源氏物語 第34帖 若菜上(48)
夕霧と柏木の思い
夕霧(大将)は、女三の宮の縁談を考えないでもなかったので、近くにいる宮のことを平静には思えず、折々に参上して様子を見聞きする。宮はただ若くおっとりしていて、表向きの儀式は盛大だが、深みは感じられない。女房たちも若く華やかな者ばかりで、遊びに夢中な童女たちの様子なども、源氏は気に入らないが、一つの型にはめない性分なので、見逃している。夕霧は、紫の上が長年、内面を外に漏らすことなく、穏やかで心優しく、人を傷つけず、自分の品位を保ってきたことを思い出す。自分の妻(雲居雁)は愛しているが、才気に富んだ人ではない。夕霧は、身分の高い宮が源氏の格別の寵愛を受けているわけではないと知り、大それた心ではないが、お姿を見る折があればと思う。柏木(衛門督)は、かつて朱雀院に親しく仕え、宮の降嫁の話にも名乗りを上げていたので、宮が源氏に嫁いだことを残念に思い、宮の乳母子の小侍従を通じて、宮の様子を聞くのを慰めにしている。宮が紫の上に圧倒されていると聞いて、自分なら悲しませはしないのにと思い、源氏が出家したらと、たゆみなく思い続ける。

- 1大大だい將將しょうののの君君きみはははこのこのこの姫姫ひめ君君ぎみののの御御おん事事ことををを思思おもひひい及及およばばばぬぬぬにににしもしもしもあらあらあらざりざりざりしかしかしかばばば、、、目目めににに近近ちかくくくおはしますおはしますおわしますをををいといといとたゞたゞただにににももも覺覺おぼえええずずず、、、大大おおかたかたかたののの御御おんかしづきかしづきかしずきにににつけつけつけてててこなたこなたこなたにににはははさりぬべきさりぬべきさりぬべきをりをりをりをりおりおりににに參參まいりりりなれなれなれ、、、おのづからおのづからおのずから御御おんけはひけはひけわい有樣有樣ありさまももも見見み聞聞きききき給給たまふふうににに、、、いといといと若若わかくくくおほどきおほどきおおどき給給たまへへえるるる一一ひとすぢすぢすじにてにてにてうへうへうえののの儀儀ぎ式式しきはははいかめしくいかめしくいかめしく世世よのののためしためしためしにににまつまつまつばかりばかりばかりもてもてもてかしづきかしづきかしずき奉奉たてまつりりり給給たまへへえれれれどどど、、、をさをさをさをさおさおさけざやかけざやかけざやかににに物物もの深深ふかくくくははは見見みえええずずず。。。女房女房にょうぼうなどなどなどもももおとなおとなしきおとなおとなしきおとなおとなしきははは少少すくなくくく若若わかやかやかやかなるなるなるかたちかたちかたち人人びとのののひたぶるひたぶるひたぶるににに打打うちちち華華はなやぎやぎやぎざればめるざればめるざればめるはははいといといと多多おおくくく、、、數數かず知知しらららぬぬぬまでまでまで集集つどひひいさぶらひさぶらひさぶらいつゝつゝつつ、、、物思物思ものおもひひいなげなげなげなるなるなる御御おんあたりあたりあたりとととはははいひいひいいながらながらながら、、、何事何事なにごとももものどやかのどやかのどやかににに心心こころしづめしづめしずめたるたるたるははは心心こころののの中中なかのののあらはあらはあらわにににしもしもしも見見みえええぬぬぬわざわざわざなれなれなればばば、、、身身みににに人人ひと知知しれれれぬぬぬ思思おもひひい添添そひひいたらたらたらむむんももも又又また更更さらにににこゝちこゝちここちゆきゆきゆきけけけにににとゞこほりとゞこほりとどこおりなかるなかるなかるべきべきべきにににしもしもしも打打うちちちまじれまじれまじればばばかたへかたへかたえののの人人ひとにににひかひかひかれれれつゝつゝつつ同同おなじじじけはひけはひけわいもてなしもてなしもてなしににになだらかなだらかなだらかなるなるなるををを、、、唯唯ただあけくれあけくれあけくれはははいはけいはけいわけたるたるたるみみみあそびあそびあそびたはぶれたはぶれたわぶれににに心心こころ入入いれれれたるたるたるわらはわらはわらわべべべのののありさまありさまありさまなどなどなど、、、院院いんはははいといといとめめめにににつかつかつかずずず見見み給給たまふふうことことことゞもゞもどもあれあれあれどどどひとつひとつひとつさまさまさまににに世世よののの中中なかをををおぼしおぼしおぼしのたまはのたまはのたまわぬぬぬ御御おん本本ほん性性じょうなれなれなればばば、、、かゝるかゝるかかるかたかたかたをををもももまかせまかせまかせてててさささこそこそこそはははあらあらあらまほしからまほしからまほしからめめめととと、、、御覽御覽ごらんじじじ許許ゆるしししつゝつゝつついましめいましめいましめとゝのへとゝのへととのえさせさせさせ給給たまははわずずず。。。さうじみさうじみそうじみののの御御おん有樣有樣ありさまばかりばかりばかりをををばばばいといといとよくよくよく敎敎おしへへへ聞聞きこえええ給給たまふふうににに少少すこしししもてもてもてつけつけつけ給給たまへへえりりり。。。
- 2かやうかやうかようのののことことことををを大大だい將將しょうののの君君きみもももげにげにげにこそこそこそありがたきありがたきありがたき世世よなりなりなりけれけれけれ、、、紫紫むらさきののの御御おん用意用意ようい氣色氣色けしきのののこゝらこゝらここらののの年年とし經經へぬれぬれぬれどどど、、、ともかくもともかくもともかくももりもりもり出出いででで見見みえええ聞聞きこえええたるたるたる所所ところなくなくなくしづやかしづやかしずやかなるなるなるををを本本もととととしししててて、、、さすがにさすがにさすがに心心こころうつくしううつくしううつくしゅう、、、人人ひとをををもももけたけたけたずずず、、、身身みをををもももやんごとなくやんごとなくやんごとなく心心こころにくゝにくゝにくくもてなしもてなしもてなし添添そへへえ給給たまへへえるるることことことゝゝと見見みししし面面おも影影かげももも忘忘わすれれれ難難かたくくくのみのみのみなむなむなん思思おもひひい出出いでででられられられけるけるける。。。我我わががが御御おん北北きたののの方方かたももも哀哀あわれととと覺覺おぼすすす方方かたこそこそこそ深深ふかけれけれけれ、、、いふかひいふかひいうかいありありあり勝勝すぐれれれたるたるたるらうらうじさらうらうじさろうろうじさなどなどなど物物ものししし給給たまははわぬぬぬ人人ひとなりなりなり。。。おだしきおだしきおだしきものものものににに今今いまはははとととめめめなるゝなるゝなるるににに、、、心心こころゆるびゆるびゆるびててて猶猶なおかくかくかくさまざまさまざまさまざまにににつどひつどひつどい給給たまへへえるるる御御おん有樣有樣ありさまどもどもどものののとりどりとりどりとりどりにににをかしきをかしきおかしきををを、、、心心こころひとつひとつひとつににに思思おもひひい離離はなれれれがたきがたきがたきををを、、、ましてましてましてこのこのこの宮宮みやははは人人ひとののの御御おんほどほどほどををを思思おもふふうにににももも限限かぎりなくなくなく心心こころことことことなるなるなる御御おんほどほどほどににに、、、取取とりりりわきわきわきたるたるたる御御おんけしきけしきけしきにににしもしもしもあらあらあらずずず、、、人人ひと目目めのののかぎりかぎりかぎりばかりばかりばかりにににこそこそこそととと見見み奉奉たてまつりりり知知しるるるにににわざとわざとわざとおほけなきおほけなきおおけなき心心こころにににしもしもしもあらあらあらねねねどどど、、、見見み奉奉たてまつるるる折折おりありありありなむなむなんやややととと、、、ゆかしくゆかしくゆかしく思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいけりけりけり。。。
- 3衛衛え門門もんのののかんかんかんののの君君きみももも院院いんににに常常つねににに參參まいりりり親親おやしくしくしくさぶらひさぶらひさぶらい馴馴なれれれ給給たまひひいししし人人ひとなれなれなればばば、、、このこのこの宮宮みやをををちゝちゝちちみかどみかどみかどのののかしづきかしづきかしずきあがめあがめあがめ奉奉たてまつりりり給給たまひひいししし御御おん心心こころおきておきておきてなどなどなどくはしくくはしくくわしく見見み奉奉たてまつりりり置置おきききててて、、、さまざまさまざまさまざまののの御御おん定定さだめめめありありありししし比比ころほひほひおいよりよりより聞聞きこえええよりよりより、、、院院いんにににもももめざましめざましめざましとととはははおぼしおぼしおぼしのたまはせのたまはせのたまわせずずずととと聞聞ききききしししををを、、、かくかくかくことことことざまざまざまににになりなりなり給給たまへへえるるるはははいといといと口惜口惜くちおしくしくしく胸胸むねいたきいたきいたきこゝちこゝちここちすれすれすればばば、、、猶猶なお得得え思思おもひひい離離はなれれれずずずそのそのそのをりをりおりよりよりより語語かたらひらひらいつきつきつきにににけるけるける、、、女房女房にょうぼうのののたよりたよりたよりににに御御おん有樣有樣ありさまなどなどなどももも聞聞きききき傳傳つたふるふるうるををを慰慰なぐさめめめににに思思おもふふうぞぞぞはかなかりはかなかりはかなかりけるけるける。。。對對たいののの上上うえののの御御おんけはひけはひけわいにににははは猶猶なおおさおさおされれれ給給たまひひいてててなむなむなんととと世世よののの人人ひともももまねびまねびまねび傳傳つたふるふるうるををを聞聞ききききてててははは、、、かたじけなくかたじけなくかたじけなくともともともさるさるさるものものものははは思思おもははわせせせ奉奉たてまつらららざらざらざらましましまし、、、げにげにげにたぐひたぐひたぐいなきなきなき御御おん身身みにににこそこそこそあたらあたらあたらざらざらざらめめめととと常常つねにににこのこのこの小小こ侍侍じ從從じゅうととといふいふいう御御おんちぬしちぬしちぬしをををもももいひいひいいはげましはげましはげましててて世世よののの中中なか定定さだめめめなきなきなきををを、、、おとゞおとゞおとどののの君君きみもとよりもとよりもとより本本ほ意意いありありありててておぼしおぼしおぼしおきておきておきてたるたるたる方方かたににに趣趣おもむききき給給たまははわゞゞばとととたゆみたゆみたゆみなくなくなく思思おもひひいありきありきありきけりけりけり。。。
現代語訳
大将の君(夕霧)は、この姫宮のことを、考えないわけでもなかったので、目の前近くにいらっしゃるのを、平静にも思われず、一通りのお世話にかこつけて、こちらにはしかるべき折々に参上し慣れて、自然とご様子やありさまも見聞きなさると、宮はたいそう若くおっとりしていらっしゃるばかりで、表向きの儀式は盛大で、世の模範にもなるほど大切にお扱い申し上げていらっしゃるけれど、ほとんど際立って奥深くはお見えにならない。女房なども、大人びた者は少なく、若々しく器量のよい者で、ひたすら華やかにはしゃいでいる者がたいそう多く、数えきれないほど集まってお仕えしていて、物思いもなさそうなあたりとはいいながら、何事ものどやかに心を落ち着けている人は、心の中があらわには見えないものなので、身に人知れぬ思いを抱いている者も、またまったく気持ちよさそうで、屈託がないような者の中に入り混じっているので、そばの人に引かれて同じような様子や振る舞いで穏やかにしているのに、ただ明け暮れ、子どもっぽい遊びや戯れに夢中になっている童女たちの様子など、院(源氏)は、たいそう目障りにご覧になることもあるけれど、一つの型にはめて世の中をお考えになったりおっしゃったりしないご性分なので、このようなことも本人たちに任せて、そうしたいのだろうと、見逃しなさって、戒めて整えさせることもなさらない。宮ご自身のご様子だけは、たいそうよくお教え申し上げなさるので、少し整ってこられた。
このようなことを、大将の君も、なるほどめったにない夫婦仲であるよ、紫の上のお心づかいやご様子は、長い年月を経ても、何かと外に漏れ出て人に見られたり聞かれたりするところもなく、落ち着いていることを基本として、それでいて心優しく、人をないがしろにせず、自分の身も品位を保って奥ゆかしく振る舞っていらっしゃることよと、見た面影も忘れがたくばかり思い出されるのだった。夕霧ご自身の北の方(雲居雁)も、いとしいとお思いになる点は深いけれど、張り合いがあって優れた才気などはおありでない人である。穏やかな人だと今は見慣れてしまったので、心がゆるんで、やはりこのようにさまざまに集まっていらっしゃる六条院の方々のご様子がそれぞれに趣深いのを、心ひとつに思い離れがたく思うのに、ましてこの宮は、ご身分を思っても、この上なく格別なご身分なのに、源氏が取り立てて寵愛なさるご様子でもなく、人目のためだけの扱いのようだと拝見して知っているので、ことさら大それた心ではないけれど、お姿を拝見する折があるだろうかと、心ひかれてお思い申し上げなさった。
衛門督(柏木)も、院(朱雀院)のもとにいつも参上して親しくお仕えし慣れていらっしゃった人なので、この宮を父帝が大切にかしずいていらっしゃったお心構えなどを詳しく拝見しておいて、さまざまのご縁談があったころから申し出ていて、院も心外だとはお思いにもおっしゃりもしないと聞いていたのに、このようにほかに縁づいておしまいになったのは、たいそう残念で胸の痛む気持ちがするので、やはり思い切ることができず、その頃から親しくなっていた女房の手づるで、宮のご様子なども聞き伝えるのを慰めに思っているのは、はかないことであった。対の上のご様子には、やはり圧倒されていらっしゃると、世の人も噂しているのを聞いては、「恐れ多くても、自分ならそのようなつらい思いはおさせ申し上げないだろうに。なるほど比類のないご身分には、自分は釣り合わないだろうが」と、いつもこの小侍従という乳母子をも言い励まして、「世の中は定めないものだから、大臣の君(源氏)がもともと本意として考えていらっしゃった出家の方に赴かれたら」と、たゆみなく思い続けているのだった。
意訳
夕霧は、女三の宮の幼さと紫の上の得がたさを比べ、宮の姿を見る折があればと思う。
柏木は、宮が源氏に嫁いだのを残念に思い、乳母子の小侍従を通じて宮の様子を聞き、源氏の出家を待ち続ける。
語釈・文法注
文法
- 「さうじみ」(さうじみの御有樣ばかりをば)
- 正身。本人。女三の宮ご自身のこと。
- 反実仮想「まし」(かたじけなくともさるものは思はせ奉らざらまし)
- 「恐れ多くても、自分ならそのような思いはおさせしないだろうに」。
- 「ちぬし」(小侍從といふ御ちぬし)
- 乳母子。乳母の子で、主人と乳兄弟の関係にある者。
解説
夕霧と柏木は、ともに女三の宮に関心を抱くが、その心の向きは異なる。夕霧は、宮の幼さと紫の上の優れた人柄を冷静に見比べ、宮の姿を一目見たいと思うにとどまる。一方、柏木は宮への思いを断ち切れず、源氏の出家を待つという危うい望みを抱き続ける。
柏木が小侍従を通じて宮の様子を聞くことは、朱雀院がかつて恐れた「これかれの心にまかせて」の状況を生み出していく。女房たちが若く華やかで、周囲の統制がゆるいことも、のちの悲劇の伏線となっている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、642–645頁(コマ32–33)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日