源氏物語 第44帖 竹河(2)
姫君たちの行く末
男君たちは元服などしてそれぞれ大人になったので、父の亡き後は心もとなく哀れなこともあるが、自然と出世していくだろう。玉鬘は姫君たちをどう扱えばよいかと思い乱れる。帝にも、必ず宮仕えさせたいという本意を髭黒が奏上しておいたので、帝はもう大人になっただろうと年月を推し量って、絶えず仰せがあるが、明石の中宮がますます並びない勢いになっていくのに押されて、他の方々は皆かいのない様子でいるので、後から参って遠くから白い目で見られるのも煩わしく、また人に劣って物の数でもない様子で過ごすのを見るのもつらいだろうと、ためらっている。冷泉院からはたいそう熱心に申し入れがあり、昔、玉鬘が院の思いに添わずに過ごしたつらさまで持ち出して恨み、「今はまして盛りも過ぎ、興ざめな有様と見捨てても、安心できる親代わりと思って姫君をお譲りください」とたいそう真剣に申し入れるので、玉鬘はどうしたものか、自分は残念な宿世で心外にも院に疎ましく思われたので、恥ずかしく恐れ多いのを、この晩年に見直していただけるだろうかなどと、決めかねている。
- 1男男おとこ君君ぎみ達達たちははは御御おん元元げん服服ぷくなどなどなどしししててておのおのおのおのおのおのおとなびおとなびおとなび給給たまひひいにににしかしかしかばばば、、、殿殿とのおはせおはせおわせででで後後のち心心こころもとなくもとなくもとなく哀哀あわれなるなるなることことこともももあれあれあれどどどおのづからおのづからおのずからなりなりなり出出いででで給給たまひひいぬぬぬべかべかべかめりめりめり。。。姫姫ひめ君君ぎみ達達たちをををいかにいかにいかにもてもてもてなしなしなし奉奉たてまつらららむむんとととおぼしおぼしおぼしみだるみだるみだる。。。うちうちうちにににももも必必かならずずず宮宮みや仕仕づかえのののほいほいほい深深ふかきききよしよしよしをををおとゞおとゞおとどののの奏奏そうししし置置おききき給給たまひひいけれけれければばば、、、おとなびおとなびおとなび給給たまひひいぬぬぬらむらむらんかしかしかしととと年年とし月月つきををを推推おししし量量はからららせせせ給給たまひひいててて仰仰おおせ言言ごと絕絕たえええずずずあれあれあれどどど、、、中中ちゅう宮宮ぐうのののいよいよいよいよいよいよならびならびならびなくなくなくのみのみのみなりなりなりまさりまさりまさり給給たまふふう御御おんけはひけはひけはいにににおさおさおされれれててて、、、皆皆みな人人ひと無無む德德とくにににものしものしものし給給たまふふうめるめるめる、、、末末すえにににまゐりまゐりまいりててて遙遙はるかににに目目めをををそばめそばめそばめられられられ奉奉たてまつらららむむんもももわづらはしくわづらはしくわずらわしく、、、またまたまた人人ひとにににおとりおとりおとり數數かずならならならぬぬぬさまさまさまにてにてにて見見みむむんはははたたた心心こころづくしづくしずくしなるなるなるべきべきべきをををおぼしおぼしおぼしたゆたふたゆたふたゆたう。。。冷冷れい泉泉ぜい院院いんよりよりよりいといといとねんごろねんごろねんごろにににおぼしおぼしおぼしのののたまはせたまはせたまわせててて、、、かんかんかんののの君君きみののの昔昔むかしほいほいほいなくなくなくててて過過すぐしぐしぐし給給たまひひいしししつらさつらさつらさをををさへさへさへとりとりとりかへしかへしかえし恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、「「「今今いまはははまいてまいてまいてさださださだすぎすぎすぎ、、、すさまじきすさまじきすさまじきありさまありさまありさまににに思思おもひひい捨捨すててて給給たまふふうともともとも後後うしろ安安やすききき親親おやににになずらへなずらへなずらえてててゆづりゆづりゆずり給給たまへへえ」」」ととといといといとまめやかまめやかまめやかににに聞聞きこえええ給給たまひひいけれけれければばば、、、いかゞいかゞいかがはははあるあるあるべきべきべきことことことならならならむむん、、、自自みずからららのののいといといと口惜口惜くちおしきしきしき宿宿すく世世せにてにてにて思思おもいののの外外ほかににに心心こころづきなしづきなしずきなしとととおぼさおぼさおぼされれれにににしかしかしかばばば、、、耻耻はずかしうしうしゅうかたじけなきかたじけなきかたじけなきをををこのこのこの世世よののの末末すえにににややや御御ご覽覽らんじじじなほさなほさなおされれれましましましなどなどなど定定さだめめめかねかねかね給給たまふふう。。。
現代語訳
男君たちは、御元服などをして、それぞれ大人になられたので、殿(髭黒)がいらっしゃらなくなった後、心もとなく哀れなこともあるけれど、自然と出世していかれるにちがいないようだ。姫君たちをどのようにお扱い申し上げようかと、玉鬘は思い乱れなさる。帝にも、必ず宮仕えさせたいという本意が深いことを、大臣が奏上しておかれたので、帝は、もう大人になられただろうと年月を推し量りなさって、仰せが絶えずあるけれど、中宮(明石の中宮)がいよいよ並びなくばかり勢いが増していらっしゃるご様子に押されて、他の方々は皆かいのない様子でいらっしゃるようなので、後から参上して、遠くから白い目で見られ申し上げるのも煩わしく、また人に劣って、物の数でもない様子で娘を見るのも、また心を痛めることになるだろうと、ためらっていらっしゃる。冷泉院からは、たいそう熱心にお思いになりおっしゃって、尚侍が昔、本意に添わずに過ごしなさったつらさまで持ち出してお恨み申し上げなさって、「今はまして盛りも過ぎ、興ざめな有様だと見捨てなさるとしても、安心できる親になぞらえて、姫君をお譲りください」と、たいそう真剣に申し上げなさったので、玉鬘は、どうしたらよいことだろう、自分のたいそう残念な宿世で、心外にも院に疎ましくお思われになってしまったので、恥ずかしく恐れ多いのを、この晩年に見直していただけるだろうかなどと、決めかねていらっしゃる。
意訳
息子たちは成人したが、姫君たちの身の振り方に玉鬘は悩む。帝からの入内の催促はあるが、明石の中宮の勢いに気後れする。冷泉院は、昔の恨みを持ち出しつつ、大君を譲ってほしいと熱心に申し入れる。
語釈・文法注
文法
- 「目をそばめられ」(遙に目をそばめられ奉らむも)
- 横目で見られる、白い目で見られる。
- 「昔ほいなくて過ぐし給ひしつらさ」(かんの君の昔ほいなくて過ぐし給ひしつらさ)
- かつて玉鬘が冷泉帝に尚侍として出仕する予定だったが、髭黒と結婚したため、帝の思いがかなわなかったこと。
- 「さだすぎ」(今はまいてさだすぎ)
- 盛りの年頃を過ぎること。
解説
冷泉院は、かつて玉鬘を后妃に迎えようとして果たせなかった。その思いを、玉鬘の娘に託そうとする。親子二代にわたる冷泉院の執着が、大君の運命を左右していく。
玉鬘は、帝への入内と冷泉院への院参の間で揺れる。明石の中宮の勢いが強い宮中より、退位した院の方が穏やかかもしれない。しかし、それは華やかさを欠く選択でもある。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、856–859頁(コマ139–140)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日