源氏物語 第38帖 鈴虫(8)
琴の音と人々の参集
宮は数珠を繰る手を止めて、源氏の琴の音にやはり心を引かれている。月が昇って、たいそう明るく照らすのも哀れなので、源氏は空を眺めて、世の中のさまざまなことにつけて、はかなく移り変わる有様も思い続けられ、いつもより哀れな音色で琴をかき鳴らす。今夜はいつもの管弦の遊びがあるのだろうと推し量って、兵部卿宮(蛍兵部卿宮)が訪れる。夕霧も然るべき殿上人などを連れて参ると、源氏がこちらにいると琴の音を頼りに探して、そのまま参る。源氏は、たいそう所在なくて、特に管弦の遊びというのではなくても、久しく絶えていた珍しい楽の音などを聞きたいと思って、独り言のように弾いていたのを、よく尋ねてくださったと言って、兵部卿宮もこちらに御座を設けて迎え入れる。

- 1宮宮みや御御おんすゞすゞすずひきひきひきをこたりをこたりおこたり給給たまひひいててて御御おん琴琴ことににに猶猶なお心心こころいれいれいれ給給たまへへえりりり。。。月月つきさしさしさし出出いでででゝゝて、、、いといといと華華はなやかやかやかなるなるなる程程ほどももも哀哀あわれなるなるなるににに空空そらをををうちうちうちながめながめながめててて世世よののの中中なかさまざまさまざまさまざまにににつけつけつけててて、、、はかなくはかなくはかなく移移うつりりり變變かわるるる有有あり樣樣さまもももおぼしおぼしおぼしつゞけつゞけつづけられられられててて、、、例例れいよりよりよりももも哀哀あわれなるなるなる音音ねにににかきかきかきならしならしならし給給たまふふう。。。今今こ夜夜よいははは例例れいののの御御おん遊遊あそびにににやややあらあらあらむむんとととおしおしおしはかりはかりはかりててて兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょうののの宮宮みや渡渡わたりりり給給たまへへえりりり。。。大大だい將將しょうののの君君きみ殿殿てん上上じょう人人びとのののさるさるさるべきべきべきなどなどなど具具ぐしししててて參參まいりりりたまへたまへたまえれれればばば、、、こなたこなたこなたにににおはしますおはしますおわしますととと御御おん琴琴ことののの音音ねををを尋尋たずねねねてててやがてやがてやがて參參まいりりり給給たまふふう。。。「「「いといといとつれづれつれづれつれずれにてにてにてわざとわざとわざと遊遊あそびびびとととはははなくなくなくともともとも、、、久久ひさしくしくしく絕絕たえええにににたるたるたる珍珍めずらしきしきしき物物もののののねねねなどなどなど聞聞きかかかまほしかりまほしかりまほしかりつるつるつるひとりひとりひとりごとごとごとをををいといといとようようよう尋尋たずねねね給給たまひひいけるけるける」」」とてとてとて宮宮みやもももこなたこなたこなたにににおましおましおましよそひよそひよそいててて入入いれれれ奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。
現代語訳
宮は数珠を繰る手をお休めになって、源氏の御琴の音に、やはりお心を引かれていらっしゃった。月が昇って、たいそう明るく照らす頃も哀れなので、源氏は空を眺めて、世の中のさまざまなことにつけて、はかなく移り変わる有様もお思い続けられて、いつもよりも哀れな音色でかき鳴らしなさる。今夜はいつもの管弦のお遊びがあるのだろうかと推し量って、兵部卿の宮(蛍兵部卿宮)がお越しになった。大将の君(夕霧)も、然るべき殿上人などを連れて参上なさったところ、源氏がこちらにいらっしゃると、御琴の音を頼りに探して、そのまま参上なさる。源氏は、「たいそう所在なくて、特に管弦の遊びというのではなくても、久しく絶えていた珍しい楽の音などを聞きたいと思っていた独り言の演奏を、よく尋ねてくださいましたね」と言って、兵部卿の宮にも、こちらに御座を設けてお入れ申し上げなさる。
意訳
源氏の哀れな琴の音に宮も心を引かれ、音を頼りに蛍兵部卿宮や夕霧たちが集まってくる。
語釈・文法注
文法
- 「すゞひき」(宮御すゞひきをこたり給ひて)
- 数珠を繰ること。念誦すること。
- 「ひとりごと」(聞かまほしかりつるひとりごとを)
- 独り言。ここでは一人で弾いていた琴の演奏をいう。
解説
源氏の琴の音に、念誦する宮も手を止めて聞き入る。月の光の中で、源氏は世の無常を思いながら琴を弾く。その音色に誘われて、蛍兵部卿宮や夕霧たちが集まってくる。
十五夜の月を愛でる宴が、自然に始まろうとしている。源氏の琴の音が人々を呼び寄せるという描写は、源氏の存在の大きさを示すとともに、六条院の華やかな宴の伝統を思わせる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、760–761頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日