに思思おもいののの外外ほかににに口口くちをしうをしうおしゅう、、、我我わががが心心こころながらながらながらもももかなはかなはかなわざりざりざりけるけるけるちぎりちぎりちぎりととと覺覺おぼゆるゆるゆるををを、、、まいてまいてまいて何何なににににかかか世世よののの人人ひとめいめいめいててて今今いまさらさらさらにににとととのみのみのみ、、、年年とし月月つきにににそへそへそえててて世世よののの中中なかをををおぼしおぼしおぼし離離はなれれれつゝつゝつつ、、、心心こころばかりばかりばかりはははひじりひじりひじりににになりなりなりはてはてはて給給たまひひいててて故故こ君君ぎみのののうせうせうせ給給たまひひいしししこなたこなたこなたははは例例れいののの人人ひとのののさまさまさまなるなるなる心心こころばへばへばえなどなどなど戯戯たわぶれぶれぶれにてにてにてもももおぼしおぼしおぼし出出いででで給給たまははわざりざりざりけりけりけり。。。「「「などなどなどかかかさしもさしもさしも別別わかるゝるゝるる程程ほどのののかなしびかなしびかなしびははは又又また世世よにににたぐひたぐひたぐいなきなきなきやうやうようにににのみのみのみこそこそこそははは覺覺おぼゆゆゆべかべかべかめれめれめれどどど、、、ありありありふれふれふればばばさささのみのみのみやややははは。。。猶猶なお世世よののの人人ひとににになずらふなずらふなずらう御御おん心心こころづかひづかひずかいをををししし給給たまひひいててて、、、見見み苦苦ぐるしくしくしくたづきたづきたずきなきなきなき宮宮みやののの內內うちもももおのづからおのづからおのずからもてもてもてなさなさなさるゝるゝるるわざわざわざもももややや」」」ととと、、、人人ひとはははもどきもどきもどき聞聞きこえええててて何何なにくれくれくれとととつきづきしくつきづきしくつきずきしく聞聞きこえええごつごつごつことことことももも類類るいににに觸觸ふれれれててておほかれおほかれおおかれどどど聞聞きこししし召召めししし入入いれれれざりざりざりけりけりけり。。。
現代語訳
お仕えしていた女房たちも頼りない気持ちがするので耐えきれず、次々に従って退出して散り散りになりながら、若君(中の君)の御乳母も、あの騒ぎの中で、しっかりした人を選ぶこともおできにならなかったので、身分相応の浅はかな心で、幼いのを見捨て申し上げてしまったので、ただ宮がお育てになる。さすがに広く趣のある邸で、池や築山などの様子だけは昔と変わらず、たいそうひどく荒れまさっていくのを、所在なく眺めていらっしゃる。家司なども、しっかりした人もいなかったので、手入れする人もないままに、草が青々と茂り、軒の忍草が我が物顔に一面青々としている。折々の花や紅葉の色をも香りをも、同じ心で北の方と愛でなさったからこそ、慰められることも多かったのに、ますます寂しく、頼る所もないままに、持仏の御飾りだけを特別に整えさせなさって、明け暮れ勤行なさる。
このような絆の娘たちに関わっているのさえ思いのほかに残念で、自分の心ながらも思うようにならなかった宿縁と思われるのに、まして何で世間の人のように今さらと、ただそう思って、年月とともに世の中から心を離されながら、心だけはすっかり聖になりきりなさって、故君(北の方)がお亡くなりになってからは、世間の人のような色めいた心などは、冗談にもお思い出しにならなかった。「どうしてそれほどまでに。死別の時の悲しみは、またこの世に比べるものがないようにばかり思われるようですが、時が経てばそうばかりでもありますまい。やはり世間の人並みのお心づかいをなさって、見苦しく頼りない宮の内も、自然と整うこともありましょうに」と、人々は非難申し上げて、何やかやともっともらしく縁談を申し上げることも、ついでのあるたびに多かったが、宮はお聞き入れにならなかった。
意訳
女房たちも去り、乳母も中の君を見捨て、八の宮は自ら娘たちを育てる。邸は荒れ果て、宮は持仏の前で勤行に明け暮れ、心は聖のようになる。人々は再婚を勧めるが、宮は聞き入れない。
語釈・文法注
文法
- 「けいし」(けいしなどもむねむねしき人もなかりければ)
- 家司。親王家などの家政を担当する職員。
- 「軒のしのぶ」(軒のしのぶぞ所えがほに靑み渡れる)
- 軒に生える忍草。荒れた家の象徴。
- 「所えがほ」(所えがほに靑み渡れる)
- 我が物顔に、得意げに。
解説
八の宮の邸の荒廃は、宮の不遇を象徴している。草が茂り、忍草が生い茂る庭は、かつて源氏が訪れた末摘花の邸を思わせる。
八の宮は「心ばかりはひじり」となる。俗体のまま仏道に励む八の宮の姿は、やがて薫が「俗聖」と呼んで慕う八の宮像の原点である。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、884–885頁(コマ153)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日