源氏物語 第38帖 鈴虫(5)
三条宮の整備
源氏は今になって心苦しい気持ちが加わって、この上なく宮を大切に世話する。朱雀院は、宮が自分の譲った三条宮に移って別に住むのも、結局は穏当でよいだろうと言うが、源氏は、離れて暮らしては気がかりだろう、朝夕お世話し、ご様子を伺うことを怠っては本意に反する、本当に、生き残る世はいくらもないだろうが、やはり生きている限りの志だけは失うまいと言いながら、三条宮もたいそう細かに美しく修理させる。御封の品々や、諸国の荘園、牧場などから献上される物のうち、立派なものは皆三条宮の倉に納めさせる。さらに倉を建て増しさせて、さまざまな宝物や、院の遺産として数限りなく賜ったものなど、宮の側の物は皆三条宮に運び移して、細かに厳重に保管させる。朝夕の世話や、大勢の女房たちのこと、上下の者の養いは、すべて源氏が自分で取り仕切って、急いで仕えさせた。

- 1今今いましもしもしも心苦心苦こころぐるしきしきしき御心御心みこころそひそひそいてててはかりはかりはかりもももなくなくなくかしづきかしづきかしずき聞聞きこえええ給給たまふふう。。。院院いんのののみかどみかどみかどはははこのこのこの御御おんそうぶんそうぶんそうぶんののの宮宮みやににに住住すみみみはなれはなれはなれ給給たまひひいなななむむんももも、、、つひつひついのののことことことにてにてにてめやすかりめやすかりめやすかりぬぬぬべくべくべく聞聞きこえええ給給たまへへえどどど「「「よそよそよそよそよそよそにてにてにてははは覺覺おぼ束束つかなかるなかるなかるべしべしべし。。。明明あけ暮暮くれ見見み奉奉たてまつりりり聞聞きこえええうけうけうけ給給たまはらはらわらむむんことことことをこたらをこたらおこたらむむんにににほいほいほいたがひたがひたがいぬぬぬべしべしべし。。。げにげにげにありありありはてはてはてぬぬぬ世世よいくばくいくばくいくばくあるあるあるまじけれまじけれまじけれどどど猶猶なお生生いけるけるける限限かぎりののの志志こころざしをををだにだにだに失失うしなひひいはてはてはてじじじ」」」ととと聞聞きこえええ給給たまひひいつゝつゝつつかのかのかの宮宮みやをををもももいといといとこまかこまかこまかににに淸淸きよらららにににつくらつくらつくらせせせ給給たまふふう。。。みふみふみふののの物物ものどもどもども、、、國國くに々々ぐにのののみさうみさうみそう、、、みみみ牧牧まきなどなどなどよりよりより奉奉たてまつるるるものものものどもどもどもはかばかしきはかばかしきはかばかしきさまさまさまのののははは皆皆みなかのかのかの三三さむ條條じょうののの宮宮みやののの御御おん藏藏くらににに納納おさめめめさせさせさせ給給たまふふう。。。又又またもももたてたてたてそへそへそえさせさせさせ給給たまひひいててて樣樣さま々々ざまののの御御おん寳寳たからものものものどもどもども院院いんののの御御おんそうぶんそうぶんそうぶんににに數數かずもももなくなくなく賜賜たまはりはりわり給給たまへへえるるるなどなどなどあなたあなたあなたざまざまざまののの物物ものははは皆皆みなかのかのかの宮宮みやににに運運はこびびびわたしわたしわたしこまかこまかこまかにににいかめしういかめしういかめしゅうしししおかおかおかせせせ給給たまふふう。。。明明あけ暮暮くれののの御御おんかしづきかしづきかしずきそこらそこらそこらののの女房女房にょうぼうのののことことことゞゞどもももかみかみかみしもしもしものののはぐゝみはぐゝみはぐくみはははおしなべておしなべておしなべて我我わががが御御おんあつかひあつかひあつかいにてにてにてなむなむなん急急いそぎぎぎ仕仕つかうまつらうまつらうまつらせせせ給給たまひひいけるけるける。。。
現代語訳
源氏は今になって、心苦しいお気持ちが加わって、この上なく宮を大切にお世話申し上げなさる。院の帝(朱雀院)は、宮がこのご遺産の宮邸(三条宮)に移って別にお住みになるのも、結局は穏当でよいだろうと申し上げなさるが、源氏は「離れ離れでは気がかりでしょう。朝夕お世話申し上げ、ご様子を伺うことを怠りましては、本意に反するにちがいありません。本当に、生き残る世はいくらもないでしょうが、やはり生きている限りの志だけは失わないようにいたしましょう」と申し上げなさりながら、あの三条宮をもたいそう細かに美しく修理させなさる。御封の品々や、諸国の荘園、牧場などから献上される物のうち、立派なものは皆、あの三条宮の御倉に納めさせなさる。さらに倉を建て増しさせなさって、さまざまな御宝物や、院のご遺産として数限りなく賜っていらっしゃったものなど、宮の側の物は皆、あの三条宮に運び移して、細かに厳重に保管させなさる。朝夕のお世話や、大勢の女房たちのこと、上下の者の養いは、すべてご自分の取り計らいで、急いでお仕えさせなさった。
意訳
朱雀院は宮が三条宮に移るのもよいと言うが、源氏は手元で世話を続けると言い、三条宮を修理して宮の財産を納めさせる。
語釈・文法注
文法
- 「御そうぶんの宮」(この御そうぶんの宮に住みはなれ給ひなむも)
- 朱雀院から遺産として譲られた宮邸。三条宮。
- 「みふ」(みふの物ども)
- 御封。封戸からの収入。皇族や貴族に与えられた。
- 「みさう」(國々のみさう)
- 御荘。荘園。
解説
宮が出家した後、源氏は今になって心苦しさから、宮を大切に世話する。朱雀院は宮を三条宮に移したいと考えるが、源氏は手元に置いて世話を続けることを望む。源氏の態度には、宮への責任感と、朱雀院への体面とが入り混じっている。
源氏は、宮の財産を三条宮に納めさせ、将来に備える。これは、源氏亡き後の宮の暮らしを考えての配慮である。三条宮は、後に宮と薫が住む邸となる。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、758–759頁(コマ90)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日