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源氏物語 第43帖 紅梅(3)

若君と匂宮

登場人物:匂宮・若君・按察大納言・大君・真木柱

匂宮は、大納言の若君(北の方の生んだ男君)を宮中などで見つけると、呼び寄せて遊び相手にする。若君は気が利いていて、心の奥が推し量られるような目元や額つきである。匂宮が、「兄弟(若君)を見るだけでは済まされないと大納言に申せよ」などと言いかけるのを、若君が「こうおっしゃいました」と伝えると、大納言はほほえんで、たいそうかいがあると思う。「人に劣る宮仕えよりは、この宮にこそ、まあまあの娘ならお見せしたい。心のままに大切にお世話申し上げたら、命も延びそうな宮のご様子だ」と言いながら、まず春宮への入内を急ぎ、春日の神の御託宣も自分の代に実現して、故大臣(頭中将)が冷泉院の女御(弘徽殿女御)の立后がかなわず胸を痛めて終わった慰めとなってほしいと心の中で祈って、大君を入内させた。たいそう寵愛されていると人々は噂する。こうした宮仕えに慣れない間は、しっかりした後見がなくてはどうかということで、北の方が付き添って仕え、本当に限りなく大切に後見する。

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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

この若君を宮中などでお見つけになる時は、匂宮は呼び寄せて、遊び相手になさる。気が利いていて、心の奥が推し量られるような目元や額つきである。「兄弟を見るだけでは済まされないと大納言に申せよ」などと言いかけなさるのを、若君が「こうおっしゃいました」と申し上げると、大納言はほほえんで、たいそうかいがあるとお思いになった。「人に劣るような宮仕えよりは、この宮にこそ、まあまあの娘ならばお見せ申し上げたい。心のままに大切にお世話申し上げたら、命も延びそうな宮のご様子だ」とおっしゃりながら、まず春宮の御事をお急ぎになって、春日の神の御託宣も、自分の代にもしや実現して、故大臣(頭中将)が冷泉院の女御の御事を胸を痛くお思いになって、それきりになってしまった慰めとなることもあってほしいと、心の中で祈って、大君を入内させなさった。たいそうご寵愛を受けていらっしゃると人々は噂する。このような宮仕えに慣れていらっしゃらないうちは、しっかりしたご後見がなくてはどうかということで、北の方が付き添ってお仕えなさるのは、本当に限りなく大切にお世話し、後見申し上げなさる。

意訳

匂宮は大納言の若君をかわいがり、それとなく姉への関心をほのめかす。大納言は喜ぶが、まず大君の春宮入内を急ぎ、父の頭中将の無念を晴らしたいと祈る。大君は寵愛され、北の方が付き添って後見する。

語釈・文法注

文法

「せうと」(せうとを見てのみはえやまじ)
兄弟。ここでは若君。若君を見るだけでは満足できない、姉君にも会いたいという意。
「春日の神の御ことわり」(春日の神の御ことわりも)
藤原氏の氏神である春日明神の御託宣。藤原氏から后が立つべきだという神意。
「院の女御の御事」(故おとゞの院の女御の御事を胸いたくおぼして)
頭中将の娘の弘徽殿女御が、冷泉帝の后になれず、秋好中宮に后の位を奪われたこと。

解説

大納言は、父の頭中将が果たせなかった立后の夢を、自分の娘で実現しようとする。藤原氏の氏神である春日明神に祈るのは、源氏に敗れた藤原氏の悲願である。物語は、源氏と頭中将の対立の余韻を、次の世代でも描いている。

匂宮が若君をかわいがるのは、姉君への関心からである。しかし匂宮の関心が実際にどこに向かうかは、この後明らかになっていく。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、848–851頁(コマ135–136)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日