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源氏物語 第44帖 竹河(28)

玉鬘の出家の願いと院の恨み

登場人物:玉鬘・大君・冷泉院

前の尚侍(玉鬘)は出家しようと思い立つが、あれこれと娘たちの世話をしている時に、息子たちが「勤行も落ち着かなくお思いになるでしょう。もう少しどちらも安心できるようにお世話なさってから、心残りなくひたすらお勤めください」と申し上げるので、ためらって、宮中には時々こっそり参る折もあるが、院にはやっかいな院のお気持ちがなお絶えないので、しかるべき折にも全く参らない。昔を思い出すと、さすがに恐れ多く思ったお詫びに、人が皆許さないことと思っていたのも知らない顔をして大君を参らせたのに、自分までが冗談にも若々しい噂が世に立ったら、たいそうまばゆく見苦しいだろうと思うが、そういう理由だとは御息所にも打ち明けないので、御息所は、自分を昔から故大臣(父)は格別に大切にし、母上は中の君を、桜の争いのようなちょっとした折にも肩を持っていた名残で、自分を軽んじているのだと恨めしく思う。院の上もまして、たいそうつらいとお思いになりおっしゃった。「古めかしい所に放り出して軽んじられるのももっともだ」と御息所に語って、ますます哀れにお思いになる。

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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

前の尚侍の君は、出家しようと思い立ちなさるが、あれこれと娘たちのお世話を申し上げなさっている時に、「勤行も落ち着かなくお思いになるでしょう。もう少し、どちらも安心できるようにお世話なさってから、心残りな所なくひたすらお勤めください」と君達が申し上げなさるので、ためらいなさって、宮中には時々こっそり参上なさる折もあるが、院には、やっかいなお気持ちがなお絶えないので、しかるべき折にも全く参上なさらない。昔を思い出すと、さすがに恐れ多く思われたお詫びとして、人が皆許さないことだと思っていたのも知らない顔をして大君を参らせ申し上げたのに、自分までが、冗談にでも若々しいことが世に噂されたら、たいそうまばゆく見苦しいだろうとお思いになるけれど、そのような慎みによるのだとは御息所にも打ち明け申し上げなさらないので、御息所は、私を昔から故大臣は格別に大切にお世話くださり、尚侍の君は若君(中の君)を、桜の争いのようなちょっとした折にも肩を持っていらっしゃった名残で、私を軽んじていらっしゃるのだなと、恨めしくお思い申し上げていた。院の上もまた、まして、たいそうつらいとお思いになりおっしゃった。「古めかしい所に放り出して、軽んじられるのももっともなことだ」と御息所に語りなさって、ますます哀れにばかりお思いになる。

意訳

玉鬘は出家を思い立つが、息子たちに止められる。院が玉鬘への思いを絶たないので、玉鬘は院に参らない。理由を知らない御息所は、母が妹ばかりをかわいがっていると恨み、院も玉鬘の訪れのないことを恨んで、御息所をますます哀れに思う。

語釈・文法注

文法

「かたちをかへてむ」(さきのかんの君かたちをかへてむ)
出家しよう。姿を変える、すなわち尼になること。
「さるいみ」(さるいみによりとはた御息所にも顯し聞えたまはねば)
そのような慎み。院の思いを避けるために参らないこと。
「ふるめかしきあたり」(ふるめかしきあたりにさし放ちて)
古めかしい所。退位した院の御所を自嘲的にいう。

解説

玉鬘が院に参らないのは、院の昔からの思いを避けるためである。しかしその理由を娘に言えないために、御息所は母の愛情を疑う。母と娘の間に、言えない秘密による誤解が生まれている。

御息所は、桜の争いの折にも母が妹の肩を持ったと思い出す。幼い頃の些細な出来事が、大人になって恨みの種となる。桜の争いは、ここで姉妹の運命の分岐点として振り返られる。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、878–879頁(コマ150)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日