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源氏物語 第44帖 竹河(14)

散る桜の歌

登場人物:大君・中の君・宰相の君・大輔の君

姫君たちは花の争いをしながら明け暮れ過ごしていたが、風が荒々しく吹いた夕方、花が乱れ散るのがたいそう残念で惜しいので、負けた方の姫君(大君)が、桜ゆえ風に心が騒ぐことだ、思いやりのない花だと見ながらもと詠む。大君方の宰相の君が、咲いたと見るとすぐに散ってしまう花なので、負けたことを深い恨みとも思いませんと助け舟を出すと、右の姫君(中の君)が、風に散るのは世の常のこと、枝についたまま色あせる花を、ただ見過ごしはしないと詠む。中の君方の大輔の君が、心あって池の水際に落ちる花よ、泡となってもこちらに寄れと詠む。勝った方の女童たちが庭に降りて花の下を歩き、散った花をたくさん拾って持って参る。大空の風に散っても、桜花は自分たちのものとかき集めて見ると詠む。左方の女童なれきが、桜花の匂いをあちこちに散らすまいと、覆い尽くすほどの袖はあるのでしょうか、心が狭く見えますなどと言い返す。

  1. 1君きん君きんきん達だち達だちだちははは花はな花はなはなのののあらそひあらそひあらそいをををしししつゝつゝつつ明あか明あかあかししし暮くら暮くらくらししし給たま給たまたまふふうににに、、、風かぜ風かぜかぜ荒あら荒あらあららからからかににに吹ふ吹ふふきききたるたるたる夕ゆふ夕ゆふゆうつつつ方かた方かたかた亂みだ亂みだみだれれれおつるおつるおつるがががいといといと口惜くちを口惜くちをくちおしうしうしゅうあたらしけれあたらしけれあたらしければばばまけまけまけ方がた方がたがたののの姫ひめ姫ひめひめ君ぎみ君ぎみぎみ、、、「「「櫻さくら櫻さくらさくらゆゑゆゑゆえ風かぜ風かぜかぜにににこゝろこゝろこころのののさわぐさわぐさわぐかなかなかな思おも思おもおもひひいぐまぐまぐまなきなきなき花はな花はなはなととと見み見みみるるるみるみるみる」」」。。。御おん御おんおんかたかたかたののの宰さい宰さいさい相しやう相しやうしょう君のきみ君のきみのきみ、、、「「「咲さ咲ささくくくととと見み見みみてててかつかつかつははは散ち散ちちりりりぬるぬるぬる花はな花はなはななれなれなればばばまくるまくるまくるををを深ふか深ふかふかきききうらみうらみうらみとととももも見み見みみずずず」」」ととと聞きこ聞きこきこえええたすくれたすくれたすくればばば、、、右みぎ右みぎみぎののの姫ひめ姫ひめひめ君ぎみ君ぎみぎみ、、、「「「風かぜ風かぜかぜにににちるちるちることことことははは世よ世よよのののつねつねつね枝えだ枝えだえだながらながらながらうつろふうつろふうつろう花はな花はなはなをををたゞたゞただにににしもしもしも見み見みみじじじ」」」このこのこの御おん御おんおん方かた方かたかたのののたいふたいふたいふののの君きみ君きみきみ、、、「「「心こころ心こころこころありありありててて池いけ池いけいけののの汀みぎは汀みぎはみぎわにににおつるおつるおつる花はな花はなはなあわあわあわとととなりなりなりてててももも我わ我わわがががかたかたかたににによれよれよれ」」」。。。勝かち勝かちかち方がた方がたがたののの童わらは童わらはわらわべべべおりおりおりててて花はな花はなはなののの下した下したしたにににありきありきありきててて散ち散ちちりりりたるたるたるをををいといといとおほくおほくおおく拾ひろ拾ひろひろひひいてててもてもてもてまゐれまゐれまいれりりり。。。「「「大おほ大おほおおぞらぞらぞらののの風かぜ風かぜかぜにににちれちれちれどもどもども櫻さくら櫻さくらさくら花ばな花ばなばなおのおのおのがががものものものとととぞぞぞかきかきかきつめつめつめててて見み見みみるるる」」」。。。左ひだり左ひだりひだりのののなれきなれきなれき、、、「「「櫻さくら櫻さくらさくら花ばな花ばなばなにほひにほひにおいあまたあまたあまたににに散ち散ちちらさらさらさじじじととと覆おほ覆おほおおふふうばかりばかりばかりののの袖そで袖そでそではははありありありやややははは。。。心こころ心こころこころせばせばせばげにげにげにこそこそこそ見み見みみゆゆゆめれめれめれなどなどなどいひいひいいをらすをらすおらす。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

姫君たちは花の争いをしながら明かし暮らしていらっしゃったが、風が荒々しく吹いた夕方、花が乱れ散るのがたいそう残念で惜しいので、負けた方の姫君(大君)が、「桜ゆえに、風に心が騒ぐことよ。思いやりのない花だと見ながらも」。大君方の宰相の君が、「咲いたと見ると、一方ではすぐに散ってしまう花なので、負けたことを深い恨みとも思いません」と助け舟を出し申し上げると、右の姫君(中の君)が、「風に散ることは世の常のこと。枝についたまま色あせてゆく花を、ただ見過ごしはしないでしょう」。こちらの御方の大輔の君が、「心あって池の水際に落ちる花よ、泡となっても、私たちの方に寄っておくれ」。勝った方の女童たちが庭に降りて、花の下を歩き回って、散った花をたいそう多く拾って持って参った。「大空の風に散っても、桜花は自分たちのものだと、かき集めて見ることよ」。左方の女童なれきが、「桜花の匂いをあちこちに散らすまいと、覆い尽くすほどの袖はあるのでしょうか。心が狭く見えますね」などと言い返す。

意訳

風に桜が散る夕方、負けた大君は桜を惜しむ歌を詠み、女房たちも歌を詠み交わす。勝った中の君方の女童は散った花を拾い集めて自分たちのものと詠み、大君方の女童が心が狭いと言い返す。

語釈・文法注

文法

「思ひぐまなき」(思ひぐまなき花と見るみる)
思いやりのない、情けのない。
「たいふの君」(この御方のたいふの君)
大輔の君。中の君方の女房。
「なれき」(左のなれき)
大君方の女童の名。

解説

散る桜をめぐる歌の応酬は、宮廷女房たちの機知の競い合いである。勝負に負けた大君の「思ひぐまなき花」という歌には、桜を失った悔しさと、移ろうものへの哀惜がこもる。

中の君の「枝ながらうつろふ花」の歌は、枝についたまま色あせる花を詠む。後に大君は院に参って苦労し、中の君は宮仕えで華やかに暮らす。桜の歌は、姉妹の運命を予告しているようでもある。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、866–867頁(コマ144)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日