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源氏物語 第42帖 匂宮(6)

出生への疑い

登場人物:薫・女三の宮・柏木

薫は幼心にほのかに聞いたことが、折々に不審で気がかりに思い続けているが、尋ねるべき人もいない。母宮には、自分が事情を知ったと思われるのも気の毒な事柄なので、いつも心にかけて、どういうことなのか、何の因縁で、こんな不安な思いを抱く身に生まれたのだろう、善巧太子が自分の身に問うたという悟りを得たいと、独り言を言う。はっきりしない、誰に問えばよいのか、どのようにして始めも終わりも分からない我が身なのかと詠むが、答える人もいない。何かにつけて自分の身に欠陥がある気がするのも穏やかでなく、母宮もあのように盛りの容姿を尼姿にして、どれほどの道心で急に出家したのか、思いがけない事件の乱れで、きっと世を憂いと思う節があったのだろう、人も漏れ聞いて知らないはずはないが、やはり隠すべき事柄なので自分には知らせる人がいないのだろうと思う。母宮は明け暮れ勤行しているようだが、頼りなくおっとりした女の悟りでは、蓮の露を玉と磨くような成仏は難しく、五障の身もやはり心配なので、自分がこの母宮の気持ちを助けて、せめて後世だけでもと思う。あの亡くなった人(実の父)も、安らかでない思いに結ぼれていたのだろうかと推し量ると、世を変えてでも会いたい気持ちになって、元服も気が進まなかったが拒みきれず、自然と世間にもてはやされて、まばゆいほど華やかな身の飾りも心にそまず、ひたすら物静かに過ごしている。

  1. 1をさなをさなおさな心地ここち心地ここちここちにににほのほのほの聞き聞ききききき給たま給たまたまひひいしししことことことのののをりをりをりをりおりおりいぶかしういぶかしういぶかしゅうおぼつかなくおぼつかなくおぼつかなく思おも思おもおもひひい渡わた渡わたわたれれれどどど問と問ととふふうべきべきべき人ひと人ひとひともももなしなしなし。。。「「「宮みや宮みやみやにににはははことことことののの氣色けしき氣色けしきけしきにてにてにてももも知し知ししりりりけりけりけりとととおぼさおぼさおぼされれれむむん。。。かたはらいたきかたはらいたきかたわらいたきすぢすぢすじなれなれなればばば世よ世よよとととゝゝともももののの心こころ心こころこころにににかけかけかけててていかなりいかなりいかなりけるけるける事こと事ことことにににかかかははは、、、何なに何なになにののの契ちぎり契ちぎりちぎりにてにてにてかうかうこうやすからやすからやすからぬぬぬ思おも思おもおもひひい添そ添そそひひいたるたるたる身み身みみにににしもしもしもなりなりなりいでいでいでけむけむけん。。。ぜんげうぜんげうぜんぎょうたいしたいしたいしののの我わ我わわががが身み身みみににに問と問ととひひいけむけむけんさとりさとりさとりをををもももえええてててしししがながながな」」」とととぞぞぞひとりごたひとりごたひとりごたれれれ給たま給たまたまひひいけるけるける。。。「「「おぼつかなおぼつかなおぼつかな誰たれ誰たれたれにににとはとはとはましましましいかにいかにいかにしししてててはじめはじめはじめもももはてはてはてももも知し知ししらららぬぬぬ我わ我わわががが身み身みみぞぞぞ」」」。。。いらふいらふいらうべきべきべき人ひと人ひとひともももなしなしなし。。。
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引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

幼心にほのかにお聞きになったことが、折々に不審で、気がかりに思い続けていらっしゃるけれど、尋ねるべき人もいない。「母宮には、事情の片端でも知ったのだとお思いになられよう。それは気の毒な事柄なので、いつも心にかけて、どういうことだったのか、何の因縁で、このように不安な思いの添う身に生まれてきたのだろう。善巧太子が自分の身に問うたという悟りをも得たいものだ」と独り言をおっしゃるのだった。「はっきりしない。誰に問えばよいのだろう。どのようにして、始めも終わりも分からない我が身なのか」。答える人もいない。

何かにつけて、自分の身に欠陥があるような気持ちがするのも穏やかでなく、物悲しくばかり思いめぐらしながら、母宮も、あのように盛りのご容姿を尼姿にやつしなさって、どれほどの道心で急に出家なさったのだろう、このように思いがけない事件の乱れで、きっと世を憂いとお思いになる節があったのだろう、人もまさか漏れ聞いて知らないことがあろうか、やはり隠すべき事柄だということで、自分には事情を知らせる人がいないのだろうと思う。母宮は明け暮れ勤行していらっしゃるようだが、頼りなくおっとりしていらっしゃる女のお悟りの程度では、蓮の露を明らかに玉と磨くように成仏なさることは難しい、五障の身もやはり気がかりなので、自分がこのお気持ちを助けて、同じことなら、せめて後世だけでもと思う。あの亡くなられた方も、安らかでない思いに結ぼれていたのだろうかなどと推し量ると、世を変えてでも対面したい気持ちになって、元服は気が進まなかったけれど拒みきれず、自然と世間にもてはやされて、まばゆいほど華やかなご自身の身の飾りも心にそまず、ひたすら物静かに落ち着いていらっしゃった。

意訳

薫は幼い頃にほのかに聞いた出生の秘密に悩むが、尋ねる人もいない。母宮が若くして出家したのも、何か事件があったからだろうと思い、母の後世を助けたいと願う。実の父に会いたいと思う薫は、華やかな身の上にも心を寄せず、静かに過ごす。

語釈・文法注

文法

「ぜんげうたいし」(ぜんげうたいしの我が身に問ひけむさとり)
善巧太子。釈迦の子の羅睺羅とされ、自分の出生を疑って問い、悟りを得たという。
「おぼつかな」(おぼつかな誰にとはまし)
はっきりしない、不安だ。形容詞の語幹。
「蓮の露」(蓮の露もあきらかに玉と磨き給はむこと)
極楽往生して蓮の上に生まれることを、露を玉と磨くことにたとえる。
「五つのなにがし」(五つのなにがしも猶うしろめたき)
五障。女性が成仏の妨げになるとされた五つの障り。

解説

薫は自らの出生に疑いを抱いている。「はじめもはても知らぬ我が身」という歌は、自分が何者か分からない不安を詠んでいる。この存在の不安が、薫の人物像の核となる。

母の出家の理由を推し量り、会ったことのない実父に会いたいと願う薫は、若くして世を厭う心を持つ。華やかな身の上にも心を寄せない薫の姿は、源氏とは対照的である。宇治十帖の主人公・薫の内面が、ここで初めて描かれる。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、842–843頁(コマ132)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日