源氏物語 第34帖 若菜上(27)
朧月夜との再会
源氏は紫の上に、二条東院の常陸の君(末摘花)の見舞いに夜忍んで行くと告げ、念入りに身支度をする。紫の上は不審に思い、思い当たることもあるが、女三の宮の降嫁以来、源氏との間に少し隔てができたので、気づかないふりをする。源氏は、宵過ぎに、親しい者だけを連れて、目立たない網代車で出かける。和泉の前の守を通じて来訪を告げると、朧月夜は驚いて困惑するが、追い返すのも具合が悪いと、周りの者が無理に取り計らって迎え入れる。源氏が物越しにでもと懇願すると、朧月夜はため息をつきながら端近くにいざり出る。東の対の南東の廂で、襖の端は固く閉められている。源氏は、まるで若い頃のようだと恨み言を言う。夜が更け、池の鴛鴦の声が聞こえ、人の少ない宮の内に、移り変わる世を思って源氏は涙ぐみ、襖を引き動かす。

- 1女女おんな君君ぎみにににははは「「「東東ひがしののの院院いんにににものするものするものする常常ひた陸陸ちののの君君きみののの日日ひ比比ごろ煩煩わずらひひいててて久久ひさしくしくしくなりなりなりにににけるけるけるををを物物もの騷騷さわがしきしきしきまぎれまぎれまぎれにににとぶらはとぶらはとぶらわねねねばばばいとほしくいとほしくいとおしくてててなむなむなん。。。晝晝ひるなどなどなどけざやかけざやかけざやかにににわたらわたらわたらむむんもももびんなきびんなきびんなきををを夜夜よののの間間まににに忍忍しのびびびてててとととなむなむなん思思おもひひい侍侍はべるるる。。。人人ひとにににもももかくかくかくともともとも知知しらせらせらせじじじ」」」ととと聞聞きこえええ給給たまひひいててていといといといたくいたくいたく心心こころけさうけさうけそうししし給給たまふふうををを例例れいはははさしもさしもさしも見見みえええぬぬぬあたりあたりあたりををを、、、あやしあやしあやしととと見見み給給たまひひいててて思思おもひひいあはせあはせあわせ給給たまふふうことことこともももあれあれあれどどど、、、姫姫ひめ宮宮みやののの御御おん事事ことののの後後のちははは何事何事なにごともももいといといと過過すぎぎぎぬるぬるぬる方方かたのののやうやうようにににはははあらあらあらずずず、、、少少すこししし隔隔へだつるつるつる心心こころ添添そひひいててて見見み知知しらららぬぬぬやうやうようにてにてにておはすおはすおわす。。。そのそのその日日ひははは寢寢しん殿殿でんへへへももも渡渡わたりりり給給たまははわででで御御おん文文ふみ書書かきききかはしかはしかわし給給たまふふう。。。たきたきたきものものものなどなどなどににに心心こころををを入入いれれれててて暮暮くらししし給給たまふふう。。。よひよひよい過過すぐしししてててむつまじきむつまじきむつまじき人人ひとののの限限かぎり四四し五五ご人人ひとばかりばかりばかり網網あ代代じろ車車ぐるまのののむかしむかしむかし覺覺おぼえええてててやつれやつれやつれたるたるたるにてにてにて出出いででで給給たまふふう。。。
- 2和和いず泉泉みののの守守かみしししててて御御おんせうそこせうそこしょうそこ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。かくかくかく渡渡わたりりりおはしましおはしましおわしましたるたるたるよしよしよしさゞめきさゞめきさざめき聞聞きこゆれゆれゆればばば、、、驚驚おどろききき給給たまひひいててて怪怪あやしくしくしくはははいかやういかやういかようににに聞聞きこえええたるたるたるにににかかかとととむつがりむつがりむつがり給給たまへへえどどどをかしやかをかしやかおかしやかにてにてにて返返かえししし奉奉たてまつらららむむんにににいといといとびんなうびんなうびんのう侍侍はべらららむむんとてとてとて、、、あながちあながちあながちににに思思おもひひいめぐらしめぐらしめぐらしててて入入いれれれ奉奉たてまつるるる。。。御御おんとぶらひとぶらひとぶらいなどなどなど聞聞きこえええ給給たまひひいててて「「「唯唯ただこゝこゝここもともともとににに物物ものごしごしごしにてにてにてももも、、、更更さらににに昔昔むかしのののあるあるあるまじきまじきまじき心心こころなどなどなどははは殘殘のこらららずずずなりなりなりにににけるけるけるををを」」」ととと、、、わりなくわりなくわりなく聞聞きこえええ給給たまへへえばばばいたくいたくいたくなげくなげくなげくなげくなげくなげくゐざりゐざりいざり出出いででで給給たまへへえりりり。。。さればよさればよさればよ猶猶なおけぢかさけぢかさけじかさはははとととかつかつかつおぼさおぼさおぼさるるる、、、かたみかたみかたみにににおぼろげおぼろげおぼろげならならならぬぬぬ御御おんみじろきみじろきみじろきなれなれなればばばあはれあはれあわれももも少少すくなからからからずずず。。。ひんがしひんがしひんがしののの對對たいなりなりなりけりけりけり、、、辰辰たつ巳巳みのののかたかたかたののの廂廂ひさしにににすゑすゑすえ奉奉たてまつりりりてててみみみさうじさうじそうじのののしりしりしりはははかためかためかためたれたれたればばば「「「いといといと若若わかやかやかやかなるなるなる心地心地ここちもももするするするかなかなかな。。。年年とし月月つきのののつもりつもりつもりをををももも紛紛まぎれれれなくなくなく數數かぞへへへらるゝらるゝらるる心心こころならひならひならいににに、、、かくかくかくおぼめかしきおぼめかしきおぼめかしきはははいみじういみじういみじゅうつらくつらくつらくこそこそこそ」」」ととと恨恨うらみみみ聞聞きこえええ給給たまふふう。。。
- 3夜夜よいたくいたくいたく更更ふけけけ行行ゆくくく。。。玉玉たま藻藻もににに遊遊あそぶぶぶをしをしをしののの聲聲こえ々々ごえなどなどなどあはれあはれあわれににに聞聞きこえええててて、、、しめじめしめじめしめじめととと人人ひとめめめ少少すくなきなきなき宮宮みやののの內內うちののの有樣有樣ありさまにににさささももも移移うつりりり行行ゆくくく世世よかなかなかなとととおぼしおぼしおぼしつゞくるつゞくるつづくるににに平平へい仲仲ちゅうがががまねまねまねならならならねねねどどど誠誠まことににに淚淚なみだもろもろもろににになむなむなん。。。昔昔むかしににに變變かわりりりててておとなおとなしくおとなおとなしくおとなおとなしくははは聞聞きこえええ給給たまふふうものものものからからから、、、これこれこれをををかくかくかくてててやややとととひきひきひき動動うごかしかしかし給給たまふふう。。。
現代語訳
源氏は女君(紫の上)には、「東の院にいる常陸の君(末摘花)が、このところ患って長くなっているのに、何かと騒がしい紛れに見舞わないでいるので、気の毒でね。昼などにはっきりと出かけるのも具合が悪いので、夜の間にこっそりと、と思っています。人にもこうとは知らせまい」と申し上げなさって、たいそう念入りに身支度をなさるのを、いつもはそれほどとも見えないあたりのことなのにと、紫の上は不審にご覧になって、思い当たりなさることもあるけれど、姫宮のことがあってからは、何事も、すっかり昔のようではなく、少し隔てる気持ちが加わって、気づかないふりをしていらっしゃる。その日は寝殿へもお渡りにならずに、尚侍の君とお手紙を交わしなさる。薫物などに心を入れて過ごしなさる。宵を過ごしてから、親しい者だけ四、五人ほどで、網代車の、昔を思い出させるような目立たないものでお出かけになる。
和泉の守を通じて、お便りを申し上げなさる。このようにお越しになったということをひそひそと申し上げると、尚侍の君は驚きなさって、「不思議なこと、どのように申し上げたのか」と機嫌を損ねなさるが、和泉の守は、「体よくお帰し申し上げるのも、たいそう具合が悪うございましょう」と言って、無理に工夫して、お入れ申し上げる。源氏はお見舞いなどを申し上げなさって、「ただこの近くで、物越しにでも。もう昔のようなあってはならない心などは、まったく残っておりませんのに」と、しきりに申し上げなさるので、尚侍の君はひどく嘆きながら、いざり出ていらっしゃった。源氏は、やはりそうだ、相変わらず近づきやすいことよと、一方ではお思いになる。互いに並々でない身の動きなので、感慨も少なくない。東の対であった。南東の廂の間にお座らせ申し上げて、襖の端は固く閉めてあるので、源氏は「たいそう若々しい気持ちもすることだ。年月の積もったのも、まぎれなく数えることのできる心の習いなのに、このように素っ気なくされるのは、ひどくつらいことです」と、お恨み申し上げなさる。
夜がたいそう更けていく。玉藻に遊ぶ鴛鴦の声々などが、しみじみと聞こえて、しっとりと人目の少ない宮の内の様子に、源氏は、このように移り変わっていく世の中だなあと思い続けなさると、平中のまねではないが、本当に涙もろくなる。昔と変わって、大人らしく落ち着いて申し上げなさるものの、この襖をこのままにしておくのかと、引き動かしなさる。
意訳
源氏は紫の上に偽りを言って出かけ、紫の上は気づきながらも知らないふりをする。
朧月夜は困惑しながらも物越しに対面し、源氏は移り変わる世を思って涙ぐみ、襖を引き動かす。
語釈・文法注
文法
- 「をかしやかにて」(をかしやかにて返し奉らむに)
- 体よく、しゃれた様子で。表面だけ取りつくろって。
- 「平仲がまね」(平仲がまねならねど誠に淚もろになむ)
- 平中(平貞文)が、空泣きのために硯の水を目に塗ったという話(平中物語)による。ここでは、源氏の涙は本物であることをいう。
- 「けぢかし」(猶けぢかさは)
- 近づきやすい、親しみやすい。朧月夜の、昔と変わらない打ち解けやすさ。
解説
源氏は紫の上に、末摘花の見舞いと偽って出かける。紫の上は気づきながら、「少し隔つる心添ひて見知らぬやうにておはす」と、知らないふりをする。女三の宮の降嫁以来、二人の間には小さな隔てが生まれていた。
朧月夜の住む二条の宮は、かつての権勢家の宮であったが、今は人も少なく寂しい。池の鴛鴦の声が、夫婦の契りを象徴するかのように響く。源氏の涙は、昔の恋の思い出と、移り変わる世への感慨から流れたものである。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、616–617頁(コマ19)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日