源氏物語 第34帖 若菜上(18)
宴の遊びと玉鬘の帰還
柏木の和琴は、心のままに掻き合わせる菅掻に、あらゆる楽器の音が調えられて、不思議なほど趣深く響く。父の太政大臣とは違う、華やかで親しみのある音色に、親王たちも驚く。琴は蛍兵部卿宮が弾く。この琴は宜陽殿に伝わった名器で、桐壺院から一品宮を経て伝えられたもので、源氏は昔を思い出して涙し、宮も酔い泣きする。宮に譲られて源氏も一曲弾き、夜更けまで催馬楽「青柳」などで興じる。明け方、玉鬘は帰り、源氏は、このように年を数えて知らせてくれたのは心細いと言いながら、なかなか会えないことを惜しむ。玉鬘も、実の父よりも源氏のありがたい心づかいを、年月とともに深く思うのだった。

- 1しらべしらべしらべににに從從したがひひいてててあとあとあとあるあるある手手てどもどもども定定さだまれまれまれるるるもろこしもろこしもろこしのののつたへつたへつたえどもどもどもはははなかなかなかなかなかなか尋尋たずねねね知知しるるるべきべきべき方方かたあらはあらはあらわなるなるなるををを、、、心心こころにににまかせまかせまかせててて唯唯ただ掻掻かききき合合あわせせせたるたるたるすがゝきすがゝきすがかきににに、、、萬萬よろずののの物物ものののの音音ねとゝのへとゝのへととのえられられられたるたるたるははは、、、たへたへたえにににおもしろくおもしろくおもしろく怪怪あやしきしきしきまでまでまでひゞくひゞくひびく。。。父父ちちおとゞおとゞおとどはははことことことのののをををもももいといといとゆるゆるゆるにににはりはりはりててていたういたういとうくだしくだしくだしててて調調しらべべべ響響ひびききき多多おおくくく合合あわせせせてててぞぞぞ掻掻かきききならしならしならし給給たまふふう。。。これこれこれはははいといといとわらゝかわらゝかわららかにににのぼるのぼるのぼるねねねのののなつかしくなつかしくなつかしく愛愛あい敬敬ぎょうづきづきずきたるたるたるををを、、、いといといとかうかうこうしもしもしもははは聞聞きこえええざりざりざりしししをををととと御御み子子こ達達たちももも驚驚おどろききき給給たまふふう。。。琴琴きんははは兵兵ひょう部部ぶ卿卿きょう宮宮のみやひきひきひき給給たまふふう。。。このこのこの御御おん琴琴ことははは宜宜ぎょ陽陽よう殿殿でんののの御御おん物物ものにてにてにて代々代々よよににに第第だい一一いちののの名名なありありありししし御御おん琴琴ことををを故故こ院院いんののの末末すえつつつ方方かた一一いっ品品ぽん宮宮のみや好好このみみみ給給たまふふうことことことにてにてにてたまはりたまはりたまわり給給たまへへえりりりけるけるけるををを、、、このこのこの折折おりののの淸淸きよらららををを盡盡つくししし給給たまははわむむんとととするするするためためためおとゞおとゞおとどののの申申もうししし給給たまはりはりわり給給たまへへえるるる御御おんつたへつたへつたえつたへつたへつたえをををおぼすおぼすおぼすににに、、、いといといと哀哀あわれににに昔昔むかしのののことことことももも戀戀こいしくしくしくおぼしおぼしおぼし出出いでででらるらるらる。。。御御み子子こもももゑひゑひえい泣泣なきききえええ留留とどめめめ給給たまははわずずず。。。御御おん氣色氣色けしきとりとりとり給給たまひひいてててきんきんきんははは御御お前前まえにににゆづりゆづりゆずり聞聞きこえええさせさせさせ給給たまふふう。。。物物ものののの哀哀あわれにににえええ過過すぐししし給給たまははわででで珍珍めずらしきしきしきものものもの一一ひとつつつばかりばかりばかりひきひきひき給給たまふふうにににことごとしからことごとしからことごとしからねねねどどど限限かぎりなくなくなくおもしろきおもしろきおもしろき夜夜よののの御御おん遊遊あそびなりなりなり。。。さうがさうがそうがののの人々人々ひとびとみはしみはしみはしににに召召めしししてててすぐれすぐれすぐれたるたるたる聲聲こえのののかぎりかぎりかぎり出出いしししてててかへりかへりかえり聲聲ごえににになるなるなる夜夜よののの更更ふけけけ行行ゆくくくまゝまゝままににに物物もののののしらべしらべしらべどもどもどもなつかしくなつかしくなつかしく變變かわりりりててて靑靑あお柳柳やぎ遊遊あそびびび給給たまふふう程程ほどげにげにげにねぐらねぐらねぐらののの鶯鶯うぐいす驚驚おどろきききぬぬぬべくべくべくいみじくいみじくいみじくおもしろしおもしろしおもしろし。。。
- 2わたくしわたくしわたくしごとごとごとのののさまさまさまにににしなししなししなし給給たまひひいててて祿祿ろくなどなどなどいといといときやうざくきやうざくきょうざくににに設設もうけけけられられられたりたりたりけりけりけり曉曉あかつきにににかんかんかんののの君君きみかへりかへりかえり給給たまふふう、、、御御おん贈贈おくり物物ものなどなどなどありありありけりけりけり。。。「「「かうかうこう世世よををを捨捨すつるつるつるやうやうようにてにてにて明明あかししし暮暮くらすすすほどほどほどににに年年とし月月つきのののゆくへゆくへゆくえももも知知しらららずずず顏顏かおなるなるなるをををかうかうこう數數かぞへへへ知知しらららせせせ給給たまへへえりりりけるけるけるにににつけつけつけてててははは心心こころぼそくぼそくぼそくなむなむなん。。。時時とき々々どきははは老老おいいいやややまさるまさるまさるととと見見み給給たまひひいくらべよくらべよくらべよかしかしかし。。。かくかくかくふるめかしきふるめかしきふるめかしき身身みののの所所ところせきせきせきににに、、、思思おもふふうににに從從したがひひいてててたいめたいめたいめなきなきなきもももいといといと口惜口惜くちおしくしくしくなむなむなん」」」などなどなど聞聞きこえええ給給たまひひいててて哀哀あわれにににもももをかしくをかしくおかしくももも思思おもひひいいでいでいで聞聞きこえええ給給たまふふうとととなきなきなきにににしもしもしもあらあらあらねねねばばば、、、なかなかなかなかなかなかほのかほのかほのかにににかくかくかく急急いそぎぎぎ渡渡わたりりり給給たまふふうををを、、、いといといと飽飽あかかかずずず口惜口惜くちおしくしくしくぞぞぞおぼさおぼさおぼされれれけるけるける。。。かんかんかんののの君君きみももも誠誠まことののの親親おやをををばばばさるべきさるべきさるべき契契ちぎりばかりばかりばかりににに思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいててて、、、ありがたくありがたくありがたくこまやかこまやかこまやかなりなりなりししし御御おん心心こころばへばへばえををを、、、年年とし月月つきにににそへそへそえてててかくかくかく世世よににに住住すみみみはてはてはて給給たまふふうにににつけつけつけてててもももおろかおろかおろかならならならずずず思思おもひひい聞聞きこえええ給給たまひひいけりけりけり。。。
現代語訳
調子に従って、型のある奏法が定まっている唐土伝来の曲は、かえって習い知る方法がはっきりしているが、心にまかせて、ただ掻き合わせた菅掻に、すべての楽器の音が調えられているのは、実に趣深く、不思議なほど響く。父の大臣は、琴の緒もたいそうゆるく張って、ずっと低く調子を下げて、余韻を多く合わせて掻き鳴らしなさる。この人(柏木)の音は、たいそう明るく高く響く音色が親しみやすく愛嬌があるので、これほどまでとは聞いていなかったと、親王たちもお驚きになる。琴(きん)は、兵部卿の宮がお弾きになる。この御琴は、宜陽殿の御物で、代々第一の名器と名高かった御琴を、故院が晩年に、一品の宮がお好みになることなので、お与えになっていたのを、この折の美しさを尽くそうとして、大臣が申し受けなさったという伝来をお思いになると、源氏は、たいそうしみじみと昔のことも恋しくお思い出しになる。親王も酔い泣きをこらえることがおできにならない。源氏のご様子をお察しになって、琴を御前にお譲り申し上げなさる。源氏も感慨を抑えきれずに、珍しい曲を一つだけお弾きになると、仰々しくはないけれど、この上なく趣深い夜の御遊びである。唱歌の人々を御階のもとにお召しになって、優れた声の限りを出して、返り声になる夜の更けていくにつれて、楽の調べも親しみやすく変わって、「青柳」をお謡いになる時には、なるほど、ねぐらの鶯も目を覚ましそうなほど、たいそう趣深い。
私的な催しのように取り計らいなさって、禄などは、たいそう見事に用意されていた。明け方に尚侍の君はお帰りになる。御贈り物などがあった。源氏は、「このように世を捨てたようにして明け暮れ過ごしているうちに、年月の行方も知らない顔でいたのに、こうして年を数えて知らせてくださったにつけては、心細いことです。時々は、老いがまさっていないかと、見比べに来てくださいよ。このように年寄りじみた窮屈な身で、思うままにお会いできないのも、たいそう残念で」などと申し上げなさって、しみじみとも、おもしろくも、思い出し申し上げなさることがないわけでもないので、かえってほんのわずかに、こうして急いでお帰りになるのを、たいそう物足りなく残念にお思いになった。尚侍の君も、実の親(太政大臣)のことは、しかるべき因縁ほどにお思い申し上げなさって、源氏のめったにないこまやかだったお心づかいを、年月がたつにつれ、このように落ち着いた暮らしをなさるにつけても、並々でなくありがたくお思い申し上げなさった。
意訳
柏木の和琴の音は華やかで人々を驚かせ、源氏も桐壺院ゆかりの琴を弾いて、夜更けまで管絃の遊びが続く。
明け方に玉鬘は帰り、源氏は名残を惜しみ、玉鬘も源氏の心づかいを深くありがたく思う。
語釈・文法注
文法
- 「すがゝき」(唯掻き合せたるすがゝきに)
- 菅掻。和琴の奏法の一つで、すべての弦を一度に掻き鳴らすもの。
- 「かへり聲」(かへり聲になる夜の更け行くまゝに)
- 呂の調子から律の調子に変わること。夜が更けると律の調子に移るのが習いであった。
- 「見給ひくらべよかし」(老いやまさると見給ひくらべよかし)
- 「かし」は念を押す終助詞。「見比べてくださいよ」。
解説
琴(きん)の伝来の語りは、桐壺院の時代への回想を誘う。源氏はこの琴の音に、父桐壺院のことや若い日々を思い出して涙する。四十の賀という節目に、源氏の心は過去へと引き戻されている。
玉鬘は、実の父である太政大臣よりも、育ての親の源氏に深い感謝を抱いている。源氏の恋情を受け流しながらも、その後見に救われた玉鬘の複雑な思いが、「おろかならず思ひ聞え給ひけり」に込められている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』物語部2(源氏物語 下) 板倉屋書房、明治36年(1903)、606–607頁(コマ14)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日