源氏物語 第43帖 紅梅(5)
大納言と宮の御方
大納言はどの姫君も分け隔てなく親らしく振る舞うが、宮の御方の容貌を見たいと気になって、隠れているのが情けないと恨んで、人知れず姿が見えないものかとのぞいて歩くが、少しも横顔さえ見ることができない。「北の方がいない間は、代わりに参上するべきなのに、よそよそしく分け隔てなさる様子なので情けない」などと言って御簾の前に座ると、宮の御方は返事などをほのかに申し上げる。声や雰囲気など上品で美しく、姿形も想像されて、しみじみと心ひかれる人柄である。「自分の姫君たちを人に劣るまいと自慢していたが、この君に勝てないのではないか。だからこそ世の中は広いので厄介なのだ。比べるものはないと思っていても、勝る人も自然といるにちがいない」などと、ますます宮の御方を知りたく思う。
- 1いづれいづれいずれもももわかわかわかずずず親親おやがりがりがり給給たまへへえどどど御御おんかたちかたちかたちををを見見みばやばやばやとととゆかしうゆかしうゆかしゅうおぼしおぼしおぼしてててかくれかくれかくれ給給たまふふうこそこそこそ心心こころ憂憂うけれけれけれととと恨恨うらみみみててて、、、人人ひと知知しれれれずずず見見みえええ給給たまひひいぬぬぬべしべしべしやややとととのぞきのぞきのぞきありきありきありき給給たまへへえどどど絕絕たえええてててかたかたかたそばそばそばをををだにだにだにえええ見見み奉奉たてまつりりり給給たまははわずずず。。。「「「上上うえおはせおはせおわせぬぬぬほどほどほどははは立立たちちちかはりかはりかわりててて參參まいりりりくくくべきべきべきををを疎疎うと々々うとしくしくしくおぼしおぼしおぼしわくるわくるわくる御御おん氣色氣色けしきなれなれなればばば心心こころうくうくうくこそこそこそ」」」などなどなど聞聞きこえええてててみみみすすすののの前前まえににに居居い給給たまへへえばばば御御おんいらへいらへいらえなどなどなどほのかほのかほのかににに聞聞きこえええ給給たまふふう。。。御御おん聲聲こえけはひけはひけはいなどなどなどあてあてあてにににをかしうをかしうおかしゅうさまさまさまかたちかたちかたち思思おもひひいやらやらやられれれててて哀哀あわれににに覺覺おぼゆるゆるゆる人人ひとののの御御おんありさまありさまありさまなりなりなり。。。「「「君君きみががが御御おん姫姫ひめ君君ぎみたちたちたちををを人人ひとににに劣劣おとらららじじじととと思思おもひひいおごれおごれおごれどどどこのこのこの君君きみにににえええしもしもしも優優まさらららずずずやややあらあらあらむむん、、、かゝれかゝれかかればばばこそこそこそ世世よののの中中なか廣廣ひろきききうちうちうちはははわづらはしけれわづらはしけれわずらわしけれ。。。たぐひたぐひたぐいあらあらあらじじじととと思思おもふふうににに優優まさるるる方方かたもももおのづからおのづからおのずからありありありぬぬぬべかべかべかめりめりめり」」」などなどなどいとゞいとゞいとどいぶかしういぶかしういぶかしゅう思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
現代語訳
大納言は、どなたをも分け隔てなく親らしく振る舞っていらっしゃるが、宮の御方のご容貌を見たいものだと気になさって、「隠れていらっしゃるのが情けない」と恨んで、人知れずお姿が見えないものかと、のぞいて歩きなさるけれど、全く横顔さえ拝見することがおできにならない。「北の方がいらっしゃらない間は、代わりに参上すべきなのに、よそよそしく分け隔てなさるご様子なので情けない」などと申し上げて、御簾の前にお座りになると、ご返事などをほのかに申し上げなさる。お声や雰囲気などが上品で美しく、姿形も想像されて、しみじみと心ひかれるお人柄である。「自分の姫君たちを人に劣るまいと自慢していたが、この君にはとても勝てないのではないか。だからこそ、世の中は広いので厄介なのだ。比べるものはあるまいと思っていても、勝る人も自然といるにちがいないようだ」などと、ますます知りたくお思い申し上げなさる。
意訳
大納言は宮の御方の顔を見たいと思うが、宮の御方は決して姿を見せない。御簾越しにほのかな返事を聞き、その上品な声に、自分の娘たちより優れているのではないかと思う。
語釈・文法注
文法
- 「かたそば」(絕えてかたそばをだにえ見奉り給はず)
- 横顔、ちらりと見える姿の一部。
- 「思ひおごれど」(人に劣らじと思ひおごれど)
- 得意になる、自慢に思う。
解説
継父である大納言が、宮の御方の姿を見ようとのぞき歩く姿には、どこか滑稽さがある。宮の御方は決して姿を見せず、声だけがほのかに聞こえる。見えないからこそ、想像が膨らむ。
大納言は、宮の御方が自分の娘たちに勝るのではないかと思う。宮の御方の奥ゆかしさは、後に匂宮の関心を引くことになる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、850–851頁(コマ136)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日