源氏物語 第44帖 竹河(19)
少将への返歌
蔵人の君(少将)は、いつもの女房にひどく言葉を尽くして、「今は最後と思う命がさすがに悲しいので、哀れと思うとだけでも一言おっしゃってくだされば、それに引き留められてしばらくは生き長らえるかもしれない」などと書いてあるのを、女房が持って参って見ると、姫君二人は語り合ってたいそうふさぎ込んでいる。夜も昼も一緒に過ごし慣れて、中の戸だけで隔てている西と東の部屋さえたいそう気詰まりなものにして互いに行き来していたので、別々になることを悲しんでいるのだった。格別に仕立てて身繕いさせた大君の様子はたいそう美しい。故殿(髭黒)が考え言っていたことなどを思い出して、物悲しい折なので、大君は手紙を取って見る。夕霧や北の方があれほど揃って頼もしい両親の中で、どうしてこんなとりとめもないことを思い言うのだろうと不思議に思うが、「最後」とあるのを本当かと思って、そのまま手紙の端に、哀れという、無常な世の一言も、どんな人にかけるものでしょうか、不吉な方面でかすかに知っていますと書いて、「こう言ってやりなさい」と言うのを、女房がそのまま送ったので、少将はこの上なく珍しく思うにつけても、この折を覚えていてくれたことにいっそう涙が止まらず、すぐに返事をして、「誰の名は立たないでしょう」などと恨みがましく、生きている間は思いどおりにならないので、あなたの一言を聞かないで終わるのだろうか、墓の上にもかけてくださるお心と存じていたら、ひたすら急いで死んだでしょうに、などとあるので、大君は、嫌な返事をされてしまった、書き直さずにやってしまったのだろうと困って、何もおっしゃらなくなった。
- 1藏藏くろう人人どののの君君きみ例例れいののの人人ひとにににいみじきいみじきいみじき詞詞ことばをををつくしつくしつくしててて「「「今今いまはははかぎりかぎりかぎりととと思思おもひひい侍侍はべるるる命命いのちのののさすがさすがさすがににに悲悲かなしきしきしきををを哀哀あわれととと思思おもふふうとととばかりばかりばかりだにだにだに一一ひと言言ことのたまはせのたまはせのたまわせばばば、、、それそれそれにににかけかけかけ留留とどめめめられられられててて暫暫しばしししもももながらへながらへながらへやややせせせむむんなどなどなどあるあるあるををを、、、もてもてもて參參まいりりりててて見見みれれればばば姫姫ひめ君君ぎみ二二ふた所所ところうちうちうち語語かたらひらひらいててていといといといたういたういとうくつしくつしくつし給給たまへへえりりり。。。よるよるよるひるひるひる諸諸もろ共共ともにににならひならひならい給給たまひひいててて中中なかのののとととばかりばかりばかりへだてへだてへだてたるたるたる西西にし東東ひんがしをををだにだにだにいといといといぶせきいぶせきいぶせきものものものにににししし給給たまひひいてててかたみかたみかたみににに渡渡わたりりり通通かよひひいおはするおはするおわするををを、、、よそよそよそよそよそよそにににならならならむむんことことことをををおぼすおぼすおぼすなりなりなりけりけりけり。。。心心こころことことことにににしししたてたてたて引引ひききき繕繕つくろひひい奉奉たてまつりりりたまへたまへたまえるるる御御おんさまさまさまいといといとをかしをかしおかし。。。殿殿とののののおぼしおぼしおぼしのののたまひたまひたまいしししさまさまさまなどなどなどをををおぼしおぼしおぼし出出いでででゝゝて、、、物物もの哀哀あわれなるなるなる折折おりからからからにてにてにてとりとりとりててて見見み給給たまふふう。。。おとゞおとゞおとど北北きたののの方方かたのののさばかりさばかりさばかり立立たちちち並並ならびびびてててたのもしげたのもしげたのもしげなるなるなる御御おん中中なかににになどなどなどかうかうこうすゞろすゞろすずろごとごとごとををを思思おもひひいいふいふいうらむらむらんとととあやしきあやしきあやしきにににももも、、、かぎりかぎりかぎりとととあるあるあるををを、、、まことまことまことにににやややとととおぼしおぼしおぼしてててやがてやがてやがてこのこのこの御御おん文文ふみのののはしはしはしににに、、、「「「あはれあはれあわれてふてふちょう常常つねならならならぬぬぬ世世よのののひとひとひとことことこともももいかなるいかなるいかなる人人ひとにににかくるかくるかくるものものものそそそははは。。。ゆゝしきゆゝしきゆゆしきかたかたかたにてにてにてなむなむなんほのかほのかほのかににに思思おもひひい知知しりりりたるたるたる」」」ととと書書かききき給給たまひひいててて「「「かうかうこう言言いひひいやれやれやれかしかしかし」」」とととのたまふのたまふのたまうををを、、、やがてやがてやがて奉奉たてまつれれれたるたるたるををを限限かぎりなうなうのうめづらしきめづらしきめずらしきにににももも折折おりをををおぼしおぼしおぼしとむるとむるとむるさへさへさへいとゞいとゞいとど淚淚なみだももも留留とどまらららずずず立立たちちちかへりかへりかえり、、、
- 2「「「たがたがたが名名なはははたゝたゝたたじじじなどなどなどかごとかごとかごとがましくがましくがましくててて、、、「「「生生いけけけるるる世世よのののまままにににははは心心こころにににまかせまかせまかせねねねばばば聞聞きかかかでででややややまやまやまむむん君君きみがががひとひとひとことことこと。。。塚塚つかののの上上うえにににもももかけかけかけ給給たまふふうべきべきべき御心御心みこころののの程程ほどととと思思おもひひい給給たまへへえましかましかましかばばば、、、ひたみちひたみちひたみちにににももも急急いそがががれれれ侍侍はべらららましましましををを」」」などなどなどあるあるあるににに、、、うたてうたてうたてもももいらへいらへいらえをををえええてててけるけるけるかなかなかな、、、書書かきききかへかへかえでででやりやりやりつつつらむらむらんよよよととと苦苦くるしげしげしげにににおぼしおぼしおぼしててて、、、物物ものももものたまはのたまはのたまわずずずなりなりなりぬぬぬ。。。
現代語訳
蔵人の君は、いつもの女房に、ひどく言葉を尽くして、「今は最後と思っております命が、さすがに悲しいので、哀れと思うとだけでも一言おっしゃってくだされば、それに引き留められて、しばらくでも生き長らえるかもしれない」などと書いてあるのを、女房が持って参って見ると、姫君お二人は語り合って、たいそうひどくふさぎ込んでいらっしゃった。夜も昼も一緒に過ごし慣れていらっしゃって、中の戸だけで隔てている西と東の部屋さえ、たいそう気詰まりなものになさって、互いに行き来していらっしゃったので、別々になることをお思いになっているのだった。格別に仕立ててお身繕いさせ申し上げなさった大君のご様子は、たいそう美しい。故殿がお考えになりおっしゃったことなどを思い出しなさって、物悲しい折なので、手紙を取ってご覧になる。大臣と北の方が、あれほど揃って頼もしげなご両親の中で、どうしてこのようにとりとめもないことを思い言うのだろうと不思議に思うにつけても、「最後」とあるのを、本当だろうかとお思いになって、そのままこのお手紙の端に、「哀れという、無常な世の一言も、どのような人にかけるものでしょうか。不吉な方面でこそ、かすかに知っております」とお書きになって、「こう言ってやりなさい」とおっしゃるのを、女房がそのまま差し上げたので、少将はこの上なく珍しく思うにつけても、この折を心に留めてくださったことまで、いっそう涙も止まらず、すぐに返事をして、
「誰の名は立たないでしょう」などと恨みがましく、「生きている間は、思いどおりにならないので、あなたの一言を聞かないで終わるのだろうか。墓の上にもかけてくださるお心の程と存じていたら、ひたすら急いで死んだでしょうに」などとあるので、大君は、嫌な返事をされてしまったことよ、女房は書き直さずにやってしまったのだろうよと、困ったようにお思いになって、何もおっしゃらなくなった。
意訳
院参りの前、少将は大君に、哀れと一言だけでも言ってほしいと必死に訴える。姉妹は別れを惜しんでふさぎ込んでいる。大君は少将の「最後」という言葉に驚き、手紙の端に返歌を書かせる。少将は感激して返事をするが、大君は困惑して何も言わなくなる。
語釈・文法注
文法
- 「あはれてふ」(あはれてふ常ならぬ世のひとことも)
- 哀れという言葉は、人の死を悼む時に使うもので、生きている人にかけるものではないという意。
- 「ゆゝしきかた」(ゆゝしきかたにてなむほのかに思ひ知りたる)
- 不吉な方面。父髭黒の死などで、哀れという言葉を知っていること。
- 「たが名はたゝじ」(たが名はたゝじなど)
- 「恋ひ死なば誰が名は立たじ世の中の常なき物と言ひはなすとも」(古今集)による。恋死にすれば、あなたの名が立つという意。
- 「塚の上にもかけ」(塚の上にもかけ給ふべき御心の程と)
- 季札が亡き徐君の墓に剣をかけた故事による。死後にも情けをかけてくれる心。
解説
大君の返歌は、少将の訴えを退けつつも、一言をかけてしまった。少将はそれを最後の慰めとして受け取る。院参りを前に、大君の心にも複雑な思いがあったのかもしれない。
別れを悲しむ姉妹の姿は、この巻の中でもしみじみとした場面である。夜も昼も一緒だった姉妹が、ここで別々の道を歩むことになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、870–873頁(コマ146–147)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日