源氏物語 第34帖 若菜上(32)
紫の上と女三の宮の対面
明石の女御は、実母よりも紫の上を親しく頼りにしている。紫の上は女御とむつまじく語り合った後、中の戸を開けて女三の宮と対面する。宮がひどく幼く見えるので、紫の上は安心して、親らしく、昔からの血筋の縁などを話す。宮の乳母の中納言の乳母を呼んで、同じ藤壺の縁につながる者として、これからは親しくしてほしいと言う。乳母は、宮が頼りとする方々に先立たれて心細かったが、このようなお許しがあってこの上なく心強い、出家した朱雀院もそう願っていたと答える。紫の上は、宮の気に入るように、絵や人形遊びのことなどを若々しく話し、宮は、本当に若く気のよい人だと打ち解ける。その後は手紙を交わし、遊びごとでも親しくする。世間の人々は、紫の上の寵愛が衰えるだろうと噂していたが、源氏の愛情はかえって深まり、紫の上が宮と親しくしているので、噂も収まって穏やかになる。

- 1春宮春宮とうぐうののの御御おん方方かたはははじちじちじちののの母母はは君君ぎみよりよりよりもももこのこのこの御御おん方方かたをををばばばむつましきむつましきむつましきものものものににに賴賴たのみみみ聞聞きこえええ給給たまへへえりりり。。。いといといと美美うつくしげしげしげにににおとなびおとなびおとなびまさりまさりまさり給給たまへへえるるるををを思思おもひひい隔隔へだてててずずずかなしかなしかなしととと見見み奉奉たてまつりりり給給たまふふう。。。御御おん物語物語ものがたりなどなどなどいといといと懷懷なつかしくしくしく聞聞きこえええかはしかはしかわし給給たまひひいててて中中なかののの戶戶とあけあけあけててて宮宮みやにににももも對對たい面面めんししし給給たまへへえりりり。。。いといといと幼幼おさなげげげにににのみのみのみ見見みえええ給給たまへへえばばば心心こころやすくやすくやすくててておとなおとなしくおとなおとなしくおとなおとなしく親親おやめきめきめきたるたるたるさまさまさまににに昔昔むかしののの御御おんすぢすぢすじをををももも尋尋たずねねね聞聞きこえええ給給たまふふう。。。中中ちゅう納納な言言ごんののの乳乳め母母のとととといふいふいう召召めししし出出いでででゝゝて「「「同同おなじじじかざしかざしかざしををを尋尋たずねねね聞聞きこゆれゆれゆればばばかたじけなけれかたじけなけれかたじけなけれどどど、、、わかわかわかぬぬぬさまさまさまににに聞聞きこえええさすれさすれさすれどどどついでついでついでなくなくなくててて侍侍はべりりりつるつるつるををを、、、今今いまよりよりよりははは疎疎うとからからからずずずあなたあなたあなたなどなどなどにににももも物物ものししし給給たまひひいててて怠怠おこたらららむむんとととをををばばば驚驚おどろかしかしかしなどなどなどももも物物ものししし給給たまははわむむんなむなむなん嬉嬉うれしかるしかるしかるべきべきべき」」」などなどなどのたまへのたまへのたまえばばば「「「たのもしきたのもしきたのもしき御御おんかげかげかげどもどもどもにににさまざまさまざまさまざまにににおくれおくれおくれ聞聞きこえええ給給たまひひいててて心細心細こころぼそげげげにににおはしますおはしますおわしますめるめるめるををを、、、かゝるかゝるかかる御御おんゆるしゆるしゆるし侍侍はべるるるめれめれめればばばますますますことことことなくなくなくなむなむなん思思おもひひい給給たまへへえられられられけるけるける。。。背背そむききき給給たまひひいにににししし上上うえののの御御おん心心こころむけむけむけももも唯唯ただかくかくかくなむなむなん、、、御心御心みこころ隔隔へだててて聞聞きこえええ給給たまははわずずずまだまだまだいはけなきいはけなきいわけなき御御おん有樣有樣ありさまをををもももはぐゝみはぐゝみはぐくみ奉奉たてまつらららせせせ給給たまふふうべくべくべくぞぞぞ侍侍はべるるるめりめりめりししし。。。うちうちうちうちうちうちにににもももさささなむなむなん賴賴たのみみみ聞聞きこえええさせさせさせ給給たまひひいししし」」」などなどなど聞聞きこゆゆゆ。。。
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現代語訳
東宮の御方(明石の女御)は、実の母君よりも、この御方(紫の上)を親しい人として頼りにしていらっしゃった。紫の上も、女御がたいそうかわいらしく大人びていらっしゃるのを、隔てなくいとしいと拝見なさる。お話などをたいそう親しく交わしなさって、中の戸を開けて、宮にも対面なさった。宮がたいそう幼くばかりお見えになるので、紫の上は気が楽になって、大人らしく親めいた様子で、昔のお血筋のことなどをお話し申し上げなさる。中納言の乳母という者を呼び出して、「同じ挿頭(藤壺の血筋)をたどれば、恐れ多いことですが、分け隔てないようにと申し上げたかったのですが、機会がなくておりましたのを、これからは疎遠でなく、あちらなどにもおいでになって、私が怠っているようなことがあれば、注意などもしてくださるとうれしいでしょう」などとおっしゃると、乳母は、「頼もしい御庇護の方々に、さまざまに先立たれなさって、心細そうでいらっしゃるようでしたのに、このようなお許しがございますので、この上なく心強く存じます。出家なさった上(朱雀院)のお心向けも、ただこのように、お心を隔て申し上げなさらず、まだ幼いご様子をお育て申し上げてくださるようにと、お望みのようでございました。内々にも、そのように頼りにしていらっしゃいました」などと申し上げる。
紫の上は、「たいそう恐れ多かった院のお手紙の後は、何とかしてと思ってばかりおりますが、何事につけても、人数にも入らない身が残念でございます」と、穏やかに大人びた様子で、宮のお気にも入るように、絵などのことや、人形遊びの捨てがたい様子などを、若々しく申し上げなさるので、宮は、本当にたいそう若く、気立てのよい人だなあと、幼いお心には打ち解けなさった。それから後は、いつもお手紙のやりとりなどをして、楽しい遊びごとなどにつけても、親しく交わしなさる。世の中の人も、筋違いにも、これほどの身分になった方々のことはあれこれ取りざたするものなので、「初めのうちは、対の上はどうお思いだろう。ご寵愛はこれまでのようではいらっしゃるまい。少しは劣るだろう」などと言っていたのに、源氏のご愛情がかえって以前より深まる様子なので、それにつけてもまた穏やかでなく言う人々がいるのに、このように紫の上が宮と憎らしげもなく交わしていらっしゃるので、噂も収まって、穏やかになった。
意訳
紫の上は女三の宮と対面し、藤壺の縁を語って親しくしてほしいと言い、宮は紫の上に打ち解ける。
その後二人は手紙を交わして親しくし、紫の上の寵愛が衰えるという世間の噂も収まる。
語釈・文法注
文法
- 「同じかざし」(同じかざしを尋ね聞ゆれば)
- 同じ血筋。紫の上も女三の宮も、藤壺の中宮の姪にあたることをいう。
- 「ますことなく」(ますことなくなむ思ひ給へられける)
- これ以上のことはない、この上もない。
- 「あひなう」(世の中の人もあひなうかばかりになりぬるあたりのことは)
- 「あいなく」のウ音便。筋違いに、わけもなく。
解説
紫の上と女三の宮の対面は、紫の上の見事な配慮によって和やかに進む。紫の上は「同じかざし」と血縁を持ち出し、絵や人形遊びの話で宮の心をつかむ。宮は「實にいと若く心よげなる人かな」と、紫の上の心の内の苦しみには気づかない。
世間の噂が収まったのは、紫の上の努力の結果である。しかしその努力は、紫の上自身の心の苦しみを深めるものでもあった。「ことなほりてめやすくなむありける」という語りの穏やかさの陰に、紫の上の孤独が隠れている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、620–623頁(コマ21–22)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日