源氏物語 第34帖 若菜上(31)
紫の上の手習い
紫の上は、女三の宮に挨拶に出向く支度をしながら、自分より上の人がいるだろうか、ただ身寄りのない身の上を見られてしまっただけだと思い、物思いに沈む。手習いをしても、古歌も物思いの筋のものばかりが書かれ、自分には悩みがあったのだと思い知る。源氏は、宮や女御の美しさを見た目で紫の上を見ても、やはり比べるものがないと思う。気高く整った上に、華やかで当世風の美しさを兼ね備え、年ごとに、日ごとに新しい魅力を見せている。紫の上が硯の下に隠した手習いを見つけて読むと、「身に近く」と秋の訪れに心変わりを嘆く歌がある。源氏は「水鳥の」と書き添える。紫の上が、心の苦しみを何気なく打ち消しているのを、源氏はありがたく思う。その夜、源氏は、どちらにも暇がありそうなので、朧月夜のもとへ忍んでいく。いけないことと思い返しても、止められなかった。

- 1對對たいにににはははかくかくかく出出いでででたちたちたちなどなどなどしたまふしたまふしたまうものものものからからからわれわれわれよりよりよりかみかみかみののの人人ひとやややはははあるあるあるべきべきべき、、、身身みのののほどほどほどのののものものものはかなきはかなきはかなきさまさまさまををを見見みえええ置置おきききたてまつりたてまつりたてまつりたるたるたるばかりばかりばかりこそこそこそあらあらあらめめめなどなどなど思思おもひひいつゞけつゞけつづけられられられてててうちうちうちながめながめながめ給給たまふふう。。。手手て習習ならいなどなどなどするするするにににももも、、、おのづからおのづからおのずからふるふるふることことことももも物物ものおもはしきおもはしきおもわしきすぢすぢすじのみのみのみかゝかゝかかるゝるゝるるををを、、、さらばさらばさらばわわわががが身身みにににははは思思おもふふうことことことありありありけりけりけりとととみづからみづからみずからぞぞぞおぼしおぼしおぼし知知しらららるゝるゝるる。。。
- 2院院いんわたりわたりわたりたまひたまひたまいててて宮宮みや女御女御にょうごののの君君きみなどなどなどののの御御おんありさまありさまありさまどもどもどもをををうつくしううつくしううつくしゅうもももおはするおはするおわするかなかなかなとととさまざまさまざまさまざま見見みたてまつりたてまつりたてまつり給給たまへへえるるる御御おんめめめうつしうつしうつしにににははは年年としごろごろごろめめめなれなれなれたまへたまへたまえるるる人人ひとのののおぼろげおぼろげおぼろげならならならむむんがががいといといとかくかくかくおどろかおどろかおどろかるるるべきべきべきにににもももあらあらあらぬぬぬをををなほなほなおたぐひたぐひたぐいなくなくなくこそこそこそはははととと見見みたまふたまふたまう。。。ありがたきありがたきありがたきことことことなりなりなりかしかしかし。。。あるあるあるべきべきべきかぎりかぎりかぎりけけけ高高だこうううはづかしげはづかしげはずかしげにににとゝのひとゝのひととのいたるたるたるににに添添そひひいててて、、、はなやかはなやかはなやかにににいまめかしくいまめかしくいまめかしくにほひにほひにおいなまめきなまめきなまめきたるたるたるさまざまさまざまさまざまのののかをりかをりかおりももも取取とりりりあつめあつめあつめめでたきめでたきめでたきさかりさかりさかりににに見見みえええたまふたまふたまう。。。こぞこぞこぞよりよりより今今こ年年としはははまさりまさりまさり昨昨きの日日うよりよりより今今け日日きょうはははめづらしくめづらしくめずらしくつねつねつねにににめめめなれなれなれぬぬぬさまさまさまのののしししたまへたまへたまえるるるををを、、、いかでいかでいかでかくかくかくともともともありありありけむけむけんとととおぼすおぼすおぼす。。。
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現代語訳
対の上は、このように出かける支度などをなさるものの、「私より上の人がいるだろうか。ただ、身寄りのない頼りない身の上を見られてしまったというだけのことだろう」などと思い続けられて、物思いに沈んでいらっしゃる。手習いなどをするにつけても、自然と古歌も、物思いの筋のものばかりが書かれるので、それでは自分には悩みがあったのだと、ご自身でお気づきになる。
院(源氏)がいらっしゃって、宮や女御の君などのご様子を、かわいらしくいらっしゃることだとさまざまに拝見なさった目で見比べると、長年見慣れていらっしゃる人が、並々の人であったら、これほど目を見張らされることもないはずなのに、やはり比べるものもないとご覧になる。めったにないことであるよ。あるべき限り気高く、気後れするほど整っている上に、華やかで当世風で、つややかで優美な、さまざまな美しさも取り集めて、すばらしい盛りにお見えになる。去年より今年はまさり、昨日より今日は新鮮で、いつも見慣れない様子をしていらっしゃるのを、どうしてこのようでいられるのだろうとお思いになる。
紫の上が、くつろいで書いていた御手習いを硯の下に差し入れなさったけれど、源氏は見つけなさって、引き出してご覧になる。筆跡などは、ことさら上手とも見えないで、物慣れて美しく書いていらっしゃる。「身にちかく秋やきぬらむ見るまゝに靑葉の山もうつろひにけり(わが身に近く秋が来たのでしょうか。見ているうちに、青葉の山も色が変わってしまいました)」とある所に目をとめなさって、「水鳥の靑ばゝ色もかはらぬをはぎのしたこそけしきことなれ(水鳥の青い羽の色は変わらないのに、萩の下葉こそ様子が違って色づいている)」などと書き添えながら、手すさびをなさる。何かにつけて、心苦しいご様子が、内には自然と漏れ見えるのを、何事もないように打ち消していらっしゃるのも、源氏はめったにないことと、しみじみとお思いになる。今夜は、どちらにもお暇がありそうなので、源氏は、あの忍び所(朧月夜のもと)に、たいそう無理をしてお出かけになった。たいそうあってはならないことだと、ひどく思い返しなさっても、抑えきれなかった。
意訳
紫の上は、自分の立場の頼りなさを思い、手習いにも物思いの歌ばかりを書く。
源氏は紫の上の比類ない美しさに感嘆し、心変わりを嘆く歌に返歌を書き添えるが、その夜も朧月夜のもとへ忍んでいく。
語釈・文法注
文法
- 反語の「やは…べき」(われよりかみの人やはあるべき)
- 「私より上の人がいるだろうか、いや、いない」。紫の上の誇りと、それにもかかわらず劣った扱いを受ける悲しみ。
- 掛詞「秋」(身にちかく秋やきぬらむ)
- 季節の「秋」と、心変わりの「飽き」を掛ける。
- 「萩の下」(はぎのしたこそけしきことなれ)
- 萩の下葉が先に色づくことから、表には見せない心の内の変化をいう。紫の上の心変わりを言う源氏の言葉。
解説
紫の上の手習いに書かれた「身にちかく秋やきぬらむ」の歌は、源氏の「飽き」が身近に迫っていることを嘆くものである。紫の上はそれを硯の下に隠すが、源氏は見つけてしまう。源氏の返歌は、自分の心は変わらないのに、あなたの心の内の方が変わったと切り返すもので、紫の上の苦しみに正面から向き合おうとはしていない。
源氏が紫の上の美しさを「こぞより今年はまさり昨日より今日はめづらしく」と称賛した、その同じ夜に朧月夜のもとへ忍んでいく。この語りの配置は、源氏の愛情と身勝手さとを、皮肉に浮き彫りにしている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、620–621頁(コマ21)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日