源氏物語 第34帖 若菜上(51)
柏木の思い
蛍兵部卿宮も座り直して話をする。殿上人たちは簀子で、椿餅や梨、柑子などを若い人々がはしゃぎながら取って食べ、酒が回る。柏木はひどく沈み込んで、ともすれば桜の木を眺めている。夕霧は、柏木があの御簾の透き影を思い出しているのだろうと思い、宮が端近にいた様子を軽々しいと思っているだろうと推し量る。紫の上ならこのようなことはないだろうと思い、だから宮への源氏の寵愛は世間の評判ほどではないのだと思い合わせ、幼いのはかわいらしいが不安でもあると、宮を見下す気持ちになる。柏木は、宮をほのかにでも見られたのは、長年の思いがかなう前触れかと、うれしく思う。源氏は、太政大臣は何事にも自分と張り合ったが、蹴鞠だけはかなわなかった、柏木の腕前は見事だと言い、柏木は、家の風が後の世に伝わっても大したことはないと謙遜する。源氏の美しい姿を見て、柏木は、このような人を夫とした宮が、どうして自分に心を移すだろうと思い、身の程を思い知って胸がふさがる。夕霧と柏木は同じ車で帰る。

- 1宮宮みやももも居居い直直なおりりり給給たまひひいててて御御おん物語物語ものがたりししし給給たまふふう。。。つぎつぎつぎつぎつぎつぎののの殿上人殿上人てんじょうびとはははすのこすのこすのこにににわらうだわらうだわろうだめしめしめしてててわざとわざとわざとなくなくなくつばいつばいつばいもちひもちひもちい、、、なしなしなし、、、かうじかうじこうじやうやうようのののものものものどもどもどもさまざまさまざまさまざまににに箱箱はこののの蓋蓋ふたどもどもどもにににとりとりとりまぜまぜまぜつゝつゝつつあるあるあるををを若若わかききき人々人々ひとびとそぼれそぼれそぼれとりとりとりくふくふくう。。。さるべきさるべきさるべきからからからものものものばかりばかりばかりしししててて御御おんかはらけかはらけかわらけまゐるまゐるまいる衛衛え門門もん督督かみはははいといといといたくいたくいたく思思おもひひいしめりしめりしめりててて、、、やゝやゝややもももすれすれすればばば花花はなののの木木きににに目目めをををつけつけつけてててながめながめながめやるやるやる。。。大大だい將將しょうははは心心こころ知知しりりりににに怪怪あやしかりしかりしかりつるつるつる御御み簾簾すのののすきすきすきかげかげかげ思思おもひひい出出いづるづるずる事事ことやややあらあらあらむむんととと思思おもひひい給給たまふふう。。。いといといと端端はし近近ちかなりなりなりつるつるつる有樣有樣ありさまをををかつはかつはかつはかろがろしかろがろしかろがろしととと思思おもふふうらむらむらんかしかしかし。。。いでやいでやいでやこなたこなたこなたののの御御おん有樣有樣ありさまのののさささはははあるあるあるまじかめるまじかめるまじかめるものものものをををととと思思おもふふうににに、、、かゝれかゝれかかればばばこそこそこそ世世よのののおぼえおぼえおぼえののの程程ほどよりよりよりははは內內うち々々うちののの御御おん志志こころざしぬるきぬるきぬるきやうやうようにににはははありありありけれけれけれととと思思おもひひい合合あわせせせててて猶猶なおうちうちうちとととののの用意用意ようい多多おおからからからずずず、、、いはけなきいはけなきいわけなきはははらうたきらうたきろうたきやうやうようなれなれなれどどどうしろめたきうしろめたきうしろめたきやうやうようなりなりなりやややととと思思おもひひいおとさおとさおとさるるる。。。宰宰さい相相しょうののの君君きみははは萬萬よろずののの罪罪つみをををもももをさをさをさをさおさおさたどらたどらたどられれれずずず覺覺おぼえええぬぬぬ物物もののののひまひまひまよりよりよりほのかほのかほのかにににもももそれそれそれととと見見み奉奉たてまつりりりつるつるつるにににももも、、、我我わががが昔昔むかしよりよりよりののの志志こころざしのののしるししるししるしあるあるあるべきべきべきにににやややととと契契ちぎり嬉嬉うれしきしきしき心地心地ここちしししててて、、、飽飽あかかかずずずのみのみのみおぼゆおぼゆおぼゆ。。。
- 2院院いんははは昔昔むかし物語物語ものがたりしいでしいでしいで給給たまひひいててて「「「おほきおほきおおきおとゞおとゞおとどののの萬萬よろずののの事事ことにににたちたちたちならびならびならびてててかちかちかちまけまけまけのののさだめさだめさだめししし給給たまひひいししし中中なかににに鞠鞠まりなむなむなん得得え及及およばばばずずずなりなりなりにににししし、、、はかなきはかなきはかなきことことことははは傳傳つたへへえあるあるあるまじけれまじけれまじけれどどど、、、ものものものゝゝのすぢすぢすじははは猶猶なおこよなかりこよなかりこよなかりけりけりけり。。。いといといとめめめももも及及およばばばずずずかしこうかしこうかしこうこそこそこそ見見みえええつれつれつれ」」」とととのたまへのたまへのたまえばばば、、、うちうちうちほゝゑみほゝゑみほほえみててて「「「はかばかしきはかばかしきはかばかしき方方かたにににはははぬるくぬるくぬるく侍侍はべるるる家家いえののの風風かぜのののさしもさしもさしも吹吹ふききき傳傳つたへへえ侍侍はべらららむむんににに、、、後後のちののの世世よのののためためため、、、殊殊ことなるなるなることことことなくなくなくこそこそこそ侍侍はべりりりぬぬぬべけれべけれべけれ」」」ととと申申もうししし給給たまへへえばばば、、、「「「いかでいかでいかでかかか、、、何事何事なにごとももも人人ひとににに異異ことなるなるなるけぢめけぢめけじめをををばばばしるししるししるし傳傳つたふふうべきべきべきなりなりなり。。。家家いえののの傳傳つたへへえなどなどなどににに、、、かきかきかきとゞめとゞめとどめ入入いれれれたらたらたらむむんこそこそこそ、、、けうけうきょうはははあらあらあらめめめ」」」などなどなど、、、たはぶれたはぶれたわぶれ給給たまふふう。。。御御おんさまさまさまののの匂匂におひやかひやかいやかににに淸淸きよらららなるなるなるををを見見み奉奉たてまつるるるにににももも、、、かゝるかゝるかかる人人ひとにににならひならひならいててていかばかりいかばかりいかばかりのののことことことにににかかか、、、心心こころをををうつすうつすうつす人人ひとははは物物ものししし給給たまははわむむん、、、何事何事なにごとにににつけつけつけてててかかか哀哀あわれととと見見み許許ゆるししし給給たまふふうばかりばかりばかりはははなびかしなびかしなびかし聞聞きこゆゆゆべきべきべきととと、、、思思おもひひいめぐらすめぐらすめぐらすににに、、、いといといとこよなくこよなくこよなく御御おんあたりあたりあたりはるかはるかはるかなるなるなるべきべきべき身身みののの程程ほどももも思思おもひひい知知しらららるれるれるればばば胸胸むねのみのみのみふたがりふたがりふたがりてててまかでまかでまかで給給たまひひいぬぬぬ。。。大大だい將將しょうののの君君きみひとつひとつひとつ車車くるまにてにてにて道道みちのののほどほどほど物語物語ものがたりししし給給たまふふう。。。
現代語訳
宮(蛍兵部卿宮)も居住まいを正して、お話をなさる。次々の殿上人は、簀子に円座を取り寄せて、気軽に椿餅や梨、柑子のようなものを、さまざまに箱の蓋などに取り混ぜてあるのを、若い人々がはしゃいで取って食べる。しかるべき干物類だけで、杯が回る。衛門督(柏木)は、たいそうひどく沈み込んで、ともすれば桜の木に目をやって、ぼんやりと眺めている。大将(夕霧)は、事情を知っているので、あの不思議だった御簾の透き影を思い出しているのだろうかとお思いになる。「宮がたいそう端近にいらっしゃった様子を、一方では軽々しいと思っているだろう。いやもう、こちら(紫の上)のご様子は、そうではないだろうに」と思うにつけても、「こうだからこそ、世間の評判のわりには、源氏の内々のご愛情が薄いようだったのだ」と思い合わせて、「やはり内外の心づかいが足りず、幼いのはかわいらしいようだが、不安なことだなあ」と、宮を見下す気持ちになる。宰相の君(柏木)は、あらゆる罪のことなど、少しも考えられず、思いがけない物のすき間から、ほのかにでもそれと拝見したのにつけても、自分の昔からの志がかなう前触れであろうかと、宿縁がうれしい気持ちがして、いつまでも名残惜しく思われる。
院(源氏)は昔話をなさって、「太政大臣が何事にも私と張り合って、勝ち負けを競いなさった中で、鞠だけはとてもかなわなかった。たわいない遊びには伝授などあるはずもないが、血筋はやはりこの上ないものだ。たいそう目も及ばないほど見事に見えたよ」とおっしゃると、柏木はほほえんで、「しっかりとした方面には劣っております家風が、そのように吹き伝わりましても、子孫のためには、格別なこともございますまい」と申し上げなさると、源氏は、「どうしてそんなことがあろうか。何事も人と違う優れた点は、書き記して伝えるべきなのだ。家の伝書などに書き留めておいたら、さぞ興があるだろう」などと、冗談をおっしゃる。源氏のご様子が、つややかに美しいのを拝見するにつけても、柏木は、「このような人を夫として慣れ親しんで、どれほどのことで、宮は他の人に心を移しなさるだろうか。何によって、いとしいとお許しくださるほどに、お心をなびかせ申し上げられようか」と思いめぐらすと、たいそうこの上なく、宮のおそばからは遠く隔たっているはずの身の程も思い知らされるので、胸がふさがるばかりで、退出なさった。大将の君と同じ車で、道中お話をなさる。
意訳
宴の中で柏木は沈み込み、夕霧は宮の軽率さを思って、宮を見下す気持ちになる。柏木は宮を見られたことを、思いがかなう前触れと喜ぶ。
源氏は柏木の蹴鞠の腕前をほめ、柏木は源氏の美しさを見て、自分がとうてい宮の心を得られないと胸がふさがる。
語釈・文法注
文法
- 「つばいもちひ」(つばいもちひ、なし、かうじやうのものども)
- 椿餅。餅米の粉に甘葛をかけて椿の葉で包んだ菓子。
- 「心知り」(大將は心知りに)
- 事情を知っていること。夕霧は柏木が宮を見たことを知っている。
- 「けう」(かきとゞめ入れたらむこそ、けうはあらめ)
- 興。おもしろみ。
解説
同じ場面を見た夕霧と柏木の反応は対照的である。夕霧は宮の不用意さを批判的に見て、紫の上と比べて宮を見下す。一方、柏木は「萬の罪をもをさをさたどられず」と、罪の意識もなく、宮を見たことを宿縁のしるしと喜ぶ。この違いが、二人の運命を分けていく。
源氏の前で、柏木は源氏の美しさに圧倒され、自分の身の程を思い知る。それでも宮への思いは断ち切れない。源氏が太政大臣家の蹴鞠の腕前を冗談めかしてほめる場面は、源氏と柏木の間に生まれる緊張を、まだ誰も知らない穏やかさの中で描いている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、648–649頁(コマ35)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日