源氏物語 第34帖 若菜上(20)
新婚三日の夜
新婚の三日間、源氏は毎夜女三の宮のもとへ通う。紫の上は、長年慣れないことなので、こらえながらも寂しく思う。源氏の衣に香をたきしめさせながら物思いに沈む紫の上の姿は、いじらしく美しい。源氏は、なぜほかの人を並べて迎えたのかと悔やみ、今夜だけは許してほしいと涙ぐむ。紫の上は、ご自身のお心さえ定まらないのにと軽く受け流し、「目に近く」の歌を書きつける。源氏は「命こそ」と返し、ためらいながら宮のもとへ向かう。紫の上は、長年の不安がようやく消えたと思っていた矢先にこのようなことが起こったと、これから先を案じる。女房たちも、この先面倒なことが起こるだろうと嘆き合うが、紫の上は何も気づかないように、夜更けまで穏やかに話をしている。

- 1三三みっ日日かががが程程ほどははは夜夜よがれがれがれなくなくなく渡渡わたりりり給給たまふふうををを、、、年年とし比比ごろさささもももならひならひならい給給たまははわぬぬぬ心地心地ここちににに忍忍しのぶれぶれぶれどどどなほなほなお物物もの哀哀あわれなりなりなり。。。御御おんぞぞぞどもどもどもなどなどなどいよいよいよいよいよいよたきたきたきしめしめしめさせさせさせ給給たまふふうものものものからからから打打うちちち眺眺ながめめめてててものしものしものし給給たまふふう氣色氣色けしきいみじくいみじくいみじくらうたげらうたげろうたげにににをかしをかしおかし。。。などなどなどててて萬萬よろずののの事事ことありありありともともとも又又また人人ひとをををばばばならべならべならべててて見見みるるるべきべきべきぞぞぞ、、、あだあだしくあだあだしくあだあだしく心心こころ弱弱よわくくくなりなりなりきききにににけるけるける我我わがががをこたりをこたりおこたりにににかゝるかゝるかかることことことももも出出いでででくるくるくるぞぞぞかしかしかし、、、若若わかけれけれけれどどど中中ちゅう納納な言言ごんをををばばばえええおぼしおぼしおぼしかけかけかけずずずなりなりなりぬぬぬめりめりめりしししをををととと、、、われわれわれながらながらながらつらくつらくつらくおぼしおぼしおぼし續續つづけけけらるゝらるゝらるるににに淚淚なみだぐまぐまぐまれれれててて「「「今今こ夜夜よいばかりばかりばかりはははことわりことわりことわりととと許許ゆるししし給給たまひひいてててむむんななな。。。これこれこれよりよりよりのちのちのちのののとだえとだえとだえあらあらあらむむんこそこそこそ身身みながらながらながらももも心心こころづきなかるづきなかるずきなかるべけれべけれべけれ。。。又又またさりとてさりとてさりとてかのかのかの院院いんににに聞聞きこししし召召めさささむむんことことことよよよ」」」ととと思思おもひひい亂亂みだれれれ給給たまへへえるるる御心御心みこころのののうちうちうち苦苦くるしげしげしげなりなりなり。。。
- 2少少すこしししほゝゑみほゝゑみほほえみててて「「「みづからみづからみずからののの御心御心みこころながらながらながらだにだにだに得得え定定さだめめめ給給たまふふうまじかまじかまじかなるなるなるをををましてましてましてことわりことわりことわりもももなになになにももも何何いず處處こにににとまるとまるとまるべきべきべきにににかかか」」」ととと、、、いふかひなげいふかひなげいうかいなげにににとりなしとりなしとりなし給給たまへへえるるる、、、恥恥はずかしうしうしゅうさへさへさへ覺覺おぼえええ給給たまひひいてててつらつらつらづゑづゑずえをををつきつきつきてててよりよりよりふしふしふし給給たまへへえれれればばば、、、御御おん硯硯すずりををを引引ひきききよせよせよせててて、、、「「「めめめににに近近ちかくくくうつれうつれうつればばばかはるかはるかわる世世よののの中中なかををを行行ゆくくくすゑすゑすえとほくとほくとおくたのみたのみたのみけるけるけるかなかなかな」」」。。。ふるふるふることことことなどなどなど書書かきききまぜまぜまぜ給給たまふふうををを取取とりりりててて見見み給給たまひひいてててはかなきはかなきはかなきことことことなれなれなれどどど、、、げにげにげにとととことわりことわりことわりにてにてにて、、、「「「命命いのちこそこそこそたゆたゆたゆともともとも絕絕たえええめめめさだめさだめさだめなきなきなき世世よのののつねつねつねならならならぬぬぬ中中なかのののちぎりちぎりちぎりををを」」」。。。とみとみとみにににももも得得え渡渡わたりりり給給たまははわぬぬぬををを「「「いといといとかたはらいたきかたはらいたきかたわらいたきわざわざわざかなかなかな」」」とととそゝのかしそゝのかしそそのかし聞聞きこえええ給給たまへへえばばばなよゝかなよゝかなよよかにににをかしきをかしきおかしき程程ほどにににえええならならならずずず匂匂におひひいててて渡渡わたりりり給給たまふふうををを見見み出出いししし給給たまふふうもももいといといとたゞたゞただにににはははあらあらあらずずずかしかしかし。。。
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現代語訳
三日の間は、源氏が毎夜欠かさず宮のもとへお通いになるのを、紫の上は、長年そのようなことに慣れていらっしゃらないお気持ちで、こらえてはいるけれど、やはり何となく悲しい。御衣などに、いっそう香をたきしめさせなさりながら、物思いに沈んでいらっしゃる様子は、たいそういじらしく美しい。源氏は、「どうして、どんな事情があったにしても、ほかの人を並べて迎えたのだろう。浮気っぽく心弱くなってしまった自分の怠りから、このようなことも起こるのだ。若いけれど、中納言(夕霧)のことを、院はお考えにならなくなってしまったようだったのに」と、我ながらつらくお思い続けになると、涙ぐまれて、「今夜だけは、もっともなことと許してくださいね。これから後、あなたのもとへ来ないことがあったら、我ながら愛想が尽きるでしょう。しかしまた、そうかといって、あの院(朱雀院)がお聞きになったら」と、思い乱れていらっしゃるお心の内は苦しそうである。
紫の上は、少しほほえんで、「ご自身のお心でさえお決めになれないようですのに、まして、もっともも何も、どこに落ち着くことでしょう」と、取り合わないようにお扱いになるので、源氏は恥ずかしくさえお思いになって、頬杖をついて物に寄りかかって横になっていらっしゃると、紫の上は御硯を引き寄せて、「めに近くうつればかはる世の中を行くすゑとほくたのみけるかな(目の前で移り変わっていく夫婦の仲なのに、行く末長くと頼みにしていたことよ)」。古歌なども書き混ぜていらっしゃるのを、源氏は手に取ってご覧になって、たわいない歌だけれど、なるほどともっともなことで、「命こそたゆとも絕えめさだめなき世のつねならぬ中のちぎりを(命は絶えることがあっても絶えればよい。定めない世の常とは違う、私たちの仲の契りは絶えはしない)」。すぐにはお出かけになれないのを、紫の上が「たいそう気の毒なことですわ」とお促し申し上げなさるので、源氏が柔らかで美しい御衣に、何ともいえずよい香りを漂わせてお出かけになるのを、お見送りになるのも、たいそう平静ではいられないことであろう。
「長年、そういうことがあるのではないかと思っていたことも、今はもうないと、源氏がすっかり離れていらっしゃって、それならこのままでと、安心して打ち解けていった末に、とうとうこのように、世間の聞こえも並々でないことが起こってしまったことよ。安心しきっていられる夫婦仲でもなかったのだから、これから後も不安だ」と、お思いになった。それほど平静に紛らしていらっしゃるけれど、お仕えする女房たちも、「思いがけない世の中ですね。大勢いらっしゃるようですが、どなたも皆、こちらのご様子には遠慮して控えるようにしてお過ごしになるからこそ、事もなく穏やかなのですが、あの宮は、我を張ってこれほどの様子に圧倒されても、そのままお過ごしにはならないでしょう。またそうかといって、ちょっとしたことにつけても穏やかでないことがあるような折々には、必ず面倒なことが起こるでしょうね」などと、めいめい語り合って嘆かわしそうにしているのを、紫の上は少しも気づかないように、たいそう感じよくお話などをなさりながら、夜が更けるまで起きていらっしゃる。
意訳
新婚の三日間、源氏は毎夜女三の宮のもとへ通い、紫の上は寂しさをこらえて歌を書きつける。
紫の上はこれから先を案じ、女房たちも嘆き合うが、紫の上は気づかないふりをして穏やかに過ごす。
語釈・文法注
文法
- 「夜がれ」(三日が程は夜がれなく渡り給ふ)
- 男が女のもとへ通わない夜があること。新婚の三日間は、毎夜通うのが習いであった。
- 強意の「てむな」(ことわりと許し給ひてむな)
- 「許してくださいね」。「な」は念を押す終助詞。
- 係り結び「こそ…め」(命こそたゆとも絕えめ)
- 「こそ」に応じて「む」の已然形「め」で結ぶ。「命は絶えるなら絶えよ」。逆接的に下に続く。
解説
紫の上の「めに近く」の歌は、この巻を代表する歌の一つである。目の前で移り変わる夫婦の仲を、行く末長く頼みにしていた自分の甘さを詠んでいる。表面の穏やかさの奥にある、深い失望と悲しみがにじむ。
源氏は、紫の上を思って涙ぐみながらも、結局は女三の宮のもとへ向かう。紫の上に促されて出かけるという形は、紫の上の誇りと、源氏の身勝手さとを、ともに浮き彫りにしている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、608–611頁(コマ15–16)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日