源氏物語 第43帖 紅梅(11)
宮の御方に心寄せる匂宮
宮の御方は物事が分かる年頃に成長しているので、何事も見知り聞き分けないわけではないが、人に姿を見せて結婚するようなことは全く考えていない。世の人も時勢に従う心があるのか、ちょうど年頃の大納言の姫君たちには心を尽くして求婚し、今風なことも多いが、宮の御方はすべてにつけて物静かに引きこもっているのを、匂宮はふさわしい相手として聞き伝えて、深くどうにかしてと思うようになった。若君をいつもまとわりつかせて、こっそり手紙を送るが、大納言が深く心にかけて、匂宮がその気になって言い出したらと様子をうかがい準備しているのを見ると、宮の御方は気の毒で、こうして思い寄るはずもない自分の方に気まぐれな言葉を尽くしているのだと思う。かいのないことだと北の方も思い、そう言う。ちょっとした返事もないので、匂宮は負けまいという気持ちも加わって諦めそうもない。北の方は、何の不都合があろう、匂宮の人柄など、そのようにでもお世話してみたい、将来も末長く見えるのにと思う時々もあるが、匂宮はたいそう色好みで方々に通い、忍び所も多く、八の宮の姫君にも思いが浅くなくて、たいそう頻繁に出歩いている。頼りにならない浮気な心も、いっそう気が引けるので、北の方は本気では思い絶えているが、恐れ多いというだけで、こっそりと母君がたまに差し出口をして返事をする。
- 1宮宮みやののの御御おん方方かたははは物物ものおぼしおぼしおぼし知知しるるる程程ほどにににねびねびねびまさりまさりまさり給給たまへへえれれればばば何何なに事事ごとももも見見み知知しりりり聞聞きききき咎咎とがめめめ給給たまははわぬぬぬにににはははあらあらあらねねねどどど、、、人人ひとににに見見みえええ世世よづきづきずきたらたらたらむむん有有あり樣樣さまははは更更さらにににもももおぼしおぼしおぼしはなれはなれはなれたりたりたり。。。世世よののの人人ひとももも時時ときににによるよるよる心心こころありありありてててにににややや、、、さしさしさし向向むかひひいたるたるたる御御おん方方かた々々がたにににははは心心こころをををつくしつくしつくし聞聞きこえええわびわびわび、、、今今いまめかしきめかしきめかしきことことこと多多おおかれかれかれどどどこなたこなたこなたははは萬萬よろずにににつけつけつけ物物ものしめやかしめやかしめやかににに引引ひききき入入いりりり給給たまへへえるるるををを、、、宮宮みやははは御御おんふさいふさいふさいのののかたかたかたににに聞聞きききき傳傳つたへへえ給給たもうううててて、、、深深ふこううういかでいかでいかでとととおぼしおぼしおぼしなりなりなりにににけりけりけり若若わか君君ぎみををを常常つねにににまつはしまつはしまつわしよせよせよせ給給たまひひいつゝつゝつつ忍忍しのびびびやかやかやかににに御御おん文文ふみあれあれあれどどど、、、大大だい納納な言言ごんののの君君きみ深深ふかくくく心心こころがけがけがけ聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、さもさもさも思思おもひひいたちたちたちてててののの給給のたまふふうことことことあらあらあらばばばととと氣色氣色けしきとりとりとり心心こころまうけまうけもうけししし給給たまふふうををを見見みるるるにににいとほしういとほしういとおしゅうひきひきひき違違たがへへえてててかくかくかく思思おもひひいよるよるよるべくべくべくもももあらあらあらぬぬぬ方方かたにににしもしもしもなげなげなげののの言言ことののの葉葉はををを盡盡つくししし給給たまふふう。。。かひかひかいなげなげなげなるなるなることことことゝゝと北北きたののの方方かたもももおぼしおぼしおぼしのののたまふたまふたまう。。。はかなきはかなきはかなき御御おんかへりかへりかえりなどなどなどもももなけれなけれなければばばまけまけまけじじじののの御心御心みこころそひそひそいててておもほしおもほしおもおしやむやむやむべくべくべくもももあらあらあらずずず。。。何何なにかかかははは人人ひとののの御御おんありさまありさまありさまなどなどなどかかかはははさてさてさてももも見見み奉奉たてまつらららまほしうまほしうまほしゅう、、、おひおひおいさきさきさき遠遠とおくくくなどなどなどははは見見みえええさせさせさせ給給たまふふうににになどなどなど北北きたののの方方かたおもほしおもほしおもおしよるよるよる時々時々ときどきあれあれあれどどど、、、いといといといたういたういとう色色いろめきめきめき給給たまひひいててて通通かよひひい給給たまふふう。。。忍忍しのびびび所所どころおほくおほくおおく八八はちののの宮宮みやののの姫姫ひめ君君ぎみにににももも御御おん志志こころざしあさからあさからあさからでででいといといとしげうしげうしぎょうまかでまかでまかでありきありきありき給給たまふふう。。。たのもしげたのもしげたのもしげなきなきなき御心御心みこころのののあだあだしさあだあだしさあだあだしさなどなどなどももも、、、いとゞいとゞいとどつゝましけれつゝましけれつつましければばば、、、まめやかまめやかまめやかにににおもほしおもほしおもおし絕絕たえええたるたるたるをををかたじけなきかたじけなきかたじけなきばかりばかりばかりににに忍忍しのびびびててて母母はは君君ぎみぞぞぞたまさかたまさかたまさかにににさかしらさかしらさかしらがりがりがり聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
宮の御方は、物事がお分かりになる年頃に成長していらっしゃるので、何事も見知り、聞き分けなさらないわけではないけれど、人に姿を見せて結婚するようなことは、全くお考えにならない。世の人も時勢に従う心があってか、ちょうど年頃の御方々(大納言の姫君たち)には心を尽くして求婚申し上げ、今風なことも多いけれど、こちらはすべてにつけて物静かに引きこもっていらっしゃるのを、匂宮はふさわしい相手として聞き伝えなさって、深くどうにかしてとお思いになるようになった。若君をいつもまとわりつかせて呼び寄せなさりながら、こっそりとお手紙があるけれど、大納言の君が深く心にかけ申し上げなさって、匂宮がその気になっておっしゃることがあればと、様子をうかがい準備していらっしゃるのを見ると、宮の御方は気の毒で、それと食い違って、このように思い寄るはずもない方に、気まぐれな言葉を尽くしていらっしゃるのだと思う。かいのないことだと北の方もお思いになり、おっしゃる。ちょっとしたご返事などもないので、匂宮は負けまいというお気持ちも加わって、お諦めになりそうもない。北の方は、何の不都合があろう、匂宮のお人柄など、そのようにでもお世話申し上げてみたい、将来も末長くお見えになるのになどとお思い寄りになる時々もあるけれど、匂宮はたいそうひどく色好みでいらっしゃって、方々にお通いになる。忍び所も多く、八の宮の姫君にもお気持ちが浅くなくて、たいそう頻繁にお出かけになる。頼りにならないお心の浮気っぽさなども、いっそう気が引けるので、北の方は本気では思い絶えていらっしゃるのを、ただ恐れ多いというだけで、こっそりと母君がたまに差し出口をして、ご返事を申し上げなさる。
意訳
宮の御方は結婚を考えず、引きこもって暮らしている。匂宮はそれを聞いて心を寄せ、若君を通じて手紙を送るが、返事はない。北の方も時には匂宮との縁を思うが、匂宮は八の宮の姫君などにも通う浮気な人なので、本気にはなれず、恐れ多さからたまに返事をする。
語釈・文法注
文法
- 「御ふさいのかた」(宮は御ふさいのかたに聞き傳へ給うて)
- ふさわしい相手、似合いの相手。
- 「八の宮の姫君」(八の宮の姫君にも御志あさからで)
- 宇治に住む八の宮の娘たち。橋姫の巻以降の物語の中心となる。
- 「さかしらがり」(母君ぞたまさかにさかしらがり聞え給ふ)
- 差し出がましく振る舞う。母が娘に代わって返事を書くこと。
解説
匂宮は姿を見せない宮の御方に心を寄せるが、宮の御方は全く応じない。思い通りにならない相手ほど追いかけたくなる匂宮の性格が、ここでも描かれている。
巻の終わりに「八の宮の姫君」の名が現れる。これは、次の竹河の巻を挟んで、橋姫の巻から始まる宇治十帖の物語への伏線である。匂宮と薫の物語は、宇治の姫君たちへと向かっていく。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、854–856頁(コマ138–139)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日